「あっちぃねー」
「もうすっかり夏ねえ」
「そうねえ…夕立とかで涼しくならないかな?」
「無理無理。こんなにいい天気なんだよ?」
「んー、じゃあ…涼しくなる話しよっか」
「あ、それ知ってる!無理心中しようとした人が女子生徒を道連れに焼身自殺をしようとして…」
「そうそう。それで昔の音楽室が火事になっちゃったって…」
「うん。それで…出るって噂だよね」
「出るって…何が?」
「出るって言ったら決まってんじゃん。幽霊よ幽霊」
「でもさ、それって噂じゃん?誰も見た人いないんでしょ?」
「それがそうでもないのよ。この前宿直の先生がね、夜中にピアノの音を聞いたって」
「えー!?マジ!?」
「ほかにもね、美術準備室にある描きかけの絵の前のパレットが動いてたり…」
・
・
・
♪~♪~
男「…」
♪~♪~…
男「ん?」
美少女「…気配がする」
男「新入り…か。美術準備室に戻ってる」スッ…
美少女「…一緒に居てもいいのに…」
…♪~♪~…
スゥ…
女「…あ、あのぉ…」
♪~♪~…
女「無視しないでぇ…」グスン
♪~…ッ
美少女 チラッ
美少女「…なにか御用かしら?」
女「あ、いえ…あの、あなた…お名前は?」
美少女「…」
♪~ ♪~
女「えっと…あなたに聞いてるんだけど…」
美少女「なにを?」
女「なにをって…えっと…と、とりあえず学年とクラスと名前を教えてくれません?あたし最近教育実習でこの学校にきたから…まだ生徒の顔とかあんまり覚えてなくて…」
美少女「…美少女よ」
美少女「…私はずっと昔からここにいるわ」
女「え?あははは。ないない」
美少女「…本当よ」
女「それが本当ならずっと留年してることになっちゃうんだけど?この高校でそんな子がいるなんて聞いたこと無いし」
女「それにそのセーラー服、ここの制服はブレザーだし…やっぱ転校生でしょ」
美少女 ジロッ
女「うっ」タジッ
美少女「…用がないなら出て行って」
女「いや、あの…あたし、なんでここにいるんですかねぇ?」
女「なんか…気がついたら校舎の前に立ってて…」
女「とりあえず帰る準備しなきゃって…で、校舎に入ったらピアノの音が聞こえて…」
女「聞いたことあるんだけど…なんて曲だっけ?」
美少女「…サティの“ジムノペティ”」
女「あー、なんかそんな感じの名前だった。ところでさあ…」
女「まだちょっと明るいし下校時間の前みたいなんだけど生徒がいないって…どういうことかな?」
美少女「…知らないわ」
女「え?」
女「じゃあ…あなたの知ってることでいいから教えてよ。ね?」
美少女「あなたには関係ないわ」
女「冷たいなぁ」
美少女「初対面の人に向かっていきなり質問攻めするほうが不躾だと思うわ」
女「うっ…そ、そうだけど…」
美少女「もう一度やり直し」
女「…いいわよもう…他に誰かいないか回ってこようっと」
スゥ…
美少女「…もう来ないことを祈ってるわ」
♪~♪~…
ギューッ
男(もうこの絵の具のチューブも限界だな…いくら絞っても出てこない…)
ヌリヌリ…
女「あ、あのぉ…」
男 チラッ
シャッ シャッ
女「…あ、あのっ!!」
男「なんか用か」
女「聞こえてるんじゃん…黒いスラックスって…あなたも転校生?」
男「…」ヌリヌリ…
男「…」イラッ
女「あー…はいはいはい」
男 イライラ…
女「あ、この辺さぁ、まだ塗ってないけど、どうしたの?」
男「…絵具がない」
女「そこにあるじゃん」
女「ちょっと借りるだけじゃん」
男「…かたくて開けられなかったんだ」
女「ふーん、あんたって見かけによらす非力なんだ。じゃあ買ってくればいいじゃん」
男「………出てけ」
女「え?あ!ちょっと!!押し出さないで!!えっㄘ!!痴漢!!いやあああ!!!」
スゥ…
男「イラつく奴だ。ちょっと懲らしめてやるか」
スゥ…
女「はぁああ…襲われるかと思った…ちょっと暗くなってきたなぁ…あれ?」
鏡:クラヤミー
女「なんだ、鏡かぁ。思ったより暗くなってるのかな?何も映って…え?」
鏡の中:テマネキー
女「…誰か後ろにいるのかな?」クルッ
シーン…
女「…ま…まさか…」ソロー…
鏡の中:モヤモヤ
女「白い塊が映って…え?あれは…目と口!?」
鏡の中のモヤモヤ:ニタァ
女「………………きゃぁああああああ!!!!!」シュン!
男「…すげえ逃げ足」
女「外!外に!!運動場に出れば!!…え?」
白いモヤモヤ
女「さささ、さっきのモヤモヤ…ま…まさか…」
白いモヤモヤ:ユラユラ…
女「…う…腕が運動場から生えて…あは…あはは…」
男「おい」ポン
女「きぃいいやぁああああああ!!!!!」シュン!
男「…なんつー声だよ…」
女「ひいぃいいい!!!」
ドン!
