男「ん?何?」
女「ここはどこでしょう」
男「どこって…写真部の部室だろう?」
女「正解。では私とあなたはどういう関係でしょう」
男「部活仲間…?」
女「正解です。では主にどのような活動をしているでしょう」
男「俺の恋愛相談を女さんに聞いてもらってる。写真部として失格であるとは思う」
女「はあ…正解」
男「どうしたのさ急に」
男「よしこい」
女「私は一体いつまで相談相手なのでしょう」
男「う~ん…解決するまで?」
女「はあ……」
男「女さんはいつも相談に乗ってくれるもんな」
女「まあそんな私も悪いんだけどね」
男「悪い?あ、もしかして迷惑かけてる?」
女「いいえ、良い気はしないけど嬉しくもあるから」
男「なんだそれ。たまには俺に女さんの恋愛相談をしてもいいんだぞ?」
女「男に相談しても意味ないからね」
男「うげっ、なんだよそれ。軽くショック」
男「いくら女さんとは言っても好きな人くらいはいるだろ?」
女「何よその言い方。人を恋愛嫌いみたいに言って」
男「まあまあ。で、好きな人くらいはいるんだろ?」
女「そうね。今話してる最中なんだけど」
男「え?」
女「ええ、そうよ」
男「何?電話でもしてんの?そうは見えないけど…あ、何?もしかして背後霊とかそういう電波な感じ?
それならやめといた方が……」
女「……これだから男に相談しても意味が無いって言ってるのよね」
男「え、何?なんか怒った?」
女「うるさいバカ」
男「ひっでー」
女「こっちのセリフよ」
男「なんで?」
女「もういいわ…はぁ」
男「はい、なんでしょう」
女「男ってもう別れたんだよね?彼女と」
男「うん、そうだよ」
女「なのにまだ彼女と連絡取ってるんだよね?」
男「まあね」
男「そのとおりでござる」
女「なのにまだ彼女のことを忘れられないと?」
男「うふふ」
女「言いたくはないけどその反応は気持ち悪いよ」
男「そうかな?うふふ」
女「やめて」
男「うっふふ」
女「よし決めた殴らせてもらいます」
男「まあまあ落ち着きなされ……うふふ」
女「男が悪い」
男「そうかな?うふふ」
女「もういいめんどくさいから」
男「そうか、非常に残念だ。お気に入りの服にハンガーの跡がついてしまった時のような気持ちになったよ」
女「分かりづらいわね」
男「うふふ」
女「」ピキッ
女「ええ、私も初めて作ったわ」
男「クレヨンしんちゃんにはよくある描写だけどな」
女「もうさっきから全然話が進まないわ」
男「なんの話だったけ?ハンガー?」
女「違うわよすかぽんたん」
男「すかぽんたんって…ぷぷぷっ」
女「雪だるまに友達を作ってあげようかしら」
男「ごめんなさい」
女「よし」
男「ん~…忘れられないから?」
女「なんかゴッチャになってない?」
男「何が?」
女「連絡取り続けてるから忘れられないんでしょ」
男「そうかもな」
女「そうかもなって…」
男「あっちから連絡とってくるんだよ」
女「はぁ?」
男「いや、マジで」
女「なんで?」
男「さあ」
女「何よそれ…」
男「今の彼氏も好きだけどきっとまだ俺のことも必要としてくれてるんだよ」
女「なんだかイライラしてきたわ」
男「なんで?」
女「自分がされてることわかってる?その女すっごく卑怯よ」
女「そんなんでもいいの?」
男「それでもいいんだ、それでも」
女「くぅ……」
女「仕方なくないわよ。このままで男にとってプラスになるとでも思ってんの?」
男「そりゃあ…」
女「もしかして『またよりを戻せるかも~』なんて思ってないわよね?」
男「何故わかる。え?読心術?こっえー」
女「早くそんな気持ち捨てて次に向かうべきよ」
男「なんでだ?俺はあいつのことが好きなんだぞ?」
女「あーもう!」
男「うむ」
女「それでなんでまだより戻せるかもなんて思えるの?」
男「今までにない相手だったのだよ
そう、それだけ愛していたのさ…ふふふ」
女「おえぇ」
男「俺気持ち悪いなー」
女「あら、よくおわかりで」
男「目の前で吐きマネされて気付かない奴なんているのかよ」
女「まあそうね」
男「なんで?」
女「繰り返すから」
男「何故そう言い切れる?俺の力で
絶対に浮気させないようにすることだってできない訳ではないだろ?」
女「できません!」
男「なんでだよ」
女「とにかく!『一度浮気をした人は繰り返す』これは有名な科学者とかもそう言ってることなの!」
男「ほぉ~、たとえば?」
女「……ア、アリストテレスとか?」
男「女さんって頭はいいけどバカだよね」
女「う、うるさいっ!」
女「いいのよもうそういうのは」
男「そういうの?」
女「いいのよっ!」
男「怒らせちゃった」
女「とにかく早く新しい人を好きになるべきなのよ男は!!」
男「そうは言われてもな~……」
女「何よ?」
男「人を好きになることってそんな簡単なことじゃないだろう?
