女賞金稼ぎ「ジャーン!」キラッ
マスター「お、そのバッジは! 賞金稼ぎを名乗ることを認められたんだね!」
女賞金稼ぎ「そう、やっと試験をクリアできたの!」
女賞金稼ぎ「これからはこの銃でバンバン賞金首をやっつけて、賞金を稼ぎまくってやるわ!」クルクルッ
マスター「そしたら、うちの店でもガンガン飲んでくれよ!」
女賞金稼ぎ「まっかせて!」
女賞金稼ぎ(うわ、酒くさ……)
酔っ払い「特別サービスで、ベテランの俺がお前さんに賞金稼ぎについてレクチャーしてやろうか?」
酔っ払い「今なら一緒に酒飲んでくれるだけでいいぜぇ? もちろんおごってやるよ!」
女賞金稼ぎ「誰があんたみたいな飲んだくれに教わるもんですか! 結構よ!」
酔っ払い「つれないねえ……」
酔っ払い「だったら……一つだけ。賞金稼ぎは決して油断しちゃあいけねえぜ」
女賞金稼ぎ「分かってるわよ!」
――――
女賞金稼ぎ「待てーっ!」タタタッ
凶悪犯「ぐ……!」サッ
女賞金稼ぎ「無駄よ」パンッ!
凶悪犯「ぐあっ!」
女賞金稼ぎ「足を撃った……もう逃げられないわよ!」
凶悪犯「あぐあぁぁぁ……!」
女賞金稼ぎ(賞金稼ぎになって、いきなり50万Gの大物ゲット! やったわぁ!)
凶悪犯「……」ジリ…
女賞金稼ぎ「!」ハッ
酔っ払い『だったら……一つだけ。賞金稼ぎは決して油断しちゃあいけねえぜ』
凶悪犯「死ねえっ!」バッ
女賞金稼ぎ(ナイフ!)
女賞金稼ぎ「でやっ!」バキッ!
凶悪犯「ぐおおっ……」ドサッ…
女賞金稼ぎ(ナイフを隠し持ってたなんて……アドバイスがなかったら危なかったわ……)
各地に点在する≪犯罪者引き渡し所≫に連行し、賞金を受け取ることになる。
女賞金稼ぎ「……ここだわ」
女賞金稼ぎ「さ、来なさい!」グイッ
凶悪犯「ち、ちくしょう……」
女賞金稼ぎ「賞金首を捕まえたから、懸賞金をもらいたいんだけど」グイッ
凶悪犯「ぐえっ……!」
受付嬢「かしこまりました」
受付嬢「とりあえず、この犯罪者は預からせていただきます」ガシッ
凶悪犯「あぐっ!」
女賞金稼ぎ(すご……! やっぱり引き渡し所ともなると、受付からして只者じゃないのね)
受付嬢「まもなく査定人が参りますので、お茶を飲みつつ、あちらの席でお待ち下さい」
女賞金稼ぎ「はい」
女賞金稼ぎ「……」グビグビ
女賞金稼ぎ「……」
女賞金稼ぎ「……」イライラ
女賞金稼ぎ「……長い」
女賞金稼ぎ「ったく、いつまで待たせるのかしら! 話には聞いてたけどホントお役所仕事だわ!」
女賞金稼ぎ「……」
女賞金稼ぎ「……あっ」
受付嬢「お待たせいたしました」
受付嬢「順番になりましたので、あちらの応接室にお入り下さい」
女賞金稼ぎ「……待ちくたびれて帰るとこだったわよ!」
女賞金稼ぎ「ホントよ!」
査定人「今はあちらこちらで無法者がはびこっておりますから……申し訳ありません」
査定人「ではさっそく、賞金首に応じてお渡しする賞金額を申し上げます」
女賞金稼ぎ「待ってました!」ウキウキ
査定人「あなたには、賞金10万Gが支払われます」
女賞金稼ぎ「へ!?」
査定人「なんでしょう?」
女賞金稼ぎ「あいつの懸賞金は50万Gでしょ!?」
女賞金稼ぎ「あいつは、殺人に強盗に傷害、あらゆる犯罪をやってきた凶悪犯で」
女賞金稼ぎ「あたしも危うく殺されるとこだったんだから!」
女賞金稼ぎ「なのに、10万しか貰えないってどういうことよぉぉぉぉぉ!」
査定人「では、ご説明いたしましょう」
査定人「今回のケースですと、賞金首には足に銃創が一つ、さらに頭に打撲傷がありました」
査定人「これだけの重傷ですと、賞金額からざっと20万Gは引かせていただくことになります」
女賞金稼ぎ「な、なんですって……!」
査定人「当然でしょう。奴を取り調べるにあたって、治療するのはこちらなんですから」
女賞金稼ぎ「うう……」
査定人「これも緊急性が低いと判断されますので、マイナス10万」
査定人「さらに手数料諸々で10万ほど引かせていただくと……」
査定人「あなたにお渡しできるのは、50万マイナス40万で、10万Gとなるわけです」
査定人「ご納得いただけましたか?」
女賞金稼ぎ(こう表情を変えずに淡々と説明されると、反論する気も起きなくなるわ……)
女賞金稼ぎ「うう……わ、分かりま……」
女賞金稼ぎ「……!」
女賞金稼ぎ(ここだわ! こここそが、真の“油断しちゃいけないところ”なんだわ!)
