少女「濃い~ミルクが欲しいなっ」ニヤニヤ
少女「熱~いのがいいなっ」ニヤニヤ
男「ホットミルクは、おれ苦手なんだよなあ……白い膜張るのがちょっとなあ……」
少女「いやらしいミルク……」
男「あ、シチューとか?」
少女「カルピス……」
男「でもホワイトデーにシチューってのもなあ……」
少女「……」
少女「私が欲しがっても?」
男「だめだ」
男「あとなんかどさくさに紛れてカルピスとか言ったな」
少女「うん」
男「カルピスは美味しいな」
少女「うん」
男「ホットでも美味しいな」
少女「うん」
少女「お兄ちゃんホットカルピス飲ませて?」
男「自分で作れ」
男「あの耳年増をどうしたらいいだろうか」
友「……」
男「学校であんなこと言ってるとは思えないんだが、一体どこで知識を得るのやら」
友「……」
男「あ、もちろんおれが教えたとかじゃないぞ」
友「それはそうだろうな」
男「将来が心配だ」
友「ふん」
男「……そうか」
友「おれにはきょうだいがいないからな、そういう悩みは分からない」
男「ああ、すまん」
友「聞いている分には微笑ましいぞ?」
男「それならいいんだけどなあ」
友「温かく見守ってやれ」
男「ああ、ありがとう」
友「……」
男「どんなものが喜ばれるかな」
男「もちろん下の方向はNGで」
友「……それをおれに聞くのか」
男「うん」
友「……無難にお菓子をあげるのではダメなのか」
男「それでもいいんだけど」
友「それじゃ足りない?」
男「足りないっつうか……」
友「もうちょっと変わったことをしてやりたい?」
男「ああ、そんな感じだ」
友「……」
男「どんなものが喜ばれるかな」
男「もちろん下の方向はNGで」
友「……それをおれに聞くのか」
男「うん」
友「……無難にお菓子をあげるのではダメなのか」
男「それでもいいんだけど」
友「それじゃ足りない?」
男「足りないっつうか……」
友「もうちょっと変わったことをしてやりたい?」
男「ああ、そんな感じだ」
男「おお、そんな発想はなかったな」
友「子どもなりに、嬉しいと思うぞ」
男「普段行けないところとか、連れて行ってやるのもいいかもな」
友「ああ」
男「おれの?」
友「世間体は気にせずに考えたら、お前はどう思ってるんだ?」
男「うーん……」
友「大事か?」
男「大事だ」
友「他に好きな子は?」
男「いない」
友「なら、シンプルに考えたらいい」
男「……やっぱ、お前に相談してよかった」
友「そうか」
友「ゼミの女の子に」
男「ああ、そっか、お前ももらったか」
友「……割と本気っぽい」
男「……そうか」
友「……」
男「付き合うのか?」
友「さあな」
男「お前は口下手だし、怒らせないように、な」
友「ふん、忠告どうも」
友「両親は、その日どうするんだ?」
男「ん? 聞いてないな」
友「新婚だし、気を遣ってやれよ」
男「……そうか……そういうことも考えてなかったな」
友「夫婦、水入らず」
男「おれが水?」
友「妹も含めて、水」
男「なあ親父、ホワイトデーは母さんになんかプレゼントするのか?」
父「……うん」
男「なに?」
父「……内緒だ」
男「教えてくれよ」
父「いやだよ、恥ずかしい」
男「母さんはなんて?」
父「……『あなたの白いので赤ちゃんが欲しい』とか言ってた」
男「……親子だなあ」
父「ん……そりゃ新しい母さんのことが好きになったからだよ」
男「死んだ母さんのことは?」
父「もちろん好きだ」
男「どっちも好きなのか?」
父「どっちも好きだ」
男「……今も遺影に手を合わせるの、忘れないもんな」
男「どんな話してんだ? 死んだ母さんと」
父「今日はこんなことがあったよ、とか、野良猫が可愛かったよ、とか」
男「平和だねえ」
男「あ、これは意地悪で言ってんじゃねえぞ?」
父「応援してくれたよ」
男「……そっか」
父「お前たちのことも、笑って見てるってさ」
男「……そっか」
父「おれもまあ、見守ることにするよ」
男「……ああ」
男「内緒」
少女「え? え? どこに連れてってくれるの?」
男「内緒」
少女「えーずるい」
男「じゃあやめるか?」
少女「行く! 絶対行く!」
男「じゃあほれ、早く支度しろ」
少女「はいはい!!」
男「馬鹿野郎」
少女「一番可愛いやつ履いてきたよ!」
