眼帯「来たか、小僧」
青年「よくも姉さんを殺したな! 僕の棒術で恨みを晴らしてやる!」ヒュルルルッ
眼帯「ふん、お前如き青二才に俺がやられるものか! ナイフ術で返り討ちにしてやる!」チャキッ
青年「いくぞっ!」
眼帯「来いっ!」
男「やめろっ!!!」
青年「止めないでくれ! 僕はこの眼帯男を倒す!」
男「復讐なんてなんの意味もない……やっても空しさが残るだけだ!」
青年「そんなことやってみなきゃ分からないじゃないか!」
男「分かるさ……」
男「復讐は何も生まない!」
復讐「そんなことないわ、産めるわよ!」
男「ほう、じゃあ試してみるか」
男「復讐っ! 中で出すぞっ!」メニハメヲッハニハハヲッ
復讐「ああああんっ! りべんじゃあああああんっ!」
復讐「……できない」
復讐「どうして私のお腹には赤ちゃんができないの!?」
男「……」
男「病院、行ってみようか」
復讐「……うん」
医者「奥さんは不妊症ですな」
男「不妊症……!」
復讐「そんな……! ああっ……」ヨロッ
男「しっかり!」ガシッ
男「治療法は……治療法はないんですか!?」
医者「そのストレスの原因を取り除けば、改善されるかと……」
男「ストレス……!」
男「君は今なにかストレスを感じているのかい? まさか俺のせいじゃ!?」
復讐「ううん、実はね……」
男「ネグレクトってのは育児放棄か」
復讐「そう、それで長年お父さんに対するストレスが蓄積されて」
復讐「不妊症になってしまったんだと思う……」
男「許せないな……!」
復讐「復讐? どうやって?」
男「幼い頃されていたネグレクトの証拠を集めて、裁判に訴えるんだ」
男「そして、勝訴して賠償金をもらえれば、君のストレスも軽減されるはずだ!」
復讐「そうね……やってみましょう!」
男「えっ、どうしてですか!」
弁護士「彼は今、政財界の大物になっています。司法ですら自在にできる立場です」
弁護士「裁判に訴えても、勝てる見込みはゼロでしょう」
弁護士「それどころか、裁判すら行わせてもらえない可能性が高い」
復讐「そんな……」
男「くそっ、なんてことだ!」
男「殴り込みだ! 復讐さんの父親のところに直接殴り込もう!」
復讐「うん!」
青年「だったら僕も手伝わせて下さい!」
眼帯「俺も手伝おう」
男「二人とも……! どうして?」
青年「復讐の空しさを教えてくれたあなたに礼をしたいんです」
眼帯「俺は、男としてあんたに惚れちまったってとこかな」
男「……ありがとう!」
ゴゴゴゴゴ……
男「なんて巨大な屋敷だ……」
青年「さすが政財界の大物ですね」
眼帯「警備も一筋縄じゃいかないだろうな」
復讐「昔は小屋みたいな家に住んでたのに……」
男「だけど怖気づいてたら復讐は達成できない! 乗り込もう!」
男「侵入はバレていたかッ!」
『ワシのところにたどり着くには、≪四天王≫を倒さねばならん』
『果たして、あの四人を倒すことができるかな?』
男「四天王だって!?」
青年「強敵が四人もいるというわけですか」
眼帯「復讐は父親と戦わなきゃならないから、戦わせられねえな」
男「あと一人、味方が欲しいところだが……」
青年「ね、姉さん!? 死んだはずじゃ!」
幽霊姉「死んでるわよ。許可をもらって、特別にあの世からやってきたの」
幽霊姉「私もあの世で修行したし、戦力になるわよ? この蹴り技でね!」ビュババッ
男「ありがとう……」
眼帯「ふん、俺に殺されたのが悔しくて成仏できなかったか」
幽霊女「あんたにはいずれリベンジしてやるから覚悟することね!」
眼帯「……」ニヤッ
幽霊女「……」ニコッ
男「さあ、乗り込もう! 四天王と対決だ!」
悪臭「ぐへへへ……」プーン…
男「うっ、なんて臭さだ! 鼻が曲がる……!」
悪臭「うおりゃぁぁぁ!」
バキッ!
男「ぐはっ!」
男(ダメだ……臭いに集中力を奪われて、まともに戦えない!)
悪臭「ぐへへ……トドメだぁ~!」
男「復讐さん!」
男「ああ……なんていい香りなんだ!」クンクン
男「よし、これで悪臭は相殺された!」
悪臭「な、なんだとォ!?」
男「これが愛の力だぁぁぁっ!!!」
バキッ!
