タラオ「きれいなお店でーす!」
マスオ「そうだねぇタラちゃん!」
サザエ「ねぇ……マスオさん、あの店員さんの格好見て?高校生かしら?あんな若い子にあんな服着せて……ここ、いかがわしいお店なんじゃないかしら……」ヒソヒソ
マスオ「え゛ぇ゛~!?ふ、普通の喫茶店だと思うけど……」ヒソヒソ
タラオ「いかがわしいってなんですか?」
シャロ「え?い、いかがわしい……?」
サザエ「!!……タ、タラちゃん!」
シャロ「い、いかがわしくないです!!」
タラオ「でもママが言ってたです。このお店はいかがわしいって」
シャロ「な!?ふ、普通の喫茶店です……!」
サザエ「タラちゃん!」ガシッ
タラオ「んんっ」モゴモゴ
マスオ「し、失礼!入るお店を間違えました!行くよ!サザエ!タラちゃん!」ダッ
タッタッタッ……
シャロ「……」
―
サザエ「ハァハァ……とんだ恥をかいちゃったわ……」
タラオ「いかがわしいお店入らないですか?」
マスオ「えーと……タラちゃん?いかがわしいって言葉は子どもが使うと怒られちゃう言葉なんだよ。タラちゃんは怒られたくないだろう?」
タラオ「お、怒られたくないです!」
マスオ「じゃあパパと約束しよう。これからはその言葉を使っちゃダメだよ」
タラオ「約束するでーす!」
マスオ「う、うーん……そうだね。お義父さんには内緒にしておこう」
タラオ「内緒ですか?」
サザエ「そうよタラちゃん。さっきのお店に行ったことは内緒にしてね」
タラオ「内緒にするです」
サザエ&マスオ&タラオ「ただいまー」
カツオ「あー!帰ってきた!ずるいよ!デパート行くなら僕も連れて行ってほしかったよ!」
マスオ「ごめんよカツオくん。でもお土産にケーキ買ってきたから勘弁しておくれ」
カツオ「さすがマスオにいさん!気が利くなぁ!……あ!タラちゃん、お出かけは楽しかったかい?」
タラオ「楽しかったでーす!でも、いかが……あっ!」ドキッ
タラオ「なんでもないでーす!」
カツオ「姉さん、イカって……」
サザエ「さ、さあ!なんのことかしらね。それよりも早くケーキを食べましょ!ね、マスオさん!」
マスオ「そ、そうだね!」
カツオ(怪しい……これは何か隠し事をしているな……)
カツオ「ねえ、タラちゃん。あとで公園に遊びに行かないかい?」
タラオ「行くでーす!」
―
トコトコ
カツオ「タラちゃん、さっきイカって言ってたよね?あれは……」
タラオ「な、なんでもないでーす!内緒の約束です!」
カツオ(ふぅん……やっぱり内緒にしてることがあるんだな)
堀川「あ!おにいさ~ん!」
カツオ「あ、堀川君」
堀川「おにいさんたちも公園に行くんですか?」
カツオ「うん。堀川君も公園に?」
堀川「ええ!僕、チラシ名人を目指しているんです!」
カツオ「は?」
堀川「公園でいろんなお店のチラシ配りの人からチラシをもらうんです!誰よりも沢山チラシを集めて、日本一のチラシ名人になるのが僕の夢なんです!」
カツオ(またわけのわからないことをしてるなぁ……堀川君)
堀川「あ!早速チラシを配っている人がいますよ!おにいさん行きましょう!」ダッ
カツオ「やれやれ……行こう、タラちゃん」
タラオ「ハイでーす!」
シャロ「フルール・ド・ラパン、よろしくお願いしまーす」
堀川「チラシ下さい!」
シャロ「あ、はい!どうぞ!ありがとうございまーす」
タラオ「あー!?さっきのいかがわしいお姉さんですー!」
シャロ「!?……あ!さ、さっきの男の子……!」ビクッ
タラオ「あ、言っちゃったです……」
カツオ「い、いかがわしい……?」
カツオ「え、えーと……」
カツオ(どうしよう……知ってるけど言いづらいなあ……知らないふりをしよう)
カツオ「ご、ごめんよ堀川君。僕、分からないや」
堀川「残念だなぁ……あ!お姉さん、いかがわしいってなんですか?お姉さんはいかがわしいってやつなんですか?」
シャロ「へ!?ち、違います!!!」
堀川「興味があるなぁ。いかがわしいって。お姉さん、いかがわしいって何か知っているんですよね?ぜひ僕に教えてください!!」