女「きゃあ!!」
?「なんだよあんた。いきなり背中にぶつかってきて悲鳴とか」
女「あ!人だ!よかったあ~」ウルウル
?「なにが?」
女「いえ、さっきお化けを見て…」
?「お化け?寝ぼけてんのか?」
?「大方この暗さで、なんかを見間違えたんだろ」
女「違いますよぉ!あれは絶対お化けです!!」
?「分かった分かった。で、あんた、なにしてたんだ?」
女「あ…家に帰ろうと思うんですけど…怖くて…あはは…」
?「ったく…しょうがねえから俺が正面玄関まで一緒に行ってやるよ」
女「ホントですか!?ありがとうございます!!」
?「ああ」
?「俺か?俺は…
人体模型だ」ニタァ
女「………ぎぃいいいいいや゛ああああああ!!!!!」シュン
人体模型「おーお。すんげえ勢いだこと」
スゥ…
人体模型改め男「憑依すると疲れるな…けど、あんだけ怖がられると面白いな」
女「やああぁぁぁぁ…」
男「ドップラー効果かよ…そろそろ音楽室に戻るか」スゥ…
♪~♪~
男(俺が入ってきても演奏は止めないのな)
美少女「…どうしたの?」
男「騒がしいオンナから避難してきた」
美少女「そう」
♪~♪~
ガタガタッ
男「…また来たみたいだな」
男「やれやれ…騒がしいオンナだ」
美少女「静かにして」ジロッ
女「えっ!?…あ、あはは…」
男「ったく…で、何を慌ててるんだ?」
女「あ、いや…そ、そう!おばけ!お化けがいたんですよ!!」
美少女「…どんな?」
女「ど、どんなって…人体模型が動いたり…運動場から手が生えてたり…鏡の中から手招きされたり…」ウルウル
美少女「…ひょっとしてあなた、また…」
男「当たり」
美少女「はぁ…」
男「まあ、ちょっとした悪戯だ」
女「え?…ええーっ!?じゃあ…あれはあなたの仕業だったの!?」
男「仕業って言うか…まあ…」
美少女「…本当に子どもなんだから…」
女「ひっどーい!ホントに怖かったんだから!!」
男「ははは。悪い悪い」
美少女「そう」
男「やっと静かになるな」
女「ひどいなぁ。あなたたちも早く帰りなさいよ?」
美少女・男「「…」」
女「…じゃ」ノシ
スゥ…
男「…で、どうする?」
美少女「後をつけるんでしょ?あなたが」
男「人使いが荒いなぁ。ま、いいけど」
スゥ…
美少女「…ふふっ」
女 ジタバタ
女「な、なんで!?なんで玄関出たとこから先に行けないの!?」ジタバタ
男「…やっぱり。落ち着け」ペシッ
女「ぎゃん!!先生に暴力振るうなぁ!」
男「落ち着いたか?それとももう一発…」スッ
女 ビクッ
女「お、落ち着きました…よ?」
男「…はぁ。で?どうした?」
女「は、はぁ…出られないんだけど」
男「他には?」
女「なんだか…あっちのほうに引っ張られるような…」
男「ふーん…ん?ああ…」
男「あそこ。よく見てみ?」
女「あそこって?…黒いシミがあるだけでしょ?それがなあに?」
男「血だよ」
女「…は?」
男「あのシミはあんたの血だ」
女「…またまたぁ。そんなわけないって。あたしどこも怪我してないし。ほら。ほら」
男「それはあんたが霊体だからだ」
男「…おい」
女「はい?」
ビュン!
女「!?」
男「…」
女「…あれ?痛くない?っていうか当たってない?もしかして…箒で叩く振りしただけ?」
女「!?…い、いまの…当たったよね?絶対当たってたよね?でも…」
ペタペタ
女「…当たってない…ってか、体を突き貫けてるし!?」
男「わかったか?」
女「…マジですか…」
男「もっと言えば、あの血のシミにあるからだ」
女「“霊体になった理由”って…“死んだ”って言っていいですよぉ…はぁ…」
男「いや、まだ死んだとは限らない」
女「え?」
男「あんた、死神に会ったか?」
女「いえ、会ったことないですけど…」
女「…ということは…生き返る可能性もある!?」
男「そうだな」
女「…よっしゃあ!希望が見えてきたわー!!」
男「やかましい奴…」
女「あ、それであのシミのほうに引っ張られる理由って…」
男「行ってみりゃわかる」スゥ…
女「あ、はい」スゥ…
・
・
・
男「だろうな」
女「それに…近くで見ると結構大きいシミだったんだ…」
男「触ってみな」
女「えぇ~~!?これを触るの!?」
男「いいから触れ!」ギロッ
女「うぅ…これって虐めだぁ…」ソー…チョン
ブワッ!
女「っ!?」
男「どうだ?」
女「…」
女「はぁ…こんなこと…現実にあるとはねえ…」
キャー!ヤベエエエ!!
女(上のほうがうるさいなぁ…)チラッ
ブワッ!
女(え?窓!?)
ガスッ!バリィイイン!!
女「…なにこれ?…血?…なん…で…」ダラダラダラ…ドサッ
・
・
・
~~~~~~~~~~~~~~
男「…そうか」
女「…はぁ…」
男「…じゃあな」
女「…どこ行くの?」
男「…音楽室だ。もうここにいても仕方ないしな」
女「え?…あ!ちょっと待ってよお!!」
女「…」
美少女「どうしたの?」
男「落ち込んでるんだろ」
美少女「あなた…馬鹿?」ケイベツー
男「おい辞めろそんな目で見るな何があったか聞いてることぐらいわかってるわちょっとふざけただけだろ」
美少女 ジトー
美少女「そう…それで落ち込んでるの…」
女「落ち込んでるわけじゃないですよ。ただ…ちょっと気になって…」
美少女「なにが?」
女「えっと…その…あたしはなんであそこにいたんだろ?って…」
男「知るかよ」
女「そんないい方しなくても…それが思い出せなくって…それで気になってるっていうか…」
美少女「そう…」
♪~
男「…メモとかは?」
女「へ?」
男「メモかなんかないのか?」
女「えっと…あっ!手帳!!」
男「手帳?」
女「そう!あたし手帳持ってた!!それを見れば!!」
美少女「静かに」ジロッ
女「確か職員室のあたしのカバンの中にあるは…ず?」
美少女 ゴゴゴゴゴ…
男「お、おい、落ち着け。な?」
美少女「…静かにっ」ギロッ
女・男「「は、はい」」ガクガクブルブル
美少女「…ふんっ」
♪~♪~…
女「じゃ、じゃあ…あたしは職員室に…」フワッ
男「…」フワッ
男「…なんで?」
女「その本気でわからないって顔やめてくれる?」
男「本気でわからないんだが?」
女「だって…さっきみたいに悪戯されたら…ね?」
男「もうしないって」
女「いいからここに居て!オンナノコに悪戯するオトコはモテないんだぞ?」
フワッ スゥ…
美少女「行くんでしょ?」
男「ああ。あいつ、どうやって手帳を見るつもりだ?」
美少女「ふふっ。あなた、十分優しいわよ?」