それにあいつは俺にとって初めての彼女だったしさ
よくわかんねぇよ、そういうの。難しいよな。付き合うって」
女「急に語り出したね」
男「語らせたのは女さんです」
女「そうだけど」
男「利用?」
女「そうよ。利用よ。」
男「そうかな?俺にはそんな自覚ないんだけどな」
女「当たり前じゃないの。男はバカなんだから」
男「ひどくない?さらっとひどくない?」
女「とにかく。男の前の彼女は今の彼氏に足りない部分を男で埋めてるのよ」
男「そうなのか?」
女「そうよ。そうにきまってる。他に彼氏がいながらにして男に連絡を取る理由なんてないもの」
男「そうだったのか」
男「うん。よくわかったよ」
男「あ~、今日はまだ連絡こないな~
何してんだろ、彼氏と遊んでんのかな」
女「……」ピクピク
男「ん?」
女「おりゃっ」ボコッ
男「いって!何するんだよいきなり」
女「少しむかついたから殴らせてもらったわ」
男「またコブできたぞ?ちくしょ~」
女「文句を言いたいのは私の方なんですけどもね」
男「良い人いないんだよあいつ以上にさ」
女「私だったら浮気なんて絶対しないのに」
男「ん?何て?」
女「ふん」
男「なんだよ」
男「う~ん。実は少しそうなんじゃないかとも思ってるんだけどな」
女「え?そうなの?」
男「まあ言ってもミジンコほどだけど」
女「男なんだしミジンコあれば上出来か…」
女「私が応援してるってのは伝わってる?」
男「うん。そりゃもうひしひしと。ありがとう大好きだよ」
女「やかましい」
男「すいません」
男「うむ。それはもう、な。女さんのおかげだよ」
女「ああはいはいそりゃどうも。それでね」
男「いいよ、言ってごらん?」
女「ちょっと待って何そのキャラ?」
男「構わんよ。続けたたまへ。私は聞いておる」
女「あのー、別にダンディじゃないよ?」
男「え?」
女「やっぱり勘違いしてた」
男「浮かんでこなかった?びしっとしたスリムスーツ来た髭づらのおっさんが浮かんでこなかった?」
女「これっぽっちも」
男「いいんだよ…グリーンだよー!」
女「あ、今初めて髭面のおっさんが浮かんだわ。ちょび髭の」
男「うん」
女「立場理解できたのよね?」
男「ああ。理解できたと思う」
女「じゃあ、前の彼女に対して苛立ちとか、そういう感情は生まれてこないの?」
男「…もちろんある。浮気されたんだから」
男「でも」
女「何?」
男「俺は、俺がどう扱われようが、あいつが幸せならそれでいい」
女「」ドキッ
女「あれ?男ってこんなにかっこいいこと言う奴だったっけ?」
男「俺は本心を言っただけだぞ」
男「そうか?」
女「そうよ。意識してないの?」
男「優しさって意識したらもうそれは優しさじゃないだろう」
女「確かにそうね」
女「男は自分がモテてるって自覚ある?」
男「んな訳ないだろ。俺のどこがいいんだか」
女「優しさが滲み出てるのよ。何気に背高いし」
男「背は関係ねぇよ。人間性だ。重要なのは」
女「そうね。男は中身を見るものね」
女「何よ」
男「毎日毎日投函される手紙。ありゃ一体どこから湧いてくるんだ」
女「あんなの読んじゃいないわよ」
男「しかし事実は事実だろう。女さんは所謂美少女ってやつだ」
女「そういうのは嫌いなんだけど」
男「ああ、言ってたな。外見だけで判断して欲しくない、と」
女「そうね。内面を見てくれる人が好きだわ」
男「いるか?そんなやつ」
女「いるわよ、目の前に」
男「まーた電波的なあれか」
女「わざとやってる?」
男「何が?」
女「はあ……なんでもない」
男「う~ん。とりあえずお気に入りの服は型が崩れないハンガーを使うことにする」
女「なんかね、今ね、すっごい時間を無駄にした気分」
男「冗談だよ冗談」
女「今は真面目に答えるときでしょ」
男「そうだな。……前の彼女と連絡を取らないようにして、新しい恋を始める」
女「あら…わかってるじゃない」
男「あー、うん。わかってる。わかってるんだけど…」
女「まあそうそう忘れられることでもないわ。何も明日から変われって言ってる訳じゃないのよ」
男「おう。ありがとうな」
女「いつものこと。今日はもう下校時間みたいだし、帰りましょうか」
男「そうだな」
男「どうしたんだ?」
女「例のアレよ」
男「ああ、手紙か……うぉう、これまたごっそりと」
女「なんで皆揃って下駄箱に入れるのかしら
違う場所に入れた方が目立って読んでもらえると思わない?」
男「言われてみればそうだな」
女「捨ててくるわ。ちょっと待っててくれないかしら」
男「いつものこと。正門前でな」
女「ええ、わかったわ」
男「買っておいたぞ、ジュース」
女「急に頬につけないでくれないかしら。びっくりしたわ」
男「ごめんごめん。最後にふざけたお詫びってやつだ」
女「ふざけた?」
男「お気に入りの服は型が崩れないハンガーを~ってやつだ
なんだ、もう忘れてたのか女さん」
女「ああ、別にいいのに」
男「気持ちだ。受け取ってくれよ。俺のも買ったから一緒に飲もう」
女「う、うん…」
