女王「今人類は魔王の復活によって再び危機に陥っています」
女王「魔王を倒すために多くの人々が旅に向かいましたが、未だ魔王城にたどり着いたものはいません」
女王「勇者の血を引き継いだ貴方だけが希望です」
女王「魔王を倒し、再び人間の世の平和を取り戻してください」
勇者「……」ポカーン
勇者(女王さま凄く綺麗だ)ポカーン
勇者「へっ?あ、はい!任せてください!必ず魔王を倒して見せます」
女王「この国の命運があなたにの両肩にかかっています。どうか頑張ってください」
勇者「はい!女王さまのため…いや、人々のために、この身が砕けるとしても必ずや…」
女王「フフッ、その意気は良いです。ですが、ご自分の身にも十分にお気をつけて下さい」
女王「最初の頃は周りの街を巡りながら経験を重ねることになるでしょう」
女王「傷をおったら無理をせずしっかり休んで」
女王「どうか死なないようにしてください」
勇者「はい」
勇者(女王さま…なんて優しい人なんだ)
女王「王に伝わる力を得てして、あなたがどれほどの経験を積んだらまた成長できるかを見てあげます」
勇者「はい!」
勇者(レベルアップしたら女王さまに会いに来れるのか)
女王「では、旅をはじめる前に、まず装備を揃えてきてください」
女王「この金を使って、戦うための武器を備えて戻ってきてください」つ宝箱
勇者「はい、ありがたくいただきます」
女王「では、装備を整えてまた会いに来てください」ニコッ
勇者「女王さま、綺麗な人だったな……」ボーッ
勇者「また会いたいな」
勇者「早く装備を整えてまた女王さまに会いに行こう」
ゆうしゃは たからばこを しらべた。
なかには 100Gが 入っていた。
ゆうしゃは 100Gを 手に入れた。
武器屋「らっしゃいませ。なんか買って行くかい?」
勇者「あの、私勇者なんですけど、これで買える武器と装備ください」
武器屋「100G…じゃこれぐらいだな」
こんぼう と ぬののふく
勇者「…え、これだけですか?」
武器屋「100Gじゃねー。これぐらいしかあげられないね」
勇者「こんぼうって…せめて剣じゃないと」
武器屋「どうのつるぎはあるが、これだけで180Gだからな」
勇者「そんなに高いんですか?!」
勇者「資金内で買えるだけ買っていこうかな」
勇者「でもせっかく勇者として旅立つ前に女王さまに会いに行くのに」
勇者「混紡に布の防具なんて恥ずかしいよ…」
勇者「……良し」
勇者「この金はお預けして、取り敢えず周りのモンスターから金を稼ごう」
勇者「それでちゃんとした防具を買って女王さまに会いに行こう」
スライム
勇者「出たな」
勇者「よし、武器はないけど頑張るぞ」
ゆうしゃのこうげき
だが スライムは すばやく それを よけた
勇者「あ」
スライムの攻撃
勇者は 2のダメージを うけた。
勇者「うわっ、ヌメヌメするよ
勇者は あわてて こうげきできない。
勇者は 2のダメージを うけた。
勇者「痛い!な、なんとか反撃しないと…」
ゆうしゃのはんげき
スライムの 1のダメージを あたえた。
勇者「よし!」
スライムの こうげき
かいしんの いちげき
勇者は 3のダメージを うけた。
勇者「うっ!!うぅ……」
ゆうしゃのHPが0になった。
勇者は目の前がまっくらになった。
・・・
・・
・
勇者「…ううん?」
女王「勇者、起きなさい」
勇者「……?女王さま?」
勇者「あれ、ボクって…」
女王「勇者、死んでしまうとは何事です!」
勇者「!」ビックリ
女王「ちゃんと装備を整えて私に会いに来なさいって言ったはずです!」
女王「なのに私の話を無視して、武器も防具も無しでモンスターに挑んだ挙句、倒れてしまうなんて…」
女王「あなたには失望しました」
勇者「…ご、ごめんなさい」
勇者「でも、100Gだけじゃちゃんとした武器が買えなくて…」
女王「…!」
勇者「自分で稼いでちゃんと武器を揃えて女王さまに会いに来ようと思ったんです」
勇者「ごめんなさい!」
大臣「はい」
女王「どういうことでしょうか」
大臣「申し訳ありません。今の国の予算では、それぐらいしか…」
女王「私の個人予算から勇者に1000Gぐらいを与えてください」
大臣「!し、しかし女王さま」
女王「言う通りにしなさい。私は大丈夫ですから」
大臣「…はっ」
女王「勇者、もう一度あなたにチャンスをあげます」
女王「今度はちゃんと私の言う通りにしてくださいね」
勇者「はい、女王さま!」
大臣「魔王のせいで苦しむ人々のために、国の予算を全部街の防衛や家を失った民の救済に使うために」
大臣「国の王族のための予算も最小限にして、女王さま個人の私財さえ全て国庫に回したというのに」
大臣「スライムなどに死んでしまう勇者相手のため更に自分の身体を削られるとは…」
大臣「……姫さまを失った傷心が如何に深いものか」
大臣「あの勇者に賭ける女王さまの願いがどれだけ大きいものか」
大臣「今まで多くの者たちが魔王を倒しに向かったが」
大臣「そんな連中は全て王家の姫を救出すれば、自分が姫と結婚して次この国の王になって好き勝手にできるだろうという欲望で冒険を始めた」