男「よせやい。じゃあ行ってくる」フワッ
美少女「…ちょっと妬けるわね」
スカッ スカッ
女「うぅ…なんでぇ?」
男「…やっぱり。おい」
女「え?…あ」
男「ちょっと退いてみろ」
女「あ…で、でも!カバンをあけるどころか触ることもできな…い?」
男 パカッ ガサゴソ…
男「…これか?」
男「集中力が違う」
女「ど、どうせあたしは集中力ないですよーだ」
男「…見るんだろ?」
女「え?…あっ!見ないで!!」
男「はあ?」
女「恥ずかしいし!っていうかオンナノコの手帳を覗くなんてデリカシーがないぞー!!」
男「オンナノコって歳かよ」
男「わかったわかった。ほらよ」ポイッ
女「あ…あれ?」ボトッ
男「…持てもしないのに、どうやって見るつもりだ?貸してみろ」
女「うぅ…恥ずかしいよぉ…」
ペラペラ…ヒラリ
男「ん?何か落ちたぞ」
女「…あっ!」
ピラッ
女・男「「え!?」」
美少女「なあに?」
男「いや…珍しいな。美少女が音楽室から出てくるなんて…」
美少女「…ただの気分転換よ」
女「あ、あの…それを…」
美少女「…はい。机の上に置いたから読めるでしょ?」
女「あ、ありがとう。えっと…」
女「え!?」
男「なに驚いてんだ?」
女「だって…あなたたちって昔っからこの学校にいるんでしょ?」
美少女「ええ」
女「だから…ネットとかメールとかスマホとかって…わからないんじゃ…」
男「そんなことか。生徒たちがやってるのを見てたら覚えたんだ」
女「そっか…そうだよね。あははは…」
女「そんなこと聞いてないって」
美少女「はぁ…それで?」
女「え?」
男「これからどうするんだって聞いてんだよ」
女「あ、次のページを…あ、あれ?」スカッ
美少女・男「「…」」
男「…なんで俺のほうを見る?」
女「えへへ…ページをめくってほしいなーなんて…ね?」
美少女「ふっ。モテるわね」
男「皮肉かよ。ほれ」ペラッ
美少女「…“コンパ”ばっかりね」
女「…あ!中は見ないで!!」
男「無理だって。ほら、次のページに行くぞ」
女「ちょ!ちょっと待って!!」
・
・
・
女「…あっ!」
男「なんか見つけたか?」
女「…はい。これです…」
美少女「…池面君?」
男「誰だ?」
女「そうだ…」
女「思い出した…全部思い出したんです…」
美少女「そう。よかったじゃない」
女「そうでもないですよ…あたし…教職者として真剣に悩んでいたんです…」
男「さて、絵の続きを描いてくるか」
美少女「私は音楽室に」
女「ちょっとおっ!二人とも冷たすぎっ!!」
女「そうだけど…ちょっと意見を聞きたいなって…」
美少女「…付き合ってられないわ…」
フワッ スゥ…
女「ねえ…彼女、なんであんなに冷たいの?」
男「…知らないね」
女「じゃあ、えっと…あなた、名前はなんていうの?」
男「…男だ」
男「はあ?」
女「一般論よ!どう?」
男「知らねえよ」
女「真面目に答えてよ…」シクシク
男「鬱陶しいやつだな…人によるんじゃねえか?」
女「ふーん…じゃあさ、好きな女性に話しかけたりしたい?」
男「まあ…な」
男「そう言うこともあるだろうな」
女「そっか…」
男「じゃあな」
女「あ!ちょっと待ってよ!!」
男「おおかた生徒にラブレター…メールかLINEか?でも貰ったんだろ?」
女「え!?なんでわかるの!?」
女「ちょっと待ってって!あたし…どうしたらいいと思う?」
男「知るかよ。お前がどうしたいか、だろ?」
スゥ…
女「ちょっと待ってったら!」
・
・
・
♪~ ♪~
男『しつこいぞお前!』コソコソ
女『だって!まだ質問に答えてもらってないし!!』コソコソ
美少女「…」
♪~ ♪~
男『またうるさくするとあいつが怒るぞ?』
女『だから小声で話してるんでしょ!?』
女『“知るかよ”なんか答えじゃないでしょ!?』
美少女「…いい加減コソコソ話すの、やめてくれない?」
男「す、すまん…けど、こいつが…」
美少女 ジロッ
女「うっ…」
美少女「…付き合うか、断るか…二つに一つ」
女「…え?」
♪~ ♪~
女「好きにったって…あたしは教師の卵で…相手は生徒だし…これって禁断の恋じゃん?」
男「…まんざらでもないって感じだな」
女「だって…彼って優しいし成績もいいほうだし…それにイケメンだし//」
女「…あ!じゃあ池面くんが卒業してから付き合えばいいんじゃん!!あたしってば頭いい!!」
男「…勝手にやってろ」
女「年下の彼氏って言うのもかわいくていいかも♪」
美少女「…はぁ…」
・
・
・
男「…おい、静かに」
女「で、よろしくお願いしますって…え?」
美少女「…誰か来たみたいね」
キュッ…キュッ…キュッ…
男「…階段を上がっていくな」
女「な、なんでそんなことがわかるの!?」
女「感情までわかるの?なんで!?」
男「俺達ぐらいの霊になったらそれぐらい当たり前だぞ?」
男「けど、あんたはまだ完全に霊体になってないからわからないだけだ。なあ?」
美少女「それより…いいの?屋上に出たみたいだけど?」
女「え!?こんな時間に屋上って…ヤバいんじゃない!?」
フワッ スゥ…
美少女「しょうがないわね」フワッ
男「行くのか?」
美少女「…あなたは?」
男「まあ、騒がしい奴だけどほっとけないしな」フワッ
美少女「ふふっ、そうね」
女生徒「…」
女「ねえ!聞こえないの!?早く帰りなさいよ!!」バタバタ
女生徒 ポチポチ…
女「なにしてんのよ!ほら!あっち!!あっちに行くんだってば!!」スカッ スカッ
スマホの画面:すべてはあたしのせいです。死んでお詫びします。
女「そんなことない!あなたまだ若いんだから!!これからいいことがいっぱいあるのに!!」
女生徒 フゥ…
コトッ
女生徒 ガチャン ガチャン
女「フェンス登っちゃダメえぇええ!!!」バタバタ
男「おー、やってるやってる」
女「え?…あっ!手伝ってよ!!この子自殺しちゃう!!」
男「だってよ。どうする?」
美少女「…しょうがないわねぇ。男、スマホを持ち上げて」
男「久しぶりに名前を呼んだと思ったらそれかよ」
美少女「だって、あなた得意じゃない。モノを持ち上げたりするの」
男「はいはい。あんま長い時間は持てないぜ?憑依してない状態だと他人のものを持ち上げたりするのは消耗が激しいからな」
美少女「先に打ち込むわ」ポチポチ
美少女「かけるわけないでしょ?ロックを掛けたら遺書が読めなくなるじゃない」
男「なるほど」
スマホの画面:なにをしているの?