悪臭「ぐはぁっ!」ドサッ…
男 ○ ― × 悪臭
青年「だああっ!」ヒュバッ
学習「フッ」サッ
青年「またかわされた! 最初の一撃は当たったのに……」
学習「私は学習能力に優れており、一度受けた攻撃は即座に学習することができるのです」
学習「つまり、二度とあなたの攻撃は当たりません」
青年「ふうん、だったら……」
学習「サボり……?」
青年「ほら、横になってゴロンとして……」
学習「どれどれ」ゴロン
学習「ふむ、たしかに楽しい! もう一生サボろうっと!」
青年「なんでも学習するなら、学習しちゃいけないことを学習させればいいのさ」
青年 ○ ― × 学習
逆襲「カウンタァァァ!」
ズガガァンッ!
眼帯「ぐはぁぁぁっ!」
逆襲「フハハハハ、俺は受けたダメージを増幅させて返すことができるのだ!」
逆襲「どうだ、手も足も出まい!」
眼帯「ふん……じゃあ攻めないぜ」
逆襲「は?」
眼帯「……」
逆襲「お願いだから!」
眼帯「……」
逆襲「だったらこっちから!」ブンッ
ボキッ!
逆襲「ぎゃああ! 間違えて壁殴っちゃった! 病院行かなきゃ!」
眼帯「自分から攻撃するのは下手くそだったようだな……」
眼帯 ○ ― × 逆襲
幽霊姉「でやぁっ!」バキッ
翌週「効かないよ」
幽霊姉「クリーンヒットしたのに……!」
幽霊姉「どうしていくら蹴ってもダメージが消えちゃうの!?」
翌週「ダメージを翌週の私に回しているからさ」
翌週「つまり私は今週、絶対ダメージを受けない!」
幽霊姉「そういうことなの。それなら……」
翌週「うっ!?」ビキビキッ
翌週「ぐぎゃあああああああああああああああああ!!!」ドゴベキバキッ
翌週「先週分のダメージが一気にきたあああああああああああ!!!!!」バキドゴメキッ
幽霊姉「次の週まで戦い続ければいいだけの話ね」
幽霊姉 ○ ― × 翌週
こうして≪四天王≫を打ち破った一行はついに――!
復讐の父「娘よ、ついにここまで来たか」
復讐「みんなのおかげで無傷でね!」
復讐「あなたを倒して、子供を産める体になってみせる!」
復讐の父「来るがいい!」
復讐「復讐砲!!!」
ズオッ!!!
復讐の父「なるほど、ワシへの憎悪をエネルギーにしたわけか」
復讐の父「だが、その程度ではワシには勝てん!」
復讐の父「なにしろワシはこの世界の全てを恨んでいるからなァ!」
復讐の父「復讐砲!!!」
ズオッ!!!
男「復讐エネルギー同士がぶつかり合って、押し合いになった!」
復讐の父「フハハハ、この程度か!」
復讐「ぐっ!」
復讐「なぜ!? なぜあなたはこの世界を恨むの!?」
復讐の父「決まっているだろう」
復讐の父「お前の母がお前を産み、死んでしまった時、世間は誰も助けてくれなかった!」
復讐の父「だからワシは大金持ちになって、この世に復讐してやると誓ったのだ!」
復讐「私をネグレクトしたのもそのためだったのね……」
復讐の父「そうだ。妻の死因となったお前にどうしても愛情を向けられなかったのだ……」
復讐の父「亡き妻の面影ごと、お前を吹き飛ばしてくれる!」
グググググ…
復讐「きゃぁぁぁぁぁっ!」ミシミシ…
復讐「やはり、私ではお父さんに勝てないの……!?」
復讐「本当に復讐は何も生まないの……!?」
男「いや、そんなことない!」
復讐「!」
男「俺の子供を産んでくれッ!」
復讐「うんっ!」
復讐「復讐砲・マックスパワー!」
グググッ!!!
復讐の父「ぐっ!? ぐおおっ……!? 押され――」
ズオオオッ!!!
復讐の父「うおおおおおおおおおっ……!!!」ボシュッ…
復讐の父「ぐ……!」
復讐「お父さん……」
復讐の父「復讐……美しくなったな。母さんそっくりだ……」
復讐の父「ワシが愚かなばかりに、お前に愛情を注げなくてすまなかった……」
復讐「ううん、もういいよ……」
復讐の父「男君、どうかワシの分まで、娘を愛してあげてくれ……」
男「もちろんです!」
おぎゃあ……! おぎゃあ……!
男「産まれましたか!?」
看護婦「はいっ、元気な男の子ですよー!」
男「やったぁ!」
青年「おめでとうございます!」
眼帯「やったな……! 復讐が子供を産みやがった!」
幽霊姉「自分のことのように嬉しいわ!」
男「わざわざ来てくれて、ありがとう!」
男「うん、母子ともに健康でよかった」
復習「過去の悲劇を繰り返さないためには、ちゃんと復習することが大切なんだ」オギャアオギャア…
復習「お父さん、お母さん、ぼくにはたっぷりと愛情を注いでね」オギャアオギャア…
男「ものすごく勉強しそうな子が産まれたな……」
― 完 ―
復讐の子は復習かw
乙
学習の子じゃないですか?