僧侶「よ、よろしくお願いします!」
魔法「全力で力になりましょう」
勇者「ガハハハ! 若い女子ばかりで目の保養になるわい!」ズゥゥン
僧侶「えっ」
戦士「……なんだこのおっさん」
魔法「巨漢だわ……縦にも横にも」
魔法「そうね……私もこのような方が来るとは」
勇者「ガハハハ! 聞こえておるぞ。そもそも汝らは相手がおるのか」
戦士「……」
僧侶「……」
魔法「私は魔法一筋、戦士は剣一筋、僧侶はずっと教会暮らしだったかしら」
勇者「なんじゃつまらん奴らじゃのぅ。若いくせに寂しい奴らめ」フゥ
戦士「あぁ?! 手前はどうなんだよ! 年幾つだよ、結婚してんのかよ!」
戦士「どう見たってあたしらとダブルスコアじゃねーか!」
戦士「気にしないじゃなくて、諦めているだけだろう!!」
勇者「これでもちょっとした領主であるぞ。その気であれば相手などいくらでもいるわ」
勇者「して、貴様らは我が名乗らねば自己紹介もせぬのか」
戦士「ぐあぁ超上から目線!!」
魔法「見た目の強さも貫禄も向こうが上。ましてや目上の者なんだ、こちらからするのが礼儀だろう」
勇者「ゴハッ! そこの女子は道理が分かっているではないか」
僧侶「わ、私は僧侶です。今まで教会に務めていまして、戦力は乏しく攻撃魔法も不得手ですが回復と支援なら……属性は光です」
魔法「私は魔法使い。この国で雇われています。支援と攻撃は得意でエレメンタルは風」
勇者「そうかそうかぁ」
勇者「我は知っての通り勇者だ。生まれ持つエレメンタルは土だ」ガハハ
戦士「つ、土……」
勇者「そう眉に皺を寄せるでない。土のエレメンタルとは母なる大地の恩恵」
勇者「汝らには土の力の偉大さを見せてくれよう」ガハハハハ
勇者「我は攻撃と回復よぉ。守りを固められはするが、それだけでは支援を得意とするとは言えんなぁ」
魔法「あら……土のエレメンタルは攻撃と支援を主体とするものでは?」
勇者「古い話よ。全てエレメンタルは三つの要素を持ち得ておる」
勇者「得意とする要素はあれど攻撃不可はないし、回復不可もありえんよ。多少の優位性はあれど、主体という事は無い」
戦士「あたしは回復とかできないけどな。あ、筋力なら上げられるな」
勇者「そこは個人差であろうなぁ」
戦士「これでもこの国の最高級の装備なんだが」
僧侶「勇者様の装備は凄い物々しいですよね」
魔法「とてつもなく巨大な大斧ですね……」
勇者「ガハハハ! 破壊者の斧と呼ばれ、砂漠の奥地に奉られるものよぉ」
戦士「砂漠ぅ? どうやって手に入れたんだ?」
勇者「我が治めていた領地は砂漠。少し前に領主を弟に任命して単身奥地に向かっただけの事よ」
僧侶「た、単身……」
魔法「こんな大男が砂漠を闊歩しているのを見たら、魔物も裸足で逃げ出すわね」
戦士「一通りの物資が援助されているし、荷物もまとまっているぞ」
勇者「なんじゃ支援物資があるのか。資金援助だけだろうと思うて揃えてきてしまったではないか」
魔法「その大荷物はそういう……」
僧侶「これ、どうするのですか?」
勇者「運べぬ量でもあるまい。我が持っていくとするかのぅ」ズゥン
戦士「大人数人分の大きさを軽々と……」
魔物A「ガルルっ」
戦士「初戦闘っつても実戦経験が無いのは僧侶くらいか?」
僧侶「あ、あれが魔物……」
魔法「この前衛二人がいる限り、私達は焦る必要が無いのよ?」
勇者「そもそもこの程度、瞬く間に終わるというものよぉ」ズォッ
魔物B「ガウッ! ガウッ!」
勇者「ほぅれ。吼えていないで避けてみぃ」ブォッ
魔物ABC「」ボボボンッ
戦士「い、一撃でミンチ」
勇者「ガハハハ! これでも荒くれの多い砂漠の領主よ。この程度できんでどうする」
僧侶「お、弟さんもですか?」
勇者「あやつらは我より小さいものよ。最も戦士よりも背丈も体格もがっしりしとるがなぁ」
戦士「それでも十分でけぇからな」
魔法「勇者が物凄い規格外なだけよね」
戦士「現時点じゃあたしら三人共じゃね」
勇者「なぁに。我とて全能ではない。いずれ汝らの力が必要となる時はいくらでもあろう」ズシーンズシーン
魔法「……説得力皆無ね」
