女「最近知り合いに”ボーイズトーク”という単語を聞いてな。ガールズトークならわかるが、ボーイズトークだぞ?」
男「ほうほう、動気はそれか」
女「ああ。気になるだろう、異性の会話というのは」
男「まぁな」
女「では、私にボーイズトークを教授してくれるかな?」
男「仕方ないな。――さて、まあ先ず椅子ではなく床に座ろう」
女「床か。了解した」
男「そして俗に言う胡座で座ってくれ」
女「こう・・・か?」
男「うむ・・・いい眺めだ」
女「ふむ。君はそんなに下着が見たいのか?」
男「まてまて、違うぞ。そういう時は『今日の下着は白色なんだぜ!』と言って盛り上がるところだ。ボーイズだとな」
女「そうなのか」
男「そうだ」
男「ああ。清楚で綺麗な感じが似合ってるぞ」
女「そうか。照れるな」
男「生地はシルクか?」
女「そんな馬鹿な。多分ナイロンだ」
男「シルクに見えるほど似合っているね」
女「それは褒め言葉なのか?」
男「褒め言葉さ」
女「――というよりこれでボーイズトークというのは合ってるのか?」
男「ああ、滞りなく順調に進んでいる」
女「ならいいのだが」
男「では次のステップに進もう」
女「お願いしよう」
女「何をだ?」
男「男の性質というものについてだ」
女「ほうほう。興味深いな」
男「男というものは元来、戦・・・要するに戦いをする生き物だ」
女「ああ。狩りなどを請け負う凄い者だと思っている」
男「その認識で間違いはない。で、だ。その名残として、男同士のコミュニケーションというのは女性のそれと違う」
女「というと?」
男「内面から外面まで、さらけ出してからの友情・・・というところかな」
女「内面から外面まで・・・?」
男「赤くならないでいい」
女「別に赤くなってはないないぞ」
女「うむ」
男「男には”裸の付き合い”という言葉が存在する」
女「おお、聞いたことがあるぞ」
男「これは外面からさらけ出すパターンだな」
女「ふむふむ」
男「そして修学旅行の夜のピロートークだ」
女「それは女子のほうが強いんじゃないのか?話す時間とかそういう意味では女性のほうがやってる感じが強いが」
男「それは誤解だ。女性は赤裸々に話し合ってはいない。建前だけだ」
女「そうなのか」
男「それに比べ男というのは言わなくていいことまで話す」
女「ほう。その根拠は?」
男「経験だ」
女「ああ」
男「先述した事を踏まえ、ここに言えることは、だ」
女「内面も外面もさらけ出しての会話という事か?」
男「察しがいいな。教え甲斐がある」
女「光栄だよ」
男「さて、ここでボーイズトークをするとしよう。何を話すべきか・・・わかるかな?」
女「何を話すべきか・・・か」
男「その関門をクリアしなければ、ボーイズトークへの道は門前払いということだ」
女「ううむ。難しいな」
男「ヒントをやろう」
女「おお、有難い」
男「―――男は性欲の塊だ」
女「ほう。それがヒントか」
女「ううむ。過度の期待はプレッシャーとなるぞ」
男「覚えておこう。で、見つけられたか?」
女「自信はないが」
男「オーケーだ。何事も失敗は次への糧となる。恐れてはならない」
女「――鎖骨」
男「鎖骨とな」
女「鎖骨というのは性的魅力があると思わないか?」
男「良いセンスだ」
女「合格か?」
男「ううむ。及第点と言ったところだろう」
女「ふふっ、良かった。これで先生の授業を受講できるな」
男「よし。では話題も決まったことだ。鎖骨についての話をしよう」
女「了解した。鎖骨・・・ね」
男「そう、鎖骨だ」
男「ほうほう」
女「確かにほかの骨も常に形を露わにしているものがあるが――」
男「まて、ストップだ」
女「何だ?ここからが盛り上がるのに」
男「性的魅力のある鎖骨について・・・だったよな?」
女「ああ」
男「只の骨マニアのレポートにしか聞こえなかった」
女「うう・・・単刀直入に言うな」
男「言う時は言う。それがモットーだ」
女「時と場合を考慮してほしかったかもしれない」
男「時には厳しく言うことも必要なのさ」
女「ううむ・・・。では、では、だ。私の意見がダメならば」
男「任せるがいい。本当のボーイズトークを見せてやろう」
女「ほう。自信満々だな」
女「問いかけか。いい会話のパターンだ」
男「答えは?」
女「そうだな。曲線的なところか?」
男「違うな。見えるようで見えない、神秘的な部分というところだ」
女「ほう」
男「男というのは女性の見えそうで見えない部分。もしくは見えない部分というのに性的欲求を示す」
女「ほう」
男「普段見えない部分というのは凄く唆られる」
女「分からないな」
男「女性の感性で居るからさ。男になったつもりで考えて欲しい」
