昔から周りに流されてばっかで、運動が出来るわけでも、勉強が出来るわけでもない
よくあるマンガみたいに、可愛い幼馴染みもいない。よく話す女友達もいない。
ここまでは普通の高校生だと思う。
他とは少し違うことというと、早くに両親を事故で亡くし、叔父と二人暮らししてることぐらい。
まぁ不自由はないし、可愛い彼女がいないことぐらいしか、不満はなかった
つまり俺なりに満足してた…はずだった
叔父「ただいま」
男「おかえり」
いつものように夜遅く帰ってきた叔父に夕飯のカレーをよそってあげた。
叔父「男…話がある」
男「ん?」
なにやら深妙な面持ち。でも言いたいことはなんとなくわかった
叔父「出張…に行くんだ」
叔父「あぁ…まぁな でも今回はちょっと長引きそうなんだ」
男「へぇ どれくらい?」
叔父「二年」
男「二年?!」
叔父「そうだ…だが言いたいことはそれだけじゃない。単刀直入に言う、許嫁が出来たぞ」
男「…は?」
思考がフリーズした
叔父「あぁ…本当に申しわけない。お前のご両親に会わす顔が無いよ」
男「いやいやいやいや…説明してよ」
叔父「今回の出張が決まったあと、お前1人では生活が出来ないと思ってな。俺の友人に相談してみたんだ。そしたら、その友人がお前をあまりに可哀想に思ったみたいでな…」
男「は、はぁ…いや俺は満足してるけど」
叔父「あぁそれはわかってるよ。でもその友人がお前の面倒を見てくれるみたいでな、2年間家に置いてくれるそうなんだ。」
男「なにその展開、いやありがたいけどさ」
叔父「それでその友人は2年間世話をするならいっそ娘の旦那にするかって言い出したんだ」
男「はぁぁぁ?!(まぁ…彼女欲しかったけど)」
叔父「すまん…酒が入ってたからな、トントン拍子で婚約することにしてしまった」
男「おいまじか」
叔父「だが、俺がいなくて1人で生活できるか?家事も今まで分担してたろ」
男「うっ」
叔父「友人もお前にひどく同情したみたいでな…すまん、酔って彼女が出来ないことも言ってしまった」
男「おい」
男「開き直るな!(その娘も可哀想に…)」
叔父「すまない…男、俺は明日には行かなくてはならない」
男「明日?! 急すぎるだろ」
叔父「なかなか言い出せなくてな…お前には本当に申しわけなく思ってる。お前にはお前の青春があるだろうに」
男「…(いやどうせ彼女できねーけどな)」
娘さんにも申しわけない…」
男「叔父…」
叔父には、両親が亡くなってから、今までずっと、面倒を見てもらった。学校にも行かせてもらった。だから、俺が怒る道理も無かった。許嫁さんには申しわけないけど…
男「わかった」
叔父 「男…」
男「ちょうど彼女が欲しかったしな!」
正直な話、俺は期待に胸を踊らせていた。まるでマンガの中にいる気分
これから始まる新生活に胸が高まっていたのも事実だった
男「あれ?間違えた…かな」
でも間違いない。ここがお世話になる家のようだ。デカイ。まさに豪邸である。
男「いやいやいや、うそだろ」
二時間近くまごまごした俺は、思い切ってチャイムを鳴らした
リンゴーン
場違いだな、俺 なんだこのチャイムは普通ピンポーンだろ なんか混乱してきた
するとドアが開いて、キレイな女の人が出てきた
男「え いやそんな苦労はしてないですよ?! あ、えと、お世話になります」
許母 「私達のことは本当の家族だと思ってくれてかまわないわ。あの娘の夫になるんだしね…」
男「えっ えーと、あ、は、はい」
みっともない話し方だとは思ったが、まぁ女性に免疫がない男にしてはマシな方なのか いやそんなことよりどうやら叔父は酔って少し俺のことを脚色して伝えたみたいだ
許母「ウフフ 照れなくてもいいわ あの娘はまだ納得してないみたいだけど、これもいい経験になると思うし、まぁ、婚約はやりすぎだとも思うけど…」
男「で、ですよね、アハハ」
不器用に会話を交わして、家に上がってみた。デカイ。それしか言えない呆れた語彙力である。
許母「じゃあわたしは仕事があるから、出掛けてくるわね わかんないことがあったら娘に聞いてね あなたの部屋は二階の廊下の奥よ」
男「あ、ハイ、わかりました」
許母「夫も今日は帰れないらしいから、挨拶はまた明日にしましょう。それではいってきます」
男「い、いってらっしゃい…ませ…」
情報量が多すぎて、一旦落ち着くために自室に行くことにした
男 「はぁ」
が
問題が発生するまで時間はかからなかった
男「こ、この感じ…」
尿意ッ!圧倒的尿意ッ!!
しかしッ!男、致命的な、ミス!!
トイレの場所を、まだ知らない!!
ざわ…ざわざわ…
さっきの話だと…許嫁さんに聞くしかない…だけど…きっと嫌われてるはず…
気まずい…俺は女子とはうまく話せないしなぁ…
男「ぐぬぬ…」
男はとりあえず廊下に出てみた。
そしてウロウロしてみる
男「ま、まずい…」
とっさにしゃがんだり、ポーズを変えてみる男 なんとかして時間を延ばすッ
だが 結界寸前ッ!!一度漏れたら、崩壊間違いなしッ!!
許嫁「なにしてんの」
許嫁「…」
言葉が詰まった だが自然と口が動いた
男「トイレどこ」
ジャーゴボゴボ
男「…えと、その」
許嫁「…」
初めてまともに発した言葉が
トイレどこ
って…俺って一体何者なんだろうか
許嫁「…」ハァ
男「あ…はい、な、なんでしょうか」
許嫁「あなたがなんでここに来たかは詳しく聞いてないし、興味ないわ
それより婚約の件だけど、私は納得してないから」
男「あ…は、はい」
許嫁「…」ハァ
バタン
あんまりな出会いである
気まずい、わかっていたけれど…
それにご両親が遅くなるって言ってたっけ?こんな空気の中で…過ごすのかよ…
男「胃が…痛ぇ」
彼女だのうかれてられない
でも…許嫁は可愛かった
そして気づいた
男「同じ学校なんだよなぁ…」
うちの学校は成績でクラスが割り振られていて、彼女は一番上、俺は一番下、だから話したことはなかった
だから彼女は俺のことを認識すらしていなかっただろう。俺の方はというと、まぁ、彼女は有名なので見たことはあった
高嶺の花過ぎて、届かなすぎて、逆に意識したことはなかった
そんな彼女が許嫁…
一週間前の俺ならヒゲダンスでもしてただろう
俺はなんとなく疲れてたので…
眠りに落ちた
…キナ…
…キナサ…イ
起きなさい
男 「ひぐぅっ?!」
許嫁「…」
状況把握に務めてみた どうやら寝てて起こされたらしい
許嫁「…ご飯」
男「ん?」
許嫁「ご飯食べるわよ…」
男「えっ」
許嫁「だから…冷めるでしょ」
男「あ、うん」
意外だった 彼女の方からコミュニケーションを計ったのも、俺を起こしてくれたのも
許嫁「?」
許嫁「だって冷めるじゃない」
男「いや…てっきり、先に食べてたりとかすると思ったけど」
許嫁「…あなた、私を冷酷な人間だと思ってる?」
男「い、いやいや、だから…まぁ、嫌われてるかと思ってたから」
許嫁「ええ、嫌いよ」
男「…」
男「…」
許嫁「婚約のことはとりあえず忘れましょう。私はご飯を食べてくるわ」
パタパタ…
俺はちょっと勘違いをしてたかも
そしてあと二年間、なんとかなるかもしれない
…夕飯を食べに行こう
許嫁は1人で椅子に座ってパクパク食べていた。許嫁の前に俺の分だと思われる豪華な食事が置かれていた
男「す、すげぇ…」だから語彙力…
正直緊張している。美人の前だし、料理が料理だからだ。ちなみに料理とは、デミグラスハンバーグ
男「料理人さんが作ったのかな?ハハ」
許嫁「…」
俺は1口食べてみた
う、うまい それしか浮かばなかったが、気づいたら完食していた
許嫁「…あなた、何か勘違いしてない?」
男「えっ」
許嫁「今どき、使用人なんているわけないじゃない。たしかに他の家庭に比べて裕福だとは思うけど。」
男「い、いやいや違うよ 別に馬鹿にしたわけじゃなくて、レストランみたいなソースだったし、なんというか、感動しただけだから」
少し気まずい雰囲気
許嫁「…そう」
男「美味しかったよ お母さん料理上手いんだね アハハハ」
許嫁「…」ピク
許嫁「…」
許嫁は一言も話さず、部屋に行ってしまった
なにか気に触ったかな。
男「まぁ…嫌いって言われたしな」ハハ
ここでなにかイベントを期待してた自分がいたことが恥ずかしい
そして、その日はそのまま眠りに落ちた
途中、寝ぼけた許嫁が部屋に
来ることも無かった いや知ってたけど
俺はくだらない妄想をしてみた
許嫁がエプロン姿で味噌汁を作っている
ドキドキしながら降りてみた
普通に朝食を食べていた 少しがっかりした
男「結局…お父さんたち帰って来なかったんだね」
許嫁「…もう慣れたわ」
男「お母さんにお礼言いたかったのに」
許嫁「…」ピク
許嫁「早く食べたら?」
朝からまた地雷を踏んでしまったのか
だけどここずっと女の子に縁が無かった俺にはよくわからなかった
男「あ、はい」
男「おっ」
お弁当があった。お母さんは結局、明け方に帰ってきて、朝食と弁当を作って、また行ってしまったのか
そうだとしたら本当に頭が上がらない
いやそれとも許嫁が作ってくれたのかな?
男「あっ 時間やべぇ!」
全力ダッシュである
男「てなわけよ」
友1 2 3「…ブッ」
友1 2 3「ギャハハハハハ」
友1「何のアニメ?ねぇ、何のアニメ?」
友2「DTこじらせすぎて、アレか、病気になったかwww」
友3「相手が許嫁さん?だっけ?wwよく知らないけど、あんな美人が夢に出てくれるとは…」
友1 2 3「いかがわしぃなぁ?」
殺気を感じた俺は後ろに引いたが、奴らはスリーマンセルでかかってきた
友2「マッスルドッキング!」
友3「えっあっ」
男「ぐほっ」
マッスルドッキング?を決められ、俺は吹き飛んだ その際一人余った友3の表情を忘れることはないだろう
まぁ俺ももし友1からそんな羨ましい夢の話を聞かされたら、延髄斬りを叩き込んでいただろう
男「ま、まぁ落ち着けよ」
いっそ、家に呼んで信じてもらうか?いや、それは迷惑だろう
友1 「…もしそんな状況にいたなら…」
友2「俺だったら…デュフ」
迷わす延髄斬りを叩き込んだ
と少し冷めた目で見た自分がいた
友2「いってぇ!おま、本気でやんなよ」
男「あ、わり」
友1「まぁ現実にそんなことになったら…俺だったらキョドってなんも出来ねーなw」
男「お前にしては割とまともなこと言ったな」
友2「まぁ確かにな」
チキンなのだ、俺達
そんなくだらないことを話したあとの昼休み 俺は廊下で許嫁を見つけた
彼女はやはり人気があるのか、女子が囲んでいる ただ男子が近づきにくいオーラも発していた
ボーッとしていると目が合った
許嫁はなにごともなかったかのように女子と会話を続ける
デスヨネーと少し肩を落とした俺を友1が見ていた
友1「離婚ですくぅあー?www」
俺は無意識に友1に膝蹴りを叩き込んでいた
ありがちな展開を言うと、校門の前で許嫁が待っていたりして、一緒に帰ったりして
なんてくだらないも妄想をしてみる
幸い友達は部活やらなにやらでいないので、茶化される心配もない
男「どうせ、いないんですけどねー」
なんてションボリ呟く
許嫁「…」
あれ?あれ?
