男「俺の意思はどうなるんだよ!」
父「本当にすまないと思ってる。でもこのままだとうちの会社は破産なんだ…」
男「……」
父「相手はうちのライバル社なんだが、向こうもなかなか経営不振の様でな。お互いに苦渋の選択なんだ」
男「だから俺の意思は…」
父「頼む!男!」
男「わわ、頭上げてよ!みっともない!」
父「頼む…」
男「……わかったよ。いいよ」
男「うん…」
父「そうか…ありがとう、男」
男「いいよ、別に…」
父「それでなんだが…」
男「ん?」
父「実はこれからその相手と会うことになってるんだ…」
男「は?え?俺の意見も聞かずに承諾しちゃってたの?」
父「すまん…」
男「それに、そうならそうと早く言ってくれよ!俺にだって気持ちの整理が…」
父「本当にすまん…お前の意思を踏みにじることになると思うと言い出しづらくて…」
男「はぁ…」
父「とにかく早く準備してくれ。すぐに出ないと」
男「で、相手はどんな人なの?」
父「ちょっと待ってろ、写真を貰ったんだ。ええと…」
父「…すまん、家に置きっぱなしだった」
男「はああ!?顔を一回も見ずにお見合いに行けっていうのかよ!」
父「すまんすまん、だが結構な美人だったぞ。お前にはもったいないくらいだ」
男「それなら、まあ……」
父「お、そろそろ着くぞ。あそこの日本料理店だ」
許嫁の父「これはこれは。今日はよろしくお願いいたしますぞ」
父「はい、こちらこそ…」へこへこ
男(相変わらず、父さんは謝ってばかりだ…)
許嫁の父「お、そちらが男君…かな?」
父「あ、そうです。ほら、男、挨拶しろ」
男「ど、どうも…」
許嫁の父「はっはっはっ、そう固くならなくてもいいぞ」
許嫁の父「さて、部屋に入ろうか」
父「あの、娘さんは?」
許嫁の父「ああ、娘はお手洗いに行っております。後で来るので先に入って待ってましょう」
父「そうですか、では…」
父「ははっ、それはそれは…」
許嫁の父「でしょう。おっと、酒を…」とっとっとっ
父「ああ、これはどうも」
男(遅いな…いつまで経っても来やしないじゃないか。父さんたちはもう顔真っ赤だし…)
許嫁の父「それにしてもうちの娘はまだ便所から出てこないのか」
父「どうしたんでしょうかねぇ」
ガラッ
許嫁「すいませーん、遅くなってしまって」
許嫁の父「おお、待ちくたびれてたぞ。なにしてたんだ」
許嫁「ちょっと気分が優れなくて…」
許嫁の父「まあいい、座った座った」
許嫁「失礼します」ちょこん
許嫁の父「遅くなってすまない…紹介しよう、娘だ」
許嫁「許嫁と申します…」ぺこっ
男「ど、どうも…… って、許嫁さん!?」
許嫁「はい?」
男「許嫁さんだよね?隣のクラスの…」
許嫁「そうですけど、何か?」
男(ま、ま、まさか…相手はあの超絶美少女の許嫁さんだったとは…)カァァ
父「おお、顔が赤いぞ男?」
男「う、うるさい…」
許嫁「♪」にこっ
男「~~~~っ!!」ドキドキドキドキ
父「ええ、それにしてもびっくりでしたね。まさか同じ学校だったとは…」
許嫁の父「私は娘から聞いておりました。おっと酒…」
父「ああ、どうも…」
許嫁「…」ぱくっ
男(許嫁さん…やっぱり可愛いなあ…見とれてしまう…)ポォー
許嫁「あの、私の顔に何かついていますか?」
男「い、いえ!何も!!」
許嫁「うふっ、おかしな人っ」
男「ははっ…」ドキドキドキドキ
男「けけけ、けっこん…」
許嫁「かまいませんわ。男さんとなら喜んで…」
男「…!」ぼんっ
許嫁の父「そうかそうか、で、そちらは?」
男「お、俺も…いや、僕も、喜んで……」ドキドキドキドキ
父「それはよかった…」
許嫁の父「成立だな。これで第一段階はクリアだな」
男「第一段階?」
父「私たちの会社が合併するに当たって、社名をどうするかだ」
男「………は?」
許嫁の父「バンダイナムコ、タカラトミーという会社があるのを知ってるな?」
男「はい…」
許嫁の父「だが、もしかしたらそれらの社名は、ナムコバンダイやトミータカラになっていたかもしれない」
男「はあ…」
父「つまり今から私たちが決めるのはそういうことだ」
男「…………………………はあ…」
男「俺と、許嫁さん?…」
許嫁の父「そうだ、二人には…」
父、許嫁の父「ジャンケンをしてもらう」
男「…………そんな決め方でいいの?」
父「ああ、頼むぞ!我が社の運命はお前にかかっている!」
男「なんだかなぁ…」
許嫁「さ、男さん?いきますよー」
男「あ、はい…」
許嫁、男「じゃーんけーんぽんっ」
父「ああああああああああああああああああああ!!!!!!」
許嫁の父「よくやったぞ!よくやったぞ許嫁!!!」
許嫁「えへっ」
父「男おおお!!!男おおおおお!!!!」
男「…ごめん、なんか…」
父「いいぞ、お前はよくやった…よくやったんだ……」
男(ジャンケンしただけじゃん…)
許嫁の父「フフン。そういうことで社名は私の会社が先、ということで」
父「チクショウーーーーーー!!!!」ぐびぐびぐび
男「ああ、父さん!」
男「ごめん、ホントごめん…」
父「……………………」
許嫁の父「さて、最後に…婿入りするか、嫁入り道具するかだが…」
許嫁の父「婿入りでいいですな?ウチ勝ったし」
父「ドウゾ」
男(え、ええー……)
許嫁の父「しかし法律上まだ結婚はできん。ということで結婚できるようになるまで、男君をうちに住まわすということで」
男「え、ちょっと…」
父「カマイマセン」
男「ええーー!?」
許嫁「……………」
父「はい、どうもありがとうございました」
許嫁の父「これから宜しくお願いいたします」
父「こちらこそ…」
男「じゃあ、これで…」
許嫁の父「おっと、男君はこのままうちに来てもらうぞ」
男「え…」
父「強く生きろ」
男「……」
許嫁の父「さ、行くぞ」
許嫁「お荷物お持ちしますね」
男(大きな和風の屋敷だなあ…)
義父「さ、あがってくれたまえ」
男「…お邪魔します」
義父「ははは、そう固くならなくてもいいぞ」
男「は、はい…」
親父「部屋は女中に片付けさせておいたから、好きに使いなさい」
男「あ、ありがとうございます…」
男(うわあ、広い和室だな…)
男「あ、どうも…」
男「…って、俺着物の着方分からないよ…」
男「こうか?…えーい、こうか?」
許嫁「くすっ、随分手こずってるわね」
男「あ、許嫁さん…」
許嫁「手伝ってあげましょうか?」
男「あ、お願いします…」
男「あひっ!」
許嫁「ちょっと、変な声を出さないで」
男「だ、だって脇腹に触るから…」
許嫁「ぐちぐちうるさいわね。静かにしないとやめるわよ」
男「ひっ!ごめんなさい…」
男(な、なんかお見合いの時と性格違う…こええ…)
許嫁「はい、できたわ」
男「あ、ありがとうございます…」
許嫁「次からは一人でできるわよね。それじゃ」
男「………」
男「家じゃ怖い人なんだな…はぁ…」
男「で、でもやっぱり、前から思ってた許嫁さんとこんな関係になれたのは奇跡だな」
男「なんとか仲良くやっていきたい…」
女中「男さん、晩御飯の時間です。今夜はご馳走ですよ」
男「あ、はい!今行きます」
許嫁「あっ…」にこっ
男「…!」ドキッ
男(な、なんなんだ…さっきまでつんけんしてたのに…)
義父「まあまあ、座ってくれたまえ男君。今夜は君たちの結婚パーチーだよ」
男「あ、それはどうも…」てれてれ
許嫁「男さん、何を飲みます?」
男「あ…じゃあ烏龍茶を…」
許嫁「おつぎしますね」
男「あ、ありがとう…」ドキドキ
義父「うんうん、夫婦仲がいいじゃないか。それでは二人の門出を祝って、乾杯!」
男「あ、いや…」
許嫁「もう、お父さん。私たちまだ未成年ですよ?」
義父「ははは、厳しいな許嫁は。それにしても随分仲がいいじゃないか。べたべたしやがってぇ!」
男(そうなんだよ…許嫁さん、さっきから僕にもたれかかって腕に抱きついてくるんだよ…)
男(む、胸が当たって…)
