チノ父「ココアくん、おはよう」
ココア「おはようございます!」
チノ父「悪いんだけど、チノを起こしてきてもらえないかな?」
ココア「チノちゃん、まだ起きてないんですか?」
チノ父「そうみたいでね。頼めるかな」
ココア「分かりました!」
ココア(昨日は遅くまで一緒に映画見てたっけ。もしかしてそのせい?)
ココア「チノちゃーん?」コンコン
ココア「……」
ココア(……返事はなし)
ココア「入っちゃえ」ガチャッ
チノ「すぅ…………すぅ…………」
ココア「……かわいい」
ココア(そういえばいつもは私が起こしてもらってるもんね)
ココア「……これからはチノちゃんより早く起きよう、うん」
ココア「っと、そんなことより。チノちゃん、朝だよ~」ユサユサ
チノ「んぅ…………」
ココア「学校遅刻しちゃうよ~」ユサユサ
チノ「ん……」ムクリ
チノ「……」ボー…
ココア「あれ?もしかしてまだ寝てる?おーい」
チノ「あ…………起こしに来てくれたんですか……」ウトウト
ココア「うん。もう大丈夫?」
チノ「はい……ありがとうございます、お母さん」ウトウト
ココア「えっ?」
チノ「早く準備しないと……」ウトウト
ココア「チノちゃん……?」
ココア「っていうことがあったんだ」
千夜「そうなの……」
ココア「どう思う?」
千夜「寝惚けていたみたいだし、ただの言い間違いじゃないかしら。ほら、先生を『お母さん』って呼んじゃうみたいな」
ココア「私もそうだと思うんだけど……」
千夜「何か気になることがあるの?」
千夜「それは……そうでしょうね。まだ中学生だもの」
ココア「だよね……」
ココア「……」
千夜「ココアちゃん?」
ココア「……私が何かしてあげられないかな」
千夜「ココアちゃん……」
ココア「チノちゃんの寂しさをなんとかしてあげられないかな、と思って。私に何かできることがあるんじゃないかな……」
ココア「……そう、だよね」
千夜「ココアちゃんのその気持ちだけで、チノちゃんは充分に嬉しいわよ」
ココア「そうかな……」
千夜「ええ、そうよ。いつかチノちゃんが頼ってくれるときが来るかもしれない。そのとき、力になってあげたらいいのよ」
ココア「……うん、わかった」
千夜「ふふ……それよりココアちゃん、来週のテストのことなんだけど……」
ココア「うん、じゃあね!」
ココア「……」
ココア(千夜ちゃんはああ言ってたけど……)
ココア(それでも、私にもできることがきっと……)
リゼ「あれ、ココア?」
ココア「あ、リゼちゃんにシャロちゃん」
シャロ「ココアも学校帰り?」
ココア「うん。二人も?」
リゼ「たまたま合流してな。ココア一人か?」
ココア「今ちょうど千夜ちゃんと別れたところで…………ねぇ、ちょっといいかな?」
リゼ「お母さんっぽいこと?」
シャロ「なんで急にそんなこと聞くのよ?」
ココア「えっ、いや、ちょっといろいろあって」
リゼ(……?)