男「そんな報告はいらん」
少女「……確認してもいいよ?」
男「しないから」
少女「よーし! 出発!」ギュ
男「おし、行くか」
少女「ねえねえ、どこ行くの?」
男「まだ内緒」
少女「勝負下着の確認、早めに済ませとく?」チラッ
男「馬鹿、仕舞え」
少女「心配しなくてもお兄ちゃん以外には見せないよっ」
男「お兄ちゃんに見せるのは心配じゃないのか……」
少女「お兄ちゃんなら何の問題もないよっ」
男「そうか? いやダメだろ」
少女「え、え、え、ここってもしかして……」
男「ほれ、案内板よく見てろよ」
少女「え、え、あの人たちも一緒の方向? あっち?」
男「ああ、休みだけど人は少なめで助かったな」
少女「でもたくさん集まってるよ?」
男「まあそりゃ、みんな好きだろ」
少女「……っ」ワクワク
男「久しぶりだなあ、家族で行って以来か」
少女「~~~~」
男「ん、どうした?」
少女「~~~~」
男「お腹痛い?」
少女「感激して言葉が出ないの」
男「そりゃあよかった? ん? よかったのか?」
少女「めちゃくちゃよかったよ!!」
男「あ、馬鹿、慌てるな」
少女「きゃー」コケッ
男「あああ、もう、言わんこっちゃない」
少女「あはははー」
男「どうした、頭打ったか?」
少女「えへへへー」
男「元からか?」
少女「んーとねー最初はねーあんま怖くないやつ!!」
男「地獄のコースターとかいうやつが最近できたおススメらしいぞ」
少女「あんま怖くないやつ!!」
男「ゾンビ屋敷も人気らしいぞ」
少女「あんま怖くないやつ!!」
少女「……ほんと?」
男「心臓のお悪い方でも安心してご乗車ください、だって」
少女「……ほんとに大丈夫?」
男「お前心臓弱くないだろ、さ、乗ろうぜ」
少女「ううう……」ビクビク
ゴォォォー
キャー
男「あっはっは、楽勝だっただろ?」
少女「怖くなかった! 大丈夫! もっとこい!」
男「じゃあ地獄のコースターを」
少女「あ、えっと、それはちょっと」ビクッ
男「天国のコースターにしとくか?」
少女「あ、それなら大丈夫そう?」
ゴゴゴゴゴゴゴォー
ウギャー
男「おおう、足がふらつく」フラフラ
少女「……」ブルブル
男「天国行けた?」
少女「……」ブルブル
男「……」
少女「え、えくすたしー」ボソッ
男「おお、じゃあもう一度乗るか」
少女「うそですうそです! ごめんなさい!」
少女「私回す役する!」
男「あんまり激しく回すなよ?」
少女「激しく輪*す? それっていったい……」
男「なんでそんな当て字知ってんだ!!」
少女「きゃー!」
男「うお、結構回るな、これ」
少女「あははは!」
くるくるくるくる
男「あーいかん、もっとゆっくりに……」
少女「激しく輪*すよー!!」
くるくるくるくるくる
男「あー」
男「酔ってんじゃん!!」
少女「激しく輪*しすぎたよ……」
男「そ、そうか」
少女「激しく輪*しすぎて腰が立たなくなったよ……」
男「そ、そうか」
少女「もっと早く、輪*すのをやめておけば……」
男「コーヒーカップだよね!? コーヒーカップの話だよね!?」
男「タフだな……」
少女「お昼、どうするの?」
男「どこかその辺で食べようか」
少女「屋台?」
男「屋台もあったな、そういえば」
少女「ふ、フランクフルト!!」
男「おう、何でも買ってやるぞー」
男「おい、言っておくがそれは食べ物であって舐めるものではないからな」
少女「え?」チュパチュパ
男「しゃぶるものでもないから!!」
少女「んあ……」ペロペロ
男「やめなさいやめなさい恥ずかしい」
少女「そんなこと言って……恥ずかしいのは私の方だよう……」チュプチュプ
男「だったらやめろよ!!」
少女「フルコースだね!!」
男「いや、そんな大層なものじゃないが」
少女「あ、アイスも食べたい!!」
男「おう、あとで食べようか」
少女「一緒に食べようね!!」
男「ん? そりゃそうだろ」
少女「じゃなくて、一つのを、一緒に」
男「ん?」
少女「……」ペロペロ
男「……」
少女「はい、あーん」
男「……ん」ペロッ
少女「うふふふ、間接キス……」ニヤニヤ
男「そういうのは心の声にしておこうね」
少女「ベ口チュー……」ニヤニヤ
男「またいらん単語覚えて……」
男「よし、食べたらそれ行こうか」