義父「いやあ、うまくいってるみたいでよかったよ。許嫁がいいと言ってくれたとはいえ、結局は政略結婚だったからね」
男「そんな…僕の方こそ、許嫁さんと結婚できて幸せです」
許嫁「男さん…」カァァ
義父「くうう、言ってくれるじゃねえの!早く孫の顔がみたいわい。あ、今晩作ってもいいぞ!がはは!」
許嫁「ちょ、ちょっと!もう…」
許嫁「……」
男「許嫁さん?」
許嫁「うるさいわね、話しかけないで頂戴」
男「ひっ!」
男(ま、また怖い許嫁さんだ…)
男「な、なんでそんなに…」
許嫁「何?私の態度のこと?」
男「…はい……」
許嫁「…ふぅ、お父さんいないわよね?」
男「え……?」
許嫁「まだまだ学生生活を満喫したかったし、恋もしたかった」
許嫁「でもうちの会社状況は知ってたし、なによりお父さんがすごい困ってるのも知ってた」
許嫁「だから、私一人が『不幸』になることにしたの」
男「そんな…」
許嫁「だから私、あなたのことが嫌い」
男「………」
男「……………そんなことまでするくらいなら…」
許嫁「結婚なんてしなければよかったって?馬鹿言うんじゃないわよ。結婚しなければ私たち共倒れだったのよ?」
男「…………」
許嫁「ふう、私お風呂に入ってくるから。あなたは部屋で大人しくしてなさい」
男「………………」
男「…不幸か…俺と結婚して、不幸、か……」
男「…何してるんだろうな、俺…」
男「はぁ…家に帰りたい…」
男「………」
男「……………」
男「あ、はい… …あっ」
許嫁「なに?」
男「いや、お見合いの後そのままここに来たから、代えの下着がないなって…」
許嫁「一晩くらい我慢しなさい。私も着物の時はいつも下着つけてないわ」
男「えっ!」
許嫁「…なによ、そのやらしい目つき。鬱陶しいわね。さっさと入ってきなさい」
男「は、はい、すいません…」
男「確かに着物の着方としては正しいのかもしれないけど…」
男「そんなこと知ったら、俺…」むらむら
男「はっ、いかんいかん!万が一こんな所でオナ二ーなんかしたら…」
許嫁『あなたが汚らわしいことをするせいで排水溝が詰まってしまったじゃない。これだから盛りのついた犬を家に置いておくのは嫌なのよ』
男「とか絶対言われる!煩悩退散煩悩退散!」
男「な、なんで俺の部屋に布団が二枚も敷いてあるんだ…?」
許嫁「入っていいかしら?」
男「え!ひゃ、ひゃい!」
許嫁「なによ、変な声出して。気持ち悪いわね」
男「そ、そんな!それよりなんで…」
許嫁「ああ、お布団?女中さんが勝手に敷いちゃったのよ」
男「そ、そうなんですか」
許嫁「言っておくけど、変な事したら絶対に許さないからね」
男「し、しませんよ!」
許嫁「じゃ、私もう寝るから」
男(やっぱり変な事考えちゃうよなぁ…)
男(というか最後に抜いてから何日経ったっけ…そろそろ鬱憤がたまりすぎて大変なことに…)
許嫁「もう眠ったかしら?」
男「いや、まだです」
許嫁「早く寝てくれないと困るわ。安心して寝れない」
男「…そんなに俺信用ないですか…」
許嫁「ええ。やらしいことを考えてる顔をしているわ」
男「うっ…」
許嫁「とにかく早く寝て。私朝早いんだから」
男「は、はい…」
男「まだ7時前か…眠い」
男「あれ、許嫁さんがいない。ホントに朝早いんだな」
男「ううぅ…今日も寒いなあ…布団から出たくねえなあ…」
男「…あああ、起きる!」
許嫁「…おはよ」
男(うわ、めっちゃ眠そ…それに機嫌もすごい悪そうだ…)
男「い、いやあ、ホントに朝早いんですねえ」
許嫁「ええ、まあね」
男「こんな朝早くおきてなにしてるんですか?」
許嫁「なにしてたっていいでしょ。いちいちうるさいわね」
男「…ごめんなさい」
許嫁「だいたいあなたのその敬語口調を聞いているといらいらするのよ。いい加減やめてくれないかしら、不自然だし」
男「ヒイィィ」
男「あ、おはようございます」
義母「朝ご飯、できたわよ」
男「うわあ、おいしそうですね」
義母「ちょっと急いで食べないとまずいかもね。早めに出ないと」
男「そっか、自分の家の感覚でものを考えてた…」
許嫁「私もう行くから」
義母「ちょっと、ご飯はー?」
許嫁「自分で作って食べた。いってきまーす」
義母「あらあら」
男「ええ…」
義母「駅までの道とか分かる?」
男「ああ、多分大丈夫だと思います」
義母「そう、ならいいんだけど…あっ」
義母「あの娘お弁当忘れてっちゃったみたい。もう、そそっかしいわねぇ」
男「ははは…」
義母「悪いけど届けてもらえるかしら?」
男「いいですよ」
男「というか一時間目体育だし…はぁ…」
男「体育に遅刻って最悪なパターンだよなあ…みんな整列してるからなんか気まずいし…」
間もなく電車到着します 危ないですから~~
男「あ、やっと電車きた」
男「はぁはぁ、すいません…」
男(うわあ、なんかみんなの視線が痛い…)
許嫁「…………」
男(そうだ、隣のクラスも一緒にやるから許嫁さんもいるのか…やべ…)
体育教師「それじゃこれから10分くらいアップをして……」
男「おーい、男友」
男友「おう、お前また遅刻とかやってくれるな」
男「うっせ」
チャラ男「あー、今日あいつサボってるから奇数じゃん。だりー、先生ー」
体育教師「なんだ?ああ、そうか、今日は奇数人だったな。仕方ない、俺と…」
許嫁「先生、余りました」
体育教師「そうか、女子も奇数なのか」
許嫁「友1ちゃんいないから…」
体育教師「あ、じゃあちょうどいいな。お前ら二人組んじゃえ」
チャラ男「おっ、よろしくー」
男「…ん?」
男「へぇー」
男友「許嫁さん、いつもバド上手いし、チャラ男もそれなりだし、初戦からきついなぁ」
男「というか負け確だろ」
男友「だな、俺らだめだめだしな…」
男「っと」バシュッ
男「あ、ネット…」
チャラ男「いぇーい」
許嫁「チャラ男君上手いわね」
チャラ男「いやあ、たまたまでしょ!」
キャッキャッ
男「…………」
男友「おい、お前さっきから余所見多いぞ。だいたいさっきの奴アウトだったろ」
男「悪い」
男友「なんだよ、でっかい溜息ついて。あれか?さっきの体育で許嫁さんが…」
男「ば、馬鹿!声でかいよ!」
男友「え?ははは」
男「……はぁ」
男友「ほらまたー。お前どんだけピュアハートなんだよ」
男「うっせ」
男(仕方ないだろ…許嫁さんの本音を知ってるのに、あんなのを見ちゃったら…)
男友「あ、次数学か。宿題やってねー」
男「お前爆睡しすぎ」
男友「あはは、まあな」
男(そうだ、許嫁さんに弁当渡さないと…)
男「男友、ちょっと用があるから行ってくるわ」
男友「ん?おお」
男(で、でも…どうしよう…)おろおろ
許嫁(あいつ…なに教室の前でうろうろしてるのかしら)
友2「それでさー…」
許嫁「あ、ちょっとごめんね」すたすた
友2「?」
男「わっ!あっ、いやっ、その……」
許嫁「さっきから教室の前でうじうじうじうじ…用があるなら呼べばいいじゃない」
男「す、すみません…」
許嫁「敬語」
男「…ごめん」
許嫁「…で?」
男「これ、お弁当届けてって許嫁のお母さんが…」
許嫁「ああ、ありがとう。うっかりしてたわ」
男「じゃあ俺はこれで…」
許嫁「あ、待って!」
男「え?あれって俺のじゃ…」
許嫁「あっ、あなたが持ってるんだったらいいの。それじゃ」
男「…?」
友2「ねえねえ、さっき話してたの誰?」
許嫁「別に。あなたが想像しているのじゃないわ」
友2「なぁんだ。つまんないの。でも可愛かったなあ…ああいうのタイプかも」
許嫁「はぁ?あれが?」
友2「あれ、ずいぶん食いつくね?」
許嫁「あなたの将来を心配してるのよ」
男「おお」
男友「あれ、お前が弁当なんて珍しいじゃん」
男「えっ、ああ、まあな」
男友「しかも美味そう」
男「おめーにはやらねえからな」
男(さっきの許嫁の言葉…引っかかるな…何だったんだろう…)
男(まさか二つとも許嫁の弁当だったのか?)
