サイコパス「アーハハハァ!大企業の社長様も、娘が連れ去られたらさすがに冷静じゃいられないみたいだなぁ?」
女の子「……どうしてこんなに酷いことができるの?」
サイコパス「ゼハハ!俺様にはなぁ、産まれてこの方、自分以外を考えたことがない」
サイコパス「情だのなんだの、そういう無用のものに左右されない!俺様は頭がいいから論理的に行動できるのだ!」
サイコパス「お前みたいなガキの頃からそうだったぜ、心から他人を憐れんだことが、ただの一度もない!」
サイコパス殺人鬼「かかか!ガキにはわかるまい!」
女の子「おじさん、人はね、助け合わないと生きていけないんだよ」
女の子「お父さんが言ってた」
サイコパス「俺様は賢いから必要ナァイ!人が溜め込んだものを、こうやって横から利用してやればいい!」
サイコパス「生物として、人間の上に立つ存在なのだ!」
女の子「……違うよ」
サイコパス「ガキにはわかるまい!ゼハハハハ!」
女の子「本当にそうなら、おじさんが社長で、助け合いをモットーにしてるお父さんが犯罪者になってるはずだもん」
サイコパス「ゼハハハ!何を言う!」
女の子「だってそうでしょ? 人を利用してうまく扱える人優れた人間なら、おじさんはもっと成功してるはずだもの」
女の子「なのにどうして警察の影に脅えて、そんな危険なことをしないとお金が手に入らないの?」
サイコパス「はぁ!?」ブチ
サイコパス「俺様ととんち比べでもしようというのか、面白い」
サイコパス「いいだろう、乗ってやる。俺様はゲームが大好きでな?お互い、返答に窮する度に、目玉を片方抉る」
女の子「…………」
サイコパス「お前が二度勝てば、俺様は目を抉る前にお前を解放してやろう」
サイコパス「クク、もっとも、お前は一度負けた時点で苦痛で何もできんだろうが……」
サイコパス「おっと、今更取り消しは駄目だ!俺様はゲームが大好きなんで…」
女の子「いいよ」
サイコパス「あぁ!?」
女の子「いいよ、早く始めましょう、おじさん。さっきの続きから、おじさんの手番だよ」
サイコパス(こ、このガキ……!)
サイコパス「第一に、お前の父親は苦労して今の地位を手に入れた」
サイコパス「大して俺様は、労せずにその結果である金銭だけを得ることができる」
サイコパス「これが俺様がお前の父親より賢いという理由だ」
女の子「……でも」
サイコパス「そう、お前は、警察に捕まるリスクがある、と言った」
サイコパス「だが、俺様にはそれもゲームに過ぎない。俺様は月に五人はレイプしていてな、警察に追われるくらい、誘拐、強盗の前科が増えた程度、関係ない」ニマァ
サイコパス「そして俺様は、今の現状に満足している。警察との追いかけっこも楽しんでいる。デメリットだとは思っていない」
女の子(この人、ただの乱暴な人かと思ったけど、きっちり自己分析もできるんだ)
サイコパス「至極当然の考え!人の歴史を紐解けど、王は多くのを女を犯し、子を孕ませるのが常!」
サイコパス「貴様の父は社会的に成功したとしても、俺様より多くの女をナマで犯すことはできず!」
サイコパス「そして蓄えた金銭も俺様に奪われ、子供さえも無残に殺されるのだ!」
女の子(確かに、頭も悪くなさそう)
女の子(最初は私相手にまともに会話する気もなさそうだったけど、『ゲーム』には真剣に取り組んでる)
女の子(まともにいっても押し問答になるだけ。そうなれば、主導権を握っているおじさんには勝てない)
女の子(だから、まずは粗さがしで賭けに出る)
女の子「……おじさん」
サイコパス「なんだ、命乞いか、ゼハハ!」
女の子「……あのね、おじさんの話はね、全部詭弁だよ」ハァ
サイコパス「あ?」
女の子「互いに自分の論理を押し付け合うだけだよ。もっと客観性のある言葉で語らなきゃ」