勇者「んむぅ? まぁた犬っころの魔物かぁ」ブォン
戦士「現れる魔物を無造作にミンチにしていく……」
僧侶「勇者様強すぎです」
勇者「これでもそこ等の奴らには負ける事は無いぞぉ」
勇者「なんなら軽ぅく見ておくかぁ?」
僧侶「よ、よろしければ是非」
魔法「私からも是非ともお願いしたいわ」
勇者「よかろうよかろう、あの大岩を見ているが良い」ガハハハ
勇者「ほぅれ」ズガァン
戦士「……槍のような岩が隆起した」
僧侶「岩が粉々に……」
魔法「3mはあるわね……」
勇者「とは言え、この様な所で全力でやる訳にもいかんからなぁ」ガハハハ
戦士「これで加減してんのかよ……」
魔法「私達、本当に不必要ね」
僧侶「えっと……私達は国に戻ったほうがいいのでしょうか?」
勇者「何を言うておる。遠距離攻撃に長けた風や水のエレメンタルを持つ者が現れたら我では勝てぬのだぞ」
僧侶「そうなのですか?」
勇者「なんじゃ。汝は各エレメンタルの特性を知らぬのか」
魔法「土のエレメンタルは見向きもされないのよね……」
勇者「風と合わされば砂塵となりて形あるものを崩す風化の力を得る」
魔法「風との親和性が高いのよね」
勇者「岩石は堅き守りを形成し、大地は命を育む力を蓄え……そして奥深くに眠る地殻の力をも引き出す」
戦士「土について全く知らなかったがこう聞くとすげー力を持っているんだな」
勇者「しかし本質は形あるものの力だからな。浸食の力を持つ風や水には滅法弱いのだ」
僧侶「親和性があるのにですか……」
魔法「これだけ強い相手だとどうしようもないわね」
魔法「エレメンタルの優劣の差を埋めても余る力量だもの……十人私がいても勝てる気がしないわ」
僧侶「本当に私達要らないですね」
勇者「魔法使いの例えは飽くまで我が攻撃できた時の事よ。魔法使いに先制を取られたら数人と必要あるまい」
戦士「守りを固められるんじゃねーのかよ」
勇者「魔法使いの力量次第ではあるものの、一撃で守りを崩され二人目以降は直撃するであろうな」
勇者「しばらくすれば連中も組織的に攻撃してくるやもしれんなぁ」
勇者「ともすれば、我の手が回らない部分は汝らに委ねざるをえまい」
魔法「魔王軍……」
勇者「なんじゃ汝らは何も聞いておらんのか」
僧侶「え……魔王と戦うのでは?」
勇者「魔王なんぞ我のご先祖様、初代勇者がとうに滅ぼしたわ」
勇者「蘇るなどふざけた話などありはしまい」
勇者「どこぞの狂信者が邪神を降ろそうとしておるのだ」
勇者「魔王を以上の災厄となる、という話だ。それを阻止するのが我らの役目よぉ」
勇者「儀式がそれだけ進行しているのだろうよぉ。時空の裂け目より邪神の力は漏れ出し、影響を受けておるのであろう」
魔法「まだ降ろされていないのであれば、乗り込んで儀式を滅茶苦茶にしてしまえばいいだけかしら」
勇者「なんじゃ軍隊が動いている事さえも知らぬのか」
僧侶「何時の間にそんな……」
勇者「最早儀式は止められん。が、儀式完了直後に降臨するわけではないようだ」
勇者「そこから幾ばくかの時間を有する。軍隊は儀式の遅延を狙ったものよ」
勇者「我は大まかな儀式の内容を聞いておる」
勇者「目的地までに道中で邪神降臨を阻止する手段を探し出し、実行せよというのが本任務であるのだ」
戦士「無茶振りもいいところじゃねーか……」
勇者「ゴハッ! 確かにな。だが各国でも身近な初代勇者の血を引く者が派遣されているであろう」
戦士「お前はどうするんだよ」
勇者「我が寝泊りできる施設があるはずもなかろう」ズゥゥゥン
魔法「ああ……そういう」
僧侶「そんな……それでは勇者様があまりにも」
勇者「汝……この国が砂漠からどれほど距離があると思うておる」
戦士「今更な訳か」
魔法「けれども……国王はどうしてそんな離れた所にいる貴方に勅命を?」
勇者「大方、有力な者達は既に他国に取られたのであろう」
勇者「下手をすれば勇者の血筋による精鋭の先発隊がおるやもしれんなぁ」ガハハハ
戦士「え、じゃあうちの王様は何を考えてんだ?」
勇者「何もしなかった、では後の世でどうなるかは明白。その程度であろうなぁ」
