ギャル「へーwなにそれなんかおもしろそうw」
俺「……驚かないのか?」
ギャル「だってあーし生命線めっちゃ濃いしw殺そうとしても逆に襲っちゃうかもよ?w」
俺「ウッ…!(ギャルの無垢な笑顔に死んだ妹が突然フラッシュバック)」
ギャル「えwなになに持病?w」
俺「フッ…馬鹿者が…」
ギャル「キャハハwウケるwあーし、友達第1号になったげようか?w」
俺「か、勝手にしろっ…(プイッ)」
ギャル「ふーんwじゃっほーかご、校門前ね!」
俺「なっ、なに勝手に!」
俺(組織の回し者かもしれない…もう少し様子を見る必要が…)
ギャル「よっ!来てたんだ~?w」
俺「(ビクッ!)に、人間観察だ!お前みたいなタイプの人間は珍しいからな!」
ギャル「えwまだ何も聞いてませんけど?w」
俺「ウッ…こいつゥ…」
ギャル「じゃーどこ行こっかー?折角あーしらの友達アニバーサリーだしどっかパーっとだよね~」
俺「何でもいい…夕方には用事があるから早くしてくれ」
ギャル「ふーんじゃあオケ行こっか♪俺くん歌えるでしょ?」
俺「そうだ用事の時間が早くなっていたのを思い出」
ギャル「ほーらっ!早く行くよ!(グイグイ)」
俺「は、放せ!誰があんなとこ…」
ギャル「バーカw離さないよーだw今日は俺くんとあーしの友達アニバーサリーなんだから♪」
俺「ハァ…俺は歌わないからな…」
ギャル「よーしじゃあまずはあーしからね!」
俺(喉乾いたな…)
ギャル「~♪~♪~…あーっ!あーしが歌ってる最中にドリンクバー行ってる…!あいつぅ」
ガチャッ
俺「どうしたんだ?まだ曲終わってないじゃないか」
ギャル「一人で歌っててもつまんないもん(プイッ)次俺くんの番だから、はいマイク」
俺「……次は一緒に歌うか?」
ギャル「えっwまさかの展開wいーの?歌ってくれるの?」
俺「あ、あぁ…一応な…と、友達アニバーサリーだしな…」
ギャル「キャハハwそうこなくっちゃ!」
俺&ギャル「~♪~♪~♪」
ギャル「オケひっさびさで超楽しかったわーw俺くんも楽しかった?」
俺「”楽しい”か…一体どういう感情なんだろうな…それは」
ギャル「フフッwそうね~…また行きたい!とかもっと一緒にいたい!とかそういう気持ちじゃない?」
俺「フッ…じゃあそうでもないかもな…」
ギャル「またまた~wあっそーいえばあーしに学校で言ってたことって…」
俺「あぁ、あれは忘れてくれ」
ギャル「だーめ!あーしら友達なんだから隠し事はなしでしょ!」
俺「…世の中には自分の常識の範疇を超える事象が度々ある」
ギャル「と、言いますと?w」
俺「組織の実験体だった…理性を飛ばし殺戮マシーンと化す残虐な薬の…そのせいで俺は家族友達皆殺しにしたらしいが薬の副作用でよく覚えていない」
ギャル「へ、へ~wそれはすっごい薬ね」
俺「俺に残ったのは埋まることのない虚無感と償いきれない罪だ…俺と関われば必ず不幸になる…分かったらもう俺と関わらない方がいい」
ギャル「あーし難しい話はよくわかんないけど不幸はあーしらで分け合って2分の1、幸せは共有して2倍でしょ?こんないいことづくめなのに関わらない理由がなくない?w」
俺「……馬鹿者が…」
ギャル「困ったことあったら何でもあーしに相談していいんだからね!あーしら友達じゃん?w」
俺「フッ…もう時間だ、俺はこっちに行くが…今日の友達アニバーサリー…少し楽しかったのかもしれんな…」
ギャル「へへっなにそれw変なのwまたカラオケ行こうね♪約束だよ」
俺「いつもいつもすまないな先生」
先生「気にするな、実験体だった君を組織から連れ出したのはこの私だ、これはあの凶悪な薬を開発してしまった私の罪滅ぼしでもある」
俺「他の実験体たちは…」
先生「あぁ…皆薬の副作用で死んでいったさ、君だけが辛うじて記憶の欠落だけで済んだんだ、だがこうして定期的にワクチンを打たないとまたいつ薬の効果が再発するか分からない…」
俺「でもなんで組織に追われるリスクを背負ってまで俺を…?」
先生「初めは同じ志のもとに集まった仲間達だった…だがいつからかおかしくなっていった…実験はエスカレートし非人道的なものになっていった、それが間違っていると気付いたからさ…あまりにも遅すぎたがな」
俺「そうだったのか…」
先生「打ち終わったよ、じゃあまた来週ね」
俺「いつも悪いな先生」
俺「(……!)誰だ!?」(クルッ)