女の子「本当におじさんはそういう話がしたかったの? そんなのがゲームになるの?」
サイコパス「こ、このガキ……!」ピキピキ
女の子「それにおじさんがいくら女の人を抱こうとも、その女の人は妊娠した子供を育てるかな?」
サイコパス「あっ、が、それは……」
女の子「産まないよね? 子孫を残す能力に長けてるのかな、それって」
女の子「王様の子供は育てられるけど、おじさんの子供は私くらい大切に育てられるかな?」
サイコパス「それは……!」
サイコパス「……確かに語弊があった。だが、俺様は欲を満たす手段に優れていると……」
女の子「おじさん、目」
サイコパス「ああ?」
女の子「私、一点だよね、今の」
女の子「訂正認められるの?ゲームにならないよね」
女の子「おじさん、ルールが破綻してるよ。それはゲームじゃない」
女の子「自分の論理押し付けて、言葉に矛盾が出たら戻ってなかったことにする」
女の子「そんなの勝敗なんてつくわけないよ」
サイコパス「……ぐ、う、が」ビキビキ
女の子「でも別にいいよ。目は取らなくても、お話を続けましょ?」
サイコパス「……舐めるなクソガキ!」ブシュ
女の子「う、あ……!」
女の子(じ、自分の眼窩に指を……)
サイコパス「ゼハハハハ!確かに俺様の落ち度だった!ガキだと思って舐めていたらしい!」
サイコパス「楽しくなってきたじゃねぇか!続けようか。だが、次はお前だ、覚悟しておけ」ギョロ
女の子「…………」ゾクッ
サイコパス「俺様の主張はさっきの通りだ。俺様は、少ない労働で、生活基盤の金銭と、女の身体を好きなだけ得られる」
サイコパス「次はお前が喋れ」
女の子(……最低限しか喋らないことで粗を出す機会を減らして、逆に私の言葉の粗を同じ手法で突き返す作戦かな)
女の子「いいよ、次は私が話す」
サイコパス「ほう、勇敢なこった」
女の子「私からは、貴方が決して優れた人間ではないということを証明してあげる」
サイコパス「随分と、煽ってくれるじゃねぇか」
女の子「けれど現在は脳構造の解明が進んでいて、一般にサイコパスと言われるような犯罪者は、脳の感受性を司る部位が細いという傾向が示されている」
サイコパス「脳の特定部位が小さいから劣っている? それこそ詭弁だ」ハン
サイコパス「不要な部位がないから選択肢が多いんだよ。短絡的な発想を口にしたな」ニィ
女の子「違う。私が言いたいのは、もっと単純な事」
サイコパス「あ?」
女の子「人間は本来、共感能力によって安心と安らぎ、生きている実感を得る」
女の子「おじさんにはそれがな。おじさんは愛し合う喜びも知らないし、誰れかに手を差し伸べられてもそこに安らぎは得られない」
女の子「選択肢が多いのではなく、単に破滅的な生き方しか得られない」
女の子「人並み以上の知能を持っているのに、獣以上の生き方や喜びを追求することができない、可哀想な人」
サイコパス「……なるほど、死ぬ前に俺様を馬鹿にしてやろうと言う魂胆だな?」ビキビキ
おじさん「それがどうした?俺様には、共感能力がないからな!」
女の子「それも違う。ないのではなくて、細いだけ」
おじさん「は、はぁ?」
女の子「現におじさんは、お父さんからお金を奪った後に私を苦しめて殺すことで、わざと罪を重くしようとしている」
女の子「それはおじさんが、そうしたいから。おじさんは私やお父さんの苦しみという感情に、行動を左右されている」
女の子「それは他者の感情がどうでもいい、というおじさんの主張から明らかに矛盾している」
サイコパス「え?い、いや、違う!俺様は、ただ人が苦しんでいる悲劇や、死体が見たいだけだ!そこに付随する感情はどうでもいい!」
女の子「そうかな?喜んでいる人がみたいから善行を働くけど、人の気持ちはどうでもいいなんて人がいるかな?」
