側近「王、最近の我が国は財政難。速急に対策を打たねばなりません」
王様「…側近、いい案はあるか?」
側近「案…ですか。おい財務大臣、何か意見はないか?」
財政大臣「我輩ですか。なら、いい案が」
王様「ふむ…申してみよ」
財政大臣「…このところ、我が国では兵力が余っており――…」
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――――【 王宮都市・演習広場 】
…ビュンッ!!ビュンッ!!
王宮騎士「やぁっ!!」
王宮兵士「たぁぁっ!」
王宮戦士「おうっ!」
騎士長「いいぞ…その調子だ!腕の振りが甘いぞ!」
王宮騎士「はいっ!」ビュンッ!
騎士長「よし、そうだ!」
騎士長「当たり前だ、俺を誰だと思っているんだ」
王宮騎士「いやはや…さすがですよ。貴方がいれば王宮都市の未来も安泰だ」
騎士長「俺が魔物や、賊からこの国を救うさ」
王宮騎士「本当にご立派です。見習わなければなりませんね」
騎士長「ははは、誉めても何も出ないぞ」
王宮騎士「はははっ!」
…カツ、カツ、カツ
???「どーも、今日も演習場から元気な戦士達の声…頼もしいですなぁ」
側近「やぁやぁ、今日も精が出ますね騎士長殿」ニコッ
騎士長「側近殿でしたか…。いえ、それほどでも。いつ蛮族が襲うやもわかりませんし、いつも本気で取り組みますよ」
側近「それはいい心がけですね」
騎士長「この王宮、王国に務めて早10年…。少年時代よりお世話になった事をいつも感謝してます」ハハハ
側近「…」
騎士長「…」
側近「…」
騎士長「…側近殿?」
騎士長「…お話、ですか?」
側近「はい…実はですね…」
…………
………
……
…
――――【 近くの酒場 】
…ドンッ!!!
騎士長「…だってよ、笑えるだろう!?」ハハハ
店主「…お前が”クビ”、ね」
騎士長「はぁ~…何でだよぉ!!」グスッ
店主「それにしても、どうして急にクビなんだろうな。お前程、王国に捧げた奴もいないだろうに」
騎士長「この歳で、俺は高給取りの立場だったしな…」
騎士長「最近は王国が財政難っつーだろ?それに最近は平和だし…、高給取りの騎士はいらないんだろうよ!」グビグビ
騎士長「店主は、今の一代前の王のことを知ってるんだろ?どんな感じだったんだ?」
店主「あの頃の王様は優しくてなぁ…、この酒場にも飲みに来てたんだぜ」
騎士長「うっそぉ!?この汚い酒場に!?」
店主「お前、そのビールの値段2倍な」ピクピク
騎士長「うっそぉ!?ぼったくりだぞこの店はみーなさーん!!」
店主「うっせぇよ!今は昼間だから誰もいねぇよ!…まぁ、それより前の王は、本当にいい王だったよ」
騎士長「へぇ…何で交代したんだ?」
店主「前王が病になって、当時のナンバー2が指揮をとって…そのままズルズルだな」
店主「それからはキツイったらありゃしない。税は増えるわ、変な輩が城に出入りするわ…」ハァ
騎士長「変な輩…あぁ、最近王室に出たり入ったりしてたな」
店主「治安が良いとはお世辞にもいえねえな。まぁ…そんな王国、見切られて良かったんじゃねえの?」
騎士長「…何だかなぁ」
店主「それよか、お前はこれからどうするんだよ。まだ23だろ?若い出世だったのにな」
騎士長「あ~…どうしよう。魔物退治とかでいい依頼出してる所とか知らない?」
店主「うちの酒場も一応、そういう紛いの依頼受付だのの事はしてるが…」
騎士長「いい依頼ないよな、ここ」
騎士長「どれどれ、何があるんだーっと」ガタッ
トコトコ…ペラッ
騎士長「ふむふむ、どぶさらい…、迷い猫探し…、掃除…」
店主「…」
騎士長「ぷっ…はーっはっはっはっは!!漫画かよ!!」
店主「うるっせぇぇ酔っ払いが!!お前今日の代金3倍だからな!!」
騎士長「うっそぉ!?ぼったくりですよみーなーさーん!!!」
店主「昼間だから誰もいねえし、同じこと繰り返してるんじゃねーよ!」
店主「ったく…まだ昼間なのに出来上がってるんじゃねーっつーの」ハァ
店主「ま…気持ちは分かるけどよ」
騎士長「だろう!?もっと酒もってこぉ~~い!!」
店主「ったく、仕方ねえなあ…ん?」
…コンコン
店主「…また客か?昼間から珍しい」
騎士長「俺がドア開けてあげますよぉ~っと」ガタッ
フラフラ…
店主「お、おいおい!他の客だったら迷惑かけないでくれよ!」
ガチャッ…ギィィ…
騎士長「はーい!いらっしゃいまー…せ…?」
女の子「…」
騎士長「客、なの…?」
店主「ん…お、女の子…?」
女の子「…」キョロキョロ
店主「まさか!見たこともないぜ」
騎士長「ふむ…」
騎士長(黒髪…薄らとした褐色気味の肌…。砂漠地方の出か…?)