男(それとも別の誰かのための弁当だったのか?でもそういうのは普通母親には作らせないよな…)
男友「なんだ?お前難しい顔して」
男「午後の現代文のことを考えたら憂うつになってきたんだよ」
男友「ああ…あいつの授業はうるさいからな…」
男「午後の授業をぶっ続けで寝る奴があるかよ」
男友「いくら寝ても寝足りない」
男「一生寝てろ」
男友「それじゃ、俺は部活だから。お前はいつも通り帰宅部だろ?じゃあな」
男「おお」
男(さて、どうしよう…許嫁と一緒に帰るべきか…)
男(やめとこ…なんか怖そうだ…)
男(ん…あそこにいるのは…)
チャラ男「ごめーん、待ったー?掃除してないの見つかっちゃって」
許嫁「ううん、それじゃ早く帰りましょ」
男(あのふたりって、なんだか仲良さそうだし…なんなんだろう…)
男(まさか…許嫁の本当の好きな人…だったりして…)
男「は、はは……」
男「…………」
男「…………………」
男「…………………………」
許嫁「ええ。またね」
許嫁「…それで、さっきからずっと私をじろじろ見てたのはあなた?」
男「え…あ……」
許嫁「気づいてないと思ってたのかしら?」
男「………」
許嫁「なに?」
男「チャラ男と許嫁って…その…」
許嫁「なによ。あなたに逐一私のことを報告しなくちゃいけないわけ?」
男「いや、そういうわけじゃ…」
許嫁「なに?まさかそれでさっきからずーっと私のことうじうじ見てたわけ?」
男「………」
男(や、やっぱり…)
許嫁「ただいま」
男「ただいま…」
義母「あ、男くん、荷物が届いてたから部屋に運んでおいたわ」
男「あ、ありがとうございます」
義母「なんか機嫌悪いわね、あの子」ぼそっ
男「ええ、まあ…」
男「あ、そうだ。お弁当箱出しときますね。お弁当おいしかったです」
義母「ん?」
男「なんですか?」
義母「いえ、なんでもないの。洗っておくわね」
男「?」
許嫁「ねえ」
男「ん、あ、なに?」
許嫁「ずーっとそんな調子だけど」
男「……」
許嫁「はぁ…。もう寝るから。電気消すわね」
男「うん…」
許嫁「明日も早いから。おやすみ」
男「………」
男「ん、んー…」
男友「あれか?失恋か?」
男「うるせーよ」
男友「失恋か。ドンマイ!」
男「まだ失恋って決まったわけじゃ…」
男友「お?往生際の悪いオトコは嫌われるぞー?」
男「…そうだな」
男友「…?まあいいや、飯食おうぜ。おっ、お前また弁当か」
男「ああ、あいつね。うん」
男友「あいつがさ、今許嫁さんを狙ってるらしいよ」
男「へー」
男友「なんか無関心だなお前… それで、チャラ男が今日の放課後告るらしい」
男「どこでそれを?」
男友「許嫁さんと仲のいい友1って奴から」
男「そーなんだ」
男友「お前それでいいのかよ。なんなら今お前が告白しにいけば…」
男「いいよ、もう…」
男友「……」
男友「はあ、気になるんだったら先制打っときゃよかったじゃん… あっ」
友1「こっちこっち!始まってるよ」
友2(あ、昨日の彼)
男友「なんだよお前らも覗きかよ。趣味悪いな」
友1「覗きじゃないよ!許嫁ちゃんに頼まれてるの。相手はあの有名なチャラ男君だよ?」
友2「あたしたちは護衛って感じ」
男友「ふうん、護衛ねぇ…」
友1「その口振りからだと、あんたとそっちのお友達こそ覗きに来た感じでしょ?」
男友「あはは、まあ…」
許嫁「……」
男友「言ったな…」
男「………」
許嫁「ごめんなさい。私、今付き合っている人がいるの」
男「…!?」
チャラ男「え、でも先週一緒に帰ったときは…」
許嫁「ごめんなさい」
チャラ男「はは、結婚って…」
許嫁「私の家がどんな感じか知ってるでしょ?所謂許嫁っていうやつよ」
チャラ男「そんな…」
チャラ男「まさかじゃないけど、俺の知ってる奴とかじゃ…ないよね?」
許嫁「…?多分知ってると思うけど…」
チャラ男「じゃあそいつを今すぐここに呼び出してよ」
許嫁「私、その人の携帯番号知らないわ」
チャラ男「あ!?」
友1「あれ、これってなんかヤバイ空気じゃ…」
許嫁「そうよ」
チャラ男「はああ~~。嘘でしょ?嘘ついてまで俺と付き合いたくないんだ?」
許嫁「嘘じゃないわ」
チャラ男「もういいよ。クソッ、許嫁さんはそんな人じゃないと思ってたのに」ぐいっ
許嫁「ちょっと、ここ学校よ?」
チャラ男「いいんだよ、俺の好きにさせろよ」
男友「え、お、俺!?でも…」
男「や、や、やめりょ!!!」
男「お、俺は…えっと…」
許嫁「ちょうどいい所に来てくれたわね、男」
チャラ男「あん?」
許嫁「紹介するわ。私の許嫁の男よ」
男「そ、そうだ!許嫁だ!」
チャラ男「ずいぶん都合がいいもんだな」
許嫁「本当のことだもの」
チャラ男「はあ~~~。またそうやってまた嘘を重ねるんだ」
許嫁「だから嘘じゃないって…」
チャラ男「じゃあなにか証拠でもあんの?」
男「しょ、証拠は…」
チャラ男「外野は黙ってろ!!」
男「は、はひ……」
チャラ男「え?ああ…」
チャラ男(だから俺はそこを狙って…)
許嫁「じゃあ、これでも充分証拠になるわよね」
チャラ男「あん?」
許嫁「男、キスしましょ」
男「え!?」
チャラ男「!?」
許嫁「なによ、昨日もあんなに激しくしたじゃない。舌まで絡ませて」
男「え、え?」カァァ
許嫁「ほら、早く」
男「じゃ、じゃあ…」
チャラ男「お、おい…」
男「……」
許嫁「……」
許嫁「んっ…」ちろっ
男(し、舌…いいのか?いいんだよな、さっきそんなこと言ってたし…)
男「んっ、んんっ…」
許嫁「んちゅっ、ふっ…れろっ…」
男(や、やべえ、何も考えられねえ…)
許嫁「んんっ、ふぁ…ちゅっ…」
チャラ男「あんだよ、お前ら」
友2「あっ、いやあ…」
男友「その…」
チャラ男「チッ」スタスタ
友1「でもあっちはまだ何かやってる」
友2「すごい…」
友1「それにしても知らなかったよ、許嫁ちゃんがあっちの彼とそういう仲だったなんて」
男友「え、あれってとっさについた嘘じゃないの?」
友1「え、嘘なの?」
友2「昨日はあっちの彼とはなんでもないって言ってた」
友1「照れ隠しじゃないの?」
男友「でも男は許嫁さんに失恋云々でこそこそ覗きにきたんだぜ?」
友1「そうなの?」
友1&友2&男友「うーん」
許嫁「んちゅっ…れろっ…ふぁ…」
友1「やっぱり嘘じゃないよ。許嫁ちゃんはあんたみたいに尻の軽い女じゃないわ」
友2「な、なによ!軽くないわよ!」
男友「ま、まあまあ…って、なんかあっちさっきよりすごいことになってないか…?」
友1「うわっ…、というか男君がどんどん求めてるように…」
友2「激しい…」
男「んっ…!れろっ、ちゅっ、ちゅるっ…!」
許嫁「んぅ…ちゅっ…」
男友「わああ!!男、駄目だ!悪いがここは学校だ!」
友2「おしまい!」
男「ちゅぱっ…はぁ、はぁ、はぁ…」
許嫁「はぁ、はぁ…」
友1「もうチャラ男君どっか行っちゃったよ!」
許嫁「知ってるわよ…でもこの発情犬が…」