許嫁「…あ」
おっ えっ あれ
妄想は現実になった
俺の心臓はかつてないほど速く鼓動していた
許嫁「…ねぇ あなた今朝ちゃんと戸締りしてきた?」
あっ 忘れていた というよりは鍵を持ってなかった
許嫁「鍵を渡すのを忘れていたから、あなたに非はないわ …わたしこれから委員会だから、先に帰ってなさい はいコレ」
男「お、おう ありがと」
ただそれだけだった
俺はなんとなく疲れた
ドンガラガッシャン
まさか、戸締りが出来ていなかったから泥棒でも入っていたのか
時計を見ると夜の18:30
俺はゆっくり下に降りて、恐る恐るキッチンの方を見た
するとそこにいたのは許嫁
顔が青ざめていた
男「ど、どうかしたの?!」
許嫁「…問題ないわ」
よく見ると黒いなにかがゴソゴソしていた
そう、火星からきた奴らである
くだらないことを考えている場合じゃない
どうやら許嫁はやつにビビってるみたいだった
やるしかねぇ 虫は高校生になってから苦手になってしまったが、女子よりは男子のが得意分野なはずだろう
なによりこいつを綺麗に対処すれば、俺の好感度も上がったり…なんちゃって
と、ほんのちょっぴり勇気が出たので、前に進み出た。
ブゥゥウゥウン
刹那、崩れる決意
男「いやぁぁああぁあ」
情けない悲鳴
許嫁はというと
ただ無言で俺の後ろで震えていた
俺はとっさに叫んだ
「なにか叩けるものくれ!!」
許嫁「は、はい!」
許嫁は慌てて俺になにか手渡した
俺はとっさにそれを振り回した
バァン
思いっきりやつを潰した
どうやら本のようだ
棚の上にあった小麦粉が俺の上に降ってきた
バサッ
…
あたり1面真っ白
俺は小麦粉を被って真っ白になった
許嫁「…」
許嫁「…フフ」
男「…笑うなよ」
許嫁「ごめんなさい…あなたが真っ白なものだから…フフ」
…可愛かった
彼女の笑顔を初めて見た。小麦粉とか、どうでも良かった
しばらく笑っていた許嫁を黙って見ていた俺は、そう言われてハッとした
男「お、おう」
風呂につかる 昨日はバタバタしてたから、あまり長湯は出来なかったけど、広い
なんとなく距離が縮んだ気がして、嬉しかった
許嫁「夕飯の支度が出来たから、食べてちょうだい」
男「許嫁が作ったの?!」
許嫁「…他に誰がいるのよ」
男「てっきり、お母さんが作ってるのかと」
許嫁「…お母さんもお父さんも、普段はいないわ」
なんとなく悲しそうな顔をしていた
俺も気持ちはわかる
男「…食べようか」
許嫁「えぇ」
今日のメニューは肉じゃがだった
許嫁「…そう」
会話は長続きしない
けど、前よりはマシ、な気がする
しばらくの沈黙の後、珍しく許嫁から口を開いた
許嫁「明日…」
男「え?」
許嫁「明日 お父さんが帰ってくるから、あなたの歓迎会がしたいそうなの」
男「えっ 歓迎会?」
許嫁「ええ だから明日は休日だけれども、家にいてくれないかしら」
男「あ、はい」
そういえばまだお父さんに会ってなかった
俺はかなり今日という日に満足していた
ゴキブリ事件をきっかけに俺の方も割と普通に許嫁に接することが出来るようになったから
男「…ゴキブリ様々だな」
俺は満足して眠りについた
昼寝はしてたけど、問題なかった
明日は休日、歓迎会が気になってワクワクしていた
俺は昨日かなり睡眠を取ったからか、サッと目が覚めた
静かに1階に降りた
許嫁は起きて、紅茶を飲んでいた
その映画のワンシーンみたいな図を見てボーッとしていた
許嫁が俺に気づく
許嫁「…なにかしら」
男「いや…なんでもない」
俺は少し緊張していた
許嫁「もしかして…緊張してる?」クス
男「ん?いや、そんなことないよ」
それよりも驚いたのは、許嫁が俺に対して話かけていることに、だ
許嫁「大丈夫よ。歓迎会っていっても、あなたが想像してるようなのとは、違うわ」
どこか嬉しそうだった
許嫁は両親はほとんど家にいないと話していた
だから久しぶりに家族が揃う歓迎会を楽しみにしているのではないか、と俺は思った
途端に許嫁が可愛いらしく思えた
いくら大人っぽくても、彼女だって高校生
俺が来るまでは実質1人でこの広い家で生活していたのだろう。
男「…よかったな」
許嫁「…なにがよ」
時計を見ると許嫁は急に慌て始め、なにやら作り出した
そして鼻歌を歌い出したのだ
許嫁 ♪
ギャップ萌え
普段一切感情を表さない許嫁が鼻歌を歌っているのだ
よっぽど楽しみなのだろう
電話がかかってきた
許嫁は数分ぐらいなにやら話していた
許嫁は黙って俺に受話器を渡すと、自分の部屋に走っていった
「男くんかね?」
男性の声だった
男「あ、はい、お父さんですか?」
許父「おぉ 元気にしてるか?伯父から話を聞いてな、君をほっとけなくって…
まさかそんな苦労人がいたとは…」
伯父の奴、酔ってなにを吹き込みやがった…
男「いやいや、ありがとうございます。本当に助かってます」
許父「それは良かった。安心したよ」
今日も歓迎会まで開いてもらっちゃって…」
許父「…それなんだがね、今日も急に仕事が入ってしまい、家に帰れるのは来月くらいになりそうなんだよ」
男「そ、そうなんですか いえいえ、お気になさらず」
許父「…許嫁は、怒っているだろうね」
男「…はい、多分」
許父「今回のことは勝手に事を進めてしまい、すまなかった 君にも、許嫁にも申しわけなく思ってるよ」
男「いやいや、助かってますよ」
男「…はい」
許父「これからますます、仕事が忙しくなりそうでな。あの娘はこのままだと本当に一人ぼっちになってしまう。」
男「…はい」
許父「だから伯父から話を聞いたとき、君ならあの娘とお互いに支えあえるのではないか、と思ってな」
男「…許嫁さんの気持ちは痛いほどわかります」
俺も…両親がいないから
どうかあの娘の側に居てやってくれないか」
男「…はい、わかりました」
許父「…安心したよ。よろしく頼む」
ガチャッ
激しい自己嫌悪に陥る
数日前の自分の言葉が反響した
自分が恥ずかしかった
そんな軽い気持ちでここに来たことに
だから、決意した
彼女の支えになろうと思った
許嫁の部屋に向かった
コンコン
男「許嫁さん?大丈夫?」
許嫁「…ほっといて」
許嫁の声は少し震えていた
男「俺で良ければ…話を聞くよ?」
許嫁「…あなたには、わからないわ」
男「わかるさ…」
許嫁「わからないわよ」
男「わかろうとはするさ」
許嫁「余計なお世話よ!!」
珍しく彼女は声を荒らげた
それしか言えなかった
彼女の気持ちはよくわかるつもりだ。
両親がいるけど、ずっと孤独だった彼女、両親は亡くしたけれど、伯父が側にいてくれた俺
分かり合えないのだろうか
そのときだった
許嫁「入って…」
ドアが開いて、彼女が入れてくれた
良い匂いがした
俺はなんて口火を切ろうかわからずまごまごしていた
許嫁「…今日は、久しぶりに、会えると思ってたから…」
男「うん」
許嫁「お父さんも、お母さんも帰ってくるときはもう真夜中で、朝早くに行ってしまうわ…」
男「うん」
許嫁「だから…今日は…たくさんお話出来ると思ってたから…」
男「うん…」
許嫁「さっきはごめんなさい…あなたに当たっても、仕方が無いのに…」
男「わかってるよ」
許嫁「私もまだまだ子どもなのね。ただ寂しくて、八つ当たりして…最低ね」
男「…たまには、いいんじゃないかな」
許嫁「…ありがとう」
今なら、分かり合えるかもしれない
許嫁「…ぇ」
男「あ、いや、ごめん、同情してほしくはないんだ。俺には伯父がいて、寂しい思いはしてこなかったから」
許嫁「わたし…あなたに最低なことを言ったわ」ポロポロ
男「いや、ごめん、違うんだ、泣かないでよ、俺は、ほら、あのさ」オロオロ
許嫁「…」グス
男「言いたいことはさ、違うんだ。俺には、伯父がいたからさ、寂しい思いはしなかったんだ」
思い切って言ってみる
いつの間にか、チキンな俺は消えていた
男「だからさ…寂しかったら、頼っていいから 苦しかったら、救ってあげるから…だから…1人で抱え込むなよ、許嫁…さん」
ちょっぴり最後がチキンだった
許嫁「…」
許嫁は、呆然としていた
そして
俺の手を握った
許嫁「…婚約の件は、まだ、納得してないからね」
男「…うん、それでいい」
こうして、許嫁との生活は本格的にスタートした
許嫁と一気に距離が縮まった気がした俺は、寝ぼけた許嫁がベッドに来るんじゃないかとドキドキしていた
杞憂であった
チュンチュン
許嫁「…ふぁ」ムクッ
許嫁「…」スタスタ
男 「…ぐごっ…スピー…ぐごごっ」zzz
許嫁「…」クス
・
・
・
…キナ…
…キナサ…
「起きなさい」
男「むぉっ?!」ガバッ
許嫁「朝食が出来たから…」
男「お、おう」
今日は月曜日 いつもなら最悪の気分で起きる朝 だけど今日は最高の気分である
鮭に味噌汁、ご飯…
男「旅館みたい…」ハハ
許嫁「…そう?」クス
男「おー 美味い」パクパク
朝食はあっという間に無くなった
男「ご馳走様でした」
許嫁「はい、洗っとくから下げて」
男「ありがとう」
我ながら女子と何気ない会話を交わせていることに驚きである
男 「グフフ」
許嫁「気持ち悪い顔してないで、学校行かなくていいの?」
男「あっ やべ! 今日は日直だから、早く行かないと」ダッ
許嫁「…あっ」
男「いってきます」ガチャバタン
・
・
・
時は流れ、昼休み
男「あっ」
弁当がない
友1「どうしたんどす?」
男「いや、弁当忘れた」
友2「アホやな」
友3「俺達学食行くけど…」
男「あー…金も無いから、俺は無理かな」
友1「貸そうか?」
男「いや、いいよ、なんとかする」
許嫁はクラスにいるかな
なんか他のクラスに行くのって気まずいなぁ…
…トコ…
許嫁「男」
男「ファッ?!」ビクゥ
許嫁「お弁当、忘れてたわよ」スッ
男「あ、ごめん ありがとう」
許嫁「…」スタスタ
驚いた まさか許嫁の方から来てくれるなんて 俺のクラス知ってたのかな?わざわざ探してくれたのかな いやそれよりも…
男「初めて名前…呼んでくれたな」ハハ
少し嬉しかった
許友「いや…良いんだけど…」
許嫁「?」
許友「驚いた…あんたに男の友達がいたなんて…男子は苦手なんじゃなかった?」
許嫁「苦手よ」
許友「もしかして…彼氏?」ニヤニヤ
許嫁「…そんなのじゃないわ」
・
・
・
女「男くん」
男「?!な、なに」(女子が俺に話しかけてきた!!)
男「あー…うん、知り合いだよ」
女「へー… 委員会が一緒だからさ、許嫁ちゃんのことはよく知ってるんだけど…」
男「うん、どうかした?」
女「いや…あの子が男子と話すなんて、珍しいなーってね」
男「あー…」
「婚約者だからね 」キリッ
って言いたい欲にかられたが、なんとかごまかすことにした
男「まぁ、友達だからね」
女「ふーん…」ニヤ
なにか悪寒を感じた
男「あ、俺、男っていいます」
女「アハハ、なんか緊張してる?同じクラスだけど、話したことは無かったからね」
男「うん、よろしく」ハハ
女「よろしくね」
友123 ジー
殺気…?!
女「お弁当、食べなくていいの?昼休みもうすぐ終わるよ?」
男「あ、やっべ」パクパク
女「忙しい人だね」クス スタスタ
女さん、か
男 ハッ
友2 「サッキ ベントウワスレタッテ イッテタヨネ?」
男「げっ」
友3 「イマノ オンナノコ二 ツクッテモラッタノカナ?」
男「お、おいおい待てよ」アセアセ
友1「友情の!」
友2「ダブルラリアット!!」ドガァ
男「うげぶ!」ドサァ
やっぱり一人余った友3を尻目に、友1 2は俺に執拗に絡んできた
男「いや…たまたまだって」
友2「信じてたのに…俺達、抜け駆けはナシって、信じてたのに…」グス
友3「まさか弁当も女ちゃんが作ってくれたのか?」
別の女の子が作ってくれたって言ったら、殺されるだろうな…ハハ
男「いやいや違うって…」
キーンコーンカーンこーン
男「あっ やばいやばい」パクパクパクパク パタン
友1「ちっ 命拾いしたな」
・
・
授業終了後
男 「ふぃー やれやれ」
友1「じゃあ俺達部活だから」
男「おう」
校門で許嫁が待ってたりしないかな
男「なんてな」ハハ
許嫁「なんでいきなりニヤケだしたのかしら」
男「?!」
許嫁「気持ち悪い顔してないで、帰るわよ」
男「あ、待っててくれたの?」
許嫁「? ええ、まあね」
これは…許嫁さんはもしかして俺のことが好きなのか? と考えてしまうのがモテない高校生である
許嫁「? 今日は友達が部活だし、1人で買い物すると疲れるじゃない?」
男「あー…荷物持ちってやつか」ガックリ
許嫁「理解が早いのね。助かるわ」クス
男「はぁー…」
期待してしまった自分が恥ずかしい
許嫁「…そう落ち込まないで。あなたの好きなものも買ってあげるから」
男「えっ あー じゃあプリンがいいかな」
許嫁「…子どもなのね」クス
男「うるさいなー」
よくよく考えてみると、数日前に比べるとかなり進歩してるのではないか?