美少女「そのままあの子の目の前に持って行って」
女「もうすぐフェンス超えちゃう!早くしてえ!!」バタバタ
男「人体模型に憑依したらもっと力が出るんだけどな…ふん!」
フワリ
ガシャン ドタッ
女「よかったぁ…フェンスの内側に落ちてくれて…」
女生徒「いったぁ…なんでスマホが浮いてるの!?お、おばけ!?」
美少女「説得はあなたがするのよ」
女「え?で、でも!あたしの声も姿もあの子にはわからないみたいだし…」
男「スマホがあんだろ」
女「うぅ…あたしが打ち込めないの知ってて…」
美少女「しょうがないわねぇ…なんて入力すればいいの?」
女「あ、えっと…」
スマホ:女です
女生徒「え?女…先生!?…そっか…やっぱ死んじゃったんだ…あたしもすぐ行きます…」
スマホ:まだ死んでないし。絶対生き返るから
女生徒「え?じゃあ…誰がスマホに入力してるの?」
スマホ:そんなことより、なんでこんなことするの?
女生徒「だって…女先生があんなことになって…池面くんに嫌われちゃうから…」
女「池面くん?…なんで彼が関係あるの?」
男「悪い。そろそろ限界だからスマホを床の上に置くぞ」
フワッ コトッ
女「えっ!?そんな!薄情よ!!」
美少女 ポチポチ…
スマホ:薄情よ
女生徒「え?…薄情…なのかな…」
女「あ!違うの!!今のは男くんに対していったことで、あなたのことじゃないの!!」
美少女「…次は?」
女「あ、えっと…」
スマホ:どうして嫌われるの?
女生徒「…あたしが女先生に窓を…ぶつけちゃったから…」
女(そっか。あなたが窓を落としたんだ…)
スマホ:あれは事故だから
女生徒「違う…ワザとなの…」
女生徒「あの窓は…力を入れて閉めたら窓枠から外れるから…だから…ゆっくり閉めろって張り紙してあるの…」
スマホ:じゃあ、わざと落としたの?
女生徒「そう…でも…」
女生徒「女先生に当てるつもりなんてなかった…八つ当たりしただけだったの…」
スマホ:ちょっと詳しく聞いていい?
女生徒「…」
~教室・昼休み~
女生徒「えっと…あ、いたいた!池面くーん!!」
池面「ん?あ、女生徒さんじゃん」
女生徒「池面くん、あのね…ちょっと時間ある?」
池面「うん、ちょっとぐらいならいいよ。何?」
女生徒「えっと…相談って言うか…」
池面「相談?どんな?」
チラッ
女生徒「ここじゃちょっと…」
池面「あー、確かになぁ。騒がしすぎるよな。じゃあさ、美術準備室いかね?」
女生徒「うん!」
池面「で?相談って何?」
女生徒「あのね…池面くんってさぁ…カノジョとか…いるよね?」ドキドキ
池面「いないよ」
女生徒「え?ホント?」パァアア
池面「ホントホント。マジでいないって」
女生徒「じゃあ…あたしと付k」
池面「けどさ、好きな人はいるんだわ」
女生徒「…え?」
池面「でさあ、さっきその人に告って…今は返事待ちなんだわ」
女生徒「…そ、そっか!いい返事だといいね!!」
池面「おう。で?」
女生徒「え?」
女生徒「え?…ううん!もういいの!!」
池面「え?だって教室じゃ話しにくい内容なんだろ?だからここに来たんだしさぁ」
女生徒「いいの!あのね?池面くんのことが好きな女子がいてカノジョさんとかいないか聞いてほしいって頼まれてただけだから!!」
池面「そっか。その子には悪いけどさぁ、俺好きな人いるからって伝えといて」
女生徒「うん。伝えとく。じゃあ先に教室に戻ってるね!」トテテテ…
・
・
・
ガラララ
女生徒「…はぁ…」トボトボ…
ドサッ
モブ女子「ねえねえ、どうだった?」
女生徒「…」ガクッ
モブ女子「あちゃー、玉砕か…なんで?」
女生徒「…」イラッ
モブ女子「あんたってば男子に人気あるし。だから絶対大丈夫って思ってたのになぁ」
女生徒「…」イライラ
モブ女子「ひょっとして押しが弱かったんじゃない?それか色気?ワンピのボタン外して挑発する?」
女生徒「…ほっといてよ!」ガタッ
モブ女子「あ!その窓は!!」
バンッ ガタン!
女生徒「…あ」
………ガスッ バリィイイン
モブ女子「ちょっとぉ!窓落ちちゃったじゃない!!大丈夫!?」ノゾキ
女生徒「やっばあ…」ノゾキ
ギャー チョクゲキダー ハヤクキュウキュウシャヨベー
女生徒・モブ女子「「…」」
モブ女子「…やばいよぉ…ヤバいよぉ…」
女生徒「…どどど…どうしよ…」ガクガク
池面「よ!…どした?」
女生徒 ドキッ!
