生徒指導「はい…申し訳ありません、もう少し厳しく指導しておきますので…」
校長「まったく…次から気をつけるんだぞ」
-職員室-
生徒指導「はぁ…今日も怒られてしまった…」
生徒指導「子供が好きで一生懸命勉強して先生になったのに…子供を叱るのが辛くてどうしても叱れない…」
生徒指導「ダメだ!こんなことでは生徒のためにはならない!厳しく指導しないと!」
ヤンキーA「カーッ!やっぱ朝から吸うタバコはうめぇ!」
ヤンキーB「最高だな!ははは…あっやべぇ、センコーだ!」
生徒指導「お前らここでなにやってんだ?」
ヤンキーA「…ってなんだ生徒指導かよ…ビックリさせやがって」
ヤンキーB「生徒指導なら問題ないな。まったく驚かせるなよw」
生徒指導(なっ…コイツら俺がいつも見逃してるからって…)
生徒指導(俺は決めたんだ!今日の俺はいつもの俺じゃない!)
ヤンキーA「え」バシッ
生徒指導「こんな若いうちからタバコなんか吸いやがって!」ゲシッケシッゲシッ
ヤンキーA「ちょ…何すんだよ!」
ヤンキーB「どうしたんだよ…いつものセンコーじゃねぇぞ…」
生徒指導「俺は変わったんだ!今まで笑って見過ごしていたが…俺はもう昨日までの俺じゃない!」
ヤンキーA「あああ…せっかくのタバコが…」
ヤンキーB「ったくなんだよつまんねー!はやく教室行こうぜ!」
生徒指導「…」
生徒指導(痛い…胃がすごく痛い…)
生徒指導(生徒を2人も不快な思いにさせてしまった…うっ…)
生徒指導(辛い…もう嫌だ…)
生徒指導(もともと人を怒れない性格の俺にはこんな仕事向いてなかったんだ!)
生徒指導「はぁ…校舎に戻ろう…」
-校舎-
遅刻魔「やっべえ!遅刻だ!」
生徒指導「あっおい!廊下は走るな!」
遅刻魔「あ、すんませんw」
生徒指導「いや違う!お前今何時だと思ってるんだ!」
遅刻魔「いや~なんかいじめられている亀を助けたら竜宮城に連れて行くとかで気づいたら時間が早く…」
生徒指導「ふざけるな!」
遅刻魔「えっ…」
生徒指導「そんなベタな言い訳通用する訳ないだろ!」
遅刻魔「ちょwどうしたんすか先生~wいつもならノリが良…」
生徒指導「いい加減にしろ!毎日毎日うんざりなんだよ!早く教室行け!」
遅刻魔「先生が呼び止めたんじゃないですか!もう知らん!」
生徒指導「…」
生徒指導(うわあああああ!死にたい!死にたいいいいい!!)
生徒指導(くっ…胸が苦しい…こんな辛いことがあっていいのか…)
生徒指導(もうダメだ…はぁ…)
学年主任「あれ?こんな所で何してるんですか?」
生徒指導「ああ…すいません…」
学年主任「大丈夫ですか?」
生徒指導「大丈夫です…気にしないでください…」
学年主任「…汗が尋常じゃないですよ…保健室行きましょうか?」
生徒指導「いやいや大丈夫ですって!」
学年主任「顔色すごく悪いですよ。念のため行った方がいいですって!」
生徒指導「わ、わかったから…」
養護教諭「特に異常はありませんね」
生徒指導「もー心配しすぎですって」
学年主任「いやぁすいません」
ガラガラガラ
保健委員「失礼します。私のクラスの子が体調悪くなったみたいで…」
仮病常習「すいませーんwなんか具合悪くなってきちゃってw」
養護教諭「また君ね…何日か前にもこんなことなかったかしら?」
仮病常習「え?もしかして疑ってるんですか!?ひどい…グスッ…」
養護教諭「あーわかった!わかった!でも熱は測らせてもらうよ」
仮病常習「はーい!ケホッケホッ」ニヤッ
保健委員「…」
生徒指導(熱はある…でもなんっっっか演技っぽいんだよなぁ…)
生徒指導(いや、生徒を疑うなんて教師失格だ!)