シャロ(なんか怪しいわね……)
ココア「もっとこう、子供とのスキンシップっていうか……」
シャロ「一緒に料理したり?」
ココア「そ、そう!そういう感じ!」
リゼ「一緒に風呂に入ったり……はちょっとキツいか」
シャロ「小中学生までならなんとか平気じゃないですか?」
ココア「なるほど……つまり、一緒に何かをすればいいんだね!」
リゼ「ココアがそれを知ってどうするんだ?」
ココア「ま、まあまあ!とにかくありがとう!」ダッ
リゼ「あっ……一緒に行こうと思ったのに」
シャロ「それにしてもどうしたんですかね、『お母さんっぽいこと』がどうとか……」
リゼ「さあな…………
リゼ(……いや、待てよ)
シャロ(もしかしてさっきの質問……)
リゼ「まさか、ココアのやつ…………」
シャロ「まさかココア……」
チノ「おかえりなさい。あ、ココアさん」
ココア「どうしたの?」
チノ「その、今朝はありがとうございました。起こしていただいて」
ココア「そのくらい気にしないで!もっとこう、私をお母さんだと思って頼って!」
チノ「? はあ……」
ココア「じゃあ私、着替えてくるね!」
チノ「はい」
チノ「リゼさん?どうしたんですか、そんなに慌てて」
リゼ「ココアはいるか?」
チノ「さっき帰ってきたところですよ。今は着替えにいってます」
リゼ「そうか……ちょうどよかった」
チノ「何かあったんですか?」
リゼ「……驚かないで聞いてくれよ?実は……」
チノ「実は?」
リゼ「ココアのやつ、妊娠してるみたいなんだ」
チノ「……………………」
リゼ「おい!声が大きいぞ!」
チノ「はっ、すいません……で、でもそれ、本当なんですか!?だいたい相手は誰なんです!?」
リゼ「それがわからないんだ……」
チノ「わからないって……じゃあどうして妊娠してるなんて言ったんですか?」
リゼ「ココアがいきなり『お母さんっぽいことって何か』と尋ねてきたんだ。そんなことをいきなり聞いてくるなんて変すぎるだろ?」
チノ「そ、それだけで判断するのは早計では……」
チノ「隠し事、ですか……」
リゼ「何か気づいたことはないか?最近のココアの言動で変なこととか」
チノ「そう言われても、ココアさんは常に変ですから…………あ」
リゼ「どうした!?」
チノ「え、いや、でも……そんなはず…………」
リゼ「チノ!」
チノ「…………つい、さっき。ココアさんが帰ってきたとき…………」
チノ「……『私をお母さんだと思って頼ってほしい』、と言われました」
リゼ「ココアがチノに?いったい……………………まさか」
チノ「そ、そんな…………」
リゼ「ココアの相手は…………チノの親父さん……?」
チノ「そもそもココアさんはまだ高校生ですよ!?お母さんだなんて早すぎます!」
リゼ「だが、ココアはもう16歳になっているはずだ。つまり、法律上、問題はない……」
チノ「何言ってるんですかリゼさん!問題大ありです!!だいたい、お父さんがそんな若い人を選ぶとは……」
リゼ「し、しかし……!じゃあココアの質問とチノへの言葉はなんだったっていうんだ!?」
チノ「そ、それは……」
ココア「あれ?いつの間にかリゼちゃんも来てる」
チノ・リゼ「」ビクッ
リゼ「い、いや、なんでもないんだ、なんでも……」
ココア「リゼちゃん、汗がすごいよ?」
リゼ「は、走ってきたからな!汗くらいかくさ!…………私も着替えてくる!!」ダッ
ココア「いってらっしゃーい」
チノ「…………」
チノ(まさか……本当にそんなことがあるわけ………………でも)
ココア『チノちゃんは私の妹だから!』
ココア『チ~ノちゃんっ、お姉ちゃんと遊ぼう?』
チノ(いつもしつこいくらい私に姉アピールをしてくるココアさんが、あんなことを言う理由が……私にはわからない)
チノ「あ……」
ココア「大丈夫?顔色悪いよ?」
チノ「い、いえ……なんでもありません」
ココア「なんでもないようには見えないよ!休んでたほうがいいよ、お店は私がいるから」
チノ「だ、大丈夫ですから……」
ココア「無理しないで!もっと私を頼って」
チノ「っ……」
ココア『私をお母さんだと思って頼って!』
チノ「放っておいてください!!」
ココア「…………え」
チノ「あ……」
チノ「ち、違うんです、ココアさん……」
ココア「でもチノちゃん、本当に疲れてるみたいだし休憩したほうがいいよ。お店は私一人で平気だから」
チノ「…………わかりました。後はお願いします」
ココア「うん、任せて」ニコッ
チノ「っ……!」
リゼ「着替え終わったけど……いったいどんな顔でココアと接すれば……でもいつまでもチノ一人に任せっきりにするわけにも……」
チノ「……」スタスタ
リゼ「あれ、チノ?店番は……」
リゼ「お、おい。どこに行くんだ?」
チノ「……」ダッ
リゼ「チノ!?…………どうしちゃったんだ?」
リゼ「心配だけど……ココア一人にお店を任せちゃうのはマズいし……」
チノ父「リゼくん」
リゼ「わっ!?」ビクッ
チノ父「お店は私も見てるから。チノのこと、頼んでいいかい?」
リゼ「あ……」
リゼ(ココアと二人きりになりたいのか……って、そんなこと考えてるときじゃないだろ!)