女「うむ・・・」
男「鎖骨というのは首の下・・・詰まりは胸の上部にあることになる」
女「ふむふむ」
女「股間部と胸部だ」
男「ということは必然的に鎖骨も隠れがちになる・・・分かるかな?」
女「ああ。成る程、少しは分かってきたぞ」
男「ではそのまま付いてきて貰おう。――隠れがちな鎖骨。しかし、だ。隠されるのは胸部であって鎖骨ではない」
女「その通りだな」
男「と言うことは、鎖骨というのは無防備になりやすいということだ」
女「まぁ、必然的に、な」
男「服の構造上、鎖骨は立った状態から前かがみになると鎖骨付近が露わになりがちである」
女「前かがみになる事は少なくはないな」
男「そう。そこがポイントだ。隠されているのに日常的に見えがちな部分・・・それが鎖骨なのだよ。それこそが鎖骨の魅力なのだ」
女「でもそれは他の部分にも言えることではないのか?」
男「そう。太腿などにも十分この説が通用する」
女「だろうと思ったよ」
女「ん? どういうことだ」
男「鎖骨等が顕になる時・・・それは隠されるべきところが見えそうになる瞬間でもある」
女「ほうほう」
男「その二つの魔力に導かれて男は視線が釘付けになるのだ」
女「・・・ふむ。勉強になるな」
男「いや、受け身になってはいけないぞ」
女「? と言うと」
男「受け身にならず、反論や修正論を言うべきだと言っているのだよ」
女「反論と言われてもね」
男「男の感覚で考えるんだ」
女「ううむ・・・」
男「まぁ、女性が一朝一夕で分かるようなものでもないと思うがな」
女「確かに難しいみたいだよ、私には」
女「ガールズトークを織り交ぜるというのはどうだい?」
男「いい案だ。早速話題を振ってくれ」
女「それでは。――最近暑いな」
男「そうだな。夏めいた風が吹いて憂鬱になるばかりだよ」
女「そうだな。私も夏は嫌いだ」
男「汗を流すのがなんともね」
女「汗を流すのは常日頃やっていることじゃないか」
男「流す量が半端じゃなくなるだろう? 家で涼んでいたくなる季節だよ」
女「そうか。ここで私の話題だ」
男「何だ」
女「暑くて汗をかくような夏の日はどういうスタイルで寝る?――と言ったところかな」
男「ほうほう。では先ず話題提供者から話してもらおうか」
女「私は下着にキャミソールかな」
男「ほっほう・・・」
男「食いつくさ、食いつくものだよ女性の私生活というのは。男にとっちゃ神秘も神秘だ」
女「ボーイズトークの融合か。いい傾向にあるみたいだ。さあ話を続けるといい」
男「ピンクか?ピンクのフリフリか?」
女「いいや。男で言うランニングシャツみたいなものを着用してるね。着やすくていいんだ」
男「ほう・・・それもそれで有りだな」
女「ちなみに今も着てる」
男「見せて欲しい。見せて欲しい」
女「即答な上に二回も言うとは・・・。やれやれ困った性欲の塊だ」
男「何と言われても性欲には勝てない。それが男だ」
女「困った性別だな」
男「ああ。日々愕然としているよ。なんで男に生まれたんだろうと」
女「・・・それはもう精神学的な話になってくるんじゃないだろうか」
男「それはさて置き。キャミソールだキャミソール」
女「ええい、急かすんじゃない。まだ見せるとも言ってないのに」
女「いや、見せないとも言ってないが」
男「見せてくれないのか・・・」
女「そんな世界の終わりみたいな顔をするんじゃない。――全く、見せてやらなきゃいけない気がしてきたじゃないか」
男「作戦通りだ」
女「真顔で言うな。私の母性が泣いている」
男「しかし母性には抗わないほうがいい。女性の象徴とも言える母性だ。」
女「こんな形で利用されてはかなわないよ」
男「まぁまぁ。別に全裸になってくれと言ってるわけでもなく、キャミソールを見せて欲しいと言ってるだけだ」
女「ううむ。そう言われると別に恥ずかしくもないな」
男「というわけで頼む」
女「やれやれ。仕方がないね」
女「・・・ブラウスのボタンを全部外すとかはやめてくれよ」
男「そんなわかってないやり方はしない」
女「わかってない・・・?」
男「チラリズムだよチラリズム。全体像が見えるより、一部から全体像を想像するほうが興奮を覚えるのだ」
女「鎖骨への性的魅力もそれにはいるのかな?」
男「そうだったな。忘れていた」
女「――で、どうするんだ?」
男「先ずはそのスカートに入っているブラウスの裾を出してもらおう」
女「裾下から見るのか?」
男「ああ」
女「よくわからないな」
男「分かるようになればボーイズトークも軽々とできるようになるだろう」
女「ほう・・・。じゃあ分かるように善処しよう」
男「ああ、そうするといい」
男「ああ。これだけでも興奮を感じ得ないな」