生徒指導(で、でも少し…本当に少しだけ確認するくらいなら…)
生徒指導「えっと…君、昨日まですごく元気じゃなかったっけ?」
仮病常習「え?」
生徒指導「…」
保健委員「先生…ココ!」ヒソヒソ
生徒指導(ん?)
保健委員「…」パンパン
生徒指導(…ズボンのポケット叩いて何してるんだ?)
保健委員「…!…!」スッスッ
生徒指導「……!」
生徒指導「おいお前ポケットにあるもの出せ」
仮病常習「えっ…」ドキッ
仮病常習「いや…ここには何も…」
生徒指導「いいから出せ!」スッ
仮病常習「あっ…」
仮病常習「えっえっあっ…」アタフタ
生徒指導「…」
仮病常習「そ、その違うんですよ…これは…」
生徒指導「あ、芋虫」
仮病常習「うわあああああ!!どこ!?どこ!?」ドタバタ
生徒指導「クソ元気じゃねーか」
仮病常習「あっ」
生徒指導「早く教室帰れ!まったく…」
仮病常習「チッ死ねや!!」ガラガラガラピシャンッ
保健委員「あっ」ガラガラガラバタム
学年主任「…」
生徒指導「…」
生徒指導(はぁ…また1人生徒を嫌な思いにさせてしまった…)
生徒指導「ん?あのクラスだけ騒がしいな…」
人気者「授業がつまんねーんだから授業妨害したって何も問題ねーだろ!」
担任「あのね、真面目に授業を受けたい子だっているのよ?その子の気持ち少しでも…」
人気者「綺麗事言ってんじゃねぇババア!」
生徒指導「どうしたんですか?」ガラガラガラ
担任「あ、すいません…この子が授業中ずっと騒いでて…」
人気者「先生聞いてくださいよ!あの無能教師、授業がつまらないくせに真面目に授業を受けろって言ってくるんですよ!やってらんないすよ!先生もなんとか言ってくださいよ!」
生徒指導「…」
全員「!?」
生徒指導「先生ってのはなあ!お前らのために!少ない給料で!授業を教えてやってんだよ!なのになんだその態度は!!謝れ!!!!!」
全員「…」
人気者「はあああああ!!!??」
生徒指導「…」
人気者「うわあー!先生の口からそんな言葉出てくるとは思わなかったわー!いつも俺達に味方してくれるのになー!もういいよお前、どっか行ってくれん?」
生徒指導「…」
人気者「出てけっつってんだろボケェ!!!!!」
生徒指導「…」ガラガラガラバタム
人気者「…はぁ…はぁ…」
生徒指導(1日にいったい何人の子を傷つけなければいけないんだ…クソ!)
生徒指導(こんな仕事…なくなってしまえばいいんだ!)
