トレーナー「…………」
客「こっちは一ヶ月、あんなに頑張ったってのに……」
トレーナー「はい……」
客「ライザップ全然効果ねぇじゃねェか!!!」
トレーナー「申し訳ありません!」
トレーナー「ございます……」
客「あれ見て、『ライザップならオレもムキムキになれる!』と思ったわけよ。いいCMだよ、あれ」
トレーナー「ありがとうございます」
客「でも、全然ダメだったじゃねェかよ!!!」
トレーナー「はい……」
客「ダンベルにバーベル、マシントレーニングもやった! やりまくった!」
トレーナー「こなされておりました」
客「でも、なんも変わらなかったよ!!!」
客「大好きだったご飯、パン、ケーキも全部抜いたよ」
トレーナー「おっしゃる通りです」
客「けど、全然意味なかった! 無駄に腹が減っただけだ!!!」
客「説明しろよ! なんで変わらないんだよ!」
トレーナー「あの、それは、ですね」
トレーナー「入会時にもご説明しましたが、やはりお客様の体質ではあまり効果は……」
客「体質ゥ!?」
トレーナー「いえ、押し付けるというわけでは……」
客「いっとくけど、これでもオレ仲間内じゃ一番健康なわけよ。病気もしたことない」
客「なんなら、健康診断書見せてやろうか? どっこも異常ないから! どっこも!」
トレーナー「お客様が健康なのは分かります。それだけ大きな声で怒鳴れるのですから……」
客「なんだそりゃ! 皮肉か!」
客「あんた、手ェ抜いたろ! 真面目にプログラム組まなかっただろ!」
トレーナー「いえ、そんなことは決して……」
客「ウソつけ! 絶対そうだ! 手を抜いたに決まってるんだ!」
トレーナー「してませんよ……」
客「いーや、してる! オレを化け物を見るような目で見やがって!」
トレーナー「…………」
客「だけど、それ相応の知能はあるし、今は人間と共存してる! 人間と同じなんだ!」
トレーナー「存じております」
客「だから、客がオレだからってちゃんと仕事しないのは差別なんだぞ! 許されないんだぞ!」
トレーナー「差別したつもりなど決して……」
客「じゃあなんで、全然結果にコミットしないんだよ!!!」
トレーナー「料金は全額、返金させて頂きますので……」
客「当たり前だよ! 全然効果なかったんだから!」
客「これで金までむしり取られたら、本当にしかるべき所に訴えるところだ!」
客「じゃあな!」
トレーナー「申し訳ありませんでした……」
同僚「隣の部屋で聞いてたけど、今の客、ものすごく怒ってたな」
トレーナー「ああ……参ったよ。まだ耳がキンキンする」
同僚「だけど、本人は頑張ったのに全然効果がなかったなら、怒るのも当然か……」
トレーナー「そういうけど、あの客をムキムキにするなんて無理だよ……」
トレーナー「なにしろ、異世界からやってきたとかいうお客でさ……」
同僚「おいおい、それをどうにかするのがオレたちの仕事だろうが?」
トレーナー「だって、今の客……」
おわり