女賞金稼ぎ(賞金稼ぎの勝負どころってのは“賞金を受け取る時”なんだわ!)
女賞金稼ぎ「納得できないわ!」ギロッ
査定人「!」
女賞金稼ぎ「どうして命がけで賞金首捕まえて、たった10万しかもらえないのよ!」
女賞金稼ぎ「納得できるわけがない!」
査定人「だから無理ですって……20万」
女賞金稼ぎ「せめて40万!」
査定人「……30万」
女賞金稼ぎ「いいえ、40万!」
査定人「こちらとしても基準があるんですから……30万!」
女賞金稼ぎ「……もう一声!」
査定人「……35万!」
女賞金稼ぎ「乗った!」ビシッ
査定人「うむむ……査定の段階でこんなに粘る賞金稼ぎなんてはじめてですよ」
査定人「分かりました……35万、お支払いしましょう」
女賞金稼ぎ「やったぁ!」
女賞金稼ぎ(15万も減っちゃったけど、10万だったことを考えると上出来よね)
査定人「では、賞金は別の場所で受け渡しますので、ついてきて下さい」
女賞金稼ぎ「分かったわ!」
査定人「申し訳ありませんが、万一のため、武装解除させていただきます」
査定人「手持ちの武器を係員にお預け下さい」
女賞金稼ぎ「あたしの愛銃、なくさないでよ!」
係員「たしかに預かりました。帰りにあちらのカウンターにお越し下さい」
査定人「ではこちらの部屋にどうぞ」
ギィィ…
女賞金稼ぎ「……?」
女賞金稼ぎ「薄暗くて、金庫なんてどこにもないじゃな――」
ガシッ!
女賞金稼ぎ「!?」
女賞金稼ぎ(なに!? 後ろからいきなり……!)
査定人「ククク……」
女賞金稼ぎ「え!? なんであんたが――」
係員「あいよ!」ガシッ
受付嬢「まんまとかかったわねぇ~、おバカさん」ガシッ
女賞金稼ぎ「んーっ! んーっ!」
女賞金稼ぎ(これしき……! なんとか体を動かして……!)
女賞金稼ぎ(あれ、体がしびれて……)
受付嬢「さっき飲ませたお茶に入れてた薬が効いてきたようね」
査定人「これでもう、こいつは煮るも焼くも自由ってわけだ」
凶悪犯「……」ズイッ
凶悪犯「このアマ、さっきはよくもやりやがったなぁ!」ドゴッ!