-昼-
教頭「表情が暗いですよ、大丈夫ですか?」
生徒指導「大丈夫です…」モグモグ
教頭「私のタコさんウインナー食べますか?」スッ
生徒指導「…」
生徒指導「…」モグモグ
教頭「おいしいですか?私の手作りなんですよ~」
生徒指導「…先生、なんで学校には生徒指導という人がいないといけないんでしょうか…」
教頭「…えっ…」
生徒指導「なんでですか…」
教頭「んー…いやほら、子供が将来間違ったことをしないために…ね?そのためにも子供を叱る人は必要なんだよ」
生徒指導「…」
問題児「うるせーなぁ…チッ」
生徒指導「今は掃除の時間だろ!何遊んでんだ!」
取り巻き「うわー冷めるわー」
不良「あっち行こうぜ」
生徒指導「お前野球部だろ!何帰ろうとしてんだ!」
サボり魔A「うざっ消えろやハゲ」
サボり魔B「わかったよ戻ればいいんだろ?」
-駐車場-
生徒指導(すっかり暗くなってしまった…早く帰ろう)
ドンッ
生徒指導「いてっ」
用務員「あっすいません」
生徒指導「いえいえこちらこそ…」
用務員「…どうしたんですか?なんで泣いてるんですか?」
生徒指導「…え?」
生徒指導「…という訳で、今までありがとうございました」
校長「ま、ま、ちょ待っ…え?どうしたんですかいきなり辞表なんて…」
生徒指導「私は教師なんて…ましてや生徒指導なんか…向いてなかったんです…」
生徒指導「私は子供を叱る度に心に大きな傷を負わされ、もう辛くて続けられないんです…」
生徒指導「私に生徒指導なんて務まりません…今まで本当にありがとうございました。生徒にも伝えておいてください…」
校長「…」
ヤンキーB「もう買うのやめるか…」
遅刻魔「先生の言う通り、やっぱ遅刻はよくないよな…」
仮病常習「人を騙すって最低だな…」
人気者「俺…なんであのとき先生にあんなこと言っちゃったんだろう…」
問題児「あっ…1番上のボタンはめるの忘れてた…」
不良「たまには真面目に掃除するのも気持ちいいな」
取り巻き「ああ」
サボり魔A「ちょっと部活に顔出しに行こうぜ」
サボり魔B「今日はサボるのやめるか」
教頭「最近、生徒の素行が良くなってきている気がしますね」
校長「あの先生が最後に厳しく指導してくれたおかげだねぇ…」
学年主任「先生…戻ってきてください…!」
生徒指導(子供を叱らなくていいだけでこんなにも心に余裕ができるなんて…教師やめて正解だったな)
生徒指導(俺は毎日楽しく生きて楽しく人生を送りたいだけなのに…なんでこんな嫌われ役への道を選んだんだろう…)
子供A「キャッキャキャッキャ…」
子供B「ワハハハハ…」
生徒指導(はぁ…楽しそうだなぁ…)
教頭「ん?あれ?先生?」
生徒指導「あっ教頭先生」
教頭「久しぶりだな~元気にしてたか?いきなりやめたから心配しちゃったよ~」
生徒指導「あはは…すみません…」
生徒指導「私はもともと人を怒れない性格で…ましてや子供を叱るなんて私には荷が重すぎます。私に教師なんか務まりませんよ…」
教頭「そうですか…」
生徒指導「なんかもうね、嫌になってきちゃったんだよ。もういっそのこと実家に帰って楽になりたい…」
教頭「…」
生徒指導「じゃ、私はこれで」
教頭「待ってください!」
生徒指導「?」
教頭「実は…先生が退職した数日後、何人かの生徒が職員室に来たんです…」
仮病常習「僕達にも知る権利はあるはずです!」
周り「そーだそーだ!」
学年主任「ちょ…皆落ち着いて…」
教頭「…君達、ちょっとこっちに来なさい」
遅刻魔「え…」
教頭「私が1から10まですべて話す」
スマホ「先生!帰ってきてください!」
スマホ「全部聞きました。俺は全然傷ついてないし気にしてません!俺はあの厳しい先生の方が好きです!」
スマホ「この前は暴言吐いてごめんなさい!」
スマホ「戻ってきて!!」
ポチッ
教頭「まあ…こんな感じです。いつか見せようと思ったのですが住所がわからなかったので…」
生徒指導「…」
生徒指導「…ふふっ…まったくコイツら…」
教頭「ハンカチいる?」スッ
坊主「ひいいいい!すいません!すいません!!!」
生徒指導「反省してるのか!?」
坊主「してます!ごめんなさい!!」
遅刻魔「おお…さすが鬼の生徒指導…」
仮病常習「やっぱ生徒指導の先生はコレがしっくり来るな!」
生徒指導「あ!てめぇら何コッソリ見てやがる!」
遅刻魔「ゲッ!バレた!」
仮病常習「逃げろーーー!!!」
生徒指導「待ておらぁぁぁ!!」
遅刻魔「あ!先生が廊下走ってる!」
生徒指導「うるせえ!」
-おわり-