少女「うふふ」ペロペロ
男「あーいい天気だ」
少女「んむー」ペロペロ
男「食べたら眠くなるよなー」
少女「寝たらいたずらしちゃうよー」
男「……お、おう」
少女「なに? まんざらでもない感じ?」
男「逆!!」
少女「高ーい!!」
男「おお、きれいだな」
少女「遠くまで見えるよー」
男「人がちっちゃいな」
少女「今なら……誰も見てないよ」ギュッ
男「……だから?」
少女「……んー」
男「馬鹿」グイ
男「普通に楽しめよ」
少女「楽しんでるよ?」
男「ふ・つ・う・に」
少女「普通に楽しいよ?」
男「普通は兄妹でチューしないの」
少女「じゃあ膝に乗る」ギュッ
男「……それは……まあ……普通か」
男「そりゃあよかった」
少女「ありがとうっ」
男「ん」ポンポン
少女「これ、ホワイトデーだから?」
男「それもある」
少女「ん?」
男「親父と母さんさ、再婚してからあんまり二人の時間ってなかったろ」
少女「うん」
男「だからまあ、二人っきりにしてあげたってのもある」
少女「なるほどー」
少女「うん!!」
少女「最高のホワイトデーだったよ!!」
男「いやいや、まだホワイトデーは終わってないから」
少女「え?」
男「家に着いて晩御飯食べたあとのお楽しみ」
少女「え? え?」ワクワク
男「まだ目開けるなよー」
少女「なに!? ナニをされちゃうの!?」
男「いやらしいことではない」
少女「とか言って? とか言っちゃって?」
男「断じていやらしいことではない」
少女「違うのか……」シュン
男「いいから早くこっちこい」
少女「ああん、見えないよー」
男「ほれ、こっちこっち」グイ
少女「……」パチッ
男「どうぞ召し上がれ」
少女「……!?」
少女「……?」
少女「これなに? すごい!」
男「チョコレートフォンデュというやつだ」
少女「聞いたことある!!」
少女「え?」
男「白くて熱くて濃いミルク的なものだ」
少女「~~~~」パァァァ
男「『いやらしい』のは省略」
少女「すごい! すごい! ありがとう!」
男「さ、食べようぜ」
少女「うん♪」
少女「バナナが切ってある……」ズーン
男「いやらしさは省いたって言ったじゃん!!」
少女「白い液のかかったバナナをチュパチュパしたかった……」ズーン
男「それっぽいの今日もう見たから! 二回もいいから!」
少女「いつか来る日のためにいっぱい練習したいのに……」
男「し、しつこい!」
男「熱いから気を付けろよ」
少女「いただきまーす」ハムッ
男「おれも食ーべよ」
少女「お、お、お、おいしーい!! なにこれすごい!!」
男「んむ、なかなか」
少女「とろけるよーう」ハムハム
男「うまいな」
男「お、おう」パクッ
少女「私にもー」アーン
男「はいはい、あーん」
少女「んむ……あふれちゃうよう」コプッ
男「~~~~」ムラッ
少女「やーん、垂れちゃう」ドロッ
男「……将来が心配です」
少女「うまかった?」
男「他所でしないこと」
少女「はーい、もちろん」ニコッ
男「ほれ、もっと食べな」
少女「うんっ」
男「……将来が心配です」
少女「うまかった?」
男「他所でしないこと」
少女「はーい、もちろん」ニコッ
男「ほれ、もっと食べな」
少女「うんっ」
少女「?」
男「開けてみ」
少女「なにこれ?」ガサゴソ
少女「え!? 指輪!?」
男「おもちゃだけどな」
少女「……結婚!?」
男「は、まだ無理として」
少女「婚約!?」
男「そんな大層なものではないが」
少女「……絶対返さない!!」
男「あと他所では着けないで大事に持ってくれてたらいいから」
少女「……大事にするっ」
男「と、いうわけで、はい、ホワイトデーおしまいっ」
少女「どうしてこんなに?」
少女「や、もちろん超嬉しかったのですが」
男「……三倍返し?」
少女「三倍どころの騒ぎじゃないよっ!!」
男「あの、それ、ほんと安物のおもちゃだからね」
少女「いいのいいのーお兄ちゃんにもらった指輪だからそれでいいのー」ニヤニヤ
少女「今度学校で自慢しよー」
男「だめ!! それはだめ!!」
少女「じゃあ、もう少し大人になったら……」
男「ん?」
少女「ほんとの婚約指輪が欲しいなっ」
男「ん」
★おしまい★
いいものを書きよる
あざといのにくどくなく可愛い
ちょうどいいバランス