主人公「お前こそ生きていたとはな。どうする?俺と決着をつけるか?」
敵女幹部「当たり前だ!ここで息の根を止め、後顧の憂いを絶ってくれる!」
主人公「そううまくいくかな……あれ?(武器がない!?まさか海に落ちた時に!?)」
敵女幹部「ふふふ、どうやら丸腰のようだな。貴様の悪運もここまでだ!死ね!」チャカ
主人公「………っ!!」
敵女幹部「ふははは!!貴様でも死ぬのは恐ろしいか!無様な顔をしているぞ!」
主人公「ち、違う、後ろ……っ!」
敵女幹部「へ?」
恐竜「ギャオオオオオオオオオオオ!!!」
敵女幹部「ひいいいいいいい!?」
主人公「っく!飛べ!この崖から!」
敵女幹部「なっ!?む、無理無理無理無理、あたし高いところ無理だから……」
主人公「いいから飛ぶんだよ!」バッ
敵女幹部「うわあああああああ」
主人公「うおおおおおおおお」
主人公「日に2度も海に飛び込む羽目になるとは……」
敵女幹部「はぁ、はぁ……あれ!?ない!あたしの銃!?」
主人公「ははは、これでお互い丸腰だな。どうする?素手で襲いかかるか?こっちは負ける気がしないが」
敵女幹部「くう、ここは撤退だ……覚えてろよ!?」タッタッタ……
主人公「あ……行っちまった。あいつ、一人で生き残れるのか?まあいい、飲み水と食料、それから火の準備をしないと」
主人公「えーっと、お、この枯れ草は焚付けに使えそ……ん?」
敵女幹部「キャーッ!!」
主人公「お、お前、こんなところにいたのか!?それよりなぜ裸に……」
敵女幹部「服を乾かしてるんだ!見るな!ヘン夕イ!」
主人公「いや、見てないから安心しろ、それよりその薪の山、お前も火を起こそうとしていたのか?なら協力しよう、その方が効率が…」
敵女幹部「やっぱり見たんじゃないか!死ねドスケベ!」
主人公「ほら、焼けたぞ?」
敵女幹部「うむ」
主人公「……協力しなければ今日中に飯にありつくことはできなかっただろうな、お互いに」
敵女幹部「ふん、悔しいがそれは認めねばならんようだな」
主人公「どうだ?この島を出るまで協力関係を続けるってのは」
敵女幹部「仕方ない。ここは一時休戦といこう。だがいいか?この島を出るまで、だからな?覚えておけよ」
主人公「わかってるさ。俺だって組織の幹部と協力なんてゾッとしない」
敵女幹部「同感だ。それにしてもうまいなこの魚。よく捕まえたな」
主人公「ガキの頃からこういうのは得意でね」
敵女幹部「ほう」
主人公「それよりさ」
敵女幹部「うん?」
主人公「前、はだけてるぞ」
敵女幹部「……っ!!こ、このヘン夕イが!」
敵女幹部「あいにく我々文明人はお前らのように野蛮なフィールドワークなどついぞしたことがないんでな」
主人公「そうか、それならここでは俺に従ってもらうぞ。でないと生き残れる気がしない」
敵女幹部「む、致し方あるまい、貴様らに従うのは虫唾が走るが、状況が状況だ」
主人公「よし、じゃあ働いてもらうぞ。水源が確保できたから目下の優先事項はシェルター、かまどの用意か」
敵女幹部「かまどだと!?この島に永住でもする気か!?」
主人公「無論そんな気はないさ。だがいつ助けが来るかわからない以上、準備はしないと」
敵女幹部「……わかった」
主人公「木を切るのに石斧もいるし、土器作りも必要だな。あれもこれも……ブツブツ。」
敵女幹部(本当にここに住むつもりじゃないだろうな)
主人公「あっ、こら!何休んでるんだ」
敵女幹部「なぜ泥んこ遊びの真似事なぞしなければならんのだ!見ろ!貴重な衣服が泥だらけだ!もう……」
主人公「お前とことんサバイバルに向かないタイプだな……」
敵女幹部「ふん!だいたいなぜ地面をほらねばならんのだ」
主人公「土器作りのためにはどうしてもここを掘って粘土を手に入れる必要があるんだよ」
敵女幹部「ならお前がひとりでやればいい。役割分担だ。あたしは薪を集めてくる!」
主人公「ったく、早々に指示に従わなくなりやがって……」
恐竜「ギャオオオオオオオオオオオ」
敵女幹部「ひいいいいいいいいい」ダダダダダダ、ひしっ
主人公「わあ!?ひっつくな!」
敵女幹部「いた!いた!怖いのいたぁ!」ガクガクブルブル
主人公「わかった、わかったからはーなーれーろー!」グイ
敵女幹部「ひっ……(ドサッ)……き、貴様!なぜ私に抱きついたのだこのセクハラ男が!」
主人公「あーもう」
主人公「(やっと素直なことが言えるようになったか)そうかい。これで焼けば土器の出来上がりだ」
主人公「これで水を汲んできて粘土と混ぜてシェルターの壁の材料にする」
敵女幹部「シェ、シェルターって木組みじゃないのか?土壁とは本格的過ぎはしないか?」
主人公「言ったろ?いつまでここにいるかわからないって」
敵女幹部「だ、だが組織かお前の一団の助けが来れば……」
主人公「無理だな。潮流の速さと島嶼の分布から言ってみんなは確実に俺の居場所を見失った」
主人公「そう簡単には助けは来ないさ」
敵女幹部「そ、そんな……」
主人公「下手をすれば越冬すら覚悟しなきゃならんかもしれん」
敵女幹部「は、はは、は……冬?それまで、お前と、二人?」
主人公「そういうこともありうるという話だ」
敵女幹部「ふん!そんなはずがあるものか!きっと私の組織が先にここを見つけ出してすぐさま貴様を撃ち殺すだろう!ははは!」
主人公「ほい、これ持ってて」
敵女幹部「あ、うん」
敵女幹部「あ……」
敵女幹部「あ、あたしの一張羅が……ついに完全にボロ切れに……」
敵女幹部「ゴワゴワするんだが」
主人公「仕方ないだろう?上等な素材なんて手に入らないんだから。新しい服が手に入るだけありがたいと思え」
敵女幹部「はぁー、文明圏に帰りたい。なあ、ここのところきついんだが、直してくれるか?」
主人公「ああ、いいぞ」
敵女幹部「この胸のあたりなんだが……」
主人公「お、おお」
敵女幹部「あと腰も……」
主人公「…………」
敵女幹部「どうしたんだ?」
グイ!