大臣「だが誰も魔王を倒したものは居なく、今や貧乏になった王家のために命を賭けて魔王を倒しに行くと出る者も居なくなった」
大臣「昔の魔王を倒した勇者の血を引く勇者よ」
大臣「どうか、女王さまの願いを叶えてくれ」
勇者「ありがとうございます、女王さま!」
女王「あなたを信じています。どうか頑張ってください」
勇者「はい!今度こそ絶対に女王さまのこと失望させません」
女王「期待しています」ニコッ
勇者「…//////」
勇者「やった、勝った!」
勇者「スライムってこんな弱かったんだ」
勇者「女王さまがくれたお金のおかげでずっと楽だよ」
勇者「女王さま、綺麗だし、優しいし……良い人だったな」
勇者「lvあがったら会いに行こう」
勇者「今日はもうHPにあまりないし、宿屋に帰って休もう」
勇者「またLv1で無理して死んだりしたら、女王さまに合わせる顔がないよ」
勇者「よし、部屋はもらったし、夕食食べに行こう」
宿屋の酒場
勇者「……」もぐもぐ
村人A「これも全部王が無力なせいだ!」
勇者「?!」
村人A「落ち着いていられるか、チクショウ!」
村人A「俺は国を信じて妻も娘もおいて兵士になったんだぞ」
村人A「なのに俺が居ない間、国は俺の村が魔物たちに襲われてるのに何もしなかった」
村人A「俺が戦い中で腕一本を失って戦えなくなって村があった場所に戻るまで、誰も俺に村が襲われたことさえも教えてくれなかった」
村人A「俺は…この国が嫌だ」
村人A「俺の家族を見捨てた無能な王なんて死んでしまえ!」
勇者「女王さまのこと悪く言わないで!」」
勇者「ボクは勇者、女王さまに命じられて魔王討伐のための旅をしてるよ」
村人A「勇者だ?ふん、国の犬じゃねえか」
勇者「女王さまは絶対国の人々のことを蔑ろになんてしてないよ」
勇者「女王さまは皆のために一生懸命頑張ってるよ」
村人A「ほざけ!あんなに頑張ってるのに、何故俺の妻や娘は助けられなかった」
村人A「何故俺の村をほったらかしにした!」
勇者「それは……きっとそうするしかない理由が…」
村人A「ふざけんな!!」村人Aは ゆうしゃに おそいかかった
勇者「っ!」
村人A「勇者が何だ!」
村人A「人を守ることもできない勇者なんて!ただのお偉いさんだ!貴様も無能な王も一緒だ!」
村人A「この国は魔物たちに人々が死ぬだろうがどうなるだろうがどうでも良いんだ!」
勇者「そんなこと…ない」
勇者「女王さまはそんな人じゃない!」
村人A「そんなに王のことを信じてるなら、あいつに聞いてみろ!」
村人A「なんで俺の妻は死ななけりゃならなかった!」
村人A「いつも安全な城に隠れて頑張ってるとばかり言ってる貴様に俺たち平民の辛さが分かるかってよ!」
村人B「おい、いい加減にしろ!…すみません、勇者さま。こいつが酔ってるせいで少し口が荒くなってるだけです。勇者さまのことを悪くいうつもりはありません」
勇者「……」
城
勇者「女王さまは…」
女王「勇者、良く無事に戻って来ました」
女王「今あなたのLvからつぎのLvに上がるには 253の経験値が必要です」
勇者「……」
女王「…どうしたのですか、勇者?」
勇者「女王さま、少し聞きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
女王「……」
勇者「…ある村で、自分の村と家族を失った人を見ました」
勇者「彼は女王さまが、自分たちの家族を守ってくれない無能な王だと言っていました」
女王「…!」
大臣「勇者、女王さまの御前でなんという無礼な言葉を…!」
勇者「言ってください、女王さま」
勇者「女王さまはどうして、あの人たちを助けてくれなかったのですか」
勇者「ボクは女王さまが、そんな人じゃないって信じています」
勇者「女王さまはとても優しい人です。女王さまのような人が民たちのことを蔑ろにしたはずがありません」
勇者「でも、民たちはそうは思っていませんでした」
勇者「だから、そんな人たちの誤解を解くためにも、ボクに言ってほしいんです」
勇者「どうして女王さまは、あの人たちを助けてくれなかったのですか」
勇者「?!」
女王「私が無能なばかりに、彼らを助けられなかったのです」
大臣「女王陛下!」
女王「お静かになさい、大臣」
大臣「……」
女王「彼はきっと以前に起きた魔物たちの総攻撃の時の犠牲者でしょう」
女王「魔物たちの大規模な終結を事前に確認した私は、国の男子たちを集め、急いで防御線を造りました」
女王「でも、どうしても兵力が足りず、国全体を守るために、私は仕方なくいくつの村を選ばなければなりませんでした」
女王「守備をせずに、村の若い男子たちもないまま魔物たちの攻撃を受けるしかない村が現れても」
女王「私はそうしなければなりませんでした」
女王「彼ら全部を守る力が、私にはありませんでした」
女王「だから、彼らの言う通り、彼らを守れなかったのは、私の無能さが招いたものです」
勇者「…はい」
女王「私があなたが思ってるような優しい王じゃありません」
女王「私が弱くて、非情な王です」