男「なあ女さん」
女「何?」
男「どうして手紙読まないんだ?」
男「はたして、手紙を出す人は内面を見ないって決めつけていいものだろうか」
女「何が言いたいのよ」
男「手紙ってのは一歩だ。その人たちの勇気をゴミ箱に捨てるってのは、少しかわいそうなんじゃないかって思ってな」
女「努力しても報われない。そんなことはいくらでもあるわ
男だってそうじゃない」
男「そういうもんか?」
女「そういうもんよ」
女「男は…」
男「ん?」
女「前の彼女を忘れたいって思う?」
男「……正直なところ、わからない」
女「わからない?」
男「ああ、わからない」
男「今日の話で、一応こんな俺でも考えたんだけど
確かに前の彼女のことを忘れないと前には進めない、成長できない
でもな~、やっぱりまだ気持ちは残ってるんだよ」
女「そういうことね」
男「うん」
女「でもその気持ちってのは…行動すればなくなるもんなんじゃない?」
男「行動って言っても、何をすればいんだろうな。高校生だし、色々と絞られるよ」
女「それじゃあ、それを明日までの宿題とします!」
男「宿題か~。前の彼女への気持ちを忘れるためにどういう行動をとればいいか、だろ?」
女「そうです」
男「わかった。考えてみるよ。そいじゃな」
女「ええ、また明日」
女「ということで問題を出します」
男「なんだ?」
女「男さんが前の彼女を忘れるために、今後どういった行動をとればいいでしょう?」
男「昨日の宿題か」
女「カッチ、カッチ、カッチ」
男「時間制限ありか~」
女「カッチ、昨日考えてきたんでしょ?カッチ、カッチ」
男「う~ん。正解かどうかはわからないけど、やっぱり答えは『行動』だ」
女「何よそれ。まんまじゃない」
男「ああ、まんまだ。というか、正直なんだっていいと思う」
女「どういうこと?」
男「大事なのは自ら動くことだと思う。趣味でも、アルバイトでも、勉強に打ち込むでも、なんだっていいんだろう」
女「そうね。男、ちょっと賢くなった?」
男「それだけ真剣ってことだ」
女「そうね」
女「何?」
男「今日、デートしないか?」
女「あれ?今日の天気予報では降水確率0%だったような…」
男「いやいやそんな『雨が降りそうね』とかそういうのはいいから!」
女「というか実際に降ってきたわ」
男「まじで?」
女「おおまじよ。ほら、窓が壊れそうなくらい打ちつけてるわ」
男「俺にそんな力が…」ワナワナ
女「偶然よ。でも驚いたわ」
女「なんで謝るのよ」
男「前の彼女を忘れるためにデートしてくれ、なんて普通怒るだろ?」
女「男は気を遣いすぎよ。少なくとも私は嬉しかったわ」
男「しかし…」
女「言われた方が嬉しかったのなら、それはそれでいいのよ」
男「そういうもんなのか?」
女「そういうもんよ」
女「ねぇ!どこ行く?」
男「やけに元気になったな」
女「あ、ごめん。あんまり楽しみだからつい」
男「いや、むしろ嬉しいけど」
男「うん」
女「私とのデートでね」
男「何故2回言う」
女「大事なことだからよ
とても意味のあることだわ」
男「そうなのか?」
女「少なくとも私にとってはね」
男「なんかよくわからんが。話についていけてないな俺」
女「いいのよ。男はバカなんだから」
男「なんだかもう自覚してきましたよ。俺はバカなんだな」
女「あら、一歩成長したわね」
男「し、したのか?」
男「ん?」
女「彼女のことは忘れて一歩踏み出したいってことよね?」
男「う~ん。そういうことなのだろうか」
女「違うの?」
男「確かに、向上心はある」
女「そうね、向上心がでてきただけ幾分マシになってるわ」
男「そうか?」
女「そうよ。昨日までの男は後ろしか見てなかったもの
もっと私の方を見ないといけないわ」
男「私の方?前を見ろならわかるけど…」
女「な、なんでもないわ。言い間違いよ。うっかりね」
男「そうか」
女「そうよ」
男「どこか行きたいところはあるか?」
女「男から誘っといて私に任せるのはどうかと思うわよ」
男「俺と女さんの仲じゃないか」
女「そんなこと言われても助けません」
男「くそぅ。ん~。参ったな。正直中身まで考えてなかった」
女「私とデートしようと思ったのもその場の思いつきだったのかしら」
男「それは違う」
女「そうなの?」
男「うん」
女「そうね。傷は癒えやすいと思うわ」
男「何度も言われた『新しい恋』ってやつだ」
女「そうね。…ってちょっと待って」
男「何だ?」
女「誤解を招くわよ?」
男「ん?何の?」
男「……さあ、どうなんだろう」
女「わからないの?」
男「うん。正直今の自分の気持ちは何が何だかわからない。
何より俺が一番分かってないと思う。でもそう考えた時に、最初に頭に浮かんだのは女さんだった」
女「そ、そう…」
男「単に周りに親しい女性が女さんしかいないからかもしれない」
女「それは普通言うべきじゃない事ね」
男「普通はな。でも、今はなんでだろう。言っておくべきことのような気がした」
女「ええ。私も言っておいて欲しいことだったわ」