男「はぁ、はぁ…ごめん……我慢できなくて……こんなの初めてだったから…」
許嫁「ホント最低」
友1(許嫁ちゃん、そんなに罵倒しても、雌の顔してるよ…)
男「でも…」
男友「まあ、仕方ないわな…」
男「……」
男友「それにしても、いくらぞんさいに扱われてるからって、あれはやり過ぎだろ」
男「だって…」
男友「あーはいはい、言い訳は彼女の前でしろよな。じゃあ俺ここだから。じゃな」
許嫁「ええ、でも怖かったわ。本当に乱暴されるかと思った」
友2「でも、よかったね」
友1「二人のラブパワーで…」
許嫁「…はじめてだったのに」
友2「え」
友1「それって、彼とのキスが?それとも許嫁ちゃん自身のが?」
許嫁「両方よ」
友1&友2「………」
義母「おかえりなさい。あら、今日は二人一緒じゃないのね」
男「あ、はい…もうすぐ帰ってくると思います」
許嫁「ただいま」
男「ほら」
義母「ほんとね。あ、お弁当箱出しちゃって。洗い忘れちゃうと大変だから」
男「あ、はい。今日もお弁当おいしかったです」
義母「ん、んんー…」
男「…?なんですか?」
義母「や、なんでもないわ。ありがとうね」
義母(あの子も素直になればいいのに…)
男「う、うん…」
許嫁「それじゃ、おやすみ」
男「あ、あの…」
許嫁「なに」
男「き、キスしたい…」
許嫁「はぁ、一度キスさせてあげたからって調子に乗らないで」
男「そ、そんな…いいでしょ?」
許嫁「いい加減にして。おやすみ」
男「……」
男「…?」
許嫁「意地悪言っちゃってごめんね。やっぱりしたくなっちゃった…」
男「な、なにを?」
許嫁「キス」
男「っ!!」
許嫁「しましょ、夕方の続き」
男「んくっ…ちゅっ…」
男(ああ、やっぱり幸せ…許嫁とこんなことできるなんて…)
男(というかキスってこんなに気持ちいいんだ…体中が痺れる感じ…)
男(気持ちよすぎて…あれ、なんか…)
男(で、出そう!?」
男(や、やばいって!)
許嫁「んふっ、れろっ、ちゅぱっ…ちゅっ…」
男(駄目だって!あっ、あっ…)
男「あっ!!!!!」
男「…なんかパンツの中が温かい気が…寝汗だよな、寝汗…」
男「……なんかだんだん冷えてきて…」
男「…うん、間違いない、やってしまった」
男「………………はぁ」
男「…洗いにいこう…」
許嫁「…もう、こんな時間になにしてるのよ?」
男「い、許嫁!こ、これは…」
許嫁「あなた寝言うるさすぎ。おかげで目が覚めちゃったじゃない」
男「うっ…まさか変な寝言とか言ってなかったよね…?」
許嫁「………」
男「え…?」
許嫁「はぁ……」
男「ええ……」
男「えっ、いや、いいよ…自分で洗うし…」
許嫁「明日も学校あるんだから。あなたはさっさとお風呂に入ってきなさい」
男「そ、それじゃあ……わっ、いっぱい出てるな…」
許嫁「……」
男「それじゃあ、お願いします…」
許嫁「なんか変な臭いがするし…ぬめぬめしてるのがついてるし」
男「や、やっぱり自分で洗うよ!」
許嫁「だから私がやるって言ってるでしょ」
男「そんな露骨に嫌そうな顔して言わないでよ!」
男「あ、うん」
許嫁「こっちはまだ…なんか汚れが落ちてる気がしないんだけど…」
男「これくらいでいいんじゃないかな…」
許嫁「そう?じゃあもうあとは洗濯機にまかせて寝ましょう」
男「そうだね…」
許嫁「ああもうこんな時間…明日起きれるかしら」
男「なんか、ほんとすいません」
許嫁「そうね、もうこんなことしないで頂戴」
男「……」
男「んー…やっぱり体だるいなあ…」
許嫁「すぅ…すぅ……」
男「はは、許嫁の寝顔、可愛いなぁ…」
男「許嫁の寝顔、見たの初めてか…あれ?」
男「今何時だ…?」
男「…!?7時半!?」
男「おい、許嫁!」
許嫁「んー…うるさいわねぇ…なによぉ…」
許嫁「…!?ね、寝坊じゃない!」
男「急がないと!」
男「お、おはようございます!」
許嫁「もう、なんで起こしてくれないのよ!」
義母「お邪魔かと思って」
許嫁「お邪魔だと思わせるようなことなんてなにもしてないわよ!」
義母「あら、そうなの?」
許嫁「もう、どうしよう…」
男「このままじゃ遅刻…」
許嫁「そうじゃなくて…」
男「?」
男「あ、俺も…っと、忘れ物忘れ物」
男「すいません、お弁当…」
義母「あら、今日はないわよ」
男「え?お義母さんも寝坊したんですか?」
義母「うーん、そうじゃないんだけど…」
男「?」
許嫁「ほら、早く行くわよ」
男「ああ、いってきまーす」
男「あ、俺今日弁当ないんだ」
男友「あれ?そうなの?じゃあ久しぶりに食堂行こうぜ」
男「いいけど…お前弁当はどうするんだよ」
男友「部活のあとにでも食うよ。行こうぜ」
男「ああ」
男「食堂のメニューの中じゃ一番まともなのこれだけだしな…」
男友「まあな…ん?」
チャラ男「……」ドンッ
男「いてっ」ガシャン
男友「お、おい、なんだよお前!わざとだろ!」
チャラ男「チッ…」
男友「おい、待てって!どこ行くんだよ…くそっ」
男「あーあー、もうどうしよう…」
男「あ、許嫁…」
許嫁「服、汚れなかった?」
男「うん、大丈夫。水かかっちゃっただけ…心配してくれてありがとう」
許嫁「心配なんかしてないわ。汚したものを洗うのは女中さんでしょ」
男「あ、はい…すいません…」ずーん
許嫁「まったく。ほら、立って、拭いてあげるから」
男「う、うわ」
男友「ほお…」
男「ん、ありがと…」
男友(こいつら普通にいい仲なんじゃないの)
許嫁「じゃあ私もう行くから」
友1「あ、許嫁ちゃん、こっちこっち!」
男友「あそこらへん空いてるし、俺たちも一緒に食おうぜ」
男「あ、うん。いい?許嫁」
許嫁「勝手にしなさい」
男「うん、まあ」
友1「許嫁ちゃんも珍しいね。お母さん寝坊しちゃったの?」
許嫁「え、ええ、そうね」
男「あれ?お義母さん朝寝坊してないって言ってたよ?」
許嫁「そ、そうだったかしら?」
友1「ん?…ふふーん?」
許嫁「なによっ」
友1「べつにー?」
許嫁「なんなのよ、その変な笑みは!き、気持ち悪いわよ!」
友1「んふふふふふ」
男「…?」
男「ん?なんのこと?」
許嫁「変な気持ちになってないかってこと」
男「あ、ああ…流石に2日連続はないと思うけど…」
男(本当はずっと変な気持ちだけど…)
許嫁「そう、ならいいわ。また夜中に起こされたらたまらないからね」
男「すいません…」
許嫁「じゃあ明日こそ早起きしないといけないから。おやすみ」
男「おやすみ…」
男「水でも飲みに行こうかな…あれ?」
男「許嫁もう起きてるのか…早すぎだろ…」
男「んっしょ」すたすた
男「あれ?台所に人がいる」
男「んーいい匂いだ…あれ?」
許嫁「ふあぁ…」とんとんとんとん
許嫁「…っ!」
男「おはよ」
許嫁「あ、あなたこそこんな早くからなにしてるのよ」
男「いやあ、喉乾いちゃって。なに作ってるの?朝ごはん?」
許嫁「なんでもいいでしょ」
男「なんでもって…あっ…」
男(弁当箱…?)
