八幡「うわ、マジで来やがった……」
いろは「えー、なんですか先輩その反応。せっかくかわいい後輩がかわいくやってきてあげたのに」
八幡「お前のは作り物だから警戒してんだよ。迂闊に気を許して何かあってからじゃ遅いからな」
いろは「かわいいのは否定しないんですね」
八幡「基本的に嘘は吐かない性分なもんで」
いろは「……口説いてるんですか?」
八幡「結婚してください」
いろは「ごめんなさいガチで無理です」ペコ
八幡「早速フラれちゃったよ…… いや、一応言っとくけど普通に冗談だから」
いろは「知ってますよー。先輩から本気のオーラ微塵も感じなかったですし」
八幡「すげぇなお前、オーラとか分かるタイプの人間なのか」
いろは「先輩はわからないんですか? そういうの」
八幡「そういうのってどういうのだよ…… なに? 人から炎みたいなの出ちゃってるの?」
いろは「たまーに出てるの見えますよ? えっと、例えばほら、こうやってじーっと見てると……」ジーー
八幡「…………近い近いやめろ近い」
いろは「つれないですねーもう」
八幡「てか普通に嘘だろ。いつからここは異能バトルが起こる日常系になったんだ」
いろは「……ときどき先輩って意味わかんないこと言い始めますよね。まぁいいですけどー」
八幡「なんで俺が先に変なこと言い出したみたいな空気になってるんですかね……」
いろは「にしても先輩、さっきから気になってたんですけど部屋にコタツ置いたんですね」
八幡「温もりが欲しくてな。こんなクソ寒い時期にエアコンぶっ壊れるし。あー暖かい」
いろは「ネコみたいに丸まってますねー。あ、ネコと言ってもノラですけど」
八幡「野良じゃ炬燵になんか入れんだろ。飼い猫だよ飼い猫」
いろは「はぁ。じゃあ先輩、誰かに飼われてるってことですか?」
八幡「ヒモになれるんなら本望だな」
いろは「ふーん……先輩はそんな人生でもいいと」
八幡「平凡な水準の暮らしが働かずにできるならそれ以上の幸せはないだろ」
いろは「ほんと甲斐性なしですねー」
八幡「まぁ、夢見るだけなら自由だし。別に見たこと自体に罪はない」
いろは「見れたなら、叶えられるかもしれないですよ?」
八幡「……無理だろ普通に考えて。んな理想を押し付けられる相手が画面の中以外のどこにいるんだって話ね」
いろは「………」
いろは「…………目の前に、とか」
八幡「………」
いろは「………」
八幡「もう一回いい?」
いろは「やです」
八幡「油断して聞いてなかった。あー、理想の結婚相手なら目の前に……がなんだって?」
いろは「余裕で聞いてるしばっちり解釈してるじゃないですか! なんですかそのやらしい目! つぶしますよ!」
八幡「らめぇ! そんなことしたらチャームポイントが……じゃなくて、さっきはガチで断られたのになんでだよ。理由でもあんのか?」
いろは「り、理由っていうか、さっきはその……まだルートが開放されてなかった的なやつでして」
八幡「ルートって…… なに、ゲームなの?」
いろは「恋愛もののだとよくあるから先輩に有効、って話を中二の先輩から聞きました」
八幡「ろくでもねぇ知識吹き込むバーローだなあいつ……」
いろは「………」
八幡「………」
いろは「……わたしじゃ、ダメですか?」
八幡「………」
八幡「を はやっぱ無理じゃね?」
いろは「んっふっふ。またわたしの勝ちですね」
おわり