勇者「勇者の血筋としては知名度が低い我が呼ばれたのだ。あやつとて期待はしておるまい」ガハハハ
魔法「私はついて行ったほ方が楽しめると思うわ」
僧侶「た、楽しむって……」
魔法「とても悪人には見えないし、あれだけの力を持つ人はそうそういないわ」
魔法「確かに私だってこの召集に今更感があって諦めていたわ」
魔法「でもあの人なら……他の勇者達を出し抜くことが出来るかもしれないわ」ニタァ
戦士「お前は欲で目が眩んでやがるな」
魔法「より良い研究環境を得られるとあればね」
戦士「あたしだってそうさ。あれが何を考えているか分からない」
戦士「むしろ魔法使いの逆さ。あれだけ力があって辺境の領主に収まっておきながら、この召集に応じた事が不気味だ」
戦士「とんでもないことを企んでいるんじゃないのか」
魔法「さあ、私には分からないわ」
戦士「お前なぁ」
魔法「もし本当に危険人物だとして、彼から逃げ出すとしてもタイミングを計らずには成功はしないわ」
魔法「彼のエレメンタルは都市鎮圧型とも言える領域よ。自らの害になると判断したら……」
僧侶「周辺全てを巻き込んで……」
魔法「飽くまで悪人であると仮定した場合の話よ」
魔法「最も人らしい悪人であればだけどもね」
僧侶「どういう事ですか?」
魔法「力を貪欲に欲するとか強い者を倒すというのが願望だとしたら」
戦士「っ! 邪神降臨に手を貸す、か?」
魔法「悪い方に悪い方にと考えればね」
戦士「そういえば合流場所決めてねーけどどうするんだ?」
魔法「え、必要かしら?」
僧侶「……あ」..シーンズシーン
勇者「やぁっときおったか。遅すぎて欠伸がでるわぁ」ズシ
戦士「なるほど……確かに不要だな」
魔法「これだけでかいと建物でもないかぎり隠れる事はないもの」
勇者「なぁにをしておるか。物資も買い足す必要もあるまい。とっとと行くぞ」
勇者「この先にある魔法に長けた国がある」
僧侶「そこで情報収集するのですね!」
勇者「邪神に関する情報があると思うてか。その近くにある山岳地帯に賢者の塔がある」
魔法「眉唾の噂ではないのですか?」
勇者「いいやぁ塔も賢者達も実在しておる。うち一人は我と旧知の間柄だからなぁ」ガハハハ
僧侶「聞いたことあります?」
戦士「ねーな」
魔法「それぐらい信憑性の無い話なのよ」
勇者「ガハハハハ! 二十年ぶりぐらいかぁ?」
戦士「にじゅ……」
僧侶「私……生まれていませんね」
魔法「どれだけ会っていないのよ」
勇者「あー? こやつが賢者の塔に行き賢者になると行ってから会っておらんなぁ」
戦士「どうやってここの位置を?」
賢者「私は魔法を駆使ししてここまで辿り着きました。彼には数度手紙を飛ばした際に伝えたのですよ」
魔法「……なるほど魔法で手紙を飛ばしたのね」
勇者「そういう事よぉ。まさかあんな事ができるようになるとは思っとらんかったわぁ」ガハハ
僧侶「でも数度程度なのですか……」
賢者「研究に熱が入ってしまって私が送らなくなりました」
勇者「勅命ゆえになぁ」ガハハ
賢者「ま、君が旅立つという知らせが入った時はこうなると思っていたよ」
勇者「汝と最後に連絡を取り合ったのは三年前のはずだったがぁ?」
賢者「おいおい、私はもう賢者だよ。ここにいながら君の行動ぐらい確認する事はできるさ」
勇者「ゴハッ! 随分と立派になったではないか」
賢者「君こそじゃないか」
戦士「すげー会話だ」
魔法「全くね」
勇者「ふんっ。今に始まる事でもないわ」ズゥン
賢者「ふふ、だが私は列記とした賢者なのだよ」パチン
戦士「景色が……!」
魔法「屋内? 転移魔法?」
勇者「ゴハッ。また随分ととんでもない魔法を編み出しおって」
僧侶「どういう事ですか?」
勇者「実在しない場所、全く別の空間を生み出しおった。亜空間を生成したと言うべきかぁ」
賢者「流石というべきか。よく分かったね」
賢者「空間の広さには限界があるし、使いどころはあまり無いだろうけどね」
勇者「完全に汝のプライベートルームだなぁ。相変わらず置いてある書物の種類も変わらん」ズシィ
賢者「そりゃあね」