許嫁「……」
そこから表情を読み取ることができなかっけど、どんな顔をしていたんだろう
たまに小刻みに体を震わせているあたり、相当怒ってたのかもしれない。
許嫁「はい、お弁当できたわ。忘れないうちに鞄に入れておきなさい」ぐいっ
男「あ、うん…」
男(そんなにぶっきらぼうに渡すことないのに…顔もこっちに向けてくれないし)
男「あ、あと許嫁」
許嫁「なに?」
男「毎日ありがとう」
許嫁「っ……」
男(うわ、なんか耳まで赤くなってる…怖いから早く行こ…」
男「(ぽかぽか陽気が気持ちいいなー…)
男(枕も柔らかくていい匂いが…って、あれ?)
男(俺が寝てる所って…)
許嫁「………」ぺらっ
男(い、許嫁の膝の上だよな…)カァァ
許嫁「…………」ぺらっ
男(なんかのほほんと本読んでるけど…)
男(というか、俺なんでこんなことしてるんだ?)
男(たしか…)
男「な、なに?いきなり教室に入ってきて…」
許嫁「いいでしょう、別に」
許嫁「用があるの。ちょっと顔貸しなさい」
男「いやでも俺これから昼飯…」
許嫁「ならお弁当も持ってきなさい。長くなるから」
男「えー…」
男友「行ってこいよ」
男「悪いな」
男(一緒に弁当食ってたら、本題を聞く前に俺が寝ちゃったんだ…)
男(うぅ…なんか悪いことしたな…)
許嫁「……」ぺらっ
男(というか…)
男(すごい落ち着かないんですけど…)もじもじ
男(もどかしい…せめて顔だけででも)もぞもぞ
許嫁「………」
男(んはぁ…柔らかいぃん…)もぞもぞ
許嫁「…………」ぽいっ
男(っ!!!今わざとだ!絶対わざと本を顔に投げ捨てた!)
男(あ、あれ、というか今の起きないと不自然だよな…)
許嫁「………」
男(ん、な、なんで急に俺の手に手を重ねて…)
許嫁「………」なでなで
男(うっ、そんな艶かしく撫でられたら…)
許嫁「いつまで寝たフリしてるのよ」ぎゅううう
男「いたたたた!ごめんなさい!!」がばっ
許嫁「このヘン夕イ。おかげで足に血が回ってないじゃない」ぱたぱた
許嫁「それで済んで安い方だわ」
男「…というか、なんであんなこと…」
許嫁「何を思い上がっているのか知らないけど、膝の上にいきなり倒れてきたのはあなたよ」
男「え」
許嫁「挙句膝、いえどちらかといえば足の付け根だったわね。そんな所に顔をすり寄せてくるんだもの」
男「う…」
許嫁「ここが銃社会なら私はあなたを躊躇なく殺してるわ」
男「す、すみません…」
許嫁「あら、話ならとっくにしたじゃない」
男「え、そうだっけ?ごめん、覚えてない…」
許嫁「ひどい話ね。相槌だって打っていたじゃない」
男(そう言えば聞いたかもしれない…横になりながら…)
男「ごめん、もう一回…」
許嫁「あら、もうこんな時間」
男「ん…?何時?」
許嫁「午後の授業に40分遅刻ね」
男「え」
男「ち、ちげーよ、昼寝してただけだよ」
男友「はーん?」
男(さっきの話って結局なんだったんだろう…悪いことしたな…)
男(わざわざ呼び出したくらいだしなにか重要な話だったんだろうか)
男(やっぱり後で頭下げてもう一回聞こう…)
許嫁「…わざわざもう一回言わなきゃいけないの?」
男「すいません、大事な話みたいなので」
許嫁「ふう、わかったわ」
男「……」
許嫁「今度の日曜日…」
男「日曜日…?」
許嫁「やっぱりいいわ。おやすみなさい」
男「え、ちょっとまっ…えー…」
許嫁「ねえ、もう寝ちゃったかしら」
男「ん、うん?起きてるよ」
許嫁「そう。あ、あのね、こ、今度の…」
男「ん?」
許嫁「今度の日曜日…」
男「…へ?」
許嫁「もう一度言った方がいい?」
男「いや…え、なんで?」
許嫁「邪魔だから」
男「邪魔だからって…家に人呼ぶのか?」
許嫁「いいえ、そんな予定はないわ」
男「んー?」
許嫁「…外でお買い物をしようと思ってるけど」
男「それだったら俺がわざわざ追い出される必要は…あっ」
許嫁「じゃあ今度こそおやすみなさい」
男「お、おい…」
男(これってつまり…)
男(すごい遠回しにデートしろってことだよな!!)
男(あああ、なんか興奮しちゃってなかなあ眠れないなああ)
男(いい夢見れそうだ)
許嫁「んんぅ…ちゅぅっ…ちゅむ…」
男(あれ、なんで許嫁の上に乗っかってこんなことしてるんだ?)
男(あ、夢か…またこんな夢…いっか)
許嫁「れろっ…ちゅっ…ちゅぱっ…」
男(ああ…いい…夢心地だぁ…)
男(許嫁が抱きしめてくれて…ああ、いいっ…)
許嫁「ちゅうぅっ…ちゅっ…ちゅっ」
男(柔らかいいぃ…あっ、)
男(また、これで出しちゃうのかな…っ…)
許嫁「んんっ…ちゅっ…れろっ…んちゅっ…」
男(ああ、もうこれ出ちゃうっ)
男(あっ…あっ…!)
男「んんううぅぅっ!!」びくっ
男(って…え…!?)