と俺は小さくガッツポーズしてみた
許嫁「気持ち悪いわ」
ガヤガヤ
許嫁「えーと…そうね、あとはカレーのルーだけね」
男「あっ 今日はカレーなんだね」
カレーは好物である
許嫁「…あったわ、これで終わりね」
プリンがない
男「あのー…許嫁さん?」
許嫁「…なにかしら?」キョトン
男「ほら…約束のやつ」
許嫁「約束?」キョトン
さすがに許嫁家のお金なので、文句は言えない
男「いや…なんでもないです」ガックリ
許嫁「じ、冗談よ 落ち込まないで」アセアセ
許嫁さんはどうやら、お茶目なところがあるようだ そして俺は子どもだな
許嫁「…」クス
めっちゃ幸せだなぁ…
と幸せを実感してみる
許嫁「ほら、好きなプリン選びなさい」
男「やったー」ダッ
親子が交わすような会話を同級生と交わす俺 情けない高校生だ
許嫁「…子どもなのね」クスクス
男「あっ じゃあこのプッツンプリンで」
許嫁「じゃあ私の分も取って」
男「えっ 同じのでいい?」
許嫁さんは甘い物が好きみたいだ
許嫁「…悪い?」
男「いやいや全然! ただ許嫁さんはワッフルに紅茶とか、そういうイメージ」
許嫁「よくわからないわ」
男「ごめん」
買い物を済ませて、家に帰ることに
許嫁「ねぇ」
男「ん?」
許嫁「…ナカ…」
男「え?なんて?」
男 (恥ずかしがってる)キュン
許嫁「…プリンだけ、食べない?」///
男「あっ そうだね いいと思うよ」
許嫁「…ありがとう」///
家までまだ距離があるので、近くの公園で食べることに
許嫁「…」パクパク
まさか女の子と公園でプリンを食べるなんて…
男「…」パクパク
プリンはいつもより甘い気がした
男「…うーむ、暇だ」
許嫁「勉強でもしたら?」
ここで勉強というワードが浮かぶあたり、さすが優等生
男「んー…そこまで暇じゃない」
我ながらよくわからない言い分で逃げる
許嫁「どっちなの?」クス
テレビでも見ていよう
男「…ふぁ」ボー
男「…」zzz
許嫁「…」トントン
許嫁「…」チラッ
許嫁「…」スタスタ
許嫁「…」ポスン
許嫁「…本当に、子どもなのね」クス
許嫁「…」
許嫁「…ありがとう」
・
・
・
男「んむ?いい匂い」ガバッ
許嫁「やっと起きたわね」
男「んー…おはよう」ボー
許嫁「なに寝ぼけてるの 顔洗ってきなさい」クス
時計を見ると20時 夕飯の時間にしては、いつもより遅い
男「あれ?今日はずいぶん遅いね」
許嫁「…あなたがお寝坊さんだからじゃない」ツネッ
男「…ごべんなさいれふ」
男「うまい」
許嫁「それは良かったわ」
許嫁さんにつねられた頬はまだ痛い
でも女の子につねられたのだから悪い気はしなかったのが正直なところである
男「ごちそうさまでした」ガタ
許嫁「はい、お粗末さま」ガチャガチャ
男「んー…暇だ」
許嫁「お風呂入ってくるわ」スタスタ
男「おー」ピク
風呂、かぁ…
「お風呂入ってくるわ」
ドクン…
「お風呂」
ドクン…
行くしかない… 俺の人生でも1度きりしか拝めないかもしれない…
ドクン…
男のロマンが、そこにある !! ドン!!
男 スクッ
ー聖戦に臨む-
男 ビックゥゥ
許嫁「…どうしたの?」ジー
男「いや…なんでも、ございません」
俺の決意は一瞬で壊れた
男「…」ボケー
許嫁「上がったわ 入ってきなさい」スタスタ
男「お、おう」 ドキ
許嫁「じゃあ、私は部屋に行くから」
男「あ、おやすみ」
許嫁「おやすみなさい」スタスタ
許嫁はいつも、風呂に入ると部屋に行き、おそらく勉強して、そのまま寝てしまう
男 ポツン
なんだか罪悪感が芽生えはじめたので、急いで風呂に入ることにした
男「んげー…zzz」
許嫁「…」
男「んごぅ…zzz」
許嫁「…」ツンツン
男「…んぅ」
許嫁「…」ユサユサ
男「…ぐひ」
許嫁「…」ユッサユッサ
男「はひぃ?! …あっ許嫁さん」ジュルリ
許嫁「あなたって全然起きないのね」
男「そう?」ボケー
許嫁「もう朝食は出来てるから」クス スタスタ
今日は火曜日 またまた幸せな朝である
許嫁「ごめんなさい、私 今日早いから
お皿は下げといて」
男「あ、了解」
許嫁「いってきます 戸締りお願い」スタスタ
男「いってらっしゃい」
ボケーとテレビを見ている
『今日は午後から激しい雨になります。是非カサをお忘れなくー』
男「あぶねーあぶねー」
カサを持って、カギを締め、家を出る
男「弁当食うか」
友1「お前 最近弁当だな」
友2「いつも学食だったじゃん」
許嫁が作ってくれるから
なんて言ったら、プロレスラーも真っ青なパイルドライバーをされる気がしたので、テキトーに誤魔化す
男「んー…学食ばっかだと飽きるじゃんか」
友3「お前 麺系なら何杯でもイケるとか言ってたじゃねーかよw」
友1「どうせすぐ学食食いたくなるよ」
友2「じゃあ俺達行くわー」
男「おー」
許嫁と暮らすようになってから、教室で食べることが多くなった
それまではほぼ毎日食堂で食べていたので、なんか新鮮な気分である
男「女さん いやこれはまぁ…」
許嫁との会話に慣れたのか、女子との会話にも緊張しなくなったみたいだ
男「んー…」
女「えっ なに 彼女?!」
なんて言おうか迷った
男「いや、そうじゃないけど…」
女友「えっ これ男君が作ったの?」
男「あ、えーと、うん、まぁ」
女友「すげー 女子力たけー」ゲラゲラ
女「男君、料理とかするんだ」
男「お、おう、まぁ」
許嫁とはクラスも違うし、俺が作ったって言っても、影響はないだろう
男「あー、うん、よろしく」
女友「いやー 男くんいつも友くんたちとどっか行っちゃうから、料理ができるなんて、知らなかったよ」
男「いやー…大したことないよ」
許嫁さん、なんだかすいません
女友「えー すごいよー こんなお弁当、私、作れないもん」
男「そ、そうかな?」テレ
女「うん、凄いと思う! あ、そういえば木曜日 家庭科で調理実習あったよね?」
男「あー あったね」
女「もし良かったら、コツとか、教えてくれない?ダメかな?」
まずいことになってきた
男「い、いやダメじゃないよ」ダラダラ
女友「あ、それいい!」
女「男君、お願いしていいかな?」
女友「私からも、お願い!」
断れない…
男「わ、わかった 任せてよ」 ダラダラ
死亡フラグが立ちました
許嫁「…あなたもしつこいわね」パクパク
許友「だってさー…許嫁とは長い付き合いだけど、アンタに色恋沙汰なんて、一生無いと思ってたからさー」
許嫁「別に…彼とはそういう関係ではないし、それに私は男性恐怖症でもないわ」
許友「だってアンタ、男子に話しかけられても、マトモに相手しないじゃない」
許嫁「…苦手なだけよ」
許友「じゃあ男子が苦手な許嫁に聞くけどさ、あの男の子のことをどう思ってるの?」
許嫁「…」
最初は親に急に決められた婚約者
当然、あまり好感は持てなかったけど…
1人で抱え込むなよ、許嫁…さん
許嫁「…そうね」
許友「なになに?!」
許嫁「手が掛かる、弟みたいな感じかしら」
我ながらピッタリな表現が出来て、なんだかスッキリしたわね
許嫁「そうとしか言いようが無いわ」
許友「うーん…よくわからないけど、他の男子よりは好き、ってとこかな?」
許嫁「…昼休み終わるわよ?」
許友「あっ ちょ、早く言ってよ!」パクパク
許嫁「…」
・
・
・
ザー ザー
男「雨スゲーな」
男「ふー すっきりんこ」ジャーバタバタ
トイレから出ると、もうみんな下校していた
男「ずいぶん入ってたみたいだな」ハハ
男「さて、帰るか」
許嫁「…」ポツン
男「うぉっ?! 許嫁さん?どうしたの?」
許嫁「!…まだ帰ってなかったのね」
男「うん、まぁちょっとした用事があってね」ハハ
トイレにいました とは言えません
許嫁「私も、先生に用事を頼まれて、この時間になってしまったわ」
男「そっか…じゃあ帰ろうか」
女子と2人で下校
俺にはハードルが高い
男「許嫁さん?行かないの?」
雨は強くなってきた
許嫁「実は…カサ、持ってきてないの」
男「えっ」
そういえば、許嫁さんは今朝、テレビを見ていなかったので、雨が降ることを知らなかったのだろう
許嫁「今日はあいにく、折りたたみカサも無いし…」
本当に困っているみたいなので、どうにか出来ないものか、考えてみる
男「あっ なら俺のカサあげるから、それつかってよ」
許嫁家にくるときに、一緒に持ってきた紺のカサを手渡す
許嫁「…気持ちは嬉しいけれど、あなたが風邪を引いてしまうわ」
許嫁「万が一 風邪を引いたら、看病するのは私なのよ?」
男「うっ…」
正直、許嫁さんに看病されるのも悪くない いやむしろ、嬉しいけれども、迷惑をかけてしまう
許嫁「…あの」
男「ん?」
許嫁「もし…嫌じゃなかったら…」
男「うん」
許嫁「私をあなたのカサに入れてくれないかしら」
男「」
元々高かったハードルは、いつのまにか山のような壁になっていた
言葉が浮かばない
許嫁「やっぱり…ダメ、かしら」
男「ハッ いやいや全然ダメじゃないですよ
余裕余裕超余裕」アセアセ
許嫁「…ごめんなさい」
男「し、仕方が無かったよ 突然降り出したし 俺なら全然、大丈夫だから」
許嫁「本当に?遠慮しなくていいわ」
男「いやいやむしろ大歓迎です」アセアセ
とりあえず、カサを開く
許嫁「…ありがとう お邪魔するわね」スッ
男「おっふ」ドキドキ
まさかこんな体験をするなんて、思いもしなかった
男「えと、じゃあ、行こうか」ドキドキ
許嫁「…ええ」
周りには他の生徒はいなかった
おそらく部活動も室内でやってるのだろう
男「…」ドキドキ
許嫁「…」
気まずい
唯一の救いだったのは、周りの目を気にしなくて良いことだ
友たちに目撃されてたりしたら、翌朝は教室がヒャッハーな状態になっていただろう
許嫁「ねぇ」
男「は、はい!」ビクッ
許嫁「あなた、なんでそんなにギリギリなの? 左肩がびしょびしょじゃない」
男「あ、えーと…」アセアセ
許嫁「気を使わなくていいから、もっと寄りなさい」
男「は、はい」ドキドキ
そう言われても、チキンには難易度が高すぎる
男「えっ、いや全然大丈夫だから」
許嫁「なら、遠慮しているのかしら?」
男「してないしてない」ドキドキ
許嫁「だったら早く寄りなさい 風邪引いちゃうじゃない」
許嫁さんは、普段と変わらぬ口調で俺の心配をしてくれている
なんだか、俺だけドキドキしてるのが馬鹿らしくなったので、半ばヤケクソになってみる
男「…わかりました」スッ
許嫁「…カサが大きくて、助かったわね」
近いなんてもんじゃない 肩と肩が時々触れる 俺の全神経が右肩に集中した
許嫁「…着いたわよ」
男「えっ もう?!」
どうやらずいぶん時間が経っていたようだ
許嫁「どうかした?」
男「い、いやなんでもない」
許嫁「…先に、家に入ってるわね」パタン
カサの水を落とし、傘立てに入れ、ドアを開けた
許嫁「…」スタスタ スッ
男「?」
許嫁「…ごめんなさい、私がカサを忘れたから あなたの肩がびしょびしょになってしまったわ」フキフキ
男「いやいやこんなの、ツバつけとけば治るから!」アセアセ
許嫁「それじゃあ、もっと濡れるじゃない」クス
許嫁「…ありがとう 助かったわ」ニコ
男「」ズッキューン
許嫁「お風呂沸かすから、すぐに入って
風邪引くといけないから」
雨のお陰で、また許嫁さんの笑顔が見れた
いままで雨はうっとおしくて、憂鬱で、嫌いだったけど
今日好きになった
お湯にじっくり浸かる
男「今日も疲れたなぁ…」
そのとき忘れかけていたものがふと脳裏に浮かんだ
男「明後日…調理実習…」
男「…どーしよ」
約束してしまった以上、今更出来ませんなんて言えない
許嫁さんが作ったなんて言ったら、どう思われるのだろうか
男「…許嫁さんに、相談するしかないか」
男「…」ブクブク
無責任な自分に腹が立った
許嫁「夕飯の支度は出来ているわ 食べましょう」
男「あ、はい」
今日の晩御飯は鯖の味噌煮だ
男「う、うまいっす」パクパク
許嫁「ありがとう」パクパク
男「…」パクパク
切り出そうにも切り出せず、気づけば夕飯を食べ終わっていた
男「ご馳走様です」カタ
許嫁「はい、お粗末さま」カチャカチャ
男「…許嫁さん」
許嫁「なにかしら」カチャカチャ ジャー
男「少し、話があるんだけど…」
許嫁「…ちょっと待ってて」ジャー フキフキ
許嫁さんはなにかを察してくれたようだ
男「あ、じゃあ、貰おうかな」
許嫁「お砂糖と、ミルクは?」
「ブラックで 」キリッ
と言いたいところだが、そこまでの余裕は無く、無意識に口が動いていた
男「カフェオレで」
許嫁「…なんだか難しい注文ね」クス