池面「なに!?」ノゾキ
池面「あれは…女先生!?なんで!?くっ!」ダッ ダダダダ…
女生徒「…い、池面くん?」
・
・
・
校長「…では纏めます。女生徒さん、あなたが窓を開けようとしたら窓枠から窓が外れて」
校長「それが風に煽られて、たまたま玄関付近にいた女先生に当たったと」
女生徒 ウツムキー
校長「…他の先生方も、それでいいですね?」
先生’s「「「はい」」」
校長「まったく…面倒なことをしてくれたものだ…女先生の親御さんと大学のほうにも連絡しないと…」
女生徒 ガクガク…
モブ女子「ちょっと女生徒…大丈夫?」
女生徒 コクン
モブ先生’s「「「はい!」」」
校長「今日はもう全校生徒を帰宅させましょう。部活も休みです。いいですね」
女生徒「…あ、あの…」
校長「なんですか?」
女生徒「…女先生の容体は…」
校長「…付添いの先生からはまだ何も連絡はありません」
モブ女子「じゃあ…危ない状態ってことですか?」
校長「まだ連絡はないと言っているんです。おそらく手術中なんでしょう」
女生徒 ギューッ
モブ女子「手が痛いって!そんなに強く握らないで!!」
モブ女子「あ、はい…失礼します。ほら、あんたも一緒においで」
女生徒「…」
ガチャ
モブ女子「失礼します」ペコッ
パタン
モブ女子「ふぅ…女生徒、気にしちゃダメよ?あれは事故なんだから…ね?」
女生徒 ビクッ
池面「…」
モブ女子「あ、池面くん」
池面 ジロッ
女生徒 ブルブル…
モブ女子「え?」
池面「ちょっと女生徒さんに話があるんだわ。だから…な?」
モブ女子「う、うん…けど女生徒、大分参ってるから…優しくしてあげて?」
池面「…」チラッ
女生徒 ブルブル…
モブ女子「…じゃあ、先に戻ってるね?」
トテテテ…
池面「…あのさあ」
女生徒 ギュッ
女生徒「…え?」
池面「さっきさぁ…好きな人がいるって言ったじゃん?」
女生徒 コクン
池面「あれ…女先生のことなんだ」
女生徒 ドクン
池面「あのときさぁ…俺、女先生に告った後だったんだ…だから女先生、あそこにいたんだ」
女生徒「…」
池面「女先生、校舎に入ろうとしてたんだ。ちょうど周りに誰もいなかったからチャンスだと思って…」
女生徒「…それで?」
池面「そしたらさぁ…ちょっと考えさせてって…だから教室に戻ってったんだ」
池面「だから女先生…あそこで考えこんでたんだと思うんだ…」
女生徒「…」
女生徒「池面くんのせいじゃない!あたしのせいだ!!」
池面「違う!俺のせいだ!!」
女生徒「ちがうよ!あたしが窓を落としたから!!そのせいで!!」
池面「黙れ!!」
女生徒 ビクッ
池面「頼むからさぁ…そんなこと言わないでくれぉ…そんなこと言われたら俺…お前を憎んじまうじゃねえかぁ…」
女生徒「あ…」
女生徒(あたしのせいだ…あたしが窓に八つ当たりしたから女先生があんな目に…)
女生徒(だからあたしは…大好きな池面くんに憎まれて当たり前なんだ…)
池面「お前のせいじゃない…だから…そんなこと言うなよ…」グスッ
女生徒「…ごめんなさい!」トテテテ…
池面「あ、おい!」
・
・
・
女生徒(あたしのせいだ…あたしが窓を落としたから女先生が死にそうになって…池面くんにも憎まれて…)
女生徒(あたしなんか…生きてる価値なんてないんだ…)
女生徒(女先生じゃなくてあたしが死ねばよかったんだ…)
フラッ
~~~~~~~~~~
女生徒「それで…だから…女先生が死んだらあたしの責任だから…だから…」
スマホ:そんなことしてもあたしは嬉しくない
女生徒「でも…あたしのせいだから…」
ユラァ ガシャン
女「フェンス登らないで!止めなさいっ!!ねえ!あなたも手伝ってよ!!」バタバタ
美少女「…無理よ」
女「あなたピアノ弾けたりするんでしょ!?その力でこの子を止めてよ!!」アタフタ
美少女「そこまでの力はないわ」
女「もう!こうなったらあたしの力で!!」
スカッ スカッ
女「どうして!?どうしても止められないの!?」
ガシッ
女生徒「!?」
女「…え?」
?「間にあったようだな」
女生徒「離して!離してよ!!邪魔しないで!!」
?「あ、こら。暴れるなって!乳触るぞ!?」
女生徒 ビクッ
美少女「…スケベ」
?「ほっとけ!なあカノジョ、俺ってイケメンだろ?」
女生徒「あなた…誰?」
?「何度か会ったことあるはずだぞ?ああ、暗いからわかんねーのか。このスマホの明かりで見えっかな?」
ヒョイ
女生徒「あ、それあたしのスマ…ホ?」
ボワッ…
?改め人体模型「かーのじょ♪一緒に校舎デートしない?」ニタァ
女生徒「…きいいいいやぁあああああああああ!!!!」
ガクッ
人体模型「よし。今夜は五臓六腑が飛び散るぐらい激しk」
ゴツン
人体模型「あいたっ!」
美少女「もう一発いかがかしら?」
人体模型「助けたんだからちょっとぐらい役得があってもいいだろ?」
女「いい加減にしなさい!気絶してるでしょ!!」
美少女 ジトー
人体模型「美少女さんにそんな目で見られると…ゾクゾクしちゃうわ♪」
女「ヘン夕イだー!」
美少女 ゴゴゴゴゴ…
美少女「…次は無いわよ」ジロリ
人体模型「は、はい!」
スゥ…
男「ったく…冗談の通じない奴らだ…」
美少女「ふん。やり過ぎよ」
男「はいはい」
女「けど…おかげでこの子、止めることができたから…ありがと」
女「とりあえず安全なところに…」
男「安全なところって?」
美少女「正面玄関でいいんじゃない?」
女「…そうだね」
男「じゃあ、そいつを正面玄関まで運ぶか。もう一度憑依して…よっこらせっと」
・
・
・
女生徒 パチッ
女生徒「…ここは…正面玄関?」キョロキョロ
女生徒「なんであたし…こんなところに?…あ」
スマホ:女です
女生徒「女…先生?さっきのは…夢じゃなかったんだ…」
スマホ:あたしは絶対生きかえる。あたしは何とも思ってないから
女生徒「な、なんで…」
スマホ:もし申し訳ないって思ってるなら、あたしが目覚めたときにそう言って。あたしは許すから
女生徒「あ…」ポロッ
女生徒「女先生…うぅ…ごめんなさい!ごめんなさぁい!!うわぁああああん!!うわぁああああん!!!」
宿直「誰か居るのか!?」
女生徒「うわぁあああん!!」
宿直「お前…女生徒じゃないか!何やってんだこんなとこで!?とりあえず宿直室に…」ダキカカエ