許嫁「んっ…ふぅ…」
男「ゆゆ、夢じゃなかったの!?」
許嫁「らによぉ、あなたが寝ぼけて襲ってきたんじゃない」
男「え、ご、ごめんなさ…」
許嫁「しかも嫌な固さと熱を私に伝えるどころか、なんてことをしてくれてるのよ」
男「ひっ…」
許嫁「早くどいて頂戴。汚いし万が一でもシミになってたら殺すわよ」
男「ごめんなさいいい!」
男「俺の着物がはだけてたから…」
許嫁「本当節操がないわね。この万年発情犬が」
男「うう…」
許嫁「ほら、下着脱いで。洗うから」
男「度々すいません…」
男「なんか前よりも興奮しちゃって…」
許嫁「どんだけ出してるのよ…もう、最低」
男「うう…」
許嫁「あなたは早くお風呂に入ってきて。青臭くてたまらないわ」
男「……」
男「でも許嫁だって舌絡ませたり、俺に抱きついたりしたじゃないか…」
男「って、それは俺の都合のいい夢か…」
男「日曜日のこと、まだ話残ってるかなー…」
男「はぁ…」
男「……」
許嫁「……」がさごそ
男「なにか探してるの?」
許嫁「洗面台が詰まっちゃったのよ」
男「げ…」
許嫁「それでパイプクリーナーを探してるんだけど…」
男「どこだろう…」がさごそ
許嫁「あー…」イライラ
男「んー…わ、もう明るくなってきてるし…」
許嫁「…もうこれあなたが一人でなんとかして」
男「えっ…」
許嫁「ふんっ」
男「あー…見つからないなあ…」
義母「あら男君、朝から裸でなにしてるの?」
男「うわあああ、おは、おはようございます!!」
義母「お風呂入ってたの?というかそんな低い姿勢でなにしてるのよ」
男「あ、これは…そ、そう!気分悪くなっちゃって!」
義母「あら大丈夫?」
男「大丈夫!もう大丈夫なんで!それじゃあ!」
義母「…?なんだったのかしら」ジャーー
義母「あらやだ、排水溝詰まってるじゃない。パイプクリーナーはどこかしら」
男友「どうしたんだよ急に」
男「だるい」
男友「ははーん、昨日はお楽しみだったか」
男「死ね」
男友「まあまあそう言うなって。で、なんだ」
男「許嫁と喧嘩した」
男友「いつもそんな感じじゃん」
男「はは…」
男「いや、その話も流れたかもしれないけど」
男友「まあツンケンしてるのはいつものことじゃ…」
バンッ
男「ひっ!」
許嫁「これ、お弁当。朝渡すの忘れてたから」スタスタ
男「…あんな感じだよ」
男友「確かにあれはいつもとは違うわな…」
男友「ま、飯食おうぜ。その弁当毒入ってそうだな」
男「ははっ、まさか」カチャ
男「っ!!」
男友「おい、なんだよ。また蓋とじて」
男「な、なんでもねえって!」
男友「いいから見せてみろ!」
男「やだーーー!!!」
カパッ
男友「…あららー、でっかいハートマークだこと」
男「……」カァァ
男友「でっかいハートマークだこと!!」
男「静かにしろよ!!」
許嫁「そうね」
友2「あの声、男友とあんたの旦那じゃないの?」
友1「言われてみればそうかも」
許嫁「ふふっ」
友1「ん?どうかしたの?」
許嫁「なんでも」
男(な、なんか落ち着かねえ)
許嫁「なによ、朝からそわそわ落ち着かないわね」
男「あ、いや…」
許嫁「ずいぶん挙動不審ね。なにか隠し事でもあるのかしら」
男「いや、そんなことないけど…」
男(照れ臭くて顔見れないんだよ…)
男「日当りもいいし、ここで日向ぼっこでもしようかな。暇だし」
男「んー、陽射しが気持ちいい…」
許嫁「あら、私の読書スポットに先客がいるなんて」
男「あ、許嫁…」
許嫁「いいわよ、ここにいて」
男「あ、うん…」
許嫁「……」ぺらっ
男(ドキドキする…)じーっ
許嫁「……」ちらっ
男(やべ、目合っちゃった…さっきからずっとこれじゃ不自然すぎるよ…)
許嫁「あなたぼーっとし続けるのによく飽きないわね」
男「え?ああ、まあ…」
許嫁「つまらない人間ね」
男「あ、はは…」
男「そうだな…ぽかぽか陽気だし…」
許嫁「……」うとうと
男「って、聞いちゃいないか」
許嫁「………」くたっ
男「っ!」
男(い、許嫁が俺の肩に…うおおおぉ……)ドキドキ
男(全身の神経が肩に集中してるぜ…)
許嫁「すぅ…すぅ…」
男「撫でたい…頭を…すっごく…」
男「…い、いいよな…寝てるし…」そぉー
女中「男さん、男さん!お父さんから電話ですよ!男さん!」
男「父さんから?はあーい!」
父「ああ、久しぶりだね。元気でやってるか?」
男「ああ、うん。ぼちぼち」
父「そうかそうか。そっちでの生活も落ち着いてきただろうし、今晩家族でご飯食べに行こうと思っててね」
男「あー、うん。遅くならないなら別にいいよ」
父「そうかそうか、よかった。ちょうど姉も留学先から帰っててな」
男「姉さん帰ってきてたの?そりゃ楽しみだ。すぐ準備するから」
父「ああ」
許嫁「もう夕方…さむ…」
許嫁「…男は?」
許嫁「お母さん、男は?」
義母「男君は向こうの家族と食事しにいってるみたいよ」
許嫁「あ、そう。急にいなくなっちゃうから…」
義母「急にって、もう2時間も前に出て行ったわよ。あんた寝てたでしょ」
許嫁「うん。…っ」ぶるっ
義母「やだ、風邪?ちゃんと布団で寝ないから」
許嫁「そうかな…」
prrrrrrr
義母「あら、また電話。今日はなんだか電話がかかってくることが多いわねぇ」
許嫁「男?起きたの?」
男「んん…許嫁…?」
許嫁「ずいぶんお寝坊さんだったわね」
男「ん…ああ、ごめん…今日デートだっけ…」
許嫁「ちょっと待ってなさい。動かないでいいから」
許嫁「っ…」タッタッタ
男「なんだ…?駆け足で部屋出てって…」
男「というかここって…」
許嫁「すいません!男が、男が目をさましました!」
男「病室?」
男「…?」
医師「君は二週間近く眠り続けていたんだよ」
男「え…?どうして…」
看護師「何か覚えていませんか?」
男「何って…んん…?なんだ?俺に何かあったのか、許嫁…?」
許嫁「………………」
医師「記憶が曖昧なようだね。まあいい、もう一回脳に異常がないか検査するから」
男「???」
医師「うむ。脳に異常は見られなかった。目立った外傷は腕の骨折だけだね」
許嫁「じゃあ…」
医師「二週間も眠っていたのも、やはりショックからきていたんだろうね。記憶も少し飛んでいるようだし…」
許嫁「…………」
義母「あの…このことは本人に伝えた方がよいのでしょうか…」
医師「今はまだ…そっとしておいた方がいいでしょう…」
許嫁「らしいわね。とりあえず明日には退院できるらしいわよ」
男「いいのか?そんなんで。俺2週間ずっと寝てたんだろ?」
許嫁「いいんじゃないの。お医者様が言っているんだから」
男「うーん…まあなんにせよ心配かけて悪かったな」
許嫁「思い上がりもいい加減にして頂戴」
男「…」
許嫁「今日はたまたま学校帰りに病院寄ったら、あなたが起きてしまったんだもの」
男「なんだよその言い方…ひでえ…」
男「いいよ、そんな無理しなくても。俺どうせ明日退院できるんだし」
許嫁「無理なんかするわけないじゃない。必要ないと思ったら来ないわ」
男「あ、そう…」ずーん
許嫁「じゃあね」
男「……」
男「2週間か…そんなに寝てたなんて信じられないな…」
男「2週間前…俺はなにやってたんだ…?」