女王「自分の民たちも満足させられない無能な王です」
女王「あの村人をまた会えた、こう伝えてください」
女王「もし、私がまたあのようなことが起きたら、私はまた誰かを救うために誰かを見捨てなければならない、そんな非情な王だと」
女王「だから、私を憎みたいのなら存分そうしてください。私にはそれを止める権利がありません」
勇者「……」
女王「?」
勇者「女王さまな非情な人なんかじゃないです」
勇者「本当に女王さまが人々の命を蔑ろにする非情な王なら」
勇者「その美しいお顔で涙を流すはずがありません」
女王「…!」
勇者「無礼なことを言ってしまって申し訳ありません」
勇者「ボクはこれで失礼します」
勇者「女王さまが泣く姿なんてもう見たくありませんから」
勇者「次は、女王さまの顔から笑顔を見られるような話を持ってきます」
女王「……」
勇者「……」
勇者「他にも、あんな人たち沢山居るのかな」
勇者「女王さまのせいじゃない」
勇者「他の誰がやったとしても、皆を助けることなんて出来なかったはずだよ」
勇者「でも、人たちはそんなことは思ってくれない」
勇者「大事なのは自分を守ってくれない無能が王が悪いだけ」
勇者「……」
勇者「頑張らないと」
勇者「ここも、女王さまの評判悪いかな……」
??「もう王国なんて懲り懲りだ!」
勇者「?」
村の青年「国が俺たちに何をしてくれたっていうんだ」
青年「魔物たちとの戦いという口実で重税を取ってばかりで我々を助けてはくれない」
青年「このままじゃあ絞られるだけ絞られて、隣の村たちのように魔物に滅ぼされるだけだ」
青年「そうするぐらいなら、国に拘束されずに、私たちだけで村を守った方がマシだ」
ざわ・・・ざわ・・・
村人D「税金ばかり持って行って、私たちの生活も厳しいというのに」
村人E「私たちのことも守ってくれないくせに」
青年「きっと今でも城では、俺たちの血税で王族と貴族どもが呑んで踊っているに違いない!」
青年「そんな奴らに搾り取られて死ぬぐらいなら、俺たちだけの力でも村を守った方がマシだ!」
>>そうだ、その通りだ。
勇者(…村人たちだけで村を守る)
勇者(確かにそうも出来るかもしれないけど、限度があるよ)
勇者(しかも、あの人たちは勘違いしている)
>>何だ?
青年「なんだ?この村の人じゃないな」
勇者「ボクはこの村の人じゃないよ。ボクは王都から魔王を討伐するように命じられて旅をしている勇者だよ」
>>勇者?
>>勇者だってよ。
勇者「皆は女王さまが自分たちから税を奪うだけで、自分たちを守るつもりはないと思ってるみたいだけど」
勇者「女王さまは自分のために皆がくれた血税を無駄使いするようなまねはしないよ」
青年「嘘だ!もしそうだとしたら何故他の村たちは滅ぼされたんだ!彼らが国にあげた税金はどこに消えた」
勇者「ただ、それでも皆を守る程の力がなかっただけだよ」
ざわ・・・ざわ・・・
青年「結局国が無能ってことじゃないか。そんな王のために働いて死ねというのか!」
勇者「ボクの話を聞いて!」
勇者「今王都の城の中は空っぽだよ」
勇者「金になるような飾りや、家具たちも皆売ってしまって」
勇者「今城の中は皆の家のように食卓や椅子、寝るためのベッドぐらいが全部だよ」
勇者「女王さまだって、高い宝石や金ものは全部売りつけて国防に使ってるよ」
勇者「一国の王さまとは思えないほど倹素な姿で過ごしているよ」
・・・ざわ・・ざわ・・・
勇者「それでも、女王さまは皆のために精一杯頑張ってるよ」
勇者「そして、勇者のボクも、そんな女王さまのためなら、そして、皆を守るためなら命を賭けて頑張るよ」
勇者「だから、皆も女王さまを信じて欲しいよ」
勇者「以前のような魔物たちの攻撃が合った時、皆は自分たちだけで村を守る自身があるの?」
青年「そ、それは…!」
勇者「今国が皆一つになって互いを助け合わないと、誰一人もろくに助けることができないよ」
勇者「誰かを助けるために皆を犠牲にするってわけじゃないよ」
勇者「ただ、皆が女王さまやボクたちを信じてくれないと、ボクも女王さまも、皆を助けたくてもそうすることができない」
勇者「そうじゃないよ!」
勇者「どうしてわかってくれないの?」
勇者「女王さまだって皆を守られるような力があったならそうしてたはずだよ」
勇者「精一杯頑張っても出来ないことだってあるんだよ」
勇者「女王さまはね、助けることが出来なかった人々のために泣いていたよ」
勇者「皆を守れなかった自分の無能さを嘆いていたよ」
勇者「ボクは女王さまのそんな顔をもう見ないためにも、皆のためにも言ってるんだよ」
勇者「女王さまの信じて、今までのように信じてついてきて」
青年「!」
>>村長!
>>起きても大丈夫なのですか。
村長「外が騒がしくての、病だからと言って黙って寝てばかりは居られんかったんじゃよ」
村長「にしても、随分若い勇者よの」
勇者「……」
村長「この国もそれ程腐っているということじゃ」
勇者「そんなことは…!」
村長「王族たちのことを言ってるわけではあるまい」
村長「お前たちのことじゃよ!」かーつ!