シャロ「い、いかがわしくないいいいいい!私は健全だってばあああああああ!!」ダッ
タッタッタッ
堀川「あ、逃げちゃった……教えてほしかったのになぁ」
波平「……」トコトコ
ノリスケ「あ!おじさーん!」
波平「ん?ノリスケか」
ノリスケ「お散歩ですか?丁度よかった!ねえ、おじさん。いい喫茶店を知っているんですけど一緒に行きませんか?これ、そのお店のチラシです」スッ
『~心も体も癒します~ OPEN フルール・ド・ラパン』
波平「な……!?バ、バッカモーン!!!!!」カァッ
波平「どう見てもいかがわしい店のチラシではないか!!!こんな店にわしを連れて行こうとしたのかおまえは!」
ノリスケ「えぇー!?ち、違いますよ!このお店は」
波平「しばらくおまえはうちに出入り禁止だ!!」
ノリスケ「ちょ、ちょっとぉ!そんなぁ~!」
シャロ(昨日は変に疲れちゃった……でも気を取り直して今日は頑張ろ……)
チリーン
シャロ「あ、いらっしゃいませー!
堀川「あ!お姉さん!来ちゃいました!」
シャロ「!?」ビクッ
シャロ(こ、この子は昨日の……!)ゾクッ
堀川「お金は持ってないので何も買えないんですけど、お話しだけでも聞こうと思ってメモ帳は持ってきました!」
シャロ(な、なんなのこの子……)ガクガク
シャロ「だ、だから!いかがわしくありません!」
堀川「えぇ~!?そんなはずないと思うんだけどなぁ~せめていかがわしいの意味だけでも教えてくださいよお姉さん!ねえねえ!」
シャロ「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁあぁぁ!!!もういやああああああ!!」ダッ
バタンッ!
堀川「ああ、待ってくださいよぉ!」
とぼとぼ
シャロ(店長が諭してあの子には帰ってもらったみたいだけど……疲れた……なんなのよホントに……)
シャロ(やっと家に着いた……)
シャロ「はぁ……せめて今日はゆっくりお布団で眠りたい……」
「お姉さん!!!」
シャロ「!?」ビクッ
シャロ「ひ……!」ゾクッ
堀川「へぇ~!こんな家に住んでいるんですねぇ!僕の家より小さいけれどお洒落だなぁ!」
シャロ「あばばばばばば……!」ガクガク
堀川「本当はこっそり家の外からお姉さんを観察しようかと思ったんですけど、やっぱり直接聞いたほうが早」
シャロ「いやあああああ!!助けてえええええ!!」ダッ
タッタッタッ
堀川「あ……また逃げられちゃった……やっぱり見つからないように観察したほうがいいのかなぁ?」
とぼとぼ
シャロ(うぅ、もう家にいられない……千夜は全然電話に出ないし……)
シャロ(全速力で逃げていたら知らない場所に来ちゃった……ここ、何処かしら……お腹すいた……)
シャロ「うぅ……」ホロリ
サザエ「あら、あなた!あの喫茶店の店員さん!」
シャロ「え?」ドキッ
シャロ(こ、この不思議な髪形の人、あの時の……!)
サザエ「あの時はごめんなさいね。こんなところでどうしたの?泣いてたみたいだけど……」
シャロ「え、えっと……これは……」
サザエ「なんだか分からないけど、ここ、私の家の前なのよ。ちょっと休んで行ったら?」
波平「ほぅ、その年で一人暮らしをしながら自分で家計費を稼いで高校にも通って……立派なもんだ」
シャロ「い、いえ……そんな……」
タラオ「お姉さんは立派ですか?」
マスオ「そうだよぉ~タラちゃん。お姉さんは立派なお姉さんなんだよ~」
フネ「シャロさん、今日はうちで夕飯を食べていきなさい。今用意していますからね」
ワカメ「ゆっくりしていってね」
シャロ「は、はい……」モジモジ
シャロ(ど、どうしよう……至れり尽くせりすぎて落ち着かない……)
カツオ(シャロさんのこの様子……さては堀川君が何かやらかしたな……)
シャロ「しゅ、しゅきやき!?」ピクッ
ワカメ「わーい!」
タラオ「おいしそうでーす!」
シャロ(す、すき焼きなんてまともに見ることさえ久しぶりすぎて目まいが……!)