リゼ「わかりました。追いかけます」
チノ父「よろしく頼む」
リゼ「はい!」ダッ
ティッピー「……ワシもチノを追いかけたいんじゃが」
チノ父「親父はココアくんのところに」
ティッピー「やれやれ……仕方ないのぉ」
リゼ「見つけたぞ、チノ」
チノ「リゼさん……どうしてここに」
リゼ「悩んだチノが向かうとしたら千夜のいる甘兎庵か、シャロのいるここのどっちかだと思ってな」
チノ「そういう意味で聞いたわけでは……」
リゼ「とにかく。詳しく話せ。そのほうがスッキリするぞ?」
チノ「……」
シャロ「チノちゃんお待たせ……リゼ先輩!?」
リゼ「シャロ。今はバイト中じゃないのか?」
シャロ「ちょうど交代時間だったので。チノちゃんの話を聞いてあげるつもりだったんです」
シャロ「えっと、カモミールが定番だとは思いますけど……冷たいレモンバームティーはどうでしょう?頭がスッキリしますし」
リゼ「じゃあそれを三つと、あとクッキーも頼もう。今日は私の奢りだ」
チノ「リゼさん……」
シャロ「わ、私の分はいいですよ!」
リゼ「遠慮するなって。すいませーん」
チノ「……それで、ココアさんに言われるまま私は休憩をいただいて」
リゼ「ここに来た、と」
チノ「」コクン
シャロ「そんなことが……」
チノ「そ、そんな……リゼさんのせいなんかじゃないです!」
リゼ「……ありがとう。それにしてもどうしたものか……」
シャロ「あれだけチノちゃんに姉扱いしてもらいたがってたココアが、急にお母さんがどうとか言い出すってことは……」
リゼ「十中八九、チノの親父さんとできてるはずだ。でも、そんな素振りをチノは見たことがない……」
チノ「ココアさんと父が話に花を咲かせてるのも見たことありません。私に隠していた可能性もありますが……」
シャロ「でも隠していたとして、ココアが今日あんなことを話し始めたってことは……」
リゼ「ま、まさか……もう再婚の話が!?」
チノ「そ、そんな……!!」
リゼ「……シャロ、こんな言葉を聞いたことはないか? 『愛に年の差なんて関係ない』」
シャロ「そ、そうは言いましても娘とほとんど年の変わらない子を奥さんにするのは、ちょっと不自然じゃ。というかココアはまだ高校生ですよ?」
チノ「……」
リゼ「親父さん、あんな顔してそんな性癖が……」
シャロ「せ、先輩!まだ決まったわけじゃないんですから」
リゼ「それはそうだが……もし本当だった場合のことも考えておく必要はあるだろう」
シャロ「で、でも当人同士で話が進んでしまっている以上、私達にできることなんて……」
リゼ「だけどココアを説得すればあるいは……」
チノ「ま、待ってください!」
シャロ「チノちゃん?」
チノ「……父とココアさんが納得しているなら、私は別に……」
シャロ「えっ!?」
リゼ「本当にいいのか!?ココアを『お母さん』と呼ぶことになっても!!」
チノ「そ、そのことに納得したわけではありませんが……。それとはまた違う話です」
リゼ「違う話?」
チノ「分かってはいたんです。母が亡くなって、父がいつかは新しい人を見つけるんじゃないかって……」
チノ「新しく母ができるのを受け入れる覚悟ができていたわけではありませんが……父が幸せにしたいと思った人なら、私もその人のことを好きになれるように努力しよう。そう考えていました」
リゼ「チノ……」
チノ「涙が……止まりません…………」ポロポロ
シャロ「チノちゃん……」ギュッ
チノ「シャロさん……!」ギュッ
リゼ「……確かに、最後には受け入れなくちゃいけなくなるかもしれない。でもな、チノ」
リゼ「お前がそこまで思い悩むことなんて、誰も望んでないんだ」ナデナデ
チノ「リゼさん……」
リゼ「親父さんも、ココアも、チノのことを一番大切に考えてる。傍から見てる私にだって、それくらい分かる」