我ながらよくわからない発言をしたものだ
許嫁「とりあえず、甘めにしておいたわ」クス
男 (なんて良い娘なんだ)
許嫁「…それで、話とはなにかしら」
男「えーと…その」
なんて言えばいいんだろう
頭がグルグルしてきた
こんな感じには身に覚えがある
そう、英検の面接だ
と、下らないことを考えつつ、正直に話すことに決めた
許嫁「…ずいぶんと急な話ね 理由を聞かせてくれるかしら」
男「うん…えっと、今日ね 同じクラスの子に、弁当を食べてたら話しかけられて」
男「どうやら、弁当が美味しそうだったからみたいなんだけど…」
許嫁「…えぇ それで?」
男(ちょっと嬉しそう)「うん、それで、自分で作ったのか、聞かれてさ 許嫁さんに作ってもらったって言ったら、なんか凄いことになる気がしたからさ」
許嫁「自分で作ったって言ったのね?」
男「…うん、そうなんだ そしたら、明後日の調理実習でコツを教えてくれないかって言われてさ…」
許嫁「…話はわかったわ」
男「うん…だから、許嫁さんに料理を教えてもらおうかと」
許嫁「…」
男「…許嫁さん?」
男「…」パァァ(あ、姉貴…)
許嫁「確かに、婚約のことは秘密にしておいた方がいいわね だからあなたの判断は間違ってなかったと思うわ」
許嫁「あなたも、噂の的にされたくないでしょ?」
男「そ、そうだね 確かに」
許嫁「調理実習の課題は、なんだったかしら」
男「えーと…ハンバーグだよ」
許嫁「わかったわ…明日は休日だったわね
料理を教えてあげるわ」
男「え?水曜日だよね明日 休日なの?」
許嫁「…呆れたわ あなた明日行くつもりだったの?」ハァ
男「え、なんかあったっけか あ、創立記念日だ」
許嫁「…しっかりしなさい じゃあ私はお風呂に入ってくるわ」スタスタ
男「…」
男「やっふぅぅぅうぃ!」
そして許嫁さんが料理を教えてくれる
俺のテンションはMaxだ
男「やっふぅぅぅう!」
男 ズンドコズンドコ♪
許嫁「また忘れ物した…わ…」
男「」
許嫁「ご、ごゆっくり…」スタスタスタスタ
男「」
テンションは一瞬で地に堕ちた
男「ま、まぁ明日はハッピーな日になるはずだし」ハハ
男「…寝よ」ハァ
今日もぐっすり寝た
男「…ん」ムクッ
昨夜は早く寝たからかな 寝覚めがいいな
男「…」フゥ スタスタ
許嫁さんはまだ寝てるかもしれないので、静かに一階に降りた
男「…まだ早いし、暇だな」ポチ
『~~~♪』
今日は許嫁さんが料理を教えてくれるんだっけか
そういえば今まで料理なんてマトモにしたことなかったな
『~~~~♪』
ハンバーグ…果たしてマスター出来るだろうか
許嫁「…ふぁ」ムクッ
許嫁「…」スタスタ パタパタ
音がする…今日は早いのね
許嫁「…」スタスタ
男「…」ボー
許嫁「…おはよう」
男「…ん?あ、おはよう」
許嫁「今日は寝坊しないのね」
男「ん?んー、早く寝たからね」
許嫁「いつもそうだと助かるのに」
男「それは難しいかな」ハハ
許嫁「とりあえず朝食の支度をするわ」
男「ありがとう」
学校が無いからか、いつもよりのんびりな雰囲気の朝だ
男「あ、じゃあもらうよ」
許嫁「味は何がいいかしら」スッ
男「おかかで」ヒョイ
朝食は目玉焼きに味噌汁にご飯
定番のメニューだ
許嫁「…料理を教える上で聞いておきたいのだけれど」
男「うん」
許嫁「料理はまったくの素人なのかしら」
男 「うーん、いや、時々してたよ」
許嫁「ちなみにどんなものを?」
男「カップラーメンとか、インスタントラーメンとか」
許嫁「…ツッコミ所が多すぎるわ」
許嫁「誰が作っても変わらないと思うわ」
許嫁「…つまり最初から教えてあげる必要があるわね」
男「お世話になります、師匠」ペコ
許嫁「…師匠?」ピク
悪い気は、しないわね
許嫁「さて、始めるわよ」
男「了解ッス」
許嫁「ではまず、玉ねぎをみじん切りにするわね」
男「おっ いきなり包丁ッスね」
許嫁「こうするのよ」トントントン
男「よっし」スッ
許嫁「! その持ち方では指を切るわよ」
男「えっ」
許嫁「こう、持つのよ」ギュッ
男「おっふ」ドキ
いきなり手を握られてドキっとしてしまった
いかんいかんそんな場合じゃない
許嫁「そうね」トントントン
男「これは師匠を超えるのもすぐかもしれませんね?!」トントン
許嫁「そうかもしれないわね」トントントントントン
男(速ぇ…)ハハ
許嫁「次はバターで2、3分炒めるわ。あなたはその間にエリンギと長ネギにもお得意のみじん切りをしておいて」
男「了解ッス」トントントン
許嫁「ずいぶん包丁に慣れたのね」ジュー
男「まぁね」トントン
許嫁「…こんな所かしら。」
許嫁「次は、この玉ねぎに、卵、塩コショウ、パン粉、牛乳、ひき肉を混ぜるわ」
許嫁「…こう、手で混ぜるのよ」コネコネ
男「べちゃべちゃしてるね」コネコネ
男「うーん、手が疲れてきたよー」コネコネ
許嫁「…がんばって。苦労して作るから美味しくなるのよ」
男「おー、なんかイイ言葉」コネコネ
許嫁「…よし、混ぜるのはそれくらいにして、型にしていくわ」コネコネ
男「おー。ハンバーグの型だ」
許嫁「あなたもやってみたら?」
男「うん」コネコネ
許嫁「…」ハラハラ
男「…あれ、なんか変な型になってしまった」シュン
許嫁「落ち込まないの。最初は誰だって失敗するものよ。もう一度やってみたら?」
男「そうだな!」コネコネ
許嫁(なんか危なっかしいわね)ハラハラ
男「出来た!これはハンバーグだわ!」
許嫁「よかったわね」
男「もう一丁!」サッ
許嫁「あまり調子に乗らないで。もう少し落ち着いてやらないと…」
男「あ」ベチャ
許嫁「…そうなるわ」
男「…」
許嫁「…すぐ調子に乗るのがあなたの悪いところよ」
男「…はい」
許嫁「明日はもう少し落ち着いて、作りなさいね」
男「すいません」
•
•
•
許嫁「気を取り直して、再開するわよ」
男「ウス」
男「ソースかー」
許嫁「どんなソースが好みかしら」
男「えーと…やっぱデミグラ、あ、トマトソースもわりと好きかも…うーん」
男「あ、照り焼きがいい」
許嫁「照り焼きソースね。じゃあ今回は照り焼きソースで行きましょう」
男「ウス」
許嫁「醤油にみりん、砂糖、水を入れて」
男「ふむふむ」
許嫁「最後にお酒を少しだけ」
許嫁「あとは混ぜれば…ほら、舐めてみなさい」
男「うん、じゃあ」ペロッ
男「お、おぉー。照り焼きだ、すげー」
許嫁「これでソースはできたわ」
許嫁「さっきのハンバーグのタネに片栗粉をまぶして、焼くわ」
男「ようやく完成が見えてきたね…」フー
許嫁「…油断してると、また落とすわよ」
男「わ、わかってるよ」アセアセ
許嫁「さて、片栗粉をまぶしてくれる?」
男「ウッス」パラパラ
許嫁「フライパンに油を入れて、温めておくわ」ジュー
許嫁「…よし、焼くわよ」
許嫁「弱火で4,5分、裏返してまた4分くらいかしら」ジュー
男「お腹空いてきた」グー
許嫁「そうね」
許嫁「…焼けたわ、余分な油を拭き取って…」フキフキ
男「やっと出来たね!食べよう!!」グー
許嫁「…まだよ。ソースを入れて、ここからまた強火で2分ほど煮つめて絡めるわ」
許嫁「我慢よ」
ジュージュー
男「ひもじぃ…」
許嫁「…出来たわ」
男「やった!食べようか!!」
許嫁「ええ」
・
・
・
男「いただきます」
許嫁「いただきます」
男「」パク
男「ゥンまあぁぁ~いっ」
許嫁「美味しいわね」
男「明日これを出せれば、うまくいくよ!
許嫁さん、今日は本当に、ありがとう!」
男「この御礼は、必ずする!」
許嫁「別に、大したことはしてないわ」
男「いやいや!せっかくの休日なのに、付き合ってもらったからさ」
許嫁「…」
むしろ、いつもより楽しかったわ
許嫁「…そう、ね」
許嫁「まだ夕方だし、買い物に行きましょう」
男「ん、そうだね。そうしようか」
男「今日はいつもより昼ご飯食べるのが遅くなったから、夜ご飯あまり食べれないかもね」
許嫁「そうね。夜は軽く食べましょう」
•
•
•
許嫁「…必要なものはもう買ったかしら」
男「うん。そうだね」
許嫁「明日…うまく行くといいわね」
男「大丈夫。許嫁さんに教わったんだから」ハハ
男「…今日は、本当にありがとう」
男「そう言われても…なにか御礼したいな」
許嫁「御礼…」
許嫁「…欲しいものが、あるわ」
男「欲しいもの?」
•
•
•
男「え、プリン、でいいの?」
男「プリンだけでいいの?」
許嫁さんに遠慮させちゃったかな
確かにあまりお金はないから、高いものはまだあげられなかったけど…
許嫁「別に遠慮なんてしてないわ。…プリンがいいの」
男「! うん、わかったよ」
プリンを自分の分も入れて2つ買った
基本食費は許嫁さんがご両親からもらったお金でやり繰りしてるので、一応このプリンは俺からのプレゼントってことにはなる
男「さて、帰ろうか」スタスタ
許嫁「…待って」
男「ん?」ピタ
許嫁「少し、休みましょう」
買った物は2人で分けて持っているとはいえ、許嫁さんは女の子だ
もう少し気を配らないといけないな
男「ごめん、ずっと立ちっぱなしだったしね」
許嫁「あそこで、休みましょう」
家にはまだ半分ほど距離があるが、近くの公園で休むことにした
男「あっ…この公園は…」
たしか前にもここで許嫁さんとプリンを食べたっけ…
あのときは緊張してて、よく周りを見てなかったけど、高台の上にあるこの公園は見晴らしが良くて、いい所だ
男「うん」
許嫁「買い物に行く帰りにはよく来てたわ」
許嫁「…寂しくなったときも、落ち込んだときも、ここに来て、よく独りで景色を眺めてたわ」
男「…そっか」
男「でも、今は俺がいるし、独りじゃないだろ」ニコ
許嫁「!…そうね」クス
男「プリン、食べようか」ガサガサ
許嫁「ええ」ニコ
・
・
・
男「美味しいね」パク
許嫁「ええ」パク
男「本当に、プリンで良かったの?」
許嫁「…ええ」
本当は、ただここに2人で来れれば良かったのかもしれない
私は、独りじゃないって実感したかっただけかもしれない
許嫁「!…うん」ニコ
男「!」ドキ
男 「これで、御礼出来たかな?」
許嫁「充分よ…ありがとう」ニコニコ
許嫁「もう少し、ここにいたいわ」
男「うん、付き合うよ」
日が落ちていき、暗くなっていく
俺と許嫁さんは、月が見えるようになる頃まで、その公園にいた
街の夜景は、とても綺麗だった
男「寒くなってきたし、帰ろうか」
許嫁「ええ」
男「うー寒い」
許嫁「…風邪は引かないでね。看病するのは私なんだか…くちゅん!」
男「…」
可愛いくしゃみだな
許嫁「…なにかしら」
男「看病してあげようか?」ニヤニヤ
許嫁「…うるさいわね//」
今日の夕飯は、温かいうどんだった
許嫁さんがデザートにおしるこを作ってくれた うまかった
許嫁「…ふあ」ムク
許嫁「…」スタスタ
許嫁「…」カキカキ
・
・
・
男「…ん」ムク
男「ねむ…許嫁さん…は、いないのかな」スタスタ
テーブルの上に二枚の紙と、お弁当、それに朝食が置いてあった…
とりあえず片方の紙を見てみた
男「どれどれ…」
『今日は、いつもよりかなり早く行かなくてはいけないので、先に行ってます。
お弁当、忘れないでね。あと、朝食はしっかり食べるように。
すこし心配だったので、昨日のハンバーグのレシピを書いておきます。忘れたら見ること
』
男「…」ジーン
男「はっ、いかんいかん感動してる場合じゃねぇ」パクパク
男「許嫁さん…本当にありがとう」
男「いってきまーす」バタンガチャガチャ
許嫁さんには頭が上がらないな
男「…ふぅ」スタスタ
一時間目はなんだったかな
…トコ…
英語だっけな うわやっばい単語テストじゃん
…トコク…
しかも二時間目世界史かー だるいな
「男くん!」
男「うおっ?!」ビクゥ
女「オハヨー どうしたの?ずいぶん考え事してたみたいだけど」
男「えっ、あー、いや単語テストのことをね…」ハハ
女「あっ今日だっけ?!やばーい」
女「って、そうじゃなかった。今日の調理実習、よろしくね?」
女「ふふ、頼りにしてるね♪」
男「!…おう」
大丈夫だ 許嫁さんがあれだけしてくれたんだし、失敗するわけにはいかない
キーンコーンカーンコーン
女「げっ、まずい、遅刻しそう!走るよ!」ダッ
男「…」
女「男くん?遅刻するよー」
男「!! やっべ」ダッ
先生「HRを始めるネ」
ダッダッダッダッダ
女「あっぶなーい、セーフセーフ♪」
男「ギリギリだったな…ハァ…」ゼェゼェ
先生「2人仲良くギリギリネ いい度胸してるネ」
男「す、すいません」
女「ごめんなさい♪」
男「」ピクッ(殺気…?!)