勇者「我が座れる椅子があるとはなぁ。エレメンタルも上達しているようだのぅ」ガハハ
僧侶「石造りの椅子……賢者さんも土の?」
賢者「砂漠っ子なので」
賢者「そりゃあね。まずはこれが邪神降臨の儀式の内容だ」ピラ
戦士「もうそこまで分かってんのか……すげぇな」
僧侶「生贄千人?!」
魔法「まさか儀式が行われる、という情報は……」
賢者「彼ら自身でリークしたんだろうね」
勇者「各国の兵士が生贄か。小賢しいやつらよのぉ」ガハハ
賢者「今更軍隊を下がらした所で手遅れの数が捧げられているだろう」
勇者「で、我はどうすればいい?」
戦士「!」
勇者「ふん、世界を守るだの英雄だのに興味はなーい」
勇者「だがその国には中々珍しい得物があると聞く。踏み入る大義名分には十分だ」
勇者「それを試す場にもなろうよぉ」ガハハハハ
魔法「ま、まさか……」
賢者「やっぱり降臨した邪神を討つ気だね」
僧侶「む、無茶です!」
勇者「ガハハハハ! だからこそ討つのだ! 我は名誉も金も地位も何も要らぬ!」
勇者「ただ我が力を示したいのだ! そして我が力がどこまで通用するのかを見たいのだ!」
勇者「邪神? だからどうしたぁ! 魔王は世界を終わらす者と恐れられていたのだぞぉ!」
勇者「ただの災厄如き払えぬようで、初代勇者は越えられーん!!」
戦士「……やっぱただの戦闘狂じゃねえか」
勇者「ガハハハ! 褒め言葉と取っておこう!」
賢者「次の朝日を持って邪神は降臨する」
戦士「朝日と共にかよ……どんな邪神だ」
魔法「それよりも猶予がほぼ一日も無いだなんて」
勇者「して、捧げられた生贄の数はどのくらいになっておるのだ?」
賢者「まだ二百人程度だね。今からでも邪神降臨には間に合うだろう」
賢者「で、私が持っているカードで降臨を阻止する手段は無い」
戦士「……マジかよ」
魔法「例え勇者に殺されようと阻止さえできれば、と思っていたのに」
勇者「おいおい汝は我をなんだと思っておる」フゥー
勇者「得物と地図だけで十分だなぁ」
魔法(弱体化の法を私達に教えてください)ヒソ
勇者「つまらん事はさせんぞぉ」ガッシ
戦士「くそ……駄目なのか」
賢者「本当に勝算が無いのなら私が隠密で弱体化させるさ」
僧侶「勝算があるというのですか?」
勇者「あぁ~? だぁから我を何だと思っておる」
勇者「我が斧で刈り取れん命など無いわぁ!」ガハハハ
勇者「ガハハハ! どれだけ杞憂な事か!」
勇者「もっとも我が慢心した事など一度も無いがなぁ」ブォン
僧侶「ゆ、勇者さん!」
賢者「私は君が警戒を解いた所を一度も見た事が無いが……逆に安心したよ」ブォォ
戦士「本当かぁ?」
賢者「殺気を放っていないから、信じられないのも無理はないね」
賢者「ただ……君達が後ろから斬りかかったとしてもまず勝てないよ。私にしても瞬殺されるだろうさ」
勇者「さぁて……ここから目的の国までは十日ほどか」
戦士「結構近いな……てか軍隊との戦闘をどう切り抜けるつもりなんだ?」
勇者「んぁー? 剣ばかりで脳みそが足らん奴だなぁ」
勇者「なぁんの為に周辺の地図を得たと思うておる」
魔法「地下にでも道があるのかしら?」
勇者「噂はされていたが……あやつも流石よ、しっかりと探し出しておるとはなぁ」
勇者「あぁ~? この細長い紙の束はなんだぁ?」
戦士「ちょ、勇者。町中で喧嘩腰は止めてくれ」
イケメン「これが勇者? 笑わせてくれる」
魔法「ある意味では勇者の品格よ」
僧侶「ある意味ですね」
イケ「これで勇者か……世も末だな」
イケ「正統なる勇者の末裔であるこの俺からしてみれば、目も当てられん醜悪な奴だ」
僧侶「正統な……勇者の末裔」ゴクリ
魔法「……こっちもある意味で確かに勇者らしいわね」
イケ「当然だろう、エレメンタルとて初代勇者と同様に代々雷を受け継いでいるのだ」
魔法「不十分な理由なのかしら?」
戦士「代々、だなんてそうそうないだろ」
勇者「汝らはおつむが足らんのぉ」フゥ
勇者「……○○×家の小倅かぁ」
イケ「だったらなんだ」
勇者「やれやれ、エレメンタルが雷だから正統ぅ? 阿呆らしくて呆れるわ」