男「うむ」
男「それほど親しいということなのか。でも喧嘩をしたことはないよな」
女「なんでそこで喧嘩がでてくるのよ」
男「『喧嘩するほど仲がいい』っていうだろう」
女「ああ、まあね。喧嘩も必要だと思うわ。恋仲にある以上ね」
男「そうか。『恋仲にある以上』か」
女「男と前の彼女は一度も喧嘩しなかったでしょう?」
男「なんで知ってるの?え?なんで?まさか盗聴とか…」
女「する訳ないでしょうが!」
男「でもなんでわかったんだ?」
男「言われたな。自覚ないの?とかなんとか」
女「そうね。男は怒らないんじゃないの。怒れないのよ」
男「うっ…」
女「許しちゃうの。全て受け止めるタイプでしょ?」
男「当たりすぎて怖い…」
女「たまには跳ね返りが欲しいのよ。『なんで怒ってくれないの』なんて感情が生まれてくることもある
人間ってのはやっかいなのよ。欲しいものを手に入れると、また別の物が欲しくなるの」
男「そうなのか」
女「そうよ。事実、今彼女が付き合ってる男性はどう?」
男「確かに…俺とは全く違うタイプだな」
女「そういうことよ」
男「俺の怒れないっていうところにか?」
女「そうよ。浮気しても男なら怒らない、なんてね」
男「どういう訳か、怒れないんだよな」
女「別に怒れなくたっていいわ。悪いのは浮気する方だもの
上手くいく人はそれでも上手くいくのよ」
男「滅多にいないだろうそんな人は」
女「私はあんまり好きではない言い方だけど、『運命の人』と表現されるわね」
男「俺は前の彼女が運命の人だと思っていたんだがな」
女「一人目の運命の相手では恋の切なさを知るって、よく聞くわ
運命の相手は一人じゃないのよ。一人目は学ぶため、成長するための人物なの」
男「それじゃ、2人目では?」
女「さあ、そのまま2人で死んでいくのだから『永遠の愛を知る』とでも言うのかしら」
男「おお…なんだかすごく良いことを言われたような気がする」
女「ふふ、私をなめちゃいけないわよ」
女「これってデートとは言えないのかしら」
男「確かに話しながら2人で外を歩いてはいるけど…」
女「夕焼けもでて、きれいじゃないの」
男「なんか、部室と変わらない気がするぞ」
女「それでいいのよ」
男「そうなのか?」
女「そうよ。一番自然体じゃない。私達二人がデートと認識すればどれも同じよ」
男「極論だな」
女「まあ、そうね」ニコッ
男「お、おう」ドキッ
女「そうよ」
男「この方が落ち着くしな。変に遊園地とか行くと気張って疲れそうだ」
女「同意見です」
女「男は」
男「ん?」
女「このデートとの間、誰のこと考えてた?」
男「誰って…女さん以外いるの?」
女「…そう」
男「ん?何?」
女「いいの、なんでもないわ」ニコッ
男「」ドキッ
男「俺」
女「デートの間前の彼女のことを考えていないってことは、忘れかけてるってことになると思うの」
男「あのさ、俺」
女「ん?」
男「女の、笑顔好きだ」
女「え、ちょ、何よ急に!///」ドキドキ
男「いや、ほr」
女「急に呼び捨てしないでよなんかムズムズするじゃないの!」
男「え?俺呼び捨てにしてた?」
女「してたわ。思いっきりしてたわよ。いつもは「さん」つけるでしょう」
男「すまん。無意識だ」
女「別に構わないけど…」
男「本当だよな。女さんは俺のこと呼び捨てなのにな」
女「そうよ。なんか「さん」って堅い感じがするわ」
男「でも俺g」
女「わかってるわよ。馴れ馴れしく女性を呼び捨てできるような性格してないってことくらい」
男「な、なんでそんなに俺のことがわかるんだ?」
女「さあ、なんでかしらね。内緒にしとくわ」
女(ずっと考えてるから…なんて言っても、いつものように鈍い反応返されるだけよね)
男「んー?」
女「呼び捨てでよんでもいいのよ?」
男「でももう「女さん」で慣れちゃったからな…」
男「今更「男くん」なんて呼べないだろう?」
女「言われてみればそうね…」
男「俺が呼び捨てで女性を呼べるようになるのは、恋仲になった時くらいだな」
女「そう」
男「うん」
女「少し堅い感じがするのは確かね。別に嫌いでもないけど」
男「じゃあなんて呼んで欲しいんだ?」
女「え?それは…その」
男「なんでもじもじしてるんだ?」
女「な、なんでもない」
男「決めた!姫と呼ばしてもらわない!」
女「びっくりするからやめて?そういうフェイント必要としてないから」
男「なんだよ女~」
女「うっ」ドキ
男「不意打ちってやつだ」
女「やっぱりさん付けでいいわ…」
男「うむ。俺もそれが一番しっくりくる」
男「随分と話しこんだな」
女「ええ、そうね。時の流れが早かったわ。いつも以上に」
男「そうだな。それは俺もそうだった」
女「楽しかったわ。そうね、すごく。」
男「ああ。もちろん俺もだ」
女「今日は帰りましょうか」
男「うん。もう暗いしな」
男「送ってく。とりあえず自転車取りに学校戻ろう」
女「わかったわ」
女「ある?盗まれてたら最悪よ」
男「大丈夫。ちゃんとあった。鍵2つついてるし」