女賞金稼ぎ「うげえっ……!」
女賞金稼ぎ「げほっ、げほっ!」
女賞金稼ぎ(どういうこと……なの……)
女賞金稼ぎ(なんでさっき捕まえた凶悪犯が……自由の身に……)
査定人「35万……だっけか? あいにくお前にゃ1Gも支払うつもりはねえ!」
査定人「その代わり、たっぷりと別のもんを体にブチ込んでやるよォォォォォ!」
係員「へっへっへっへっへ……」
受付嬢「クスクスクス……」
凶悪犯「俺はとても笑えねえよ! この女にしてやられたんだからな!」
査定人「まあいいじゃねえか。俺らのおかげで助かったんだからよ」
査定人「もちろん、金は払えよな」
凶悪犯「わーってるよ! すぐ強盗で稼いでやる!」
査定人「それより今は、この女で楽しむ時だ。さっそく、俺のぶっといのを……」
女賞金稼ぎ「や、やめて……」
女賞金稼ぎ「やめてえええええええええっ!!!」
全員「!?」
酔っ払い「スキだらけだ」サッ
パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!
査定人「ぐあっ!」
係員「うげっ!」
受付嬢「ぎゃっ!」
凶悪犯「ぐおおっ!」
女賞金稼ぎ(な、なんて早撃ち……!)
係員「い、いてええ……」
受付嬢「……」ピクピク…
凶悪犯「ぐおおおっ……!」
酔っ払い「……大丈夫か?」
女賞金稼ぎ「え、ええ……」
酔っ払い「毒でしびれてんのか、ほれ解毒剤だ」
女賞金稼ぎ「うう……」グビッ
酔っ払い「だから油断すんなっつっただろ」
女賞金稼ぎ「ここは……あいつらはなんなの?」
酔っ払い「あの三人組はな……」
酔っ払い「即席の“ニセ犯罪者引き渡し所”を建てて、やってきた賞金稼ぎをぶっ殺したり」
酔っ払い「連れてこられた犯罪者を逃がしてやるって商売をしてる立派な賞金首だよ」
酔っ払い「三人合わせて、賞金額は200万G……だったか」
女賞金稼ぎ「ってことはあたし、賞金首に賞金首を届けに来ちゃってたわけ?」
酔っ払い「そういうことになるな」
女賞金稼ぎ「助けてくれて……ありがとう」
酔っ払い「なぁに、俺だってお前さんを利用したところがある」
酔っ払い「あいつら三人と正面切って戦ったら、ちょいと面倒な戦いになってただろうが」
酔っ払い「お前さんという獲物に夢中になってくれたから」
酔っ払い「こうして一網打尽にすることができたんだからな」
女賞金稼ぎ「ってことはあんた、あたしがこのニセ引き渡し所に入るところから」
女賞金稼ぎ「ずっと見てたってこと!?」
酔っ払い「ああ、お前さんがニセ査定人に遊ばれてるとこもな」
酔っ払い「50万が10万にって……あんなメチャクチャな査定があるかよ」
女賞金稼ぎ「くうう……!」
酔っ払い「ま、これがベテランのやり方ってこった」
酔っ払い「取り分は、お前さんにも三人組の懸賞金を少し分けてやるとして」
酔っ払い「俺が180万、お前さんが70万でいいか?」
女賞金稼ぎ「……」
酔っ払い「なんだ? 不服か?」
女賞金稼ぎ「ううん、そうじゃない。あたし、自分の未熟さを痛感したの」
女賞金稼ぎ「あたしに……賞金稼ぎのレクチャーをしてくれない?」
酔っ払い「……」
酔っ払い「いいぜ」ニヤッ
酔っ払い「こないだいったろ? 一緒に酒飲んでくれりゃいいって。今夜は俺のおごりだ!」
女賞金稼ぎ「それじゃあたしの気が済まないわ!」
酔っ払い「いいから、いいから!」
女賞金稼ぎ「……」
女賞金稼ぎ「ご馳走になります、先輩!」
酔っ払い「おう!」
女賞金稼ぎ「マスター、もっともっと持ってきて! 高いの頼むわよ!」
マスター「あいよ!」
酔っ払い「ちょっ、まだ飲むのかよ!?」
女賞金稼ぎ「うん! あたしってお酒、いくらでも飲めちゃうのよねえ」
女賞金稼ぎ「だから飲める時にはとことん飲む主義なの~」
マスター「あんた、この子に酒おごるんだって? 失敗したねえ……」
酔っ払い「ううう……今夜だけでいったいいくら飛ぶんだ……!?」
酔っ払い(どうやら俺も、油断しちまったようだぜ……)
~おわり~