女・美少女・男「「「…」」」
男「とりあえず、これで大丈夫だろ」
美少女「そうね」
女「宿直さん、その子のこと…お願いします」
男「…けどまあ、あれでよく説得できたな」
美少女「…」
女「誰も責めないから誰にも謝れないし…でも責任を感じちゃってるから自分で自分を追いこんで…」
女「見た目は大人でもまだまだ子供だからさぁ…それで思いつめちゃって…」
女「だから…あたしが許すっていったら…あの子も救われるんじゃないかなーって…ね?」
男「そっか…」
美少女「ちゃんと教師してるじゃない」
女「えへへ」
男「…じゃあ、そろそろ戻るか」
美少女「そうね」
女「…うん!」
女「ありがとうございます」ペコッ
男「何あらたまったんだよ」
女「だって…あたし一人じゃあの子を引きとめることなんてできなかったから…」
美少女「気にしないで。それより…」
男「お迎え…か」
ボゥ
死神「こんなところにいたのか」
女「え?」
女「それは困ります!あたし、絶対生き返らなきゃいけないんです!!」
死神「では我と共に来い。今夜中に体に戻るのだ」
女「はい!…あ」
死神「どうした?」
女「あの二人に聞きたいことがあって…いいかな?」
死神「あまり長くかかるようでは困るが」
女「ありがと。すぐに終わるから」
スゥ
男「なんだ?」
女「あなたたちはなんで…この学校にいるの?」
美少女「…なぜそれを知りたいの?」
女「いやその…この学校には噂があって…その通りなのかなーって…ね?」
男「どんな噂だ?」
女「校舎の北側に小さい建物の跡があるけど、あれは昔の音楽室で」
女「そこで無理心中しようとして火事があって生徒が二人亡くなったから今の場所に音楽室が変わったって…」
美少女「…その通りよ」
女「あ、やっぱり」
美少女「その先生、はっきり言って趣味じゃないし、私には気になる人がいるからって断ったの」
美少女「それで逆恨みされて…音楽室で気になる人のためにピアノの練習をしていたら…」
美少女「その人が入ってきて私を縛って…ガソリンを部屋の中に撒いて火をつけたの」
女「サイッテー…」ジトー…
男「…おい、なんで俺を見るんだ?」
美少女「…でもね、その人がライターに火をつけた途端爆発みたいなのがあって…」
美少女「その人はそれに驚いて…部屋がら逃げてっちゃったわ」
女「え?」
美少女「その人が出て行った後、炎に包まれた部屋に入ってきたのが男よ」
男「それで嫌われ者の先生の服が焦げて騒いでるし。で、他に誰か残ってないか聞いたら…」
男「まだ中に美少女がいるって聞いて、音楽室に飛び込んだんだ」
男「そしたら美少女、爆発で壊れたピアノの下敷きになっててさ…何とか助けようとしたんだけどな…」
美少女「男、服に火がついちゃって…逃げるように言ったんだけど…」
男「美少女一人置いて逃げれるかよ」
美少女「馬鹿よね…ひとりで逃げれば助かったのに…それで二人とも…それが本当のこと」
女「…それで恨みが募って…幽霊になったのね」
美少女「…違うわ」
女「え?でも…」
女「ジムノペティを?」
美少女「…ええ。この曲はね、男が好きだった曲なの。でも…」
美少女「火事で楽譜が無くなって…それ以来、いつも途中で演奏が止まるの」
女「…あなたは?」
男「俺は…あの絵を完成させて、ある人に見せたいんだ」
女「…でも、絵の具がないのね」
男「…そうだ」
死神「もうよいか?」
女「あ、うん…じゃあ美少女さん、男くん。またね」
美少女「やっと静かになるわ」
男「おい」
女「ふふふ。いいの。彼女、ちょっと冷たく見えるけど…いい子だもん」
女「うん。またいつか…ね」
スゥ…
男「…いっちまったな」
美少女「そうね。やっと静かになるわ」
男「静かすぎて寂しいんじゃないのか?」
美少女「…そんなことないわ」
男「そうか?」
美少女「だって、あなたがいるもの」
男「…へ?」
美少女「だからね」
美少女「私は寂しくないわ」ニコッ
シューコッ シューコッ…
女「…なんか変な感じ」
死神「己の肉体を外から見る機会など無いからな。しかし…良いのか?」
女「なにが?」
死神「お前は肉体に戻れば、けがによる激痛に耐えねばならぬ。それでも戻るのか?」
女「…うん。女生徒さんと約束したからね」
死神「では…」
死神「なんだ」
女「これから生き帰るとして…霊体で経験したことって覚えてるの?」
死神「それはお前次第だ。思いが強ければ記憶しているだろう」
女「そっか。それと」
死神「まだあるのか?」
女「うん。あのね?~~~」
・
・
・
女「…」ウツロー
医師「目が覚めましたか?」
女 コクン
医師「あなたは…ご自分の名前がわかりますか?」
女 コクン
医師「…もう大丈夫みたいですね。御家族に連絡を」
看護師「はい!」
女「…ふぅ。退屈だなぁ…」
コンコン
女「あ、はーい」
ガチャ
池面「女先生!」
女生徒「…」
女「あ、二人とも。よく来てくれたわね」ニコッ
池面「よかったぁ…女先生がもし…そんなことになったら…俺…俺…」グズグズ
女「こーら。泣かないの。男の子でしょ?」
池面「…はい!」
女「うん。かっこいいぞ」
女「…うん。窓に八つ当たりしたのはいけないことだよ?」
女生徒「ごめんなさあい…」グスッ
女「…でも、反省してるみたいだから許してあげる」ニコッ
女生徒「うわぁあああん!!!せんせぇええ!!!も…もし許してもらえなかったらっ!!あ…あたし…あたし!!」
女「…許すって言ったでしょ?」ナデナデ
女生徒「うわぁああん!!うわぁあああん!!!」
女「ふふっ」
・
・
・
女「落ち着いた?」
女生徒 コクン
女「そう。良かった…あ、そう言えば池面くん」
池面「はい」
女「池面くん…この子のこと、責めなかったんだって?」
池面「え?なんでそれを?」
女「…先生はね、なんでもお見通しなの。やっぱり池面くんはかっこいいなぁ」
池面「あ、いや…」
女「…ねえ、女生徒さん…いいかな?」
女生徒「…はい。先生なら…」
女「ありがと…池面くん」
池面「なんですか」
池面「…え?」
女「池面くんが卒業して…大学を卒業してちゃんと就職して…それでもあたしのことが好きなら…もう一度告白してくれるかな?」
池面「はい!」
女「ありがと。でも…もし大学とかで気になる子が出来たら…あたしに遠慮しなくていいからね?」
池面「そんなことありえないです!」