リゼ「だからさ。まずは三人で話し合うことから始めよう。チノの気持ちを、しっかり二人に伝えるんだ」
チノ「私の、気持ちを……」
千夜「何の話をしてるの?」
リゼ「わっ!」
シャロ「ち、千夜!?なんでここに……」
千夜「シャロちゃんのお迎え。帰れなくて困ってるんじゃないかと思って」
シャロ「はい?……あ」
ザー ザー
チノ「雨が……」
リゼ「話に夢中で気づかなかったな……」
千夜「二人とも、ラビットハウスはいいの?」
リゼ「あ、ああ、ココアとチノの親父さんがいるから大丈夫だとは思うけど」
千夜「そう?でも帰るなら今のうちだと思うわ。どんどん強くなってきてるから」
リゼ「すまない、恩に着る」
チノ「千夜さん、ありがとうございます」
千夜「どういたしまして」
リゼ「それじゃシャロ、結果は後で報告する」
シャロ「あ、はい。チノちゃん、頑張ってね」
チノ「はい。シャロさんもありがとうございました」ペコッ
千夜「じゃあ、私達も帰りましょうか」
シャロ「そうね……って、私の傘は?」
千夜「ないわよ?今リゼちゃん達に貸しちゃったから」
シャロ「え!?」
シャロ「そ、そういうことね」
シャロ(どうせならリゼ先輩と……って、それを今言ってもしょうがないか)
シャロ「……ありがと」
千夜「気にしないで。それより、さっき何の話をしてたの?」
シャロ「それは……」
シャロ(あんまり言いふらしていいことではないけど……でも、千夜ならココアから何か聞いてるかもしれないし……)
シャロ「実は……」
リゼ「チノ、もう少し寄らないと濡れるぞ?」
チノ「……あ。は、はい」
リゼ「……緊張するか?」
チノ「……はい」
リゼ「お守りに、私のモデルガンいるか?」
チノ「そ、それは結構です!……その、なんて話したらいいか、わからなくて」
リゼ「……そっか」
チノ「先ほどから、自分の気持ちについて考えてるんですが……なんだかまとまらないんです」
リゼ「別にまとめる必要なんかないだろ」
チノ「えっ……?」
チノ「そ、そんなこと……」
リゼ「隠す必要なんてないさ。チノがココアのこと放っておけないほど大好きなのは知ってる」
チノ「……///」
リゼ「けどな?今、ココアはココアなりに、チノの母親になるために決意を固めてるはずだ。今回くらい、それに頼ってもいいんじゃないか?」
チノ「頼る……」
リゼ「本当に家族になるんだったら、助け合いくらい当たり前だろ? だから今回は、チノがココアを散々悩ませてやる番だ。な?」
リゼ(なんて、な。普段ココアが迷惑かけてるんだ。たまにチノが甘えたって、罰は当たらないだろ)
リゼ「うん?」
チノ「お守り、やっぱりお借りしてもいいですか?」
リゼ「ああ、もちろん!」
リゼ(とはいえ、その前にココアに直接確かめておいたほうがいいな。万が一もあるし)
シャロ「そ、それ本当?」
千夜「ええ、ココアちゃんから直接聞いたことだもの」
シャロ(わ、私達……とんでもない勘違いを……!)
シャロ「と、とにかくリゼ先輩とチノちゃんに早くこのことを……」
シャロ「はあ!?どうしてよ!」
千夜「せっかくチノちゃんが、自分の気持ちをココアちゃんに明かす決意を固めたんでしょう?」
千夜「あのチノちゃんがココアちゃんに自分の気持ちをぶつける。 二人のためにも、これはいい機会じゃないかしら」
シャロ「……」
千夜「シャロちゃん?」
シャロ「じゃあ私を止めたのは二人を思ってのことで、けっして『このままにしておけば面白いことになりそう』とか、邪な考えがあったわけじゃないのね?」
千夜「……」
シャロ「……」
千夜「……さ、シャロちゃん。急いで帰らないと風邪引くわ?」
シャロ(こ、こいつぅ……!)