勇者「確かに両親のエレメンタルを受け継ぎやすくはあるが、全ての者に全てのエレメンタルの要素がある」
勇者「次の世代が両親祖父母と関係の無いエレメンタルである事など珍しくもないわ」
勇者「それに周囲の土地の環境も影響する。こんなもの初代勇者の時からの話よ」
魔法「まさか……それって」
勇者「ゴハッ! その通り間引いているのだよ」
イケ「馬鹿なっ俺は第一子だぞ!」
勇者「だぁれがそれを保障する?」
勇者「汝の家系をよぉく見てみるがよい。両親も祖父母も雷ではないのかぁ?」
イケ「だったらなんだと言う!」
勇者「何故、伴侶までもが雷のエレメンタルなのかを考えてみろぃ」
勇者「でぇ? 正統なる勇者様が一人でなぁにをしておるか?」
イケ「……」
戦士「別の国で勅命を受けているとかか?」
イケ「……」
勇者「何処の国であろうと勅命など受けてはおらんさ」フゥ
僧侶「どういう事ですか?」
勇者「こやつに命をかける勅命を授けた所で、それに見合う報酬が支払える国がないのだ」
勇者「哀れだな。汝の言うとおり正統であったとしても、何処の国からも頼られない勇者だ」ガハハハ
イケ「黙れ」
勇者「どぉした? 多くの初代勇者の血を引く者が勅命を受けて旅発っているぞぉ? 醜いと言ったこの我でさえなぁ」ガハハハハ
イケ「黙れぇ!」
魔法「それほどの立場の相手であれば尚更問題は起こせないわ」
僧侶「そ、そうです……私達は争う為にいるのではないのですよ」
勇者「そうだなぁ……たぁだの勇者を構っている時間はなかったなぁ」
イケ「……決闘だ」
戦士「え?」
イケ「これほどの侮辱を受けて尚、引き下がっては○○×家の名を汚す事になる」
イケ「エレメンタルでの決闘だ」
戦士「おいおい、マジでやんのかよ!」
勇者「ガハハハハ! 我が負けるとでも思うてか!」
魔法「逆よ! 殺したら大問題よ!」
勇者「汝らは何かにつけて杞憂をするものだ。もっと楽に生きるが良い」フゥ
僧侶「あ、あんな凄い力を見せられて落ち着いてなどいられません」
イケ「両者、一切武器をしようしない……エレメンタルのみで戦闘を行う。いいな」
勇者「そぉら始まるぞ。汝らは散れ散れ。踏み潰すぞぉ」シッシッ
戦士「リアルにそうなりそうでこえぇ」
「ゴギャアアアア!」
戦士「……お、おいおい大丈夫かあれ」
魔法「なんて強力な……」
僧侶「勇者……様」
イケ「……この程度終わると思うな」バチバチィ
魔法「これは……」
戦士「砂埃が酷すぎて何も……」
僧侶「そんな……こんな事って」
イケ「口ほどにも無い。所詮は……っ!」ボワァ
勇者「ガハハハハ! 所詮はなんだぁ?!」ドズドズドズ
魔法「無傷……!?」
戦士「ら、雷球をあんな連続で!」
魔法「雷のエレメンタルで形を保つのは難しいのに……」
勇者「ゴハハハハッ! 効かんなぁ~!」ドドドド
僧侶「正面から受けて尚無傷だなんて……」
戦士「どうなってやがんだ?」
魔法「土は一部のエレメンタルに対して強力な堅さを誇る。その一部が雷だけども……それ以上に勇者の能力が高いのよ」
僧侶「あれが土の障壁……あの猛攻でさえ無傷だなんて」
イケ「ぐ……くそ」
戦士「あれ、この流れやばくないか」
魔法「だ、大丈夫……きっとそれくらいの分別はできるはず」
イケ「なんでだ……なんでこんな……」
勇者「っはぁーー。自分に勝てない者はおらん、とでも思うていたかぁ?」
勇者「どぅれ。もう一つお前の自尊心を砕いておいてやるか。あそこの平地を見ておけ」
イケ「な、なにをするt」ッドオオオォォォォン
戦士「ごほっげほっ……なんつー砂埃」
僧侶「こほ、こほ。何か、振ってきたような」
魔法「砂埃が晴れる……なにあの岩石」
イケ「……そこらの宿屋よりでかい」
勇者「どうだぁ? まぁだ決闘とやらをしたいかぁ?」
イケ「」プルプル
イケ「え……?」
勇者「来たければ来るが良い」
戦士「勇者がおかしくなった件」
勇者「汝は相変わらずな事よ」フゥ
勇者「雷のエレメンタルがいればこれで基本、全てのエレメンタルに対応できるというもの」
勇者「もっとも、邪神とやらはエレメンタルそのものは強くないようだがなぁ」