女「ふふっ。嬉しいこと言ってくれるなぁ…」
女「うん…ごめんね?せっかくお見舞いに来てくれたのに…」
女生徒「ううん。こっちこそ…約束守ってくれてありがとう」
池面「約束?」
女「二人だけの秘密。ね?」ウィンク
女生徒「うん」ニコッ
池面「???」
スゥ…
男「…さてっと…ん?」
エノグセット
男「…なんだこれ?…メモ?」カサッ
男「…」
男「…あいつ…」フッ
スゥ…
美少女「…」
キョロキョロ
美少女「…珍しいわね。男がいないなんて…あら?」
カサッ
美少女「…手紙?」
カサカサ
美少女「…ふふっ。律儀ねぇ」
スゥ
男「美少女」
美少女 チラッ
美少女「…美術準備室?」
男「ああ」
美少女「…男、あなた美術準備室には来るなって言ってたじゃない」
男「まだ見せられる状態じゃなかったからな」
美少女「ということは…完成したのね」
男「ああ。だから一緒に来てくれ」
美少女「分かったわ」
スゥ…
男「…あれだ」
美少女「あれね?」フワッ
美少女「…」ジー…
男「自分としては満足できる出来栄えだと思う」
美少女「…私はこんなに明るい顔じゃないわよ?」
男「今はな。生きてる頃はこんな感じだったんだ」
美少女「そう…ありがとう。これであなたは…」
男「ああ。成仏できる」
男「今までは絵具がなかったらな…けどこれが…」カサッ
美少女「メモ?…これって…」
男「ああ、あいつだよ」
美少女「そう…じゃあ、今度は音楽室にきてくれるかしら?」
男「ああ。あいつやっぱり美少女のところにも…」
美少女「ええ。行きましょ」フワッ
美少女 トントントン
男「その楽譜がそうか?」
美少女「ええ、そうよ。じゃあ…始めるわね」
♪~ ♪~…
男「…」
・
・
・
♪~ ♪~ッ
男 パチパチパチパチ
美少女 ペコッ
男「最後まで弾けたな。いい演奏だった」
美少女「ええ。これで思い残すことはないわ」ニコッ
男「…うん。いい笑顔だ」ニコッ
美少女「ありがとう。あなたもね」
美少女・男「「…」」
死神「…では、参るぞ」
美少女「ちょっと待って」
死神「…なんだ?」
美少女「あの人にお供えの仕方を教えたのって…あなたなの?」
死神「…そうだ」
男「あんた…いいやつだったんだな」
死神「問われれば答える。それだけだ」
死神「それで初めてお主らの手元に届く」
死神「我が教えたのはそれだけだ」
美少女「そう…ありがとう」
男「俺からも…ありがとう」
—未練を残したまま死んで
美少女「そうでしょうね」クスッ
—何十年たっても成仏できずにいたのに
死神「…では」
—騒がしくて
美少女・男「「はい」」
—おせっかいで
ギュッ
—律儀な友達のおかげで
男「いきなり手を握って…どうした?」
—ようやく成仏できる
—もし今度会うことがあったら
男「ああ…また一緒になろう」
—その時はお礼を言おう
死神「まいるぞ」
—ちゃんと感謝を伝えよう
男「…ああ」
—だから…
美少女「また…ね」
その後、その学校で幽霊を見た者はいない
~END~
女「池面くん、卒業おめでとう。来月からは大学生だね!」
女「え?時間?いいよ。今日は一日付き合うよ」
女「大丈夫大丈夫♪今夜はお祝いだもん。お姉さんに任せなさい!」
女「ううん…池面くんとの初めてだから…そのまま中に出して…」
女「大丈夫よ。今日は安全日だもん。それに今日は卒業のお祝いだから…ね?」
・
・
・
女「ちょっとぐらいいいよ。お付き合いもあるしね。隠さずに言ってくれればそれで…」
女「え?新人歓迎コンパもう終わったの?だってまだ9時じゃん」
女「…ありがと。池面くんのその一言ですっごく安心できたよ。じゃあまた明日…」
・
・
・
女「え?バイト増やしたの?なんで?」
女「…そう…でも無理しちゃだめよ?体が心配だから…」
女「うん…ありがと。じゃあまた明日…」
・
・
・
女「…大丈夫?疲れてるみたいだけど…」
女「だからお金半分だすって言ったじゃん。池面くんはまだ学生なんだから」
女「…わかった。今夜はサービスするから…ね?」
女「あーっ!今えっㄘなこと考えてたでしょ!マッサージのサービスって意味だよ?」
女「ふふふ。ちゃんとサービスします。ふふふ…」
・
・
・
女「じゃあこの週末はお祝いしなくっちゃ!」
女「うん。友達付き合いも大事だもんね!でも週末は開けといてね?」
女「だ、大丈夫だって!今度はちゃんと料理の本どおりに作るから!!」
女「…うん!久しぶりのお泊りだね!!」
・
・
・
女「…え?池面が他のオンナと?」
女「な、何かの間違いじゃ…写メ?…あ…」
女「な、なんで池面と女生徒さんが二人で…」
女「…そう…女生徒さん、あなたが池面とその…それはわかったわ。それでどうしたいの?」
女「…え?もう二度と顔を出さないって?池面を責めないでってどういうこと?」
女「…一生の思い出のキスかぁ…わかった!今の話はあたしは聞いてない!!池面にも聞かない!!」
女「いち!にい!さん!!はい忘れたー!!じゃあね、女生徒さん」
女「…泣かないの。あなたはこれから新しい恋を見つけるんでしょ?ちゃんと前を向かなきゃ!」
女「もう謝らないで。でもさあ…女生徒さんの気持ちも汲んで…やっぱ池面はイケメンだね!」
・
・
・
女「…うん…アレは2か月ぐらい遅れてるけど…おぇっ」
女「…え?まさか!?…でも…」
女「もしそうだったら…池面は…」
女「…入籍だけ先に?い、いいけど…池面はホントにそれでいいの?まだ24歳だよ?遊び足りないんじゃ…」
女「…グスッ…ありがと…うん…あたしも愛してる…」
~女と池面の色々END~
~二十数年後・高校~
男 キョロキョロ
「新入生は講堂に行ってくださーい」
男「講堂はたしか…あっちだったな」
男(なんだろう…講堂の裏手に行きたい気分…)
・
・
・
女教師「あら、どうしたの?こんな講堂の裏手に何か用?」
男「あ、いえ…ここって…なんかの跡みたいですけど…」
女教師「そうよ。昔ね、ここに音楽室があったの」
男「そうですか…」
女教師「…ふふふ」
男「何がおかしいんですか?」
女教師「ごめんなさい。あなた新入生ね?」
男「あ、はい」
女教師「さっきもね、新入生がここに来たの。あなたで二人目よ」
男「はあ…そうですか…」
女教師「そろそろ入学式が始まるわ。講堂に入ったら?」
男「あ、はい。そうします」タタタ…