敵女幹部「キャ!?」
主人公「……」
敵女幹部「な!?ば、バカ!やめ……」
主人公「っ!?す、すまん、俺はなんてことを……その、我慢できなくて…」
敵女幹部「いや、あっち行ってよ」
主人公「ああ…………」
敵女幹部「もう嫌だ!泥だらけで、臭くて、そのうえ同居人は狼!もういい、一人で暮らしてやる!」
ガサガサ!
敵女幹部「何の……音だ?」
恐竜「ギャオオオオオオオオオオオ」
敵女幹部「い、い、いやあああああああああ」
ビシ!ブス!
恐竜「グギャオオオオオオオオオ」
主人公「そいつから離れろ!」
恐竜「グギャ!グギャアアアア」ダダダダ……
主人公「ふう、行ったか」
敵女幹部「…………」
主人公「さ、さっきはすまん、その……」
だきっ
主人公「!」
敵女幹部「うわあああああ!怖かった、怖かったよおおおお!」
敵女幹部「…………」
主人公「…………」
敵女幹部「………なあ」
主人公「うん?」
敵女幹部「お前らはなぜ組織に反抗するんだ?我々の手で世界が統一された方が好ましいとは思わないのか?」
主人公「独善と傲慢だな。人間割り切れるものじゃないさ。この自然のように、自由で伸びやかな生き方を愛する者もいる」
主人公「わからないか?こういう暮らしの良さが」
敵女幹部「わからないな……何より不自由じゃないか。文明から切り離された生活なぞ一刻も早く離れたいよ」
主人公「そうか。俺はこのままでも構わないんだけどな」
敵女幹部「気が狂ってる」
主人公「でもいいもんだろ?焚き火を眺めるのも」
敵女幹部「まあ、たまになら、いいかな」
敵女幹部(雪、か)
主人公「ほら、いつまで雪なんか眺めてるんだ。早く入れよ。体温だって貴重な資源だぞ」
敵女幹部「ああ」
敵女幹部(こいつに素直に従うようになってどれくらい経つだろう)
主人公「よし、食事の準備ができたぞ」
敵女幹部「……ありがとう」
敵女幹部(こんなこと言っちゃったりする。変われば変わるものだ)
敵女幹部(食料はたんまり用意した。このままでも冬は越せるだろう。まあ、不安はないというわけだ)
主人公「やられた……」
敵女幹部「え?」
主人公「ネズミだ……」
主人公「やるしかない、もう完全に食料が尽きたんだ、このままじゃ餓死か凍え死にだ」
敵女幹部「しかし、恐竜を狩るなんて……危険すぎる!」
主人公「やるしかないんだ!お前は下がってろ、危ないぞ」
敵女幹部「…………っ」
敵女幹部(この感情はなんだ?私はあいつのことを本気で心配している……?)
敵女幹部(出て行ったきり二日帰ってこないなんて、まさか……)
敵女幹部「おーい!おーい!」
主人公「う……あ……」
敵女幹部「ここにいたのk……ひ、ひどい怪我じゃないか!?」
主人公「は、はは、し、仕留めたぜ……い、一頭……相打ちになっちまったがな……これで、冬は、なんとか……」
敵女幹部「もう喋るな!今シェルターまで運ぶからな!う、うう!うん!」
主人公「おれは……いい。お、お前だけでも……」
敵女幹部「し、死なないで、一人になっちゃうじゃないか!」
敵女幹部「体が冷え切ってる……血を失いすぎたんだ、まずい……」
敵女幹部「……ック、この手しかないか」ヌギ……
主人公「あ……ぐ……なに、裸になって……んだ……?」
敵女幹部「黙っていろ…!」ピト
主人公「う……あ……」
敵女幹部「暖かいかどうかわからないがこうする以外思いつかない、すまん。生きてくれ……!」
…
………
……………
主人公「………こ、これは?」
敵女幹部「起きたのか?大丈夫か?」
主人公「あ、ああ。なんとか動けそうだ」
敵女幹部「よかった……本当に、本当に!」
主人公「俺たち、ずっと裸で抱き合ってたのか?」
敵女幹部「あ、ああ……でも、あんたなら……もう!どうしてこうなっちゃったかなぁ……」
主人公「お前……」
主人公「おーい!おーい!」
敵女幹部「ここだー!」
主人公「……で、生まれたのがお前というわけだ」
娘「えーーーっ、どこからが作り話なの!?ていうかお父さんは最初世界を救うはずじゃなかったのー?」
主人公「すまん、こいつと出会って放棄した」
敵女幹部「私もだ。組織への忠誠とかどうでもよくなってしまった」
娘「えーーーーーっ」
主人公「まあ、今が幸せだからいいんじゃないか?なあ」
敵女幹部「うん/////」
娘「はぁーっ、ほんとお父さんとお母さんって仲いいよねえ」
終