イケ「……ちょっと待て、降臨を阻止しにいくんじゃないのか?」
魔法「あ、この人の旅は地雷なので来ないほうがいいですよ」
イケ「当然だ……ここまでやられておめおめと引き下がれはしない」ガチャガチャ
僧侶「……凄い図ですね」
戦士「どう見ても勇者がお付きの戦士かなんかだろ」
魔法「でも一番強いのよねぇ……」
勇者「さぁてとっとと進むぞぉ」ガハハハ
勇者「ここが邪神を降臨させようとしている国かぁ?」
僧侶「そんなに北国という訳でもないのに雪が舞っていますね……」
勇者「儀式が進むと雪が降りだし、儀式完了と共に止むそうだ」
戦士「賢者情報だとしても具体的過ぎじゃないか」
勇者「これほどの邪神は初めてにせよ、こういった者の降臨は今までにあったようだなぁ」
魔法「その話は少し聞いた事があるわ……けれども詳細ははっきりと分かっていないのに。私も賢者の塔に行こうかしら」
イケ「平然と話しているがお前ら賢者の塔に行ったのか……実在するんだな」
魔法「こんな物騒な所で待つなんてできないわ」
僧侶「ど、同感です」
イケ「邪神に対抗できる武器があるのか?」
戦士「ただ単に凄い武器ってだけだろうな」
イケ「……え、マジで?」
勇者「さぁ往くぞぉ」ガハハハ
勇者「ガハハハ! 見よこのどす黒い輝き!」
戦士「前の斧より物騒だな……」
勇者「死神の斧というものらしいなぁ」ブォンブォン
勇者「さぁて……邪神が降ってくるのを待つとするかぁ」
僧侶「その間、ずっと野営でしょうか?」
魔法「普通に宿に泊まれそうよ」
魔法「蟻一匹入れない防衛線を張っている分、中に居る人間には警戒をしていないみたいだわ」
戦士「どんだけ中にいる人間に警戒心が無いのやら」
勇者「それだけ守りがしっかりとしておるのだ。でなくては連合軍の猛攻など耐えられるわけがなかろう」
イケ「なあ……まさか邪神降臨までここにいる気か?」
勇者「あぁ~? 当然ではないかぁ。でなくてはわざわざこんな所におらんわ」
魔法「まあ……普通に買物もできるし特別不便はないわね」
戦士「お、おい……雪が!」
イケ「止んだ……儀式が……」
魔法「……遂に明日の夜明けに」ゴクリ
勇者「……」フルフル
僧侶「勇者様……?」
勇者「ガハハハハ! やぁっとかぁぁ! 待ちくたびれたぞぉ!」ズガズガ
勇者「汝らは夜明けの二時間前に起きろ。準備さえ済めば帰ろうと構わんわ!」ガハハハハ
僧侶「実際、ここまで来るのに勇者様一人で十分でしたからね」
魔法「……恐らく彼の考えは私達のエレメンタルの障壁を張る事ね」
イケ「ああ……そういう事か」
戦士「いくらなんでもあたしらだけじゃ足らなくないか?」
魔法「火、光、風、雷、土……確かにもう少し欲しいところはあるけれども」
魔法「ほぼあらゆる攻撃に対抗できるようになるわ」
イケ「若干壁が薄い箇所もあるが、これだけ貼れるとなると相当強固なものになるだろうな」
魔法「これで全員分の障壁は張り終えましたが……」
勇者「汝らはさっさと避難するがいい。ここからは我のオンステージだからなぁ」ガハハハハ
イケ「いや、俺らも残る」
勇者「構わんが死んでも恨むでないぞ」
戦士「隙あらばあたしらも援護をするよ」
勇者「あまりうろつくでないぞ、踏み潰すぞ」ドズドズ
イケ「お前がいる所で接近戦なんかしねーよ」
勇者「やれやれ……待ちくたびれたわい」
邪神「…」
イケ「男の天使……?」
僧侶「昔の絵画にありそうですね……」
邪神「гджмптъ…」
戦士「なんだ……魔法詠唱?」
魔法「み、皆逃げて!」
邪神「эюфьбё…」カッ
兵士A「な、なんだあの爆発は!」
兵士B「まさか邪神が……馬鹿な!」
兵士C「退避! 退避ぃ!」
兵士D「終わりだ……世界は終わったんだ」
邪神「…」
邪神「джз…」
勇者「ゴハハハハ!! どぉしたぁ! 我はまだ生きておるぞぉ!」ゴァ
邪神「! прсшч…」
勇者「遅ーーい!」ブォン
邪神「?!」バス
僧侶「ここが現世でしたら……」
戦士「むしろなんで生きているんだ」
イケ「俺達だけだったら死んでいたさ。あのデカブツのお陰で威力が軽減されたんだ」