先生「まぁイイネ。とりあえずHRするネ」
ガヤガヤ
友1「…」クチャクチャ ←ガム噛んでる
友2「…」バルンッバルンッバルルルルッ ←チェーンソー担いでる
友3「ヒャッハー!」←モヒカンになってる
いつからこのクラスは世紀末になったんだ
友1「ニイチャン、元気してたかい?ヘッヘッヘ」クチャクチャ
友2「怖がらなくていいんだぜ?ちょっとばかし、痛い目に会うけどなァ…ヘッ」バルルルル
友3「血祭りだァッ!!」ヒャッハー!!
先生「違反物は没収ネ。放課後私の所に来るネ」
友123「はい、すいません」
男「…」
友1「で、今朝は女ちゃんと仲良く登校かよ?!」
友2「この前までは、許嫁さんを妄想したり、DT丸出しだったのに…」
友3「悲しい…悲しいよ男。俺達は桃園の誓いを立てた仲だというのに…」
《桃園の誓い》
我ら、生まれた時は違えど、常にリア充を憎む志に嘘偽り無し。共にリア充殲滅に魂を捧げん(以下省略)
男「いや、知らねーよ!!なんだその誓い!!」
男「なら、自分で積極的に話しかければいいじゃねーか!」
友1「それが出来ねーから、誓いを立てたんだろーが!!」
男「だからなんなんだよその誓いは!」
ワーワーギャーギャー
女友「男子って馬鹿だねー」
女「うん、そうだね♪」
•
•
•
先生2「じゃあ調理実習始めマース」
男「…」
いよいよだな…
先生2「班ごとに頑張ってハンバーグ作ってくださーい」
女友「ヨロシクネ」
男「うん。だけど、今日はハンバーグくらいしか教えてあげれないけど、いいの?」
女「うん。ハンバーグは誰でも好きだし、マスターしときたいからね」
女友「オトコ受けもいいしねー」キャハハ
男「よし、じゃあ作ろうか!」
・
・
・
女「よーし、みじん切りだー」
男「…」トントントン
みじん切りはこの前慣れたし、なんか楽しいな
女友「おー上手いじゃん!」
友1「…」
男「!、速い!!」
女「すごーい」
友1「ふっふっふ」トントントンザク
友1「ぎゃああぁあ!」ブシュー
男「おいおい大丈夫か!?」
先生2「保健室行こうか」
友1「うー、クソ、慣れないことはするもんじゃねーな」
友2「と、友1…お前…そこまで…」
友1「気に…すんな…ガフッ…誓いを…果たそうとしたまで…」
友3「漢だよ…お前は。かっこよかったぜ」
友1「どうやら…俺はここで…リタイアみたいだな…」
友1「あとは…頼んだ…ぜ」ガクッ
友2「と、友1ぃぃぃぃぃい」
男「早く保健室いけよ」
男「ん?どうかした?」
女「えへへ…私、普段全く料理しないからさ。まず、包丁の使い方がわからなくて…」
男「あ、そうだね。確かに今のままやると友1みたいになっちゃうかもね」
男「包丁は、こう、握るんだよ」ギュッ
女「!!」ドキ
男「…あ、ごめん」パッ
許嫁さんに教えて貰ったときもこんな感じだったっけ
女友「男くん、大胆ダネー」キャハハ
女「き、気にしないで!そ、それでこの玉ねぎをみじん切りすればいいのね?」アセアセ
男「うん、そんな感じかな」
その後も時々、メモを見つつ、うまくハンバーグをつくることが出来た
各班が作ったハンバーグは、みんなで試食して、評価していく
女友「うん、やっぱり男くんの照り焼きハンバーグが一番美味しいかも!!」
女「うん!あとこのチーズが入ったハンバーグも美味しい!!」
男「本当だ!うめぇ!」
友2「ふっふっふ」ドヤァ
男「もしかして、お前が作ったの?」
友2「まぁ料理くらいは紳士の嗜みとしてマスターしているからね」ドヤァ
ーこの男、この学園の十傑第7席の実力者である-
男「他のメンバーは誰?」
友2「いや、俺だけだ」
男「なんで7番目なんだよ!!」ガビーン
友2「ふっふっふ、直接対決は避けられないな」
男「悪いけど、俺のハンバーグが負けるわけがないぜ!」
なんたって、許嫁さんに教わったやつだからな
先生2「候補が2つに絞られたので、投票して決めましょう」
友2作<チーズin極上ハンバーグ~天にも昇るハーモニー~>
or
男作<絶品照り焼きハンバーグ>
ガヤガヤ ザワザワ
「味は互角だけど、照り焼きハンバーグの方が着飾りがなくて、好きかも」
「確かにね。名前からしてチーズハンバーグなんか気取ってるし」
友2「」ガーン
ザワザワザワザワ
先生2「照り焼きハンバーグに決定しました」
オメデトーワーワーガヤガヤ
友2「…負けたよ、完敗だ。…十傑の座は君に譲ろう」
男「いらねーよ!!どうせ1人しかいねーじゃんか!!」
女「男くん、やっぱ凄いねー♪」
男「ありがとう、女さんも包丁とか、色々飲み込みが早くて、ビックリしたよ」
女「ありがとー♪」ニコニコ
友2「」ガックリ
女友「友2くんって料理出来たんだねー」
友2「!?、あ、まぁね」
女友「凄いなー。尊敬するヨ」
友2「あ、ありがと」ハハ
友3(いつもそう。いつも俺だけ何故か余るんだよ…そういう星の元に生まれたのかな)
なんとか、うまくいって良かったな…
今日は許嫁さんにプリンでも買って帰ろうかな
女「…あの、男、くん」
男「ん?」
女「…また、教えてくれる?」
男「うん、もちろんだよ」ニコ
女「!…えへへ、ありがとう///」
男「うん」
今度から許嫁さんが料理作ってるところを見してもらうことにしようかな
•
•
•
<昼休み>
友1「再び地上に舞い降りた天使」ドヤァ
男「いや指、包帯グルグルで全然決まってねぇよ!」
友1「わかってないな…この包帯がいいんだろーが」
友1「どうしたんだよお前…」
男「?」
友3 (ダメージがデカすぎたようだな…)
•
•
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《下校時刻》
男「ふぃー、さて、帰るか」ガタッ
女「男くん!ちょ、待って」
男「ん?どうしたの?」
女「今日の御礼…したいからさ、あの、マックとか行かない?」
男「え、あー、いいよ」
友1「やっぱあいつ許せん」
友1「なぁ友2?」
友2「もっと料理練習するかな…」ブツブツ
友1「本当に大丈夫かお前」
女「あ、ちょっとこの後委員会あるけど、すぐに終わるから教室の前で待っててね」
男「うん、でも御礼なんていらないって」
女「いーの、いーの。じゃあ私行くね♪」
男「おう」
女「♪」スキップスキップ
友1「断罪の時間だ…」スッ
友3「神の裁きを受けよ…」スッ
男「お、お前らいたのかよ」サー
メガネ「おいお前ら部活始まってるぞ」
友1「やべ!忘れてた!」
友3「チッ…命拾いしたな」
友3「だるいな」
男「俺は女さんとマック行くわ」
「「死ね」」
「「「じゃあなー」」」ダッダッダ
男「おー。また明日」
男「さて、待ってるか」
・
・
・
男「へー、こんな感じなんだな」
ガヤガヤ ガタッ オツカレーサヨナラー
男「おー、終わったみたいだな」
女「男くんお待たせー♪」
男「おう」
許嫁「ええ。またあし…た」ピタ
男 許嫁「!?」
女「ん?あ、そういえば2人とも、知り合いだって言ってたねー」
男「ま、まぁな」アセアセ
許嫁「ええ…」アセアセ
女「許嫁ちゃん、男の子ニガテなんじゃなかったっけ…あ、もしかして2人は!」
男 許嫁「」ビクゥ!!
女「幼馴染み…ってやつか!?」
男「え、あ、うん、まぁそんな感じ」ホッ
許嫁「別に、深い仲じゃないわよ」ホッ
女「そうなの?…やった」ボソ
許嫁「!」
男「安心したら腹減ったよ…」グー
許嫁「あの…私、行くわね」
許嫁「ええ…」スタスタ
男(なんか疲れた…)グー
女「あ、お腹空いちゃった?ごめんごめん。行こっかー♪」ニコニコ
男「お、おう」ドキ
•
•
•
許嫁「…」スタスタ
なんなのかしら。この気持ちは。
モヤモヤするわね…
女さんと男は、付き合ってるのかしら
私は…邪魔なのかしら
許嫁「…」スタスタ
私はなんで…悲しいのかしら
女「でしょー。学生の味方だよねー♪」モグ
男「うんうん」モグモグ
マックなんて久しぶりだな…
最近はいつも、許嫁さんの料理食べてるからな…
…トコ…
あ、今日プリン買って帰るんだったな…
…トコク…
喜んで、くれるかな
「男くん!」
男「え、あ、ごめん」
女「もー!」プク
男「昔から考えごとしてると、周りが見えなくなっちゃってね…」アセアセ
女「なにを考えてたの?」
男「へ?」ドキ
女「もう、せっかく2人きりなのに…」プク
女「せっかくの御礼なんだから、もう少し…」
女「私を、見てくれないかな」ジーッ
男「」ドッキーン
男「え、あ、み、見る見る」ドキドキ
女「ふっふっふー、焦りおってー、参ったかー♪」
男「ま、参ったよ。ちょっとトイレ」アセアセ
からかわれてるんだろうけど…ちょっとドキッとしちゃったよ俺…
男「じゃあ行ってくる」ダッ
女「うん♪」
女「…」
女「少しはドキドキ、してくれたかな…///」
私は、彼のことをどう思っているのかしら
前に聞かれたときは、たしか弟みたいな存在だって言ったわね…
たしかに、それも間違ってないけれど…
許嫁「…」
•
•
•
男「あ、もうこんな時間だわ」
女「!! お母さんに怒られちゃう…」
男「じゃあまた明日」ダッ
女「うん、また明日!今日はありがとう!」
男「おーう」ダッダッダ
女「…」
女「私って、こんな、惚れやすかったっけな///」
男「あ、プリン買ってかなきゃ」ダッダッダ
•
•
•
許嫁「…ふぅ」
彼が来てから、1人でいることはかなり少なくなったし、楽しくなった…
世話を焼いてあげなくちゃいけないこともあるけれどね
許嫁「…」クス
正直、とても助かっている。だけど、それだけだったら、彼じゃなくても、誰かに近くにいてもらえれば、いいんじゃないかしら
許嫁「自分でも、よく分からないわね」ハァ
男「ただいま!」ガチャ
許嫁「!…遅かったわね」
男「ごめんごめん、待った?」
許嫁「…別に」
許嫁「…」プイ
なんでこんなにモヤモヤするのかしら
彼に当たってもしょうがないのに…
男「なんか、ごめんね?お詫びっていうかさ、プレゼントでプリン買ってきたからさ」
許嫁「!」
男「許してくだせぇ、お代官様」ガバッ
許嫁「…」クス
許嫁「…ふふふ」
悩んでても仕方ないわね
馬鹿らしく思えてきたわ
許嫁「もういいわよ、ふふ。顔を上げなさい」
男「…人の土下座見て笑うなんて、いい趣味してますね」
許嫁「あなたがいきなり馬鹿みたいなことするからじゃない」クスクス
許嫁「…本当に、馬鹿ね」ニコ
この笑顔は卑怯だよな、まったく
…土下座1つで見れるなら、安いもんか
許嫁「夕飯…食べれる?」
男「大丈夫」(けっこう満腹)
許嫁「じゃあ、食べましょうか」
•
•
•
男「うぷ…」マーンプック
許嫁「不味かったかしら」
男「いや…美味しかったよ」ゲプッ
男「…うっぷ」ヨロヨロ
男「…」グデーン
許嫁「あ!ちょっと、そこで寝ないで」
男「…zzZ」
許嫁「…」スタスタ
許嫁「…」ポスン
男「ZZZ」スヤスヤ
許嫁「…1人でプリン食べたって、しょうがないじゃない」ツンツン
男「…んむぅ」スヤスヤ
許嫁「…ふふ」
許嫁「…」ポチ
《藤原ポッターと希望の船》
帽子「…ふーむ、お前の組は…」
藤原「スリザリンは嫌だ、スリザリンは嫌だ…」
帽子「帝愛地下帝国~!!」
藤原「なんでだよぉぉぉあぁぁあ」
藤原「やめろよぉぉぉおだずげでぇぇえ」
許嫁「…つまんないわ」ポチ
藤原「は~やっと山頂ですね」
スタッフ「叫んでみたらどうですか?」
藤原「そうですね。ちゃんと返ってくるかな」
藤原「やっほーーーー!」
『帝愛地下帝国行きーー!」
藤原「なんでだよぉぉぉお」
黒服「来い」
藤原「だれだよお前ぁぁぁぁあだずげでぇぇぇぇえ」ズルズル
許嫁「…」ポチ
・
・
・
男「ん?寝てた、か」ムク
許嫁「…すぅ…すぅ」スヤスヤ
男「…なんだこの状況」
許嫁「…すぅ…すぅ」
男「…おーい、許嫁さーん、風邪引くよー」ユサユサ
許嫁「んぅ…いやぁ…すぅ…すぅ…」
男「」
なんだこの可愛い生き物は
許嫁「…すぅ…すぅ…ん」ムク
男「…お目覚めですか?」
許嫁「?!」バッ キョロキョロ
許嫁「あ…寝てしまったのね」ハァ
男「…」
許嫁「…私の寝顔、見たでしょ」
男「うん、ごめん」
許嫁「…最悪」ガックリ
許嫁「!…フォローになってないわよ//」
男「ごめんな…」
許嫁「…プリン、持ってきて」
男「あ!そうだった忘れてた」
•
•
•
男「ほい」
許嫁「…ありがとう」
男「テレビでもつけよう」ポチ
《藤原竜也、海を見る》ババーン
許嫁「…またこの人」
男「wwwww」ゲラゲラ
男「めっちゃ面白いww腹筋がww」ゲラゲラ
許嫁「…」クス
『まだがよぉぉおぁぁぁあぁあ』
男「ひぃーっ、ひぃーっ、www」ゲラゲラ
許嫁「…」クスクス
男「お!クールな許嫁さんが笑っている!やっぱ面白いよねコレ っwwww」ゲラゲラ
許嫁「…そうね、ふふ」
あなたを見てる方が面白いわよ
・
男「そろそろ寝ようかな。はぁ~今日は疲れたよ」スッ
許嫁「…前から思っていたけれど、あなたはいつ勉強してるのかしら」
男「勉強?あー勉強はテスト前くらいしかしないかな。許嫁さんは真面目だねHAHAHA」
許嫁「…期末テスト来週の月曜日からよ」
男「?!」