男「……」
姉「あんたいつの間に婚約者こしらえたんだって?むかつくぅ」
男「そ、そんなんじゃないって…」
父「向こうでの生活はどうだ?」
姉「ラブラブぅ?」
男「うっせ」
母「可愛い子よ」
男「でもおっかないぞ」
父「将来尻にしかれるなーこりゃ」
男「ははは…」
姉「ねえねえ、もう毎晩しっぽりしちゃってる仲なの?ねえねえ」
男「おま…ちげーよ!」
姉「はーん?」
母「なによ後ろでこそこそ話してー」
姉「え…なんかフロントガラスなヒビが入ってるよ!」
父「あ、危ない!!」
姉「キャーーーーー!!!」
男「っ!!はぁ、はぁ、はぁ!」
男「ゆ、夢か?」
男「……」
男「…………」
男「……」
看護師「どうかしましたか?」
男「なんで俺の家族は見舞いに来ないんですか?」
看護師「え、えっと…」
男「どうして…ねえ、どうして!!」
看護師「男さん、落ち着いてください!」
男「なんで何も言ってくれないんですか!!あああああああ!!!!」
許嫁「男、落ち着きなさい」ぎゅうっ
男「い、許嫁…」
許嫁「大丈夫だから…ね」ぎゅっ
男「……」ぎゅうっ
許嫁「落ち着いたかしら」
男「うん…あ、あの」
許嫁「なに?」
男「もうちょっとこうしてていい…?」
許嫁「ええ」ぎゅっ
男「すいません…朝から呼び出して…」
義母「いいのよ。それより許嫁、あなた学校サボったのね?」
許嫁「いいじゃない今日くらい。あ、お父さんには言わないでね」
義母「はいはい…それじゃあどこから話そうかしら」
男「あの…俺の家族は…」
義母「……」
男「えっ…」
許嫁「っ…」ぎゅっ
義母「その事故で…お父さんとお母さんは…」
男「そ、そんな…嘘ですよね?」
義母「……」
男「うそだ…そんな…」
義母「ふたりの葬儀もこの前取り行ったわ」
男「うそだ…うそだうそだ……」
許嫁「男…」ぎゅうっ
義母「お姉さんは…生きているわ。かろうじて…」
男「っ!!どこにいるですか!」
義母「お姉さんもこの病院に入院しているわ」
男「よ、よかった…」
義母「ただ」
男「へ…?」
義母「お姉さんは植物状態で…それで今も危ない状態よ…」
男「は、はは…は……」
女中「アラ男さん、お元気になったのですね」
男「ええ、まあ…」
義父「おお、男君じゃないか。退院おめでとう」
男「どうも…」
義父「……」スタスタ
男「…?」
許嫁「お父さん、最近ずっとカリカリしてるのよ」
許嫁「あなたも病み上がりの身なのに申し訳ないけど、あんまり触れないであげて」
男「あ、うん…」
許嫁「それより、あなたなんか臭いわ」
男「病院生活でろくに風呂入ってなかったから…」
許嫁「今すぐ入ってらっしゃい。不快だわ」
男「あ、はい…」
男「ああ…せめて包帯だけでも外してもらえばよかった」
許嫁「あら、ずいぶん時間がかかってるみたいね」
男「ぎゃあああ!!入って来ないでよ!!」
許嫁「なによ、今更裸見られたくらいで」
男「いや…でも…」
許嫁「その手じゃやりにくいでしょ。手伝ってほしい?」
男「え、も、もちろん…」ドキドキ
男「え…ちょ…ちょっと…」
許嫁「なによ」
男「いや…なんでも…」ずーん
許嫁「そう。それじゃ」スタスタ
男「……はぁ」
許嫁「ねえ、本当に女中さんでいいの?」ひょこ
男「うわ!びっくりした!」
許嫁「どうなの?」
男「え、えっと…」
許嫁「……」
男「い、許嫁にしてもらいたい…です…」
男「やばい…興奮がおさまらない…」
しゅるしゅる
男「すりガラス一枚の向こうで許嫁が服を脱いで…」
許嫁「男、入るわよ」
男「ひゃ、ひゃい!」
許嫁「なによ」
男「いや、裸じゃないんだなって…」
許嫁「当然よ。濡れてもいい服だし」
男(期待して損した…)
許嫁「頭にお湯かけるわよ」
男(薄着だし…いいか…許嫁の薄着は貴重だ…)
男(いかんいかん…こんなことばっかり考えてたら…)
許嫁「シャンプーするわよ」しゃこしゃこ
男「んっ…気持ちいい…」
許嫁「そう。…あら」
男「なんだ?」
許嫁「あなた将来ハゲそうね。突然ズルっときそう」
男「嫌なこと言わないでよ!」
男「あひっ」
許嫁「変な声出さないで」
男「だ、だって…」
男(たまにタオルからはみ出る許嫁の指がくすぐったくて…)
許嫁「あら。背中にすごい長いほくろ毛」
男「ああ、それ育てて…」ブチッ
男「いって!」
許嫁「見て、こんなに長かったのよ」
男「ひどい!」
男(ついにきたか…)
許嫁「~♪」しゃこしゃこ
男(変なこと考えちゃだめだ変なこと考えちゃだめだ)
許嫁「手、どかして。下の方洗えないわ」
男「で、でも…」
許嫁「そっちの毛もずいぶん長いわね。全部で何本くらいあるのかしら」
男「ひっ!どけるから怖いこと言わないで!」
男(そりゃそうか…)
男「あっ!」
許嫁「だから変な声出さないで」
男「オトコはみんな内股は弱いんだよ!」
許嫁「そんなこと知ったこちゃないわ」ぬりゅ
男(くっ…我慢だ我慢だ…)
許嫁「なによ、そんなにダメなの?だらしないわね」
男「そんなこと言われたって…ひゃっ」
男(変なこと考えちゃだめだ変なこと考えちゃだめだ)
男(考えちゃだめだ…許嫁の指が細くて柔らかいなんて…)
男(許嫁の細くて柔らかい指が…俺の股間の間際を…)
男「あっ…だめっ…!」むくむく
許嫁「…っ!」
男「あの…これは…)
許嫁「いいわよ、見逃してあげる。病院生活長かったものね」
男「……」
許嫁「じゃあ、最後にそこ洗うから」ぬりゅ
男「うっ…くっ…はぁ」
男(そんな優しく撫でるように洗われたら…変な声出ちゃう…っ)
許嫁「…はい、おしまい」
男「…え」
許嫁「あとは石鹸流すから」
男「ま、待って!」
男「あ、あの…えっと…」
許嫁「いつまでもこんな所に触っていたくないんだけれど」
男「そ、その…」
許嫁「………」
男「………」
許嫁「はぁ、いいわよ」
男「えっ?」
許嫁「もう少しだけ『洗って』あげるだけだからね」
許嫁「こうかしら」
男「もっと強くしてくれても…あっ…」
許嫁「はぁ、絶対こうなると思ってた」
男「…すいません」
男(タオルが柔らかくて…いいっ…)
男(手じゃしてくれないのかな…それでも…)
男「うぅっ…はぁっ…」
男「そんなこと…言われたって」
許嫁「この辺もよく洗ったほうがいいかしら」
男「うわあっ!そ、そんな先っぽばっかり責められたらっ!」がくがく
許嫁「……」
男(許嫁が恥ずかしそうにしてる顔…すごく可愛い…)
許嫁「ひ、人の顔じろじろ見ないでよ。ばか。」くちゅくちゅ
男「あっ、あっ!」
許嫁「えっ…えっ?」
男「もっと速くっ」
許嫁「っ…」ぬりゅぬりゅ
男「くっ…許嫁っ…許嫁ぇ…」
許嫁「……………ちゅっ」
男「っ!!」
許嫁「んちゅっ…れろっ…ふっ…」
男(そんな…今キスされたら…あっ…!)
男「んっ…んううぅぅ!!!」
男(んはあぁ…脳がとろけそう……)
許嫁「…はい、今度こそおしまい。石鹸流すわよ」
男「……」ぼぉぉ
許嫁「湯舟で温まって、お風呂から出たらまた呼んで頂戴。体拭いてあげるから」
男「…うん」
男「………はあぁ」
男「ん…?居間から声が…」
義父「向こうの会社は乗っ取られたよ」
男(うちの…?)