リゼ「戻ったぞ」
ココア「あ……」
チノ父「おかえり」
チノ「ただいま……」
リゼ(ココアと親父さん……二人で店番してたのか)
ココア「二人とも、大丈夫だった?傘持っていってあげたかったんだけど、どこにいるかわからなかったし……」
リゼ「あ、ああ。たまたま千夜に会ってな。傘を貸してもらえたんだ」
ココア「そっか、よかった」
リゼ「それより……ココア」
ココア「?」
リゼ「その……チノのことなんだが」ヒソヒソ
ココア「チノちゃんのこと?」
リゼ「だから、その、母親が……」ヒソヒソ
ココア「えへへ……私がチノちゃんのためにどこまでできるかは分からないけど」ヒソヒソ
リゼ「! そうか……」
リゼ(まだ少し疑いの余地はあったが……確定だな)
リゼ「チノ、作戦実行だ」ボソッ
チノ「は、はい……!」ゴクリ
ココア「どうしたの?」
リゼ「いや、なんでもない。それよりココア、店番疲れただろ?交代するよ」
ココア「え?いいよ、別に」
リゼ「遠慮するなって。ほらチノ、ココアも連れてけ」
チノ「わかりました。さ、ココアさん来てください」グイッ
ココア「え? え?」ズルズル
ココア「う、うん」
チノ「……」
ココア「……あ、あの。何かあったの?」
チノ「…………ココアさん、私に何か大事なことを隠してませんか?」
ココア「え?」
ココア(隠し事……大事なこと?)
ココア「ご、ごめん、何のことかわからないんだけど」
チノ「……」ジー
ココア(う……チノちゃんすごい睨んでる)
ココア(でも隠してる大事なことなんて…………あっ)
ココア(もしかして……一昨日チノちゃんのデザートを、気付かずに私が食べちゃったこと!?)
ココア「……お父さんから聞いた?」
チノ「! ……ということは本当なんですね」
ココア「う……はい」
チノ(……本当に、ココアさんとお父さんが…………)
チノ「どうして、言ってくれなかったんですか」
ココア「だ、だって、チノちゃんに怒られると思って……」
チノ「知ったら、私が怒ると思ったんですか?」
ココア「……怒るでしょ?」
チノ「怒りませんよ」
ココア「ほ、本当!?」
ココア(前にチノちゃんのお菓子を食べちゃったときは、一日口をきいてもらえなかった気がしたんだけど……)
ココア「チノちゃん……」
ココア(そうだよね……食べちゃうのは仕方ないけど、それを隠してるのは悪いことだよね)
ココア「ごめんね……今度からはちゃんと言うから」
チノ「え……?」
チノ(こ、今度?これ以上何があると…………はっ!?)
~~~~~~~~~~~
チノ父『チノ、報告があるんだ』
チノ『報告?』
ココア『うん。ほら、私のお腹触って?』
チノ『はあ……あの、これがどうしたんですか?』
ココア『実は~……ここに今、チノちゃんの妹がいます!』
~~~~~~~~~~~~~
チノ(そ、そんな……!!)ガクガク
ココア「ち、チノちゃん?」
ココア「え?うん、いつ(食べちゃう)かはわからないけど……」
チノ「そうですか……」ホッ
チノ(と、とりあえずよかった。しかし、こうなるのもきっと時間の問題……)
ココア「できればしないほうがいいってことは分かってるんだけど……。チノちゃんのためにも」
ココア(でも実際にお菓子を目の前にすると難しいというか……)
チノ(私のためにもしないほうがいい……?それってつまり、『私達の娘はあなた一人だよ』ということでしょうか……)
リゼ『親父さんも、ココアも、チノのことを一番大切に考えてる』
チノ「……」
チノ「いいえ、私の話も聞いてください」
ココア「へ?」
ココア(チノちゃんの話って……?)
チノ「その、これはココアさんと父の話ですから、私が口を出す権利がないことくらい分かってます」
ココア「?」
ココア(私とチノちゃんのお父さんの話?黙っててくれるっていう約束のことかな……)
チノ「私も最初は二人がそうすると決めたなら、黙って受け入れるつもりでした」
チノ「でもリゼさんとシャロさんが相談に乗ってくれて……自分の気持ちを正直にぶつけたほうがいいと」
ココア「……」
チノ(ココアさん……今まで見たことないくらい真面目な顔で聞いてくれてる)
ココア(チノちゃんが何の話をしてるかわからない)
チノ「私、この話を聞いたとき……思わず泣いてしまいました」
ココア「えっ!?」
ココア(そこまでショックを受けてたなんて……)
チノ「口では受け入れるなんて言っておきながら、私、全然納得してなかったんです」
チノ「ココアさんを『お母さん』と呼ぶことに抵抗があったとか、そういう話じゃなかったんです」
ココア(うん?)