男「じ、冗談キツイぜHAHAHA」
男「……やばい」
許嫁「…」
男「やばいよやばいよ!今日が木曜日だからもう全然時間ないよ!」ガタガタ
許嫁「…」
男「あー、最近忙しかったから、もうすっかり忘れていたよ!!」
許嫁「…落ち着いて」
男「……とりあえず、明日から本気出す!」
許嫁 (絶対、やらないわね)
許嫁「…ん」ムク
許嫁「…」スタスタ
許嫁「…」トントンパチパチジュー
男「…ふぁ」ムク
男「…ん、いい匂い」
男「許嫁さん、おはよう」
許嫁「おはよう」
男「今日は朝早くないんだね」
許嫁「ええ。朝食の支度が出来たわ。食べましょう」
男「うん」
男 許嫁「いただきます」
男「あ、いるいる」
許嫁「味は何がいいかしら」スッ
男「んー…鮭で」ヒョイ
男「…」パクパク
許嫁さんと暮らすようになってから、朝早く起きるようになったな
毎日朝飯を食べれるのがこんなに幸せなことだなんて…
男「…ふぅ」モグモグ
許嫁「味は…どう?」
男「ん?あ、最高だよ」パクパク
許嫁「…そう、よかった」
男「ごちそうさま」
許嫁「お粗末様です」ガチャガチャ
男「…めざましTVでも見るか」ピッ
『藤原竜也の運勢占い』バーン
許嫁「ごめんなさい、本を返し忘れていたから、先に学校行くわね」スタスタ
男「ん、いってらっしゃい」
『 藤原竜也「今日のラッキーアイテムはなんだろな」ドキドキ
【希望の船エスポワール】バンッ
藤原竜也「なんでだよぁぁぁぁあ」
黒服「乗れ」
藤原竜也「たずげでぇぇぇぁぁあ」完』
男「wwwww」ゲラゲラ
男「おっと、もうこんな時間」ピッ
男「行くか」
男「はぁー」スタスタ
家に帰ったら、勉強しないとな。家に帰ったら。
女「おはよー男くん♪」
男「ん?あ、おはよう女さん」
女「テスト勉強どんな感じー?わたし、ダメダメだよー」
男「俺なんて昨日まで忘れてたよ」
女「えー、そう言ってやってるくせにー♪」
男「やってないやってない」
女「わたし、昨日は疲れて寝ちゃったんだよね。やっぱり、1人じゃ出来ないのかな」
女「あ!ね、男くん、もし良かったら今日またマックで一緒に勉強しない?」
男「あー、良いけど、女友ちゃんとかとは行かないの?俺、馬鹿だからあんま役に立てないよ?」
女「同じクラスなんだから私だって馬鹿だよー。それに、男くんが良いの!」
男「うーむ」(今日は家で集中してやらないと、間に合わないかな)
女「…嫌、かな」ウルウル
男「い、嫌じゃない嫌じゃない。わかった。行くよ」ドキドキ
女「やったー♪えへへ//」
・
・
・
【01】「定例会議を始める」
【01】「ファーストチルドレンの動きはどうだ?」
【03】「報告によると、今日もクラスメイトの女子と登校、明らかに非リアに対してA.T.フィールド(近づきがたいオーラ)を出していた模様」
【01】「許せんな…」
【02】「このままでは、我らの人類未完計画に支障が出るぞ」
【03】「クソ…ファーストチルドレンめ」
男「誰がファーストチルドレンだ!」
友1「出たな!非リアの敵!!」
友3「朝は見せつけてくれたな!」
男「いちいちめんどくせー奴らだな」
女友「友2くーん、ちょっと来てー」フリフリ
友2「なになにー♪」ケロッ タッタッタ
友1「…」
男「…どうしたのあいつ」
友3「昨日仲良くなったんだとー」
男「ほー」
友1「Shit!」
・
・
・
《放課後》
男「ふぃー」ガタッ
テスト前だからか、授業中もピリピリしてたな
女「男くーん、行こー♪」
男「おー」
女「ち、違うよ!!勉強するの!もう!!」プンプン
女友「アンタも積極的だねー」ボソボソ
女「う、うるさい//」
女「行こっ、男くん」グイッ
男「うおっ、ちょっと待って」ドキ
女友「頑張れよー」フリフリ
《某意識高い系カフェ》
女「やっぱり連日マックじゃ飽きるからね」
男「ん、そうだな」
女「じゃあ勉強しよー♪」
男「よっし、俺世界史やるわー」(さすがに真面目にやらないと赤点になるしな)
女「えっ」
男「…」ブツブツ カリカリカリ
教え合ったりとか、したかったのにな
女「数学やろ」カリカリカリ
男「…」カリカリカリ ブツブツ
世界史の範囲、多すぎるだろ
毎回思うけど、日本史にすりゃ良かったよ…
男「…はぁ」カリカリカリ
・
・
女「……?」カリカリカリ ピタ
男「…zzZ」ちーん
女「…」クス
女「ほら起きてー。もう少し一緒に頑張ろー」ツンツン
女「やっぱり、男くんも1人じゃダメだねー」ムッフー
女「しょうがないなー。一緒に英語やろー」ニコニコ
男「…なんか嬉しそうだな」ハハ
Go to fuck yourself 「一昨日来やがれ」
これは必出単語だよー
おー 覚えとこ
ガヤガヤ
男「んー…英語は意味不明だな」ポリポリ
女「だいじょーぶ、私得意だから!」
女「あっ、ここは仮定法だからー…」ズイ
男「!!」(近い、近い)
女「聞いてるー?」ジッ
男「う、うん聞いてるよ」ドキドキ
女「あ、そこは逆説だから!…」ズイ
男 (めっちゃいい匂いする)
男「ごめんごめん集中するよ」ドキドキ
女「でね、そこは修飾されてるから…」ズイ
男「!!」
女さんが前かがみになった瞬間、俺の目には天国が映った
・
・
・
女「…具合、悪いの?」
男「いや…ちょっと、疲れただけ」
女「あはは、そんなに集中してないくせに♪」
男「ハハハ」(一瞬、意識が飛んだぜ)
男「な、なるほどー」(まったく集中出来なかった)
女「わかった?」
男「お、おう、バッチリよ」
女「うんうん♪」
男「んー…お返しになんか教えてあげるよ」
女「本当に?! えと…じゃあ数学…かな」
男「数学か。得意科目だから大体は教えられるよ」
女「えっとさっきやってわからなかったところがあって…」
女「う、うん」(近いよー///)
男「そんで…そう、メネラウスを使うんだよー」
女「へ、へー」(頭に入ってこないよ//)
男「あ、これは難しいね。うーむ…」
女「…あ、これは先生がね」ズイ
女 「…!」ハッ
男「!!」ハッ
男 女 (いつの間にかめっちゃ近い!!)
女「ご、ごめん!」バッ ドキドキ
男「お、おう」ドキドキ
女「…///」
男「…///」
まずい…このペースじゃ、心臓が破裂する!!
・
・
《なんやかんやで三時間後》
男「…」ゼェゼェ
女「…」ハァハァ
男 女(なんかめっちゃ疲れた…)
女「あ!もうこんな時間だね」
男「お、そうだな」
女「今日はありがとう!おかげで助かったよ♪」
男「俺も。英語なんとかなりそうだわw」
女「あの…男くん」
男「ん?」
女「そういえば…男くんのメアド、知らないなーって」
男「あ、そういえば、そうだな。交換する?」
女「!…うん!!」
ピロリロリン☆
女「ありがとう!えへへー///」ニッコニコ
男「お、おう」ドキドキ
女「今日から、おやすみなさいのメール、送っていい?」ニコニコ
男「」
女「あっ!ご、ごめん、調子に乗って気持ち悪いこと言って…」シュン
男「ハッ…いやいや、そんなことない!むしろ可愛いよ」
あやうくキュン死するとこだった…
なんだこの危険生物は…
女「か、可愛い…あ、ありがと////」カァッ
女「じゃ、じゃあ帰るね!ばいばい!」ダッ
男「…」ボーッ
男「あ!やべ、帰らねーと」ダッ
•
男「ただいま」ガチャ
許嫁「おかえりなさい」
許嫁「ご飯出来てるけど…」
男「あっ、食べるよ、ちょっと待ってて」
《自室》
男「…」ハァ
男「なんか疲れたな」ヌギヌギ
男「女さん…か」
男「おまたせ」スタスタ
許嫁「食べましょう」
男 許嫁「いただきます」
男「うめー」パクパク
許嫁「そう」パクパク
許嫁「…ねぇ」
男「…ん?」パクパク
許嫁「試験勉強、進んでる?」
男「」ビクゥ
許嫁「…あなた、今日も遅かったから」
許嫁「外で勉強してきたのかと思って」
男「うん、まぁ、そんなとこかな。女さんに誘われたから、カフェで勉強してた」
許嫁「!」
許嫁「…仲、良いのね」
男「うん、最近仲良くなった」
許嫁「…」
また、胸がムカムカする…
前まではこんなことなかったのに…
許嫁「…進んだ?」
男「正直…全然」
男「ハハ…まずいよね」
許嫁「…」
男「…」
男「あ、ごちそうさま。俺、勉強してくるね」
許嫁「…待って」ギュッ
男「!」(袖を…)
許嫁「明日…予定はある?」
男「うーんと、ないかな」
許嫁「じゃあ…私が、教えてあげる」
男「えっ」
男「いや、それは悪いよ。許嫁さんに迷惑かけたくないし…」
許嫁「試験対策はさっき終わったわ」
男「速い!」
許嫁「だから、私のことは、気にしないで」
男「でも…」
許嫁「…女さんとは一緒に勉強するのに、私とは嫌なの?」
男「!」
許嫁さんの瞳は少し潤んでいて、とても綺麗だった
男「嫌じゃないよ!むしろ…嬉しいよ…」
男「わかった。お願いしていいかな?許嫁さん」
許嫁「……はい」ニコ
さっきの笑顔でまた意識が飛びかけたよ…
まじで身が持たない…
男「…ふぅ」チャプン
男「…」ザー バシャバシャ
・
・
許嫁「…」
ついさっきも何故か胸が苦しくなって…
多少強引に誘っちゃったけど、彼に迷惑かけちゃったかしら…
許嫁「…」ハァ
男「ふー」ホカホカ スタスタ
男「いいお湯だったよー」
許嫁「…そう」
男「…ふぅ」ボスン ポチ
《藤原竜也vsマイク・タイソン》ババーン
許嫁「…」
『藤原竜也!果敢に攻め込む!』
『しかし、相手は世界の超人!なかなかガードを崩せない!!』
男「…」
許嫁「…ねぇ」
男「…ん?」
許嫁「明日…私が勉強を教えてあげることになったけど…」
男「あ、やっぱりダメ、かな?」
許嫁「ち、違うの…さっきは、その、強引に誘っちゃったから…」
許嫁「…迷惑、じゃなかった?」
男「え?いやいや全然!!むしろ助かった!!」
男「迷惑かけてるのは、こっちの方だしね!」
許嫁「…よかった」
男 (なんか機嫌いいな…)
『藤原竜也、必殺技の垂直落下式DDTを狙いに行くぅぅう!』
男「…」ボーッ
許嫁「ところで、今日はもう勉強しないの?」
男「」ギクゥ
男「明日から、本気出します…」
許嫁「昨日もそう言ってたじゃない…」ハァ
男「うっ…それを言われると…」
許嫁「…」
男「…」ダラダラ
許嫁「…しょうがないわね、明日からはもう遊ぶ暇なんてないからね」
男「!」
男「も、もちろん!」
許嫁「約束、ね」ユビキリ
男「お、おう」ユビキリ
許嫁「…ふふ、あなたって、ゴロゴロ過ごすのが好きなのね」
男「むっ…大抵の高校生はそんな感じだよ。むしろ、許嫁さんが真面目すぎるんだよ」
許嫁「あら、怠け者よりはずっとマシだと思うわ」
男「ひどいな~」ハハ
許嫁「…♪」
こういう時間も、悪くないわね
『ワン!ツー!!スr ガバッ 返したぁぁぁあ!!』
男「おぉー」
許嫁「…♪」パクパク (←プリン食べてる)
男「あっ!ずるいよ許嫁さん」
許嫁「ふふ、あげないわよ」
男「むっ…」
許嫁「…冗談よ、冷蔵庫に入ってるわ」
男「わーい」ダッ
許嫁「…♪」
そんなこんなで、楽しい金曜日の夜は終わった 次の日から地獄の特訓が始まることを、このときの俺は知らなかった
チュンチュン
男「…ぐぅ…すぴー…」zzz
許嫁「…」スタスタ
許嫁「起きて」ツンツン
男「んごー…すぅ…」zzz
許嫁「ねぇ、起きて」ユサユサ
男「んんっ…許嫁、さんか」ムク
男「あれ今日は土曜日じゃん…もう少し…寝かせてよ」ドサ
許嫁「ダメ」ペシペシ
男「いたっ、わ、わかったよ起きるよ」ムク
許嫁「とりあえず、朝食を済ませましょう」スタスタ
男「ん…」ボーッ
男「あれ、メール…」カチカチ
女【おやすみなさい♪】
男「【返信遅れてごめん、おはよう】っと…」カチカチ
男「さて…」スッ
ブーッブーッ
男「ん?」
女【おはよ!よかった、ちゃんと届いてたんだ~。少し安心した!!笑】
男「速いな」ハハ
男「【ごめんごめん笑】っと」カチカチ
男「朝から女子とメール…なんか新鮮だな」フッフッフ
許嫁「…なにニヤニヤしてるのかしら。冷めちゃうから早くしてほしいのだけれど」
男「あ!ごめんごめん」スタスタ
《朝食後》
男「ふぅ~ごちそうさま」
許嫁「お粗末さま」ガチャガチャ
『超ヒーロータイム!!』バン
『借金戦隊、クズレンジャー』パララー
男「…」ボーッ
『 藤原「あの野郎!サイに仕掛けしやがったな!」
藤原「許せん!変っしn』ピッ
男「あっ」
許嫁「もう…すぐダラダラしないの」
許嫁「ほら…部屋で勉強するわよ」グイ
男「わ、わかりましたよ!袖引っ張らないで!」ズルズル
男「お、おう」
久しぶりに入ったな、許嫁さんの部屋
女の子の部屋ってなんでこんな甘い香りがするんだろ
許嫁「座って」スッ
男「おう」スッ
許嫁「…なにから教えましょうか」
男「うーん…とりあえず古典からでいいかな?」
許嫁「ええ…いいわ」
・
・
許嫁「…だからここは、受身の意味があるのよ」
男「助動詞は無理だよー」グタ
許嫁「すぐ諦めない」ペシペシ
男「…!」
許嫁さんと俺の距離は当然近い
そして俺が机にうなだれていて、許嫁さんが俺の頬をペシペシしている…
男「…!!」
その時、俺は気づいた…
この体勢、許嫁さんの胸がめっちゃ近い!!