義父「もともと社長のワンマン経営だったからな。亡くなってから社内でごたごたがある内に…」
義母「それじゃあ…」
義父「最善を尽くしてるがね…」
男「………」
男「父さん?母さん?いるんでしょ?」
父「やぁ、おかえりなさい」
男「う、うわあああぁぁっ!!」
父「私の腕が見つからないんだ…私の腕がぁ…」
男「うわあああぁぁぁぁっ!!」どんっ
男「って…母さん…?」
母「男、私の目がないのぉ…探してくれないかしらぁ…」
男「わあああぁぁぁぁっ!!」
姉「………」
男「父さんも母さんもなんか変なんだ!ふたりとも…」
姉「………」
男「姉さん…?」
姉「………」
男「こっち見てないでさ…なにか喋ってよ…ねえ…」
………と…こ……
姉「…………」
男「う、うわあああああああああああ!!!」
……とこ…
男「なんで…なんでこんなことに!」
男「あああああああああああああああああああ」
許嫁「男!」
許嫁「男?」
男「はぁ、はぁ…夢…?」
許嫁「かなりうなされていたわよ」
男「はぁ…はぁ…」
許嫁「お水飲みにいきましょ。落ち着くから」
男「うん…」
許嫁「どう、落ち着いた?」
男「…うん」
許嫁「そう。寝れそう?」
男「…寝たくない」
許嫁「じゃあ一緒に朝まで起きてましょ」
男「うん…家にいたってしょうがないし」
男(居辛いし…)
許嫁「そう。それなら久しぶりにお弁当つめなきゃね」
男「あ、ありがと…」
許嫁「なにか入れてほしいおかずはある?」
男「うーん…ハンバーグ?」
許嫁「じゃあそれは外しておくわ」
男「なんだよそれ…」
男「おっす」
男友「よかったぁ…心配したんだぞ、お前お見舞いに行っても全然起きねえし」
男「はは…」
男友「あ、安心しろ。クラスでお見舞いに行った奴ほとんどいないから」
男「そんなこと聞きたくなかった…」
男友「クラスで作ってた千羽鶴も結局間に合わなかったしな。ドンマイ!」
男「はあ、なんかショックだ…許嫁も学校帰りにたまにしか来なかったって言うし…」
男友「ははは」
友2「超久しぶり!2週間くらい学校来てなかったじゃんあんた!」
許嫁「ちょっと…声大きいって…」
友1「旦那は?よくなったの?」
許嫁「ええ、まあ…」
友2「そっかぁ。よかったねぇ。付きっ切りで見たかいがあったわけだ」
男友「聞きました、今の?」
男「……」カァァ
男友「いやぁ、通りで最近許嫁さんを見なかったわけだ。くうぅ、なんか無性に腹立って来たぞ俺」
男「おう」
男友「って、お前その手でどうやって食うんだ?」
男「左手でスプーンで…って箸しか入ってないし…」
男友「なら俺が食わせてやろうか?あーん」
男「やめろきもい」
許嫁「男、いる?こっちの教室きなさい」
男「っ!」
男友(あっ、なるほど…)
男「あ、あのさ、食べさせてくれるのは嬉しいんだけどさ」
許嫁「なに?」
男「ここ教室じゃん…」
許嫁「仕方ないでしょ。外で食べようにもさっきから雨降ってきちゃったんだから」
男「は、恥ずかしい…」
許嫁「あなたに恥ずかしいなんて感情があったなんて驚きだわ」
男「ひどい!」
男友「おお、燃え尽きてるなー」
男「穴があったら入りたい…」
男友「人集りができてたもんな。俺も見てたぞ^^」
男「はああぁ……」
男友「DTどもは悶えるわ、さっきまで調子に乗ってたチャラ男はキレて出ていくわ、見てて飽きなかったぞ」
男「もうやだ…」
男(家、居辛いんだよなぁ…)
男「はあぁ…」
許嫁「なによ、元気ないわね」
男「いや…うん…」
許嫁「…そうだ。お風呂に入りましょ」
男「えっ」
許嫁「今なら誰もいないし…家族がいるときじゃ入りづらいでしょ?」
男「う、うん…」
男(いや、こんなときだからこそ誰かに甘えたいのかな…はは」
許嫁「入るわよ」
男(どうせまた服を着て…ぶっ!?」
男「な、なんで裸なんだよ!」ぷいっ
許嫁「なんでって…一緒に入る方が効率いいじゃない」
男「それは…そうだけど…」
許嫁「昨日あのあと入り直したらのぼせちゃったんだから」
男「ごめん…」
許嫁「とにかく、さっさと洗って出るわよ」
男(昨日もしてもらったのに…なんかドキドキが全然違う…というか…)
男(胸が…度々直にくっついて…あっ、またっ…!)
許嫁「ちょっと、鼻息荒いわよ。気持ち悪い」
男「は、鼻息なんてしてねえよ!」
許嫁「はいはい流すわよ」ジャーーー
男「がばぼがぼぼぼ」
男「ん…」
男(夢にまで見た許嫁の胸が…俺の目の前に…)
男(さ、触りたい…)
許嫁「ちょっと…そんなに舐め回すように見ないでくれる?」ぱっ
男「て、手で隠すくらいなら最初からタオルとかまいてよっ…」ぷいっ
許嫁「そんな手間かけるくらいなら、あなたの目に石鹸を入れた方が早いけど」
男「ごめんなさいやめてください石鹸近づけないで」
許嫁「あなたのそれ、さっきから何もしていないのに跳ね回ってるけど」
男「これは…だって…」
許嫁「悪いけど今日はなしね。体に障るから」
男「そ、そんな…」
許嫁「ほら、石鹸流すわよ」
男「うう…」
男「うん…」
許嫁「……」しゃこしゃこ
男(女の子が体洗ってるところを見るのってなんか不思議だな…)
男(というかやっぱりまじまじと見てしまう…)びんびん
許嫁「ん…」
男(抜きたい抜きたい抜きたい…)
許嫁「ずいぶん長湯ね。のぼせるわよ」
男「あ、うん…」
男(せっかく許嫁の裸を見れるチャンスなのに、途中で出るなんてもったいない…)
許嫁「そろそろ私も入るわね」
男「っ!」
許嫁「…」ちゃぷ
許嫁「どう、少しは気分が晴れた?」
男「え…?」
許嫁「お風呂入るまでずっと陰鬱としていたから」
男「あ、うん…お陰様で」
許嫁「そう。よかった」てれっ
男「っ!!!」
許嫁「え、ちょ、ちょっと、なに?」
男「っ…」ぎゅうっ
許嫁「なんなのよ…」
男「お、俺…許嫁が…」
許嫁「…私がほしくなっちゃったの?」
男「っ…」ぎゅうっ
許嫁「男…」
義母「あら、もういいの?」
男「はい、なんか食欲がなくて…」
義母「そう…」
義母(やっぱりショックなのかしら…それに…)
義母(もう、二人が結婚する必要なんてないんだものね…)
姉「………」
男「ね、姉さん…?」
父「………」
母「………」
男「父さん、母さんも…」
父「なんだい…男」ぐちゃっ
母「どこにいるの、男」ぐちゃぐちゃっ
男「うわああああぁぁぁっ!!」
男「ど、どこへ連れて行くんだよ!」
姉「………」
男「おいっ!おいってば!」
キキーーーーーッ
男「わあああああぁぁぁぁぁっ!!」
男「はぁ、はぁ、はぁ、また変な夢…」
許嫁「男…?」
男「うん…」
許嫁「またお水飲みに…」
男「許嫁、話があるんだ…」
許嫁「…何?」
男「俺たち…別れよう…」
男「俺の父さん…死んじゃっただろ」
許嫁「そうね」
男「社長もう関係ない人に変わっちゃった」
許嫁「そうだったわね」
男「だから、お互いが人質になる必要なんてもうないんだ…」
許嫁「……」
男「多分俺が何も言わなくても、お義父さんが何か言ってくると思うよ」
許嫁「……」
男「はは…よかったじゃん…許嫁ももともと嫌だったんだろ、この結婚」
許嫁「よくない…」
許嫁「あなたはそれでいいの?私と別れたらあなたはもうほんとに一人きりなのよ?」
男「……」
許嫁「黙ってないでなんとか言いなさいよ」
男「許嫁とは離れたくないけど…でも許嫁が…理由だって…」
許嫁「じゃあ言うわ。私はあなたのことが…」
許嫁「あなたのことが好きだったわ。結婚の話が出る前から」
許嫁「あなたはどうなのよ。ぐちぐち言い訳ばっかりして」
男「お、俺だって…」
男「俺だって許嫁のことが好きだよ!」
許嫁「それならお父さんに頭でもなんでも下げなさい。私もそうするから」
男「はい…はい……」
許嫁「なに泣いてるのよ…ばか」ぎゅっ
男「うっ…ううっ…」
男「…うん」
許嫁「…だいたい言ってることが無茶苦茶なのよ」
男「ごめん…」
許嫁「私の体をさんざ弄んだくせに、後ろ向きな気持ちになったらそれ?」
男「うっ…だってあれは…」
許嫁「赤ちゃんだってできたかもしれないのに」
男「……」
許嫁「初めては固いタイルの上じゃなくて、ちゃんとお布団でしたかったわ」
男「ごめん…」
許嫁「悪いと思うなら、これから私を、あなた自身も全力で幸せにしなさい」
レスの進み具合に泣きそうになりながら書いたんで、
オチも弱いしおかしいところだらけだと思います。すいません
途中でID変わりまくってるけど、多分全部自分です
さるさんに引っかかりまくったんで変えてました
乙!
久しぶりにSS最後まで読んだ
面白かった!
乙
次回作にも期待してるぜwwwwwwww
引用元: 男「ええ!?俺に許嫁!?」