戦士「ああ……なるほど。それにしても」
邪神「йлмеа…шщхы…ярутъэ…」ドゥンドゥンドゥン
勇者「ガーッハッハッハッハ! 効かん効かん!」ドザドザドザ
戦士「どっちが邪神だ……」
魔法「大きいほう」
邪神「…」ガッ
邪神「ъивд…」ヒュバ
勇者「ガハハハ! 何時になったら我に……」バシュゥ
勇者「……」ポタポタ
戦士「邪神すげーー!」
僧侶「勇者様の斧を受け止めるだけでなく、傷まで負わすなんて」
魔法「なんて強さなの……」
イケ「気持ちは分かるが力関係の立場が変わっているぞ」
勇者「ゴハハハハ! やはり戦闘というものはこうでなくてはなぁ!!」ブォブォン
邪神「ежйф…」スッスッ
勇者「そぉうら下から来るぞぉ!」ブォ
邪神「?!」ドゴォ
僧侶「斧を振り回しながら隆起した……」
戦士「普通、集中力が問われるってのに……」
勇者「ガハハハハ! 汝の爆発は効かんぞぉ!」ォォォン
勇者「そんなに遠距離戦がお望みなら期待に応えてくれよう!」ガハハハ
勇者「さあぁ受け止めてみるがいい」スッ
邪神「?」フッ
戦士「でけぇ岩……」
魔法「ちょっとした要塞の大き」ドッ
勇者「ガハハハハ! 邪神は何処に行ったぁ?」ドズドズ
邪神「мкиспн…」
勇者「おぉ~?」バスン
勇者「先の一撃を翼で受け止め、我の左腕を取ったか」ニマッ
勇者「だが翼が折れてしまっては不利ではないかぁ?」
戦士「げほごほげほ、どうなごほ」
魔法「勇者の左腕が切り落とされた……僧侶!」
僧侶「ここからでは回復が届きません……」
イケ「だがこれ以上近くに行ってはあいつのエレメンタルに巻き込まれる……」
勇者「んぁ~? 肉弾戦で我に勝てるのかぁ?」ガッガッ
勇者「遅い遅い弱い弱い」ガッガッ ブォン
邪神「де…」ガツ
勇者「左腕を落として好機とでも思うたかぁ?」ヒョイ
勇者「こんなもの我のエレメンタルの前では」ウジュジュ
勇者「かすり傷よぉ」グッパーグッパー
勇者「あぁ~? 逃げるのか?」
勇者「折れた翼でどこまで逃げられるだろうか?」ニマニマ
邪神「…」ドス ドス
戦士「逃げる邪神に容赦の無い投石……」
僧侶「それも1mくらいの大きさの……」
魔法「外道ね……」
イケ「相手を考えると正しいんだが同情を禁じえない」
勇者「ふん、随分と長い詠唱だな」ドズドズ
邪神「ёфцуэъятухш…」
魔法「あ、終わった」
僧侶「どうかされたのですか?」
魔法「今唱えているあれ、周囲を腐敗させるものよ」
戦士「範囲は?」
魔法「直径1km。呪術みたいなもので解呪されない限り浸食し続けるわ」
邪神「бёзнмзх…」カッ
勇者「下らん事を」ドロドロォ
勇者「腐敗の力と我の大地の力、どちらが強いか試してぇくれぇぇうぅぅぁ」ドロドロォ
僧侶「勇者様の体が溶ける様に!」
戦士「おいおいやべえ!」
イケ「逃げるぞ!」
邪神「?!」
勇者「ふふん、我のエレメンタルである土とは定形と水のような不定形な力を併せ持つ」ブンブン
勇者「細かい粒の集まりによる不定形ではあるがこの程度の腐敗であらば」ドズドズ
勇者「形を維持する事など難しい事ではないのだぁ!」ドズン
邪神「…」
勇者「んん~どぉしたぁ? 予想外であったかぁ?」
勇者「町にまで浸食する前に汝を倒して止めなくてはなぁ」ドスドス
邪神「фуньъ…」バン
勇者「ガハハハ! ネタ切れかぁ? だが我は容赦はせんぞぉ!」ブォンブォン
邪神「ющ…」ガッブシュッ
邪神「юэчтфпнк…」ドクドク
勇者「邪神という割にはしょうもない弱さだな」
邪神「нлдбгжи…」
勇者「待たされた割には拍子抜けするわ」ズォ
邪神「жейчю…」カッ
勇者「ふーむぅ」バスン
勇者「随分と長い詠唱だったがそれでも左腕一本の犠牲で防げる威力ではなぁ」ブォン
邪神「яэ…!」ボフッ
勇者「ぐちゃぐちゃでは治りも遅いから面倒な事よ」グチググ
邪神「жейнйр…」
勇者「よう口の回る奴だわ」ブォン
邪神「шх…」バス
勇者「ようやっと指が動くようになったか」
勇者「ふふん、これで全力で薙ぎ払えるわ」ズォォ
勇者「跪け虫けら。踏み潰すぞ」