ココア「チノちゃん?何の話を……」
チノ「私!ココアさんをお父さんに取られることに嫉妬してたんです!!」
ココア「えっ」
チノ「お願いですココアさん!お父さんと結婚なんて、しないでください!!」
ココア「えっ!?」
ガチャッ
リゼ「ありがとうございました、またお越しくださいませ!」
リゼ(ココアとチノ、遅いな……そろそろ戻ってきてもいいと思うんだけど)
チノ父「……お客さんも減ったね。後は任せても大丈夫かな?」
リゼ「はい。ココアとチノももうすぐ戻ってくると思いますし」
チノ父「じゃあ、よろしく頼むよ」
リゼ「…………あ、あの!」
チノ父「ん?」
リゼ「……」ゴクリ
リゼ(私だって……ココアより前からチノと一緒にいるんだ。チノの人生の上官として、手助けしてみせる!!)
チノ父「え?」
ティッピー(ん?何の話じゃ)
リゼ「自分といくつかしか年の変わらない人を母親と呼ばなきゃいけなくなるチノの気持ちを、少しは考えてほしいんだ!!」
チノ父「」
リゼ「た、確かにココアは若くて可愛い!けど、まだ高校生なんだ!結婚するのはもう少し待ってもいいんじゃないか!?」
チノ父「」
ティッピー「」
リゼ「……?」
バンッ
チノ「り、リゼさん!私達、とんでもない勘違いをしてたみたいです!!」
リゼ「え……」
コンコン
ココア「り、リゼちゃ~ん、いい加減出てこようよ~。というか私の部屋に閉じこもってどうするの……?」
チノ「そ、その、リゼさんは相談に乗ってくれただけじゃないですか。何も恥ずかしがることないですよ」
リゼ「う、うるさいっ/// 二人に私の気持ちがわかるか!」
ココア「そんなこと言わないでさ~……」
リゼ(先輩風吹かして、あんなに偉そうなこと言って……それが全部勘違いだったなんて……!!)
リゼ(だいたい今回の勘違いだって、私が思い込んでチノ達を巻き込んだ結果じゃないか!)
チノ「……しばらくあのままにしておいたほうがいいかもしれません」
ココア「そうだね。リゼちゃん、また後で来るからねー!」
チノ「シャロさんにも説明しなきゃいけませんね……」
ココア「いや~、まさかこんなことになってたなんて」
チノ「私が寝惚けて紛らわしいことを言ったせいですね。……ココアさんもすいませんでした」
ココア「え?なんで私に謝るの?」
ココア「そんなこと気にしてないよ~。だってチノちゃん、私のことが大好きなんだもんね?」
チノ「っ//////」
ココア「お父さんに嫉妬しちゃうほど好きなんだもんね?」ニコッ
チノ「そ、それは///」
ココア「今日は一緒にお風呂入って、一緒に寝ようね♪」ギュッ
チノ「ち、調子に乗らないでください!///」
チノ「さ、早くお店に戻りますよ!」スタスタ
ココア「ふふっ……はーい!」
……………………
…………………………………………
翠(青ブルマさん)「へぇ、そんなことがあったんですか」
千夜「リゼちゃん、しばらくチノちゃんのお父さんと顔を合わせられなかったらしいですよ」
翠「それはそれは……でも、何事もなく解決してよかったですね」
千夜「はい。しばらくはリゼちゃん弄りで退屈しなさそうってココアちゃんと話してたんです」
翠「ふふ、そうですか。それにしても……」
千夜「?」
翠「チノさん……ココアさんの年でも大丈夫ということは、私も大丈夫ということですね。いいことを聞きました」
千夜「えっ……?」
翠「ふふ……あ、このお茶美味しいですねぇ」
おしまい
おもしろかったです。
翠さーん!?
面白かったよ!
原作読まなきゃ…
とても良かった
こういうドタバタ大好きや!