女「あら、厳重ね」
男「一度盗まれたからな
ほら、早く」
女「何?」
男「後ろに乗りな!俺が地平線の向こうまで連れてってやるからよ!」
女「…」
男「わぁー!男の背中おっきーい!」
女「…」
男「あはは!うふふ!」
女「…はぁ」
男「ごめん」
女「ええ」
さっきのなんか広がる星空の下、自転車小屋に2人なんて最高のシチュエーションだと思わない?」
男「んー、あえてだな」キコキコ
女「どうして?」
男「照れ隠しかな。簡単に言うと。そういうムードで何か期待されるのが苦手なんだ
逃げてるんだろう。それに女さんがロマンチストより、楽しい人の方が好きって俺は知ってるからな」
女「確かにそうだけど…」
男「欲しいものを手に入れたら、また別の物が欲しくなる?」
女「ううん。そういう訳じゃないの。…いや、そうなのかしら」
男「大丈夫。きちんとするとこではきちんとするからさ。俺」
女「本当?」
男「ああ、本当だ
というか、さっきの自転車小屋のは女さんの笑った顔が最後にもう一度見たくてやったんだけどな」
女「ふふっ、何よそれ」
男「そこで笑うか。俺今自転車こいでるから見れないんだぞ?」
女「ふふっ」
男「あ!また!ちくしょう!」
女「勝手にしなさいよ」ニコッ
男「」バッ
女「……」
男「なんで無表情なんだよちくしょー!」キコキコキコキコキコキコキコキコ
女「あっはは!おもしろい!」
男「また俺が見てない時に笑うし」
女「しょうがないじゃないの。男のタイミングが悪いんだもん」
男「もう諦めるよ…。女さんには敵わない」
女「ええ、そうするべきよ」
男「そういえば女さんの家にくるの初めてじゃないか?」
女「そうね。いつもは家まで一緒に帰ることないし。そもそも道途中から違うし」
男「なんでだろう今日は家まで送らないといけない気がした」
女「デートだからよ」
男「ああ、なるほど。妙に納得してしまった」
女「あの…」
男「ん?」
男「またデートしような!女さん!」
女「え?」
男「こういうときは男から誘うもんだ。言っただろう。
俺はきちんとするとこではきちんとするんだ」
女「ふふっ、本当ね」
男「あ、笑った」
女「あ」
男「俺の勝ちー!」
女「く…妙に悔しい」
女「何よ。急にため息ついて」
男「すーっ!すーっ!」
女「な、何!?今度はおもいっきり空気吸いこんで何がしたいの!?」
男「いや、最初のは『楽しかったなー』ってため息
後のは幸せ逃がしてたまるかー!って吸い込んだ」
女「何それ。男って少し変わってるわよね」
男「変人とでも言いたいのか?」
女「あながち間違ってもないかも」
男「おい」
女「…じゃあそろそろ家の中に入るわね」
女「じゃあね」タッ
男「あ、女さん!」
女「ん?あ、何?」
女「どうしたの?」
男「あれ?俺なんで呼びとめたんだ?」
女「知らないわよそんなの…」
男「んー。と、とにかくだ…あー。」
女「何よ?」
男「また明日な」
女「それだけ?…ま、いいわ。んじゃね。おやすみなさい」
男「ああ、おやすみなさい」
ガララッ ピシャッ
男「なんで、呼びとめたんだろうな……」
男「もう少し…いや、少しでもいいから女さんと一緒にいたかったのか」
男「わからないな。帰ろう」キコキコ
女「昨日は色々とお疲れ様です」
男「うむ、お互い様にな。
まあこれっぽっちも疲れてないんだけどな」
女「奇遇ね。私もよ。寧ろ元気がでたわ」
男「奇遇だな。俺もだ」
女「ということで今日はまあいつも通り写真部部室ね」
男「そうだな。いつも通りの活動をしようじゃあないか」
女「ええ、そうね」
女「何?」
男「全てに無気力になる時って、ないか?」
女「んー、例えば?」
男「そうだな。『ああ…俺何してんだろう』って」
女「どういう時に思うのよ」
男「唐突だ。しかし特に最近はそういう場面が多いんだ
なんか『俺は一部の偉人の知識にあやかって生きているのであって、俺自身は何も生み出していないんだな』って気付いた時の感情と似てる」
女「意外。結構色んなこと考えてるのね」
男「考えるのが嫌いじゃないんだろう。自転車とかこぎながらよく考えてる」
女「そう」
男「報われていない?」
女「ええ、そうね。男は、今の自分の中での一番の理想の形って何だと思う?」
男「言っていいのか?」
女「いいわよ。男がまだ気持ちに区切りをつけていないことくらい理解しているもの」
男「そうか。なんでもわかるんだな。やっぱり」
女「ええ、そうね」
男「一番の理想の形は…前の彼女が彼氏と別れて、俺のところへ戻ってきてくれることだろう」
女「やっぱりね。男はそのために少しは努力してるわよね?」
男「してるのかな。連絡をとっているくらいだな」
女「それも努力と呼んでしまってもいいと思うの」
男「じゃあしてるってことになるか」
女「それよ。それが報われていないのよ」
男「ああ、なるほどな。言われてみれば、無気力になる原因としてそれが一番なのかもしれん」
男「うっ…」
女「そういう無気力な時って『消えたい』なんて思うでしょう?