ざわ…ざわ…
俺の中で理性と本能が激しく衝突する…
かつてアダムとイブは禁断の果実に口をつけ、楽園を追放されたという…
男「禁断の…果実…楽園…追放」
許嫁「寝ぼけてるの?」ペシペシ
男「ハッ…いかんいかん、集中せねば」バッ
許嫁「あ…起きた」
昨日も偶然とはいえ、女さんの胸元バッチリ見てしまったからな…
免疫が出来ていたのか…
許嫁「?」
男「ごめんごめん、再開しよう」
・
・
許嫁「…ふぅ」
男「疲れたねー」
時計を見るともう夕方だった
この時間で古典と英語を教えてもらった
許嫁「そうね。でもまだまだ全然あるわ」
男「むー…だけど、乗り切れば夏休み、か」
許嫁「そういえば…そうね」
男「楽しみだ…」
許嫁「そうね…」
男「…」
許嫁「もう少し、頑張りましょうか」
男「…うん、ありがとう」
《期末試験終了後 成績表返却日》
ワイワイ ガヤガヤ
友1「今回どんな感じ?」
友2「英語死んでるからなー、あー、今回やばいかもなー」
友2はいつもこう言うが、大抵一番成績が良いのはコイツだ
友3「男、なんか余裕そうだな」
男「う~む、まぁ、やるだけやったしな。悔いは無い」
友1「なんだそれガリ勉かよ」
先生「では、成績表返すネ。青木!」
ガヤガヤ ワイワイ
友2「あれー、今回はたまたま運が良かったのかなー」
友2「英語92点だわwww」ドヤァ
いるよね、こういう奴
先生「男」
先生「頑張ったな」ポン
男「?…おっ」
先生「今回のテスト、クラス順位1位は男くんデス」
オー オー オトコガイチバンカー ヤルナー ガヤガヤ
女「男くん凄いねー♪」
男「お、おう、ありがとう」
友1「お前ほんと最近どうしたんだよ」
友3「いつの間にガリ勉に…」
友2「」
男「…」ハハ
許嫁さんに、早く報告したいな…
だけれど、中間に比べれば成績はずっと良くなったので、これで胸を張って許嫁さんに報告出来る…かな
《昼休み》
男「よし」ガタ
真っ先にでも許嫁さんに報告したい気分だったので、A組に向かうことにした
《A組》 ガヤガヤ ワイワイ
女子生徒「やっぱ許嫁ちゃんとイケメン君は凄いねー」
女子生徒2「うんうん、毎回2人で学年首位を争ってるよねー」
許嫁「…別に、そこまでじゃないわ」
イケメン「今回は俺の勝ち、だね」
許嫁「…次は負けないわ」
イケメン「臨むところさ」ハハハ
許嫁「…そういう訳じゃないわ」
女子生徒2「でも実際、2人がダントツだしねー」キャハハ
男「…」
凄い会話を聞いてしまったな
…こんな順位じゃ、報告出来ねーな
男「…」クシャ スタスタ
許友「アンタも毎回凄いね」
許嫁「毎日復習と予習はしてるもの」
許友「アタシも負けてらんないかも」
許嫁「…」
彼…どうなったかしら
女「男くん、隣、いい?」
男「ん?あぁ、いいよ」
女「どうしたの?1位取ったんだから、もう少し喜びなよー」
女「私、今回も散々だったー。バカだよねー」ハハ
女「…」
女「なにか、あった?」
男「ん?あ、大丈夫大丈夫」
女「…男くんは、やればできるんだから、もっと自信持たないと!」
男「!…優しいね、ありがとう」ニコ
女「!」ドキ
女「私で良かったら、相談に乗るからね」
男「おう、頼りにしてるよ」
女「うん…//」
男「…ただいま」
許嫁「おかえり」
男「疲れたよ」フゥ
男「…」スタスタ
許嫁「…」
うまくいかなかったのかしら…
《自室》
男「これ…どうしようかな」
男「…とりあえず、机の上に置いとこ」
男「…」スタスタ
許嫁「…」トントントン チラ
男「…」ボーッ
許嫁「…」トントントン
やっぱり…落ち込んでるのかしら
・
・
男「ふー、良いお湯だった」ホカホカ
男「テレビでも、見るか」ポチ
『ラグビー 日本代表vs南アフリカ』バン
『 日本代表、引き分けではなく、勝ちを目指しに行く!!』
『キックではなく、スクラムを選択したぁぁぁあっ!』
『大ニッポンコール!!』
男「おぉー」
許嫁「…」ジーッ
どうにかして、慰めてあげないと…
男「おっ、おっ」
『あと少し!!パス!受け取ったのは、エース藤原竜也!!》
『行けぇぇぇえ藤原、行けぇぇぇえ!!』
男「おぉぉっ」
『タッチダゥゥゥウン!!藤原がこじ開けた!!日本大金星ーー!!』ワーワー
男「おーすげー」
許嫁「…うーん」
男「ん、そろそろ眠くなってきたから、寝るね許嫁さん」
許嫁「…!」
男「おやすみ」スタスタ
許嫁「え、ええ、おやすみ、なさい…」
許嫁「…」
《男の部屋》
男「…すぅ…すぅ」スヤスヤ
コンコン ガチャ
許嫁「…もう寝てしまったかしら?」
男「…すぅ…んっ」スヤスヤ
許嫁「…」
許嫁「…?」(机の上にクシャクシャな紙が…)
許嫁「…見る、わね」
許嫁「…」
許嫁「男…」
男「…すぅ…俺…もっと…」スヤスヤ
許嫁「?」
男「…がん…ばる…すぅ…から…」スヤスヤ
男「…すぅ…すぅ」スヤスヤ
許嫁「…」
許嫁「…」ナデナデ
男「…すぅ…んぐ」スヤスヤ
・
・
《翌朝》
男「んっ…」ムク
今日は一学期最後の日、終業式がある日だ
許嫁さんは委員会で明日の朝は早く出るって、昨日言ってたっけ…
男「あー今日で最後か…」
男「…とりあえず朝飯食うか」
机の上にクシャクシャになった成績表にふと目を向けた
そこには綺麗な文字でこう書かれていた
がんばったわね がんばって
男「…おう」ニコ
そんなグータラ生活を一ヶ月ほど続けて、最後の一週間で慌てて宿題をする
それが俺の夏休みの過ごし方だ。
ジー ジワジワジワジワ
男「…」
男「…暑いなぁ」ダラダラ
男「夏…だな」
ミーンミンミンミンミー
許嫁「…ただいま」ガチャ
男「おっ。許嫁さんが帰ってきた」
許嫁「…」スタスタ
許嫁「…また、ダラダラしてたのね」
許嫁「とりあえず、起きなさい」
男「はーい…」ムク
許嫁「…」 フゥ
男「…テレビでも、見ようか」ポチ
『~~~♪』
男「暑いな」
許嫁「…そうね」
テレビを見ていたら、藤原竜也がサーフィンをしていた。いつもならなんとも思わないが、俺はなんとなく思った
男「海…行きたいな」ボソ
許嫁「なにか言った?」
そう…今は夏休み真っ只中
なんだって出来る気がしていた
男「海…行きたい…」
男「いや…行く…行くんだ!!」スタッ
男「許嫁さん、明日、海に行こう!」
男「海だよ!海!!オーシャンブルー!!!」
許嫁「ちょ、ちょっと待って…急すぎてついていけないわ」
男「もしかして…山が良かった?」
許嫁「そういうわけじゃないわよ。…急にどうしたの?」
男「理由なんていらねぇ!!海が!俺を!!呼んでるんだ!!!」ザッパーン
許嫁「いつになく燃えてるわね…」
男「ダメ?」
許嫁「きゅ、急すぎるわ」
男「…そっか、ダメか」シュン
許嫁「ぁ……わかったわよ。準備手伝ってね?」
男「さすが許嫁さん!!」
許嫁「でも水着とかも無いわ…」
男「今から!買いに行こう!!」メラメラ
許嫁「すごいやる気ね…」
ガヤガヤ ワイワイ
男「おー。混んでるな」
許嫁「…そうね」
男「よーっし。俺も水着買ってくるわ」
許嫁「わかったわ」
男「じゃあまた!」タッタッタ
許嫁「…ふぅ(1人で選べて良かった。気が楽だわ)」
女店員「水着をお探しですかー♪」
許嫁「!…ええ、まぁ」
女店員「うーん、お客様はお若くて可愛いですし、ビキニとかどうですかー?」
許嫁「え、ええ、そうですね(よくわからないけど…)」
女店員「こちらです。どうぞー」スタスタ
許嫁「!?(なにこれ…布の面積が全然無いじゃない…)」
女店員「どうですかねー。お客様、彼氏さんとかいらっしゃいますぅ?」
許嫁「!…ま、まぁ、一応(彼氏…ね)」
女店員「これでバッチリ決めれば、彼氏さんのハートもガッチリ掴めちゃいますよー♪」
許嫁「!…(これを着たら、男は喜んでくれるかしら…)」
男『許嫁さん!!超似合ってるよ!』ニコ
許嫁「…///」
女店員「(なにこのお客さん、めっちゃ可愛い!!)」
女店員「どうしますか?他のタイプにします?それとも、挑戦してみます?」
許嫁「…頑張ります//」
許嫁「あ、ありがとうございます」
女店員「とりあえず、アンダーバスト測りますね…」
許嫁「は、測るんですか?!」
女店員「そりゃあ、水着を買うんですから♪」
許嫁「…わかりました//」
【測定中】
女店員「なん…だと…?!(着痩せするタイプだとは思ったけど、ここまでとは…)」
許嫁「あの…?」
女店員「お客様のスタイルが羨ましいです…彼氏さんは幸せ者ですねー♪」
許嫁「あ、ありがとう」
女店員「色はどうします?」
許嫁「え、あ…(色…)」
男「許嫁さーん」タッタッタ
許嫁「私は…色が決まらなくて…」
男「へぇ…どんなやつにしたの?」
許嫁「見ないで!」パッ
男「えーいいじゃないですかー」
女店員「色…どうします?」
許嫁「えーと…」
男「気になるなー…」
許嫁「…男、何色がいいかしら?」
男「ん?何色でも許嫁さんには似合うと思うけど…(久しぶりに名前で呼ばれたな)」
許嫁「…いいから選びなさい//」
男「んー…じゃあ、白で(白の水着…うん、イイ)」
許嫁「…白で、お願いします//」
女店員「はーい、わかりましたー♪(可愛い娘だなー)」
男「いやー…買えてよかったね、水着」
許嫁「…そうね」
男「俺が選んで良かったの?水着の色。俺、最近の流行とかわからないけど」
許嫁「…いいの(あなたに喜んで欲しいんだもの…)」
男「じゃあ家に帰ったら着て見せてよ」
許嫁「嫌よ…ヘン夕イ」
男「ひ、ひどいな」ハハ
許嫁「…♪」
男「…楽しみだね、海」ニコニコ
許嫁「……」
許嫁「私もすごく、楽しみだわ」ニコ
許嫁「忘れ物はない?」
男「大丈夫!」
許嫁「宿の予約はちゃんと取れてる?」
男「取れてる取れてる!(まさか許嫁さんが意外にノリノリで、泊まり込みで行くことになるとは…)」
許嫁「じゃあ行きましょう」
男「おー」
ガタンゴトン ガタンゴトン…
許嫁「この電車で3時間ほどで着くわね」
男「んー…昼は駅弁か」
許嫁「はい、幕の内弁当ね」
男「ありがと」
許嫁 男「いただきます」
ガタンゴトン ガタンゴトン…
男「景色が変わってきたね…」モグモグ
許嫁「そうね…」
男「旅行にいくって感じがして、いいね」
許嫁「ええ」
ガタンゴトン ガタンゴトン…
男「…すぅ…すぅ」zzz
許嫁「疲れちゃったのかしら?」クス
男「…すぅ…ふひ」zz
許嫁「幸せそうな顔してるわね…」
許嫁「…」ツン
男「んむぅ…」zz
許嫁「…♪」
許嫁「誰かと旅行……ね」
許嫁「…心地よいものね」
男「…ん」パチ
許嫁「…すぅ…すぅ」zzz
