絵画ソムリエ「なるほど!しかしどういった風にそれを読み取れたのですかね?」
ベテラン「そ、それはぁ…感じたんだ!そう!感じた!この絵から>>3のような人生を歩んできたのだって!」
絵画ソムリエ「まことか!?」
───────
絵画ソムリエ「まことか!?」
──────
アウトロー「くっ…ここまでか…俺の人生も他愛もないものだったぜ」
ボス「追い詰めたぞ。独り言で舌噛まないように気をつけるんだな」ガバッ
アウトロー「ははっ…どいつもこいつも俺をとっちめたがる。どうしてこうも俺は…除け者にされるのかな」
ズカッ
アウトロー「うぐっ!!」
ボス「黙りな。舌噛むと言ったろ?」
アウトロー「この際だからなんでもいいや。溜まった鬱憤を晴らしてやるよ」
ボス「既にボロボロの、一人のお前になにができる?」
アウトロー「教えてやるよ。俺の味わった苦痛を」
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子供「うええーーん!いきなり殴られたんだ!」
ヤンキー「はぁ?そんなしょうもねーことしねーよ。こいつは俺の財布を盗もうとしたんだ」
子供「違うんだい!目があったからって!俺みたいな子供にも手を出してきたんだ!この人はチンピラなんだ!」
アウトロー「チンピラねぇ。おいお前、あんまり調子に乗らない方がいいぞ」
ヤンキー「あん?」ギラッ
アウトロー「その態度…やはりチンピラだな」
ズカッ!!
ヤンキー「うっ!」
アウトロー「ここ一体の人間を泣かせるんじゃねぇ」
子供「うえええーん!」
アウトロー「おいおい、泣かないでくれよ」
子供「うぅ…違うんだい…本当は俺…この人の財布を盗もうとしてたんだい」
アウトロー「な、なにぃっ!?」
アウトロー「お金がないって…どうして?」
子供「それは…親父は働いてるけど、お金は全部酒に消えるよ。母ちゃんは肺の病気でずっと寝てるし…。親父がおかしくなったのは、母ちゃんが倒れてからなんだ」
アウトロー「そうか…」
ズカッ!
ヤンキー「!?」
子供「うぅ!…どうして!?」ヨロヨロ
アウトロー「人を騙した罰だ。どんな事情があろうと財布の盗みは諦めるんだな」
子供「そんな!あんまりだ!俺んちは俺しか金を稼げるろくな人間がいないって言うのに!」
アウトロー「金を稼ぎ方ひとつで、お前もろくな人間じゃなくなっちまう」
子供「じゃあ…どうすればいいのさ!」
アウトロー「ついてこい。仕事紹介してやる」
ヤンキー「…」
アウトロー「お前も来るか?」
アウトロー「それから俺はその二人に、この世界を紹介した」
ボス「そうか…だが結末は生憎なものだったって訳か」
アウトロー「ああ、二人は裏切ったよ。人手の少ない俺の事務所より、華やかに飾られたあんたんところの事務所が気に入ったらしい。おかしいと思ったよ。どの店とも商売の契約がとれないんでな。全部あんたんところに買われてた。とんだ商売上手だね」
ボス「ふっ…この機に及んでまだおちょくる気か?俺の取引先の人たちも、あんたの押し売りには迷惑してるんだとよ。バカのひとつ覚えのようなお前のやり方じゃ、この世界ではやってけんよ」
アウトロー「…」
ボス「俺は契りを交わすとき、必ず相手さんに金を握らせる。お前にはその寛大さが、あるのかな?」
アウトロー「汚ねーよ。やっぱり足洗うべきだった。俺んとこの親分にさえ借りがなけりゃとっくにやめてんのによ」
ボス「親分さんに救われた口かい」
アウトロー「血は繋がってないんだがな…育ての親だよ」
ボス「そりゃ訳がありそうだ」
アウトロー「今さら話す気もねぇさ」
アウトロー「…煮るなり焼くなり好きにしやがれよ。生憎親分はもう死んだんでな。俺もあの親分…親父のあとを追えると思うと清々するよ」
ボス「喋りすぎだ。口を閉じて歯を食いしばれ。見納め時だ」
アウトロー「ははは…最後ぐらい親父と酒でも飲みたかったよ。頑固な親父だった」
ボス「哀しい遺言だな」
ドスッ!(ナイフを突き刺す)
アウトロー「うぅ…」
ボス「…生まれた環境が違かったら、お前の人生も変わってただろうに…」
────────
ボス「…」
ズカッ!
部下「いてぇ!何するんです!?」
ボス「少し黙れ。今考えててな」
部下「…ボス?」
ボス「いいから一人にしてくれ…」
部下「は、はぁ…」
ボス(どうしたものかな…)
ボス(座右の銘は、日々精進か…ありきたりだな…それに、最近じゃ前に進んでいるのかさえ疑問に思えてくる)
ボス(俺は一体なんのために生きてきたんだ?本当に俺は誰かを脅して、誰かをそそのかして、その上に作り上げた富に憧れていたのかな)
ボス(くそぉ!なんで俺がこんなに悩むってんだ!いっそのこと座右の銘なんて変えてやる!)