青年・村人「!」ビックリ
村長「自分たちのことしか知らんのはどっちじゃ!」
村長「国を司る者の苦労も知らずに…目の前の損益に目が眩みおって」
青年「し、しかし村長」
村長「もしもじゃ、坊や。お主らだけでこの村を守るとしてみよう」
村長「でもとても沢山の数の魔物たちが現れたのじゃ。とても自分たちの力だけじゃ勝つことが出来ぬ」
村長「そんな時に隣の村に助けを求めるのじゃ。自分たちと一緒に力を合わせて戦おうと」
村長「どうせこの村が滅ぼされると次は彼らの村がなくなる番じゃろうからの」
村長「力を合わせた方がきっと多くの者どもが助かる」
村長「お前たちの村を助けるために行っている間、魔物たちが自分たちの村に襲ってきたらどうするのだ?」
村長「そしたら、人のものを守るために、自分たちばかり犠牲になる様ではないか」
村長「そんなことになるぐらいなら、奴らを壁にして、自分たちは自分たちのものだけを守った方が良い!と」
村長「なんと愚かな発想じゃ」
村長「そうした所で、村一つ一つのちからだけじゃあ、村を守れずどっちの村も滅ぼされるじゃろう」
青年「………」
村長「お前らのような考えで国が守れるか!」
青年「し、しかし村長」
村長「まだ何か言うことがあるのか!」
村長「そんなに犠牲にされるのが嫌なら一人で森に乗り込んで魔物どもから自分を守ってみろ!」
村長「誰もお前が挫けた時に手を貸してくれる奴なんざおらぬわ!」
青年「っ」
村長「そんなお前らのために国はあるんじゃよ」
村長「お前らが国に尽くすことを惜しんだ分、国のどこかでは人が死んでゆく」
村長「他の村がそうしても同じじゃ」
村長「王さまはお前たちのために頑張ってるわけじゃない」
村長「この国の民皆のために頑張っておるのじゃ」
村人「……」
村長「厳しい時期じゃ。お前たちが恐いのも分かる」
村長「じゃが、そんな子供のような駄々を言ってるうちにも、王さまはこの国のために自分の骨肉を削っていらっしゃる」
村長「そしてこの勇者も、お前たちのために命を賭けて魔王と戦う修行を積んでおるのじゃ」
村長「さあ、皆仕事に戻りな。そしてもうこんな馬鹿な騒ぎを起こして老人の眠りを邪魔をするでない」
村長「勇者さま、わしに付いてきてもらえるかの」
勇者「あ、はい」
村長「済まないの、若い連中が若気で暴れてるだけじゃ」
村長「本当はそうする度胸も能力もおらぬ癖に、ただ国を誹謗するばかりじゃ」
勇者「……他の村でも見たことがあります」
勇者「きっと、この国の多くの人たちが女王さまについてそう思ってると思います」
村長「馬鹿な連中じゃよ」
村長「先代王の時にあれだけ助けられても、少しでも自分たちに不利になれば直ぐこうじゃ」
村長「とは言え、辛い時なのは事実じゃからの」
勇者「……」
勇者「はい、とても綺麗なお方で、優しい方です」
村長「ふぉふぉふぉ…随分と惚れておるようじゃの」
勇者「え?ちがっ…そんなことでは……」
村長「ふぉふぉ…隠さんでも良いのじゃよ」
村長「わしも今の女王さまのお顔を拝見する機会があったからの。その美しさはちゃんと憶えておる」
村長「なに、まだ女王さまが幼い姫さまであった頃の話じゃがの」
村長「先代王さまは、良く娘を連れて、国のあっちこっちを見まわってたものじゃ」
村長「魔王さえ復活してなければ、この国もきっと笑顔で満ちてたはずじゃ」
村長「じゃが、今や人々の顔で笑顔なんて見ることも難しくなってきおった」
勇者「…女王さまは泣いていました」
村長「……」
勇者「ボクは、女王さまの力になりたいです」
村長「…そうか」
村長「なら、今よりももっと頑張らねばならんの、若い勇者よ」
勇者「…はい」
勇者「あれ?」
勇者「城門の門番が……居ない」
大臣「おお、勇者ではありませんか」
勇者「大臣さま」
大臣「噂は耳にしました。旅で村を回りながら、人々を励ます言葉と、女王さまの苦労を皆に話してくれているらしいですな」
大臣「王国への評判が下がる一方だったのに、感謝しています」
勇者「ボクはただ、皆に本当のことを話したばかりです」
勇者「所で、女王さまを謁見出来ますでしょうか」
大臣「……それが」
勇者「…!女王さま?!」
女王「?ああ、勇者」
勇者「どうしたんですか、その姿は」
勇者「服が土まみれになって…それに手に持っているのは…」
大臣「私がいくら止めても聞いてくださらず…」
女王「国の存亡がかかっているのです」
女王「私にできることならしなければ」
大臣「女王さまは、国の使用人たちを皆解雇しました。親衛隊も皆、国の防衛軍に編成しました」
勇者「え?」
大臣「城の庭も皆畑に変えて、村を失った人々が食べていけるように分けてあげました」
大臣「それだけでなく、女王さまご自分もああやって畑を耕して人々を助けることも…」
勇者「……」
女王「城の中にばかり居ても、できることが限られますからね」
女王「あの人たち皆、私が無能なせいで家族や家を失った人達です。他にもいっぱい居るでしょう」
女王「私がこの人たちを助けるためならできる限りを尽くすつもりです」
勇者「……」
勇者「これ、使ってください」
女王「…これは…?」
勇者「これよりももらったのですけど、これ以上は持てなくて…」
女王「…?」
じょおうは たからばこを しらべた。
なかには 65535Gが 入っている。
女王「!?」
勇者「村を巡りながら女王さまのことを話したら、人々が少しずつ女王さまに伝えて欲しいともって来ました」
勇者「後、ボクもモンスターを倒しながら集めました」
女王「こんなにたくさんのGをどうやって…」
勇者「村の人たちに女王さまの話をしたんです」
勇者「ボクが知っている限り、女王さまの本当の姿を、その苦労を全部伝えました」
勇者「そしたら、皆少しずつ集めてくれました」