フネ「シャロさん、遠慮せずにたくさん食べてくださいね」
シャロ「は、はい……いただきます!」
?「おじゃましまぁ~す!」
サザエ「あら、誰か来たわ」
サザエ「あらノリスケさん……あきれた!もう嗅ぎつけたのね」
波平「ノリスケ!おまえはしばらく出入り禁止と言ったはずだ!!」
ノリスケ「もういいじゃないですかおじさ~ん!……ん?そこにいるお嬢さんは……フルール・ド・ラパンの店員さん……?」
シャロ「あ!いつも来てくれるお客さん……!」
波平「なんだ、知り合いなのかノリスケ?」
シャロ「え?」
波平「な!?」
サザエ「あら……父さんもいかがわしいお店だと勘違いしてたの?……実は私もフルール・ド・ラパンで勘違いして恥をかきまして……反省しております」
カツオ(なるほど、それを隠していたのか)
波平「う、うむ……間違いは誰にでもある……シャロさん、ノリスケ、すまなかった」
シャロ「い、いえ……」
ノリスケ「やった!出禁は解除ですね!それじゃあすき焼きいただきます!あ、サザエさん、ビールありますか?」
サザエ「はいはい、待ってくださいね~」
シャロ(す、すき焼き美味しい……)もぐ
カツオ「ところでシャロさん、どうしてうちの前で立ち尽くしていたんですか?」
シャロ「え?えっと……公園で会った顔の長い刈り上げの男の子に付きまとわれて……家にまで来て私を観察しようとしていて……こ、こわい……」ガタガタ
カツオ「堀川君だ……」
ワカメ「ちょっとお兄ちゃん!なんとかしてあげて!堀川君は思い込んだら歯止めが効かないのよ!」
カツオ「そ、そんなこと言われても……」
ノリスケ「なるほどなぁ……つまり堀川君の興味を別のものに逸らせばいいんだね?よし、僕がなんとかしてあげよう」
シャロ「ほ、本当ですか!?」
ノリスケ「ああ、僕に任せてくれ!」
―次の日、ラビットハウス
堀川「うわぁ!面白いなあこれ!すごくもふもふしてる!」もふもふ
ティッピー「ぬぐぐ……」ぐにゅぐにゅ
リゼ(へえ……この子が……)
ココア(シャロちゃんのストーカーかぁ……)
ノリスケ「どうだい?珍しい生き物がいる喫茶店だろう?」
堀川「はい!もういかがわしいお姉さんの研究を切り上げて、このもふもふした生き物について研究することにしました!これから毎日このお店に通おうと思います!」
チノ(勘弁してほしいです……)
―磯野家
ノリスケ「というわけで解決しました!」
ワカメ「すごいわノリスケさん!」
カツオ「ノリスケさんにしてはいい仕事をしたね」
波平「うむ、今回に限ってはノリスケの手柄だな」
ノリスケ「というわけで、おじさん、報酬として今晩もごちそうになりますね!出前で特上寿司を取りましょう!いやぁ、いいことすると気分がいいですねぇ~!」
波平「な!?バッカモーンッ!調子に乗るなッ!」カァッ
一同「HAHAHAHAHAHA!!」
波平「……」とことこ
波平「ん?」
『庵兎甘』
波平「ほぉ、甘味処か……たまにはいいかもしれん。入ってみよう」すっ
千夜「いらっしゃいませー!」
波平「ほう、綺麗な店だ。メニューは……」ペラッ
『煌めく三宝珠』
『雪原の赤宝石』
『海に映る月と星々』
波平「な、なんだ!?このメニューは!?は、入る店を間違えた……て、店員さん!すまないが、やっぱり食事は辞め」
千夜「あら?お客様、初めてですか?初めての方には指南書をお渡ししていますのでどうぞ♪」すっ
波平「!?」
『いちご大福』
『白玉栗ぜんざい』
波平「やれやれ……最初からこっちを用意してほしかったわい……」
終