いえ、正確には『俺なんか消えてもいいんじゃないか』って思うでしょう?」
男「な、なんで知ってるんだ?なんか怖いぞ当てすぎて」
女「男のことだもの。毎日話している相手よ?」
男「う~ん」
女「でも男は『消えてもいいんじゃないか』って思ったすぐ後に、前の彼女を思い出して、その感情を押し殺すでしょう?」
男「ちょっとマジですごいぞ女さん。やっぱり読心術使ってるとしか…」
女「だって男は優しいもの」
男「優しさが関係あるのか?」
女「あるわよ。というか優しさ以外ないわ。
男は『消えたい』なんて言ったら前の彼女の負担になると、そう考えてるんでしょう」
男「その通りでござる。だってそうだろう?別れた相手に『死にたい』だの『消えたい』だの言われてみろ
重すぎると思わないか?」
女「確かにそうね。でも、あなたの声は彼女には届かないわ。メールで言わない限りね」
男「確かにそうなんだけど。普段から言わないようにしておかないとメールでつい言ってしまいそうになるかもしれないだろう」
男「そうなんだろうか」
女「そうよ。でも、皮肉よね。優しすぎる人間が損をするなんて。周りが優しい人間ばかりだとそうはならないと思うけどね」
男「別にいいんだよ、俺は。損をしても。俺の中にいる人が幸せであれば」
女「やっぱり優しすぎるのよ。少しは自分のためにその優しさを使ってみたらどうなの?」
男「逆に問う。自分より好きな相手に使って何が悪いんだ?」
女「そうね。男はすごいわ。やっぱり。私にとって尊敬できる部分だわ」
男「尊敬なんてやめてくれ。俺は俺らしく生きたいだけだ」
女「あら、尊敬は人の勝手でしょう?私が私らしく生きた証でもあるわ」
男「それを言われると反論できないな」
女「ふふっ、私の勝ちよ」
女「え?」
男「最近よく笑うようになったな」
女「そ、そうかしら?」
男「そうだよ。『無表情人間女』って感じだっただろう?」
女「何その妖怪みたいな言い方」
男「すまんすまん。でもあまりに表情が無いから結構恐れられてたろう?女さん」
女「そうね」
男「大量の手紙が投函されるようになったのも、写真部に入ってからだ
どうして笑うようになったんだ?」
女「単純にこの場が楽しくてしょうがないから。それじゃあ理由にならない?」
男「…そうか。いや、嬉しいよ」
男「女さんどうして写真部に入ったんだ?急に「入部させなさい」って言いにきたよな?」
女「それはね。実は男を見かけたからなの」
男「俺を?」
女「そうよ」
男「うん」
女「その子が容姿でいじめられてたんだけど、男だけは違った。って、それだけのことなんだけどね」
男「それだけ?え?何それ?どこに写真部に入る要素が?」
女「言ったじゃない。外見だけで判断する人は嫌って」
男「うん」
女「だから私もなるべく表情を作らずに恐れられるように生きてきたんだけど」
男「あ、なるほど」
男「新大陸?」
女「ええ、そうよ。『この人は人を外見だけで判断していない』って思った初めての人。それが男よ」
男「そうか」
女「でもまだ決まった訳じゃないから写真部に入って関わってみようと思ったの。男に
そしたら思った通りの人すぎてびっくりしたわよ」
男「そりゃよかった。そんで今に至ると」
女「そうね。最早私の居場所はここにしかない気さえするわ」
男「言い過ぎじゃないか?」
女「言い過ぎじゃないわ。きっと」
女「何?」
男「今の話を聞いた限りじゃ…え?」
女「な、何よ」
男「女さんってもしかして写真に一切興味ないの?」
女「ええ、そうね。これっぽっちもないわ」
男「それってどうなんだ?」
女「いいじゃない。男だってそうでしょ?」
男「まあ…そうか」
女「そうよ」
女「そうなの?」
男「うん。何かと進路に使えそうだろう?部活って」
女「そうね。私が入るまで何をしていたの?」
男「何も。ぼーっとしてた。ここで」
女「そう。男らしいっちゃ男らしいわね」
男「それほどでも」
女「いえ、少なくとも褒めてはないわ」
男「うん」
女「今の話で、一つわかってほしいの」
男「何を?」
女「私の居場所はここにしかないってこと」
男「どういうことだ?」
女「この場所…私は男も含めてこの写真部室が大好きなのよ
要するに必要としてるってことね。恥ずかしいんだけど」
男「なるほど。ありがとう」
女「誰かに必要とされるって、それは立派な『存在している理由』じゃない?」
男「そうだろうな」
男「俺は存在していてもいいんだよな」
女「ええ、そうね」
男「まちまちだよ。あっちが送ってくるのが不定期だからな」
女「そう。やっぱり携帯が鳴るたびに少し期待したりするものなの?」
男「最初はそうだった」
女「最初?」
男「うん。最近は…なんだろう。行動したからなのかもしれないけど、前よりそういう気持ちは無くなったと思う」
女「徐々に忘れてきてるってことね」
男「そうなんだろうな。いいことだ」
男「本当だな。言われてみれば。女さんのおかげだろう」
女「私はキッカケを作っただけよ。実際に行動したのは男なんだから」
男「そうかもしれんが、キッカケはすごく大事なことだろう?」
女「まあ、そうね」
男「だからお礼くらい言わせてくれ」
女「わかったわよ」
男「ありがとう」
女「ええ。どういたしまして」ニコッ
男「もう最終下校時刻か。早いな。時を忘れていた」
女「そうね。私もよ」
男「行こうか」
女「ええ」
男「反省時間って知ってるか?」
女「何よそれ。初耳だわ」
男「部活中に女さんと話したことを風呂に入りながらもう一度よく考えてみるんだ。最近はそれが俺の毎日の日課になってる」
女「そんなの知ってる訳ないじゃない」
男「俺のことがなんでも分かってしまう女さんでも、さすがにこれは知らなかったか」
女「それを知ってたら盗撮もしくは盗聴だわ」
男「まあな。っと、話してるうちに下駄箱に着いたな」
女「そうn」
男子生徒「お、女さんっ!」
男生「は、話がありますっ!」
男「……」
女「……」
男生「少しお時間をください!」
男「……いつもの場所で待っとく」
女「ええ、わかったわ」
男「思ってたよりは早かったよ」
男「……」
女「……」
女「聞かないの?」
男「分かってるからな。告白されたんだろう」
女「ええ。直接言いに来たのはあの人が初めてだったわ。顔も名前も知らなかったけれど」
男「承諾したのか?」
女「してないわ」
男「そっか。よかっ……」
女「ん?」
男「あれ?あ、いや、なんでもない」
男(なんで安心したんだろう。今の気持ちはなんだ?何故女さんがあいつと付き合わなくてよかったなんて…)
女「…承諾はしてないけれど、断ってもないわ」
男「え?」
女「『少し考えさせて』って。そう答えたの。ずるいかしら?」
男「いや、ずるくないさ。でも女さんらしくないな」
女「ええ。そうね」
男「なんで、『考えさせて』なんだ?」
女「男の意見を聞いてみようと思って」
男「俺の意見?」
男「なんだ?」
女「私、あの人と付き合ってもいいと思う?」
男「……」
女「……」
男「……女さんが、あいつでいいのなら」
男「その、いいんじゃないか」
女「……そっか」
男「…う、うん」
女「へー、いいんだ」
男「……」
女「わかった。明日返事する」
男「……ああ」
男「……うん、また明日」
男(……これでいいのか?)