勇者「自分たちを、国のために頑張ってる女王さまに使って欲しいって」
勇者「これはその人たちの信頼です」
勇者「そして、ボクの女王さまへの尊敬です」
女王「私に話して欲しいです」
女王「国の人々が今どんなことを思っているか」
女王「彼らの話を聞きたいです」
勇者「はい」
そして、ボクは女王さまに、ボクが旅をしながら見たこと聞いたことを全て話した。
話を聞きながら女王さまは真剣な顔でその話を聞いたり、またある時は自分の足りない部分を嘆いたりもしていたけど、
大半の時、女王さまが笑っていた。
自分はまだ人々から愛されているって、彼らもまた頑張っているって。
女王さまはボクの話を聞いて力を得ていた。
以前女王さまの涙を見た時、ボクは心が割れるように思った。
でも、今こうして女王さまの笑顔を見ていると、その姿があまりにも美しくて、嬉しそうで、
一瞬自分が勇者で相手が女王さまであることを忘れそうにもなった。
女王「あなたのおかげで、ここしばらくで一番元気つけられた気がします」
女王「最初の私は、ただあなたが魔王を倒してくれればそれで良いと思っていました」
女王「なのにあなたは、国の人々の心や私の心も潤わせてくれた」
女王「あなたは本当の勇者です」
勇者…女王さま」
女王「なんですか、勇者」
勇者「ボクはしばらく城に戻らないようと思います」
女王「…はて?」
勇者「これから、魔王を倒しに行こうと思います」
勇者「そして、魔王を倒し、女王さまの娘、姫さまを助けてきます」
勇者「女王さま」
女王「なんですか、勇者?」
勇者「もしボクが無事魔王を倒して、姫さまを連れてここに戻ってきたら」
勇者「その御礼として、一つだけ、ボクのお願いを聞いてください」
女王「……」
女王「…分かりました」
女王「あなたが魔王を倒してくれるのなら、あなたはこの国の恩人」
女王「それ相応のお礼をしましょう」
勇者「……」
女王「シェフは故郷に帰らせたので、私が直々お料理を振る舞うようになると思いますが、まずくても我慢して頂けると嬉しいです」
勇者「…はい!」
女王「フフッ では、今日はいつもより少し力を入れてみましょう」
女王「姫以外の人に料理を振舞ったことなんてないのですよ」
勇者「期待してます」
女王「ええ」
勇者「ボク野菜嫌いなのに、野菜ばかりの料理あんなに美味しく食べたのって初めてかも」
??「…っ……うぅっ…」シクシク
勇者「…あれ?」
??「…め……姫……」
勇者「この声って…(もしかして、女王さま?)」
女王「姫…あなたに失ったもう何年経つのでしょうか」
女王「私は…私はダメな母です」
女王「娘のあなたも守れなかった私が」
女王「国の人々を守ることなんてできるはずもありません」
女王「でも、あなたを失った悲しみを忘れるために、もっともっと国政に励みました」
女王「勇者は私を優しい王だと言いますが、実は全部あなたを失った悲しみを忘れるための口実でしかないのですよ」
女王「姫のことをもう諦めようと思っていました」
女王「なのに…今度なら、あの勇者ならやってくれるかもしれないと期待してしまうのです」
女王「姫……私のかわいい姫……」
外
勇者「……」
勇者「では女王さま、必ず戻ってきます」
女王「…お願いします、勇者」
女王「一国の王としても、一人の母親としても」
女王「あなたが帰って来ることを待っています」
勇者「はい!お任せ下さい!」
勇者「(貴女のために…必ず!)」
魔王「また来たか。人間の勇者よ」
勇者「」
魔王「ここまで俺の多くの部下たちを倒してきたその力、賞賛に値するだろ」
魔王「余の下僕となれ」
勇者「」
魔王「さすればこの世の半分をお会えに与えよう」
勇者「御託は要らないよ」ズシャッ
勇者「この世の半分だって?」
勇者「この世の全てをボクにやると言っても、ボクはお前を倒すよ」
魔王「…くくっ、そうか。さすが勇者。この世一番の偽善者よ」
勇者「違う」
勇者「偽善なんかじゃない」
勇者「お前がこの世の全てが欲しくて魔王になったみたいに」
勇者「ボクもボクが欲しいもののためにお前を倒すんだよ」
勇者「この世の全て…?」
勇者「そんなの、ボクが望むものに比べればちっぽけなものだよ」
勇者「さあ、ボクの前に倒れてよ、魔王」
勇者「ボクはお前を倒して、姫さまを連れて帰るよ」
勇者「…はぁ……はぁ…」
勇者「これで、終わりだよ」
魔王「…何故だ」
魔王「何故余が負けるんだ!」
魔王「一体何が人間ごときの貴様をそんなに強くした」
魔王「伝説の武器を持ってるわけでもない、封印の呪文を使ったわけでもない」
魔王「余の手で潰した他の弱っちい勇者と何も変わらない貴様に、何故余が負けなければならない」
勇者「……言ったでしょ、望むものが違うって」
魔王「…一体、この世の全てよりも貴様が望むものが何だというのだ」
勇者「………(ボソッ)」
魔王「!」
魔王「……ははははは!!!」
勇者「……これで終わりだよ」
魔王「くっ……」
魔王「勇者、せいぜい足掻くが良い」
魔王「確かにその愚かな人間、その望みが叶うはずがない」
魔王「余が負けることも無理じゃないというわけだ」ハハハハハハ
勇者「……」スシャッ
がちゃ
姫「!」
勇者「…姫さま?」
姫「…まさか」
勇者「女王さまの命を受けてここまで来ました」
勇者「魔王は既に倒されました。姫さまは自由です」
姫「……!」
姫「勇者さま…!!」ダキッ
姫「勇者さま、本当にありがとうございます」
姫「私を助けるために命を賭けて魔王と戦ってくださって…」
姫「私は……」
勇者「…姫さま」
姫「あ、ごめんなさい」
姫「つい、嬉しくて」
勇者「…さあ、戻りましょう」
勇者「女王さまが、姫さまの帰還をお待ちしています」
姫「…はい」
>>勇者さまだ
>>勇者さまが魔王を倒して姫さまを連れて戻ってきた!