邪神「фсш…ькб…」
勇者「飽くまで抵抗か」フー
勇者「ふんっ」ブォォ
僧侶「わ、私一人ではとても!」
魔法「やはり私達だけではとても……」
イケ「この手はエレメンタルを注げば強引に解呪できなくもないが……この規模では」
勇者「なんじゃ、汝らはまだおったのか」フー
戦士「勇者?! 邪神はどうした!」
勇者「あんなものとっくに終わっておるわ」ピ
邪神「」グシャァ ジュゥゥ
イケ「ミンチとは言え蘇ったりしないよな」
勇者「あんなもの蘇ったところでさして脅威でもあるまい」
魔法「一人でこれほどのものを解呪するつもり?」
勇者「少々骨は折れるができん事ではないわ。最も汝らがおるのであればより楽になる」
イケ「楽とか……そういうレベルなのか」
勇者「フフン、我が此れしきで困ると思うてか」ゴォォォォ
勇者「そぅら汝らも清浄なエレメンタルの力を流し込まんか」ォォォォ
勇者「とっとと砂漠に戻りたいが、国王に会わんとならんからなぁ」ォォォォ
魔法「これからどうするの?」
勇者「あぁ~? とっとと逃げるに決まっておるだろう」
勇者「この国の連中はおるのだぞぉ。もうしばらくしたら静か過ぎるとここに雪崩れ込んでくるであろう」
戦士「この辺りだと……そこに隠し通路があるのか」
僧侶「い、急ぎましょうよ!」
勇者「まー我としては来る連中を薙ぎ払ってやっても……」
イケ「こっちが共犯にされて困るんだよ」
戦士「邪神も倒しちまったし……あたしら何もしてねーし」
魔法「イケメンはどうするの?」
イケ「そのまま戻るだけだ……むざむざ役に立たなかった事を宣伝したくもない」
勇者「まー所詮、汝らはエレメンタルの障壁が目的だったかなぁ」ゴフー
魔法「そうだろうとは思ったわ」
戦士「むしろそれすら本当に必要だったか」
勇者「ガハハハ! 流石の我も土の障壁だけでは初めの爆撃で死んでいたであろうなぁ!」
勇者「下らん話などいらーん。約束通りこの国で奉っておる英雄の斧は頂いていくぞぉ」
戦士(報酬それかよ)
魔法(分かりやすいけど結構な代物よね)
僧侶(こういった際に宝物を要求するというのもあれですね……)
国王「あ、いや、その」
勇者「あぁ~? 約束を違えるのか?」ズォ
兵士達「」ビクッ
勇者「ふん、分かればいいのだ」
戦士(何気に今の凄い事をしているよな)
魔法(でも誰も逆らえないわ)
僧侶(ほぼ単身で邪神を討った方ですからね)
勇者「ふむぅー確かに英雄の斧は頂いたぞぉ」ガハハハハ
戦士(斧三本も担いで帰るのか)
勇者「どうもせんわ。領地に帰って適当に暮らすだけだわ」
魔法「そう……寂しくなるわ」
勇者「何時汝らと親密になったというのだ」フゥ
勇者「最も、何かが起こればまた出てくるであろう」
僧侶「せめてこの後のパーティだけでも……」
勇者「我が出ては踏み潰してしまうではないか」ガハハハ
戦士「……凄い光景だ」
魔法「山が遠ざかっていく……」
僧侶「さようならぁ! 勇者様ー! お元気でー!」ブンブン
戦士「呆気なかったな」
魔法「私達空気だったもの」
戦士A「お、おいあれが噂の勇者か!」
僧侶「そ、そうですが一体……」
勇者A「勅命は失敗したがあれと一騎打ちで勝てば名が上がるってやつだ!」
魔法A「どん臭そうな井出達、どうせあんたらが主力だったんだろ」
勇者B「行くぞ! 先を越されるな!」
騎士A「おお!」
魔法「全くだ……」
ドッゴオオオォォォン ウワーギャー ガハハハハハ
僧侶「あ、ああ……」
勇者C「先を越されたが負けたようだな! 俺達も続けぇ!」
戦士「馬鹿だ……こいつら馬鹿だ……」
ドオオオォォォン ゴハハハハハハ ヨワイヨワイワァ
その後○○国より砂漠に至る道に現れた巨大な岩石群を邪神の道と呼ばれるようになったとかならないとか
国王「行け勇者よ! 仲間と共に使命を果たすのだ!」 完
これは素直に面白かった
勇者無双だったがこのくらいの短さならアリ
あとsageじゃ落ちないが勿体ないぞ
乙
巨漢な男のつもりだったけど
デカトン様のイメージが払拭できなかったどころかそんな感じになってしまった
反省はしていない