男(あの人…先生かな?懐かしい感じがする…なんでだろう…)
・
・
・
男「俺のクラスはっと…あった。ここだな」
ザワザワ…
男(…あ、きれいな子だな…)
美少女 ジー
男(お、目があった…でもなんだろう…初対面なのに…ずっと前から知ってるような…)
ツカツカツカ
美少女「ねえ」
男「なに?」
美少女「わたし、美少女って言うの。あなたは?」
男「俺は男。よろしくな」
美少女「よろしく」
美少女「なあに?」
男「俺…あんt…美少女さんとは初対面だよな?」
美少女「そうね」
男「けど、なんていうか…初対面って感じがしないんだけど」
美少女「偶然ね。私もよ」
男「…あとでちょっと話さないか?」
美少女「いいわよ。じゃあ私の席はそこだから」
男「俺の席はっと…なんだ、美少女さんの斜め後ろじゃん」ドサッ
ガララ
女教師「はーい。注目」
美少女・男「「あっ」」
美少女「え?」クルッ
男「いや、そっちも…」
女教師「お静かに。あたしはこのクラスの担任の女です。これから一年、一緒にがんばりましょう」
・
・
・
美少女・男「「え?」」
女教師「悪い話じゃないから。ちょっとお話ししたいの」
男「は、はあ…」
女教師「…もうみんな帰ったかな?」
美少女・男「「…」」
女教師「そんなに身構えなくっていいわよ。それじゃ…行きましょうか」
美少女・男「「え?」」
男「どこに行くんですか?」
女教師「いいからいいから♪」
ガララ
女教師「…どうしたの?早くいらっしゃい」
男「あ、は、はい」
美少女「…あなた、先に行ってよ」
男「え?…あ、うん」
・
・
・
ガララ
女教師「まずはここね。さ、入って」
男「お邪魔しまーす…」
美少女「…変なにおい…」
男「そうか?油絵具のにおいじゃん。けど、ここ…」
女教師「見覚えがある?」
男「はい。初めてきた場所なのになんか…懐かしい感じが…」
美少女「私もちょっとそんな気がする…」
女教師「そう…二人とも、これを見て」
美少女「何かの絵かしら…」
男「それはわかってるって。そうじゃなくてさ…」
女教師「カバー取るわよ」
バサッ
男「あ」
美少女「…え?」
女教師「ふふふ。どう?」
男「どうって…これ…」チラッ
美少女「…わたし?」
男「すげえ…そっくりだ…」
美少女「ど、どうして…」
美少女・男「「え!?」」
女教師「もう20年以上前にね。だからこれは…あなたがモデルってわけじゃないわ」
美少女「え!?」
男「じゃあこの絵のモデルは…美少女さんのお母さん?」
美少女「それはないわ。だって私の母の実家は飛行機を使うような距離だもの」
男「じゃあ…偶然か?」
女教師「あなた、その絵に見覚えがあるでしょ」
男「え!?なんでわかるんですか!?」
女教師「きっとそうだと思ってた。あなたたちを一目見たときからね」
美少女・男「「…」」
男『なあ、この先生、頭がイかれてね?』コソコソ
美少女『そうね。適当に理由をつけて早く帰りましょ』コソコソ
女教師「カバーをかけて…と」バサッ
美少女「私たちを居残りさせたのって…その絵を私たちに見せたかったんですか?」
女教師「それはいくつかあるうちの一つ。次に行きましょうか」
美少女・男「「はあ?」」
・
・
・
女教師「ここは理科室よ」
男(あ…人体模型だ)チラッ
美少女(人体模型…)チラッ
女教師「…じゃあ、次に行きましょう」
・
・
・
女教師「そこに座って」
美少女・男「「は、はい…」」
女教師「ピアノの準備を…はい。それじゃ」
♪~ ♪~
男(…ジムノペティ!?)
美少女「…ねえ」
男「なんだ?」
美少女「あなた…この曲好きなんじゃない?」
男「え!?なんでわかった!?」
美少女「なんとなくよ」
♪~♪ッ
美少女「…どうしたんですか?まだ演奏の途中じゃ…」
女教師「…私はここまでしか弾けないの。美少女さん、この曲弾けるんじゃない?」
美少女「え?ええ…」
女教師「じゃあお願い。あたしの代わりに弾いてくれるかな?」
美少女「…はい」
♪~ ♪~…
・
・
・
女教師・男 パチパチパチ
女教師「ありがとう」
美少女「あ、いえ…」
男「あんまメジャーな曲じゃないのに上手だな」
美少女「お世辞でもありがとう」
男「お世辞じゃねえって。でも美少女さん、なんでこの曲が弾けるんだ?」
美少女「…なぜかしらね。ただ、ピアノを習い始めたきっかけが、この曲を弾きたかったからなの」
美少女「この曲を弾いてるとね…すごく落ち着くの」
男「へえ…」
男「あ、俺はいいですけど…」
美少女「私もいいです」
女教師「それじゃ…今から20年以上前のことなんだけどね」
女教師「あたし…教育実習がこの学校だったんだけど、そのときにね…大怪我して生死を彷徨ったことがあるの」
美少女・男「「…」」
女教師「その時にね…あたしを助けてくれた人たち…幽霊さん達がいて…それがさっきの絵を描いた人と…」
美少女「…描かれていた人?」
女教師「そう。それで…あなたたちがその人たちにそっくりだったから声をかけたの」
美少女・男「「…」」
女教師「…ねえ、あなたたちは…生まれ変わりって信じる?」
美少女「…信じます」
男「え!?」
男「あ、いや…」
美少女「そういうあなたはどうなの?男くん」
男「俺は信じるよ。だってそう考えたほうが夢があるだろ?」
女教師「そっか。夢がある…か」
美少女「…先生?」
女教師「…うん!今日はごめんなさい。初日なのにいきなり居残りさせた上に変な話聞かせちゃって」
男「あ、いえ」
美少女「はい」
美少女・男「「はい」」
女教師「あ、あたしはここを片付けるから、二人とも先に…」
美少女「わかりました。男くん、行くわよ」
男「あ、うん。先生、ありがとうございました」
女教師「!?」
美少女「ありがとうございました」
女教師「…はい。さようなら」
ガララ…ピシャッ
女教師「…覚えてた…わけじゃないよね…」
女教師「なんだか…久しぶりにあの時のこと思い出しちゃったなあ」
女教師「美少女さんと男くん…苗字は違うけど…顔も名前も同じだもんね…」
女教師「二十数年ぶりか…」
女教師「…お帰りなさい。二人とも」
女教師「…さ!あたしも家に帰って旦那と子供たちのご飯作らなきゃ!!」
~輪廻転生END~
面白かったよ
乙
男も美少女も報われてよかった
引用元: 男「…へ?」 美少女「だからね」