>>勇者ばんざーい!!
勇者「……」
姫「私が居ない間随分と変わってしまいましたね」
姫「皆どれほど苦労をしたものか…」
勇者「…一番苦労をしたのは、女王さまです」
女王「姫!!」
姫「!お母様!」
女王「姫!」ダキッ
姫「お母様……お母様…」
姫「これじゃあ王族だなんて誰も判りませんよ」
女王「そんなことはどうでもいいのです」
女王「姫……私の可愛い姫」
姫「…お母様……」
勇者「………」
>>勇者ばんざーい!
>>勇者を讃えろ!
>>勇者万歳!!
女王「勇者、本当にありがとうございます」
女王「これで、この国は平和を取り戻しました」
女王「魔物たちによって破壊された村たちも、少しずつ元の姿を取り戻すでしょう」
女王「この国の人々が皆、あなたの名を讃え、永遠に記憶するはずです」
勇者「…ボクはただ、一度の戦いを勝っただけです」
勇者「だけdも女王さまは今まで一人で長い戦いをしてきました」
勇者「ボクは何も失っていませんが、女王さまはこの戦いの中で全てを失いました」
勇者「本当に讃えられるべき人は、女王さまです」
姫「今日は嬉しい日です」
姫「この国の皆が、この日をどれだけ待ち受けていたか知りません」
姫「この日を祝って、パーティをしたら如何でしょうか」
女王「そうですね。いい考えです、姫」
女王「王都の人々にお祝いの準備を手伝ってもらいましょう」
女王「今日は民たちと一緒にこのうれしい日を祝うのです」
>>勇者さまばんざーい!
>>キャーユウシャサマー
女王「皆さん、今日は皆が待ちに待った戦争の終わりの日です」
女王「私たちは魔王との戦いで見事に勝ったのです」
女王「そして、勇者さまが居てくれなければこの勝利もなかったでしょう」
女王「今日この日を、勇者さまの讃える記念日として、国の祝日にしようと思います」
女王「勇者万歳」
勇者ばんざーい!!
勇者「……」
>>勇者さまが話すぞ
>>静かにしろ
勇者「…ここに居る皆がこの日をどれだけ待ち受けたか、想像することも難しいでしょう」
勇者「魔物たちとの戦いで家族や、故郷を失った人たちもここには居るだろうと思います」
勇者「そんな人たちにとっては、この日が忘れられない日になると思います」
勇者「でも、この中で誰よりもこの日を待ち受けていた人を言えと言ったら」
勇者「ボクは迷うことなくそれが女王さまだと確言します」
女王「…!」
勇者「ボクを讃えたその声も、ボクに与えられるその名誉も」
勇者「ボクは全て女王さまに捧げようと思います」
勇者「女王さまはこの中で誰よりも皆のことを想ってくれた人です」
勇者「女王さまのその心がなければ、ボクが魔王に勝つこともなかったと思います」
>>パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
>>女王さまばんざーい!!
>>(国名)ばんざーい!!