女の子「…」
騎士長「おい、お母さんとお父さんはどうした?」
女の子「…たい」
騎士長「あん?」
騎士長「あ…?」
店主「お嬢ちゃん、今何て言った?」
女の子「ここで、依頼を受けてくれるのかと聞いた」
店主「そりゃ受けてるが…」
女の子「どうすればいい」
店主「そ、それなら、この紙に書いてもらえればいいが…」ペラッ
女の子「わかった」
トコトコトコ…
騎士長「な…何なんだ一体」
店主「さぁ…」
女の子「…」ジー
店主「…」
女の子「…」ジー
店主「…どうした?書かないのか?」
女の子「高くて届かない」
騎士長「…お嬢ちゃんに、カウンターはまだ高いか。ほらよっ」ヒョイッ
女の子「!」フワッ
騎士長「ここに座れば届くだろう。ほら、これで書けるだろ」
騎士長「いんや、礼するほどじゃねえよ」
女の子「…」
騎士長「…」
女の子「…」ジー…
騎士長「…こ、今度はどうしたんだ?」
騎士長「…」ハァ
騎士長「仕方ない、俺が変わりに書いてやるよ、ペンを貸せ」
女の子「…色々ありがとう」
騎士長「だからそれくらいイイっつーの。で、内容は?」
騎士長「はいよ、お父さんを殺してっと…」カキカキ
騎士長「…」
騎士長「…何て言った、今」
店主「おい、今このお嬢ちゃん…何て言った…?」
女の子「聞こえなかったか?”お父さんを殺して”と言った」
騎士長「お前…」
…ガチャアン!!!
傭兵「どこだコラァ!!」
奴隷商人「ここに逃げたのは分かってるんだからな、出て来い!!」
店主「こ、今度は何だ!」
騎士長「こいつのことか?」ヒョイッ
女の子「わわっ」
傭兵「そうそう、そのくらいの…って、ソイツだコラァ!!!」クワッ
騎士長「やかましいー奴だなー」
店主「お前が言うな」
傭兵「そいつをおとなしく渡せ。そいつはうちの奴隷なんでね」
騎士長「…お嬢ちゃん、奴隷だったのか?」
女の子「…」
女の子「…」
傭兵「…早く戻って来ないと、また鞭で打つぞコラァ!!」
女の子「!」ビクッ
騎士長「まぁ…待てよ。この子は砂漠地方の出だろ?あそこは奴隷の扱いを禁止してなかったか?」
傭兵「…うっせぇ!お前には関係ないだろう!」
騎士長「お前がうるせぇよ。で、お嬢ちゃん・・・どうして奴隷になったか聞かせてくれないか?」
女の子「あ…あの連中が…、村を襲った…」ビクビク
騎士長「…ははーん」
奴隷商人「そうだぞ、そいつはもううちの商品なんだからな!」
女の子「…」ブルブル
騎士長「…」
店主「…騎士長、店は気にするな」
騎士長「あん?」
店主「…俺もあいつらはちょっとムカつくからな」
騎士長「いいのか?」
店主「やっちまえ」
騎士長「…恩に着るぜ」ニカッ
奴隷商人「早くしないと、この傭兵が店を壊すぞ?」
女の子「…」ビクビク
…ポンッ
女の子「…え?」
騎士長「おい、お嬢ちゃん…名前は?」
黒髪幼女「く…黒髪幼女…」
騎士長「そっか、じゃあちょっと…店主にジュースでも貰ってな!」
黒髪幼女「じゅ…ジュース…?」