バッ!(掛け軸をとる)
ボス(なににしよう…こうしようか…いや、違うな、くそぉ!ダメだ!座右の銘でさえろくに決められないなんて!ここを…こう書き足して…)
部下「ボス!入りますよ…って、なにやってるんですか!?」
ボス「あぁ?お絵描きじゃボケェ」
ベテラン「そうしてできたのがこの絵じゃよ。自分の生き方に葛藤を覚えた一人のアウトローが、悩みに悩んで書き上げてしまった絵が」
ベテラン「この絵じゃ」
ベテラン「…あれ?誰も居ないのぉ。はっはっはっはっはっ!」
おあとがよろしいようで
絵画ソムリエ(…ベテランの奴は話が長いのぉ…どうせ作り話だろうし、今のうち身を引いておくかの)ソソクサ
ベテラン「ペチャクチャペチャクチャ」
──────
───
絵画ソムリエ「なんと言う絵じゃ!こんなに心を動かされた絵は初めてじゃ!美しい!」
主催者(実はその絵の作者)「ほう。お目が高いですな。今のところ一番人の目が集まらなかった、この絵の良さが分かるのですか?」
絵画ソムリエ「当たり前ですよ。私はありきたりの絵は幾度となく見てきた。でもこれは違う!革新的な絵だ!」
主催者「ほう。よくお分かりで。ちなみにこの絵について、どう感じましたか?」
絵画ソムリエ「そ、それはじゃの…(ははっ、どうしよう分からねーや)…あれじゃよ」
絵画ソムリエ「…>>18のようなものが描かれているんじゃないだろうか?」
主催者「ほう」
──────
やめます
おやすみ
主催者「ほう」
─────────
男の子「なあなあ、この道路の白線が無かったらどう思う?」
友達「はぁ?なに言ってるんだ?」
男の子「なにをって白線が無かったら車とかは事故を起こさずに走るのとができるかな?」
友達「知らねーよ。でもさ、ただ言えるのは…ほら、あれ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ(機械で白線引いてる)
整備士「ふぅ…」
友達「あんな仕事には就きたくねーな」
男の子「…そうかな?……」
友達「そりゃそうだろ。今じゃ学歴も重要だぞ。もちろん会社に入ってからじゃ実績がものを言うんだろうけどさ、雇ってもらえなきゃ元も子もなあからな」
男「なんで俺お前みたいに大学行かなかったんだろうなぁ」
友達「まあ大学行ったから必ずしもきいところに就職できるわけでもねーしさ、それに大学はなにかと金かかるじゃん。そのうちお前にもいい仕事が見つかるよ」
男「だといいんだけどなぁ」
────
男「はい!ありがとうございます」
面接官「じゃあこれで面接は終わりです。お疲れさまでした」
男「ありがとうございます!」
スタスタスタ
面接官「…ダメだな…次の方どうぞ!」
「はいっ!失礼します」
────
整備員「すみませーん、こっち工事中で通れないので向こうからお願いします」
男「へぇ、ここも工場するのか。どんどん道が新しくなっていくなぁ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
──────
男「なので私はその培ってきた能力を活かしたいと思い、御社へ志望させていただきました」
面接官「へぇ、まあうちも色んな人材が欲しいからねぇ…あとはこちらで検討させていただきます。以上で面接は終了となります」
男「えぇ、もう終了…ですか?」
面接官「まだお話足りないことがあるんですか?」
男「いや…その、い、いえ!ありがとうございました!」
スタスタスタ
面接官「次の方どうぞー!」
────────
男「ダメだ…高卒じゃこんなにも厳しいものなのか…」
整備員「すみません、こっちは工事中ですので」
男「あぁ、すみません」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
男「この際どこでもいいんだよなぁ、働くの」
男「ゴゴゴゴゴって…なんか懐かしいなぁ…」
男「急ぎでしたが資格も取得することができ、勉強で得た専門的な知識を活かしたいと考えています」
面接官「…そうだね。この仕事は一見地味で忘れがちだけど、交通の根底にある白線を引いているんだ。最近になって整備の仕事も増えてきたし、わが社としても君のような理解のある人が欲しい」
面接官「直接で悪いんだけど、採用だよ」
男「本当ですか!!」
面接官「あぁ、さっそく初めの出勤日を決めてもらおうかな」
男「ありがとうございます!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
整備員「すみません、今ここ工事中でして」
友達「あ、分かりました…ってあれ?」
整備士「次こっちかな」
男「はいっ!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ
友達「男じゃん!あいつここで働いてたんだ」
友達「そう言えば子供の頃あいつ白線がどうとか言ってたな…」
友達「あいつもあいつなりに頑張ってるんだな」
スッ(スケッチブックを取り出す)
整備員「あー!コラコラ!工事中って言ってるでしょ!そこにいると危ないかもしれないから!」
友達「…」カキカキカキカキ
友達(仕事に優越なんてないのにな。どの仕事も、社会に貢献してるよ)
主催者(実はその絵の作者)「…(馬鹿馬鹿しくて付き合ってられん!)」ソソクサ
絵画ソムリエ「と、いう具合にこの絵は書き上げられたんだろう。作者は仕事の大切さを認識し始めたんだろう。このみすぼらしくたたずむ白線をひく機械がそれを表してる」
絵画ソムリエ「これはそういう絵だ」
絵画ソムリエ「って…あははは!誰も居ませんな!」
おあとがよろしいようで
ありがとうございました