男(だって俺が口を出せることじゃないよな?)
男(女さんが決めることだよな?そうだろう?)
男(俺が……俺が「付き合うな」って言うのは、人の恋路を邪魔することになるんだもんな)
男(女さんのためを思ってのことだ…)
(「少しは自分のためにその優しさを使ってみたらどうなの?」)
男「……」
男「……っく」
男「うぐっ…」ポロ
男「情けねぇ……何やってんだよ、俺」ポロポロ
男「誰だろう…」パカッ
From:前の彼女
To:男くん
本文 今日彼氏と喧嘩して別れちゃった。
男くんに会いたいな。
明日会えない?
男「……」
・
・
・
・
・
「うん」
男生「女さん!返事を聞かせてください」
女「……」
男生「お願いします」
女「一晩中、真剣に考えてみたの」
男生「はい…」
女「あなたと付き合うとどうなるんだろうとか、幸せになれるんだろうかとか」
男生「幸せにしてみせます」
女「でもね。いくらあなたとの未来を考えようとしても、無理なの」
男生「え?」
女「どうしても…頭に浮かんでくる人がいるのよ。いくら消そうとがんばっても。忘れようとしても
その人の優しさまでもが頭に浮かんでくるの。寒いギャグで私を笑わせようとしてくれる、あの時の笑顔が浮かんでは離れないのよ」
男生「それって…」
女「ええ。私には他に好きな人がいる。だからあなたとは付き合えないの」
女「ごめんなさい」
男「お、おう。遅かったな」
女「どうかしたの?」
男「あの、その」
女「何よ」
男「俺、今日ちょっと部活休む!すまん!」
女「え?ど、どうして?」
男「…昨日メールがきた」
女「……前の、彼女?」
男「ああ……じゃ、じゃあ。そういうことだから…今日の部活は休みってことでよろしくな。それじゃ!」
女「あ!ちょっと待ってよ!」
女「いいわ……泣いてやるわよ」
女「……グスッ、ひんっ……うう」ポロポロ
女「うわあああああん」ポロポロ
男「あ、いや。…大丈夫」
前「どうしたの?なんか様子が変」
男「ううん。なんでもない。気にすんな」
前「わかったわ。それじゃあ遊園地行きましょ遊園地
もうあんなやつのこと忘れてパーっとはしゃぎたい気分よ!」
男「ああ、そうだな…」
前「さあ行こ行こ」
男「あ、あんまり引っ張んな」
男(女さん…どうしてるんだろう)
男「う、うん」
前「私ハンバーガー頼むわ。男くんは?」
男(部活してたら今頃俺がふざけて女さんに叩かれるころだろうなー)
前「男くん?」
男「ん?」
前「何頼むかって聞いてるんだけど…」
男「あ、ああ。すまん。じゃあ俺も同じのにするよ」
前「あのさ、楽しくない?」
男「え?そ、そんなことないって!楽しいよ」
前「ほんと?」
男「ああ」
前「でもなんか上の空。ずーっと他のこと考えてるよね?」
男「え?」
前「うん。なんか心ここにあらずって感じ」
男(……言われてみれば、俺……)
男(ずっと、女さんのこと考えてる)
男(あんなに願ってたこいつとのデート中なのに)
男(女さん…泣いてたらどうしようか)
男「……まん」
前「え?」
男「すまん、帰る」
前「は?」
男「……待ってるやつがいる。やっと気がついた。俺はバカだ」
前「い、意味わかんない!私とのデートは!?」
男「うるせぇ!!」
前「な、何よ!!」
男「もうお前なんか知らん!!人を散々利用しやがって!!この浮気女!!」
前「ちょ!!はぁ!?」
男「彼氏と別れた寂しさを俺で埋めようとしやがって!!