女王「……勇者……」
勇者「…」
城
女王「勇者、あなたがこの国にしてくれたこと。私にしてくれたこと」
女王「本当に、この国全てをあなたにあげても足りないものです」
姫「……」
勇者「……」
女王「あなたが旅立つ前に、私に戻ってきたら一つだけ願いを叶えて欲しいといっていましたね」
女王「でもその前に…それと別で私からあなたにお礼したいと思って…」
女王「姫と相談しました」
姫「……///////」
女王「勇者、姫と結婚して、この国継いで頂けますか」
勇者「!!」
勇者「…女王さま」
女王「遠慮することはありません」
女王「あなたはこの国の恩人、私の恩人でもあります」
女王「私の気持ちを受け取ってください」
勇者「……」
勇者「……恐れながら女王さま、姫さま」
勇者「ボクが他に望むことがあります」
勇者「そして、それ以外には何も要りません」
姫「…!」
勇者「……女王さま」
勇者「ボクは女王さまがこの国に尽くす姿を見ました」
勇者「女王さまがどれだけ自分を責めても、国の人々がどれだけ女王さまを罵っても」
勇者「ボクには女王さまのその苦労と、その必死さが分かりました」
勇者「だから、ボクもそんな女王さまに負けずと頑張って、やっと魔王と倒せたのです」
勇者「全ては、女王さまにこの気持ちを伝えるためです」
勇者「女王さま、本当にボクがこの国に、貴女にしたことがこの国全部を合わせたものより大きいものだとしたら」
勇者「…ボクと結婚してください」
女王「……え?」
姫「…え?」
勇者「ボクが欲しいのは、ただ女王さま、貴女だけです」
女王「……ぁ……」
姫「……っ!」
女王「!姫!」
大臣「勇者を捕えろ!」
女王「大臣!」
勇者「…っ」
女王「大臣、何をするのです!彼は国の英雄です。控えなさい!」
大臣「彼は女王さまと姫さまの面前の妄言を吐きました」
大臣「これは立派な王族への冒涜です」
女王「それは…」
大臣「それとも、まさか女王さまは彼の望みを聞いてあげるおつもりですか」
女王「………」
勇者「………」
女王「彼を地下の牢屋に入れておきなさい。以後の処遇は私自ら決めます。誰も牢に近づかないように」
大臣「…連れて行け」
勇者「……」
女王「…勇者……どうして…」
女王「姫、入りますよ?」
姫「………」
女王「…姫、大丈夫ですか」
姫「大丈夫じゃ…ありません」
姫「……勇者さまは」
女王「…大臣が捕えました。今牢屋に居ます」
姫「!」
女王「……ごめんなさい」
姫「お母様が謝ることでは…!」
女王「事前に気づいていなかった私が悪かったのです」
女王「実際にそれ程の年でしたし」
女王「それがまさか彼があんな風に思っていたとは思いもしませんでした」
姫「……」
姫「如何なさるのですか?」
女王「……彼を追放するしかありません」
姫「!国を救った英雄なのですよ?」
女王「王族を冒涜した罪は大きいものです」
女王「私一人が許すからと言って良いわけでもなく、王の威厳がかかった問題です」
姫「国の人々が黙っているはずがありません」
女王「他に方法がありません」
女王「あなたに自分よりも年下のお義父さんが出来るのですよ?」
女王「そんな状況に耐えられるのですか」
姫「…それは………」
女王「……私だって、彼を殺したくはありません」
女王「…勇者と話をしてきます」
勇者「……」
女王「…勇者」
勇者「!」
女王「苦しい所はありませんか」
勇者「体の方は、何の問題もありません」
女王「……」
女王「勇者」
女王「私は、あなたのその望みを叶えてあげることができません」
女王「…え?」
勇者「女王さまがそう言うだろうって、分かっていました」
勇者「知っていても…伝えたかったです。ボクのこの気持を…」
勇者「あのまま姫さまと結婚したら、離れた場所ででも女王さまと一緒に居られたでしょう」
勇者「でもそれは、女王さまを騙して、姫さまを騙して、そして何よりもボク自身を騙すことなんです」
勇者「ボクはそんなことは出来ませんでした」
勇者「例えその場で殺されるとしても、ボクは女王さまにこの気持ちを伝えたかったです」
女王「…まだ、あなたの処遇は決まっていません」
勇者「…女王さま、ボクのこの思いが叶われてはいけないものなら」
勇者「ボクが今言うこの願いを、聞いてください」
女王「…なんですか」
女王「…!」
勇者「女王さまから遠く離れた所で、色んな場所を旅したいです」
勇者「そして、そこで見たこと、聞いたことを、女王さまに伝えたいです」
勇者「ボクは国を回りながらあったことを女王さまに話した時、女王さまはとても美しく笑っていました」
勇者「ボクは、例えボクがその笑顔を見れないとしても、女王さまがずっとそんな笑顔をしていて欲しいです」
勇者「これが…ボクが今の女王さまに言える、唯一のお願いです」
女王「……勇者」
女王「…ごめんなさい…本当に……」
勇者「……笑ってください、女王さま」
勇者「ボクは女王さまの笑顔が見たくて、今まで頑張って来ました」
勇者「ボクの苦労を、無駄にしないでください」
女王「……ええ……」
女王「……分かりました…」
女王「…あなたの…その願い…女王の名に賭けて…必ず…」
勇者の旅は、多くの人々を驚かせた。
英雄である彼が居なくなることを悲しむ人も多かったものの、
結局勇者は旅立った。
そして、彼が言った通りに、城には私目当てに手紙が来るようになった。
一ヶ月に一通ずつ、ある時は一週間に一通、二ヶ月に一通。
内容は外の国の人々との出来事。彼らが生きる姿。
外の国でも幸せに過ごす民も、苦しんでいる民も居た。
私は彼の手紙を見ることで、彼の足跡を追った。
いつも嬉しいことばかりではなかった。ある時、とても非情な出来事に付いて聞いた時、
私はそんなことが私の国で起きないように精一杯頑張った。
でお、大体の場合、彼は約束通りに私に笑顔を与えてくれた。
そして、私は彼の手紙を見ながら長い時間を過ごした。
そうやって……私が王位を姫に与えた頃、彼の手紙は途切れた。
子供A「お婆さん、お菓子くーださい」
子供B「私も、私も
元女王「はい、はい、皆沢山あるから喧嘩しないでね」
>>こらーー!!