女「そういうものなのか?」
男「そういうものなのだ」
女「で?」
男「で?」
女「いや、私がこれからどうすればいいのか聞きたくてな」
男「ブラウスの裾を上にあげて欲しい」
女「こうか?」
男「――ふむ、良い絵面だ」
女「褒めているのか?」
男「褒めるだなんてとんでも無い。感動してるんだよ」
女「興奮の間違いじゃないのか?」
男「ははは、一本取られたね。これは」
男「腹部だ」
女「女性の体を触るのに無許可でいいのかな?」
男「ああ・・・悪かった。あまりに綺麗でね。キャミソールの上からでもよく分かる」
女「ふむ、何ならキャミソールを上に上げてもいいんだぞ?」
男「なんとも嬉しい提案だな」
女「腹部を見せるぐらいどうってことはない」
男「じゃあお言葉に甘えて――――」
女「どうだ?それなりに運動はしているから醜くは無いはずだが」
男「良いものだと思うぞ」
女「有難う。素直にその言葉は受け取っておくよ」
男「おおっと。やれやれキャミソールを見るつもりが腹部の観察ばかりしてしまっていた」
女「本当にね。本来の目的と違うとこをしているなんて良くあることではあるけど」
男「ちょっと脱線しすぎたかな」
女「やっと自分のを話すつもりになったか」
男「ああ。と言っても全然面白くもなんとも無いぞ」
女「ああ。構わない」
男「パンツ一丁だ」
女「私と変わらないな」
男「そうだな。しかし上半身裸というのは男性ならではだぞ」
女「そうか?女性も別に上半身裸で寝るのも珍しくはないが」
男「そうなのか」
女「そうだが」
男「止めておいたほうがいい・・・乳房が垂れてしまう」
女「ううむ、まぁ確かに」
男「そんなに全裸で寝たいのなら、ブラジャーの役を引き受けたいね」
女「ブラジャーに役なんてあるものか」
女「どうした?」
男「ブラジャーというのは元々、女性の乳房を支える職業の事を指していた。これは常識だよ?」
女「そうだったのか」
男「ああ。ルネサンス運動と称してこの職業をどうにか復活させて欲しいものだよ」
女「ふぅむ。しかしそれはそれで手が疲れないか?」
男「しかし手に感じられる幸せと差し引き零だと思うよ」
女「それが職業となり、日常となればその幸せも一般化するんじゃないかな?」
男「確かに。慣れてしまえば幸福は感じられないかもしれないな」
女「先程言ったように、見れないからこそ興奮するんだろう?」
男「ううむ・・・」
女「復活しないってことは多分そういう事なんだと私は思うよ」
男「やれやれ、優秀な生徒を請け負ってしまったものだ」
女「照れるよ」
女「携帯か?随分と俗物なものを持っているんだな」
男「携帯なんて今や誰でも持ってしまってる時代だよ。個人的には好きじゃないけど連絡用に持たされている」
女「と言うことは、今のメールは連絡じゃあないのか?」
男「まぁ・・・多分、妹からのメールだろう」
女「妹さんと二人暮らしだったんじゃあなかったか?何か急用かもしれない。見たほうがいい」
男「じゃあとりあえず。――――やれやれ、普通に帰宅を促す催促だったよ」
女「一人で心細いのさ。帰ってあげるといい」
男「しかしな、帰ると一人になる人間が居るものでね」
女「・・・ん?私か?私なら気にしないでくれよ」
男「女性を一人置いて帰るほど、まだ廃れちゃいない」
女「変なプライドは捨てたほうが身のためかもしれないぞ?」
男「意味深な忠告だな」
女「一般論を言ったまでさ」
男「それでも、まだ帰るつもりはないけどね」
男「まぁ・・・ほら、なんて言うんだ」
女「なんだ。はっきりと言うがいい」
男「―――一緒にいる時間が楽しいから、だな」
女「なんだ。そんな理由か」
男「そんな理由?ちょっと言い方が悪くないか?」
女「――ああ、悪い悪い。そういうつもりじゃなかったんだが」
男「じゃあどういうつもりだったんだ?」
女「――――私たちは、いつも一緒じゃないか」
男「ははは、そうだったな」
女「ふふっ。少しの間、離れるだけじゃないか。ね?」
男「ん?何をだ?」
女「隠れているもののほうが性的魅力を感じられるって」
男「ああ、言ったな」
女「――じゃあ、少しの間隠されていようかな?」
男「・・・やれやれ、本当に困った生徒だよ」
女「ふふふ、良い生徒と言ったり困った生徒と言ったり忙しいな」
男「誰のせいだ」
女「私のせいかな?」
男「確信犯か」
女「確信犯かも」
男「全く・・・」
女「ふふふっ」
女「さようならじゃなくて、おやすみかな?」
男「そうだな。それがいいだろう」
女「では」
男「おやすみ」
女「おやすみ」
~fin~
矛盾点、誤字脱字等有りましたら脳内補完でお願いします。
二人結婚しろ
寝る前にいいもの見れた
乙!
乙