俺は…俺は、そんなに都合のいい男じゃねえ!!!!」
前「な、何言って」
男「俺は女さんが好きだ!!!!!!!」
というかお前のアドレスなんかこっちから消してやるよバーカ!!!!」ダッ
前「ちょ、ちょっと!!何よ!!!!」
男(待ってろ…待ってろ…待ってろよ!!)
男(すぐに駆けつけてやる…俺の居場所もあそこだったんだ)
男(気付くのが遅すぎて女さんを傷つけてたんだ)
男(俺は…バカだ!)
男(もう随分時間が経ってるけど…まだギリギリ最終下校時刻じゃないし…いるよな?)
男(いや、いてくれ!!!頼む!!!)
・
・
・
ガラッ!
男「女さん!!!」
・
・
・
・
男「女さん……」
女「……」
男「いた!…って、女さん?」
女「……」
男「寝てる、のか?」
男「涙の跡がついてる…」
男「くそっ……」
男「……女ー」
女「」ピクッ
男「……」
男「くくっ……なーんだ寝てるのか」
女「……」
男「独り言でも言いたい気分だ、いいか?」
女「……」
男「うむ」
女「!!///」ガバッ
男「お、おい!起き上がるなよ!!独り言だって言っただろう!?」
女「本当かしら?今のは事実!?冗談でした~とか言ったら承知しn」
男「冗談でした~」
女「……」
男「じょ、冗談!!冗談だって!!あ、この場合の冗談ってのは『冗談でした~』ってのが冗談ってことで
その、女さんのことが好きってことが冗談な訳じゃ」
女「もう何言ってるかわからないわよ…」
男「すまんな。もう冗談はやめにする」
女「ええ」
男「ここからは、本気だ。真面目に話すから、真面目に聞いてくれるか?」
女「え、ええ」
女「ほ、本当に?」
男「うん。本当」
女「いっつも冗談で言う「ありがとう、大好きだ」とは違うわよね?」
男「違う。というか女さんなら分かるだろう」
女「そうね…」
男「前に言ったと思うけど、俺は女さんの笑顔が好きだ
あのデート以来、女さんの笑顔が見たくてしょうがなかった」
男「もしかしたら、この時点で好きだったのかもしれない。でも、その時の俺はまだ全然気がついてなかった」
女「気がついてないのなら、それはまだ好きとは言えないわ」
男「そうかもな」
男「いいぞ」
女「男は、ハッキリ言ってもう私の気持ち知ってるわよね」
男「うん。知ってる。俺自身の気持ちに感づいた時、わかった」
女「それじゃあ聞くけど、『私を傷つけた』なんて思ってるわよね?」
男「さ、さすがだな」
女「それ、気にしなくていいからね」
男「しかしだな…」
女「いいのよ。男は自分の気持ちに気がついてなかったんだから。どうしようもないじゃないの」
男「そういうもんなのか?」
女「そういうもんよ」
女「何?」
男「なんかいつもの部活の雰囲気になってないか?」
女「そうね」
男「女さんのペースになってるよなこれ」
女「当たり前じゃないの。私は男のことがなんでもわかるんだから
男の言うことを最初に私が言っちゃうもの」
男「そうだな…俺女さんを傷つけたこと謝ろうとしてたし」
女「男がそう言ってくることが分かってたから、私が先に許したのよ」
男「敵いません」
女「ふふっ」
男「うむ」
女「いつ気付いたの?」
男「ついさっき。あいつとのデート中だ」
女「そう」
男「あんなに願ってたデートなのに、俺ずーっと女さんのこと考えてたんだ
今何してるんだろうとか、本当だったら部室で女さんとこうしてるんだろうなとか」
女「ふふっ」
男「それでなんで女さんのことばっかり考えてるんだ?って思った瞬間
俺は自分の気持ちに気がついたって感じだ」
女「紛れもなく、『好き』という感情ね」
男「ああ。そうだな」
女「ええ、わかってるわ」
男「じゃあ今から俺のペースな」
女「何よそれ。なんかペースがフワフワしたわ。もっとしっかり自分のペースに持っていかないと」
男「うふふ、ごめんなさい」
女「それ気持ち悪いって前言わなかった?」
男「言われたな。うふふ」
女「やめてくれない?」
男「ごめんごめん……うふふ」
女「…はあ」
男「うふふ」
女「ぐっ」
男「付き合ってくれ。俺と」
女「え?今?」
男「あれ?間違えたか?」
女「まあ……男らしいっちゃ男らしいタイミングね」
男「それほどd」
女「ほめてないわよ」
女「御手の物よ」
男「もう一度言うけど」
女「ん?」
男「俺達、付き合うことになったんだよな?」
女「ええ、そうね」
男「やったな」
女「ええ。嬉しいわ」
男「よろしくお願いします」
女「ふふっ。こちらこそ」
男「いつも通りだな」
女「いいのよ、これで。私達が『付き合ってる』と認識していたら、それは付き合ってるのよ」
男「そうだな」
男「よしこい」
女「ここはどこでしょう」
男「俺と女さんの居場所だ」
女「正解。では私とあなたはどういう関係でしょう」
男「恋仲だ」
女「正解です。では主にどのような活動をしているでしょう」
男「いつもと同じ、雑談という名のデートです」
女「正解よ」
男「ああ、どっからでもかかってきな」
女「私は一体いつまで相談相手なのでしょう」
男「一生だ」
女「正解です♪」
~終わり~
乙
こういうssがたまにあるからVIPはやめられん
引用元: 女「私はいつまで相談相手なのかしら」