サイコパス「あ……?」
サイコパス「そんな……でも、じゃ、じゃあ、俺様は、いったいなんなんだ?」
女の子「矛盾しているんだよ、おじさんの言動は。でも、サイコパスには明らかに不要な範疇の凶悪行為に走る人が多いの」
サイコパス「…………めろ」ヨロヨロ
女の子「人の気持ちがわからない、理解できない子供は、幼少期に特に同年代の子供から阻害される」
サイコパス「やめろ」
女の子「一般に、幼少期に人格形成の七割が終わるとされている」
女の子「高知能のサイコパスは、少年・青年になってから、他人の目から見て感受性がある様に振る舞うことを覚える」
女の子「それでも幼少期に受けた傷は癒えない。それによって、ネグレクトに近い状態になり、人の愛し方がわからなくなる」
女の子「だから余計に相互理解を拒み、一生を暗い箱の中で一人ぼっちで、ただ刹那的な衝動に従って生きることしかできなくなってしまう」
サイコパス「やめろ!!」
女の子「人とわかり合うことができないから色んなことに意義を感じず、自分でゴールを設定するゲームに夢中になり、それが指針になる。おじさんみたいにね」
女の子「以上が、貴方が決して優れた人間ではないということの証明」
サイコパス「あああああああああああ!!!」ガリガリ
女の子「…………」
『貴方、またこの子が……』
『あいつの話はするな、気が重い』
『今度は猫を殺したみたい……』
『気味が悪い、いつか人でも殺しかねない。院長に金を握らせて、無理矢理孤児施設に入れるか』
サイコパス「ああああああああああああ!」
『あいつ、根暗で気持ち悪いよな』
『反応遅いんだよ。ああいうの、知恵遅れっていうんだぜ』
サイコパス「があああああああああああ!」
『あああ!院長先生、あいつが、あいつがカッターで!僕を殺す気なんだ!』
『知らないよ、僕何もしてない!あいつ、猫殺してたし、やっぱり頭おかしいんだ!追い出してよ!』
サイコパス「あ、あああ、あああ……」ヘナッ
女の子「おじさん……」
サイコパス「あっはっはっは!これは傑作だな!俺様…俺の負けだ!」
サイコパス「おら、解放してやる!ルール通りにな!あっはっはっは!」ガシャ
サイコパス「これがないと、何の指標に生きてるのかわからなくなるからな!」
サイコパス「おら、俺に勝った賞品だ!もう一つの目もっ!」グッ
女の子「……ダメだよ、おじさん」ギュッ
サイコパス「放せ!俺から生きてきた意味さえ奪うと言うのかお前はぁ!」
女の子「大丈夫だよ、おじさんは少し辛いことがあっただけだから、ね?」
女の子「おじさんは、共感能力も感受性もあるよ。それに、頭もいいもの。やり直せるよ」
サイコパス「無理だ…俺にはもう、何もわからない…生きる指標もない。俺は、俺は…」
女の子「だったら私が、おじさんのそばにいてあげる。おじさんの生きる理由になってあげる」ギュッ
サイコパス「う……うあ、うわあああああああ!」ボロボロ
おじさん「…ただいま」
女の子「お帰り、おじさん。お仕事お疲れ様」ニコニコ
おじさん「お前、本当に良かったのか? いいとこのお嬢さまだったのに、日雇い労働で生計立ててる犯罪者のクズなんかと一緒にいてよ」
女の子「私、おじさんのこと大好きだもん」ペタッ
女の子「おじさん、私の事考えてくれるようになったね。何かわかった?」ギュ
おじさん「よく、わからねぇ……。ただ、最近思う。俺は、生きてちゃダメな奴なんじゃないかって」
女の子「ダメだよ、私、おじさんのこと、大好きだもの」
女の子「おじさんが例えこの先、どんなに良心の呵責に苦しむことがあったとしても、絶対に、逃がさないから。あの世にだって」ボソッ
おじさん「……? 今、何か言ったか」
女の子「うん、おじさんが大好きだって!」ニコニコ
完
自分で連れて来たんだぞ