子供A「げっ、お母さん」
子供B「逃げよう!」
母「こらー!あんたたち、またお婆さんに迷惑かけて!」
元女王「いいんですよ」
母「申し訳ありません、女王さま。子供たちが…」
元女王「良いですって。それにもう女王ではありませんから」
元女王「隠居してもう数年…」
元女王「私なんかと違って、今の女王は良くやってくれているようです」
母「全て元女王さまのおかげです」
元女王「この平和を持ってきてくれた人は…もうこの国には居ませんから」
母「……」
元女王「と、私は少し失礼します」
母「あ、はい!」
元女王「……」
元女王「勇者の、最後の手紙」
元女王「もう数年が経ちましたね」
『女王さまへ
ボクは今女王さまの国からずっと多い北の国に居ます。
ここでは、最近ある魔王が現れて人々を殺戮しているそうです
討伐隊が結成されましたが、悉く魔王にやられ、国はもう滅ぼされる寸前です
ボクはこの国を助けるためにこの国の魔王に挑もうと思います。
もしかすると、これが最後の手紙になるかもしれません。
どうか、ボクの命運を祈ってください
勇者より』
元女王「…勇者……」
元女王「魔王に負けて死んでしまったのですか?」
元女王「結局、それからどれだけ待ってもあなたの手紙は来なかった」
元女王「それと同時に、私は姫に王位を譲った」
元女王「……勇者」
元女王「もし未だにあなたが生きているとすれば……」
元女王「私はあの時と違う答えを出せるのでしょうか」
コンコン
元女王「?こんな時間に誰でしょう」
がちゃ
元女王「はい?」
??「すみません、突然ですが、ここで泊めて頂けないでしょうか」
??「宿屋も残った部屋がなくて、ある人がここに来たら部屋を分けてくれるだろうと言ってくれたので」
元女王「そうですか。どうぞお入りください」
男「ありがとうございます」
元女王「おや、違う国から来たかしら」
男「元はここ生まれですが、幼い時に他の国に行ってまして……」
元女王「ここも色んなことがありましたからね」
元女王「でも、今は過去なんて皆忘れて、幸せに生きています」
元女王「そして、その幸せを人に分けてあげることも、またこの国の人達のいいところなのですよ」
男「…女王さまみたいにですね」
元女王「そうですね、女王さまのように……」
元女王「?」
男「ボクの顔を、お忘れですか、女王さま」
元女王「……勇者?」
女王(元を省きます)「勇者……本当に…あなたなのですか?」
女王「帰ってきたのですか?」
勇者「はい、恥も知らず、帰って来ました」
女王「……立派になりましたね。とても、全然気付きませんでした」
勇者「女王さまも、相変わらず綺麗です」
女王「私なんて…もうお婆さん呼ばわりされてる身ですよ」
勇者「それでも、ボクの目には、女王さまは相変わらず綺麗なままです」
勇者「……女王さま」
女王「私を見にきてくれた?…と聞いたら自意識過剰なのでしょうか」
勇者「…いいえ、その通りです」
勇者「女王さまに会いに、ここまで来ました」
女王「……勇者」
勇者「びっくりさせたくて…黙っていました」
女王「何年も?」
勇者「……ケホッ」
女王「…勇者?」
勇者「……ケホッ!ケホッ!!」ベチャッ
女王「…!勇者?大丈夫ですか?」
勇者「うっ……ぅぅ……」
女王「とりあえず横になって呼吸を整えてください」
女王「上着脱がしますよ」
勇者「ダメ……です」
女王「…!!」
女王「これって…なんですか、これは…」
勇者「…魔王の……のろいです」
女王「え?」
勇者「最後の…手紙に書いた魔王と戦った時…最後の一撃の前に魔王ののろいにかかってしまいました」
勇者「長い時間じりじりと痛みながら死んでいくように…と」
勇者「…ありませんでした」
勇者「このまま、死ぬしかありませんでした」
女王「……!!」
勇者「でも、どうせ死ぬなら…せめて…」
勇者「愛する人を見ながら死にたいと思いました」
勇者「女王さま、ボク、今でも貴女のことが好きです」
勇者「もうとっくに死んでもおかしくない体だったんです」
勇者「辛くて、何度も自殺したくても」
勇者「あなたに会いたいという一念で、ここまで我慢してきました」
勇者「……ごめんなさい」
女王「全部、私が悪かったのに」
勇者「……ケホッ!ケホッ!」
女王「勇者!」
勇者「…もう良いです。最後に女王さまの顔が見たかったんです」
勇者「泣かせて…すみません」
女王「……」ジワッ
勇者「…最後に一度だけで…思い残したことがありました」
女王「……」
勇者「女王さま…最後のお願いです」
女王「…言わなくて良いわ」
女王「わかってるから」
勇者「んっ…」
私は最初で最後に、勇者と唇を合わせた。
キスが終わった時、勇者はもう息をしていなかった。
私に会いたいという願いが、彼の限界を越えた体をここまで連れてきたのだった。
でも、その中で誰よりも彼の死を悲しんだのは、私自身。
私を助けてくれた勇者。
でも私には、彼を救う力がなかった。
私は彼の望みに答えることができなかったのだろうか。
単に私の臆病さが、彼をこのように死なせたのだとしたら…
私は、結局無能な王だったのではないだろうか。
今もう一度私にチャンスが与えられるのであれば…
女王「勇者……死んでしまうとは……なにごとです」
終わり
乙
バッドエンドとは珍しい
面白かった!
乙
仕事中なのに気になって仕方なかったぜ
いい話が読めた
面白かったぜ>>1乙
バッドエンドだけど読まずにはいられなかった!
引用元: 女王「勇者、死んでしまうとは何事です」