組織のボス「やっと見つけたよ009…いや今は俺という名を名乗っているのかな?」
俺「お前は…!!」
組織のボス「おっと、忘れられているかと思ったが…覚えてもらえてて光栄だよ俺くん」
俺「…何の用だ」
組織のボス「そうだね、組織の秘密を知っている人間をそのまま生かしておく訳にはいかない」
俺「糞がっ!」(クルッ)
組織のボス「いいのかい?逃げて」(スッ)
俺「ぎゃ、ギャル…!?お前がなぜそれを!?」
組織のボス「こんな可愛い子とカラオケデートなんて実験体のくせに中々いいご身分じゃないか」
俺「くそッ尾けていたのか!そいつに何をした!!」
組織のボス「安心しろ、まだ眠らせているだけだよ」
俺「貴様ァ…そいつを使って何をする気だ!関係ないだろ…!今すぐ放せ!!」
組織のボス「ハハハ、なーにほんの余興だよ、君に死ぬ前におもしろい実験を見せてあげようと思ってね」(カチャッ)
俺「その注射器…まさか…!や、やめろ!!」
組織のボス「この新薬はより強固な力で人の心を殺意で蝕む…実験結果が楽しみだよ…」(プチッ)
俺「な、なにを…!」
組織のボス「いいか?お前の名前は今日から012だ、このナイフであいつを殺れ012」
ギャル「承知しました、ご主人様」
俺「ご主人様だと…?おい!目を覚ませ!お前は薬の力で…!」
ギャル「……」
俺(くそッ!聞いてねぇ…向かってくる…とりあえず動きさえ止めて先生んとこ持ってけば…!)
俺「うおおお!!(スッ)」(なにっ…かわされた…!?)
ギャル「フンッ!…(ボコッ)」
俺「ぐはぁっ!な、なんだこの力…!立てねぇ…」
組織のボス「フハハハハ、この新薬はね、旧作と比べて戦闘能力が格段に飛躍するよう作られていてね…薬の基礎システムを開発したあのヤブ医者にも後で報告に行かないとねぇ」
俺「ちくしょう…先生の場所まで…!」
組織のボス「余興もここまでだ、012、トドメだ」
ギャル「承知しました、ご主人様」
俺(くそッ立てねぇ…俺はこのままギャルを救えないまま死ぬのか…短い人生だった…すまない…)
ギャル「…お…れくん?」
俺「…ギャルか…?意識があるのか!?」
組織のボス(バカな…!ナイフをギリギリで止めただと…?体があの新薬に抵抗しているというのか?まさかそんなはずは…!)
ギャル「あーし…怖かった…知らない男に連れさられて…それよりも怖かった…のは目が覚めたら体が別の誰かに乗っ取られてて…俺くんを襲ってる…あーしは必死に抵抗するけど…見てるだけゲホッゲホッ(吐血)」
俺「もういい!無理に喋るな…!今先生を呼ぶからそしたら先生が何とかしてくれる、いずれワクチンを作ってくれる!だからそれまでは俺がずっと側にいてやるから!」
組織のボス「何をやっている?早くトドメをさせ012」
ギャル「もう無理だよ…俺くん…あーしを…殺して…」
俺「何馬鹿言ってるんだよ!また…またカラオケ行くって約束…しただろ…!カラオケじゃなくたって…そうだ!春になったら河川敷に桜を見に行こう!あそこは凄い綺麗で…」
ギャル「俺くん…が…最後まであーしのこと思ってくれて…うれしい…でもね…もう別の誰かに乗っとられそう…そしたら今度こそ…最後にあーしのわがまま…聞いてくれる…よね…」
俺「や…やめろ…!何する気だ手を離せ!!」
ギャル「おれ…くん…色々相談…乗りたかったけど…ごめんね…それでありが…とう…今日はあーしらの…友達…アニバーサリー…あーしの分まで生きて…ね…」(グサッ)
俺「う、うそ…だろ…?おいギャル…!やめてくれ…やめろ…やめろおおおお!!!うわあああああああああああ!!!!」
組織のボス「フッ…実験は失敗か、精神面での制御が甘かったか…開発班に伝えておこう」
俺「き、貴様ァ!!よくも!!!うおおおおおおお!!!!!」
組織のボス「…ヴッ…!(さされた…?いや殺気か…?殺気だけでここまで…!まさか薬の効果が再発したか…ここはまずい一旦引くか)」
俺「待てええっ!!!!!くそがあああああ!!!!死ね死ね死ね死ねぇぇ!!!!」(グサグサグサ)
組織のボス「ヴッ…!ば、ばか…な……」(パタッ)
俺「うわあああぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
夜中の閑静な住宅街に響き渡るのは悲しい運命を辿った一人の男の叫びだった
完