男「は、え…(なにこの状況!許嫁さんが頭を俺の肩の上に乗せて、寝てる!!)」
許嫁「ん…すぅ…」zzz
男「ど、どうしよ…(めっちゃいい匂い)」
許嫁「…すぅ…すぅ」zzz
男「…(可愛い寝顔だなぁ…こんな人が許嫁なんて、俺は幸せ者だな…)」
男「…(最近は許嫁さんに慣れたのか、気軽に接してたけど、前までの俺だったらこの状況、爆死してたろうなぁ…)」
男「…♪(とりあえず…もう少しこのままでも、罰は当たらないよな…)」
許嫁「…すぅ…すぅ」zzz
車掌「…お客さんはみんな降りたかな?」キョロキョロ
車掌「ん?」
許嫁「…すぅ…すぅ」zzz
男「…すぅ…にへ」zzz
車掌「…(幸せそうに寝てるな…カップルかな?妻との昔を思い出すな…)」
車掌「…かわいそうだけど、起こすか」
車掌「お客さん、終点ですよ。起きてください。」
男「…ん?」パチ
許嫁「…ふぁ」パチ
男「あ…着いたみたいですね。すいません降ります」
許嫁「ありがとうございます」
車掌「いえいえ。お二人で旅行ですか?仲良く寝ていらっしゃいましたが…」
男「ええ、まぁそうです」
男「う…見て、ないよ」アセアセ
許嫁「見たのね?」
男「許嫁さんだって、いつも見てるじゃないか」
許嫁「見るのは好きだけど、見られるのは嫌なのよ」
男「なんだよ、それ」ハハ
許嫁「…変じゃなかったかしら」
男「…え?」
許嫁「変じゃなかった?」
男「…(これは…)」
許嫁「…なにか言いなさい」
男「か、可愛かった、よ…//」ドキドキ
許嫁「そう…////」
男「…(言わせといて俺より真っ赤になるなよ…)」
車掌「…」
車掌「いえいえ、昔を思い出して、いい気分になりました…」ニコニコ
男「ありがとうございました。では…」
車掌「良い旅を!」
・
・
男「良い人だったね…」
許嫁「そうね…」
『か、可愛かった、よ…』
許嫁「…ふふ♪」ニコニコ
男「…(やっぱり、海が楽しみなのかな)」
男「おー!いい部屋だね!」
許嫁「そうね…海も見れるし…」
男「なんかオラ、ワクワクすっぞ」
許嫁「馬鹿なこと言ってないで、浮き輪膨らませて」
男「浮き輪?持ってきたの?」
許嫁「…ヨゲナ…」
男「ん?」
許嫁「泳げないの…!//」
男「」キュン
許嫁「悪い?海なんて連れてってもらったことないんだから、当然じゃない」プク-
男「ご、ごめん。そんなに怒らないでよ」アセアセ
男「…(そっか。許嫁さんの家はなにかと忙しいし、海も初めてなのか…)」
許嫁「……うん♪」ニコ
男「浮き輪は……まだ膨らませるのは早いと思うよ?ビーチでやればいいし。」
許嫁「……わ、わかってるわ」
男「…(思ったより、楽しそうで来たかいがあったな)」ニコニコ
ガヤガヤ ガヤガヤ
男「やっぱり、人がたくさんいるね」
許嫁「そうね…」
男「日焼け止めも塗ったし、浮き輪も膨らませたし…」
男「Here we go! Let’s パーーーリィ!!」
許嫁「落ち着いて」
男「ごめんなさい。許嫁さんも早くパーカー脱いで。海で泳ごうぜ」
許嫁「…わかったわ」パサ
男「…おっふ」
言葉では言い表せないほど、眩かった
許嫁さんはやはり絶妙にスタイルがいいし、このビーチにたくさんの水着お姉さんがいても、一際、いや、二際輝いていた
許嫁「あまりジロジロ見ないで…恥ずかしいわ//」
男「すげー似合ってるよ!最高だよ!!」
許嫁「そう…///」
許嫁「そう…///(頑張ったかいがあったわ)」
男「よし、じゃあ行こうか」
許嫁「ええ」
ガヤガヤ ガヤガヤ
DQN「カワイイコいるかなー」
DQN2「ん、おい、見ろよ」
DQN「え?うおっまじか!ちょーカワイイじゃんあの子!おᘄぱいでけーな」
DQN2「足細!なにあの子モデル?」
DQN「なんか冴えないやつ連れてるけど…まぁいいだろ。目を離すなよ。あれは上玉だね」
DQN2「よっしゃ、いいもん見つけたな」
ガヤガヤガヤガヤ
許嫁「気持ちいいわね」プカプカ
男「押してあげるよ」ザバザバ
許嫁「…♪」プカプカ
ガヤガヤガヤガヤ
男「海の家で焼きそば買ってきたよ」
許嫁「ありがとう」
男「やっぱ泳いだあとに食うと、すっげーうまいな」
許嫁「おいしいわね」
男「海…来てよかったね」
許嫁「そうね…」
男「…」
男「食べたら、また泳ごうか」
許嫁「私をまた押してくれる?」
男「もちろん」
許嫁「お疲れ様」
男「疲れたよ…」グッタリ
許嫁「私は楽しかったわ♪」ニコ
男「……なら、よかったかな」ハハ
許嫁「ジュース、買ってくるわね」
男「ありがと」
・
・
許嫁「…ポカリスエットでいいかしら」
DQN「お姉さん今1人?可愛いね」
許嫁「…?」
DQN2「俺達と今から遊ばない?」
許嫁「ごめんなさい、他の人と来ているの」
許嫁「!」
DQN2「あんなやつより、俺らといた方が楽しいって」
許嫁「私…あなた達みたいな人、大嫌いだわ。もう近づかないで…」スタスタ
DQN「…」
DQN2「なんだあの女…生意気だな」
DQN「いいねぇ…気が強いコは大好物だよ…」ニヤニヤ
DQN2「お前マジか…でもなんかイラッとしたし、手伝ってやるよ」
・
・
男「…(許嫁さんが遅かったから様子を見に行ったら…)」
男「…(ナンパされたのかな?)」
許嫁「…」スタスタ
男「許嫁さん、大丈夫?」
許嫁「…見てたのね」
男「うん、遅かったから様子見に来た」
男「そりゃナンパされるか…許嫁さん、綺麗だし…」
許嫁「…(違う…)」
男「男からしたら、当然ナンパしたくなるよなー…」
許嫁「…(違う…今聞きたいのは…そんなことじゃない…)」
許嫁「…ねぇ」
男「ん?」
許嫁「悔しかったり、しないの?」
許嫁「……聞き方がおかしかったかしら」
許嫁「次、また私が他の男の人にナンパされたりしたら…」
許嫁「助けに入ってくれる?」
男「それはもち…」
即答、するはずだった。
だけど、本当に俺は助けに入れるのか?
さっきだって、様子なんて見てないで、割り込めば良かったんじゃないか?
よくあるマンガの主人公みたいに、かっこよく守ってあげれば、良かったんじゃないか?
男「…」
許嫁「…」
言葉が、出なかった
言い切る自信が無かったんだ
俺はつい最近まで女子とろくに話せないチキンだったんだし、根本はなにも変わってないみたいだ
男「………」
情けない
男「………」
許嫁「……かっこ悪い」
男「………」
許嫁「………先に宿に帰ってるわ」スタスタ
男「………」
そりゃ当然、こうなるよな
嫌われちゃったな…
一緒に旅行に行ってくれるくらいまでは、仲良くなれたんだけどな……
それも当然か…
今の俺……すげー情けないし
男「……かっこ悪いな」ハハ
男「とりあえず…帰るか」
・
・
男「あれ?部屋が開かないぞ」
男「すいません、102の部屋の者なんですけど…」
ロビー「どうされました?」
男「鍵が開いてないんです。先にもう一人が帰ってると思うんですけど…」
ロビー「鍵ならまだ預かってますよ?お戻りになられてないかと。」
ロビー「とりあえず、鍵をお渡ししますね」
男「え、あ、ありがとうございます」
男「許嫁……まだ帰ってないのか?」
男「いや…戻ってないって言ってたし…」
男「……」
男「…探しに、行こう」スクッ
・
・
許嫁「…」
許嫁「……(私も子供ね。彼は悪くないじゃない。かってに期待してただけじゃない)」
許嫁「……」
許嫁「…………ばか」
DQN「おやおや、どうしたの?暗い顔してるけど」
許嫁「!」
DQN2「俺らでよかったら、朝まで相談に乗るよ?」ニヤニヤ
許嫁「あなたたち…昼間の…」
・
男「…」ハァハァ
男「…許嫁!」ダッダッダ
・
・
許嫁「…なにするつもり?あなたたちについていく気なんて微塵もないわ」
DQN「冷たいなぁ…彼氏くんとうまくいかなかったんだろ?俺らが代わりになってやるからさ」
許嫁「あなたたちが代わりになるわけないでしょ。私にとってなんの価値もないもの」
DQN2「コイツ……DQN、やっちまおうぜ」
DQN「…しょうがないか」
DQN「楽しいことだよ」
DQN2「まぁ大人しくしてろよ。痛くしないからさ」
許嫁「最低ね…嫌、来ないで」
DQN「逃げんなよ」グイ
許嫁「きゃっ、いや、やめて」
DQN2「あんだけ生意気な口叩いといてこれかよww」
許嫁「嫌…助けて……男……」
男「許嫁!!」ズダッ
DQN DQN2「!?」
男「…ハァ…ハァ…ハァ…」
男「…その娘から手を放せ」
DQN2「ぷっ、正義のヒーロー気取りか。かっこつけたくなるよなぁww」
男「うるせぇ…」
DQN「足、震えてるぜ?wwビビるくらいなら出てくるなよwww」
男「……」
DQN2「大体さ、お前気づかないだろうけど、彼女さんのスペックが高すぎて、まさに月とすっぽんなんだわww」
DQN「みっともないったらねぇよ。まぁ、ガキは身の丈に合ったブスとままごとしてればいいんだよ」
DQN2「じゃあ、そういうことで。彼女さんもらってくねーww」
男「ま、まっDQN「しつけぇ!」ドカッ
男「ぐおっ…?!」
許嫁「男!!」
DQN2「みっともない奴ww足がまだ震えてるぜ?弱いくせに楯突くなよすっぽんww」
DQN「そこで一生這いつくばってな」スタスタ
許嫁「い、いや!」
DQN2「はいはい行くよー」グイグイ
男「………」
確かに、月とすっぽん、だよな
みっともない、よな
俺なんかふさわしくないよな
男「…」ガシ
DQN「あぁ?!」
なんてな 今になってわかった
少年マンガの主人公たちもこんな感じだったのかな
DQN2「まだあきらめてねーの?」
男「……」
身体が勝手に動くんだ
諦めたくないって
それはきっと、放したくない繋がりだから
心地よい繋がりだから
男「その娘を…放せ」
男「その娘は…俺の…」
男「俺の…」
男「許嫁だ」
DQN「調子に乗んなよ!!てめぇこら!!」ガッ ドス
男「ぐっ、ごほっ」
許嫁「男!」
DQN「あーくそイライラするっ!」ドス バキ ゴッ
男「げほ、がっ、ごほ」
DQN2「や、やりすぎだって…」
男「…」ギロ
DQN「てめぇ!!いい加減に諦めろよ!!」ドカッ ドス バキ メキ
男「ぐっ、ごっ、がっ、がはっ」
DQN2「おい、もうやめろDQN!死んじまう!!」ガシ
DQN「うるせぇ!もっと!殴らせろ!!」
「おい、お前達さっきからなにしてる!これ以上悪ふざけしてたら通報するぞ!!」
DQN2「や、やべ!逃げるぞDQN」ダッ
DQN「チッ…糞が!!」ダッ
男「……」ボロボロ
許嫁「ぁ……あぁ……」
男「……」
許嫁「お……おと、こ…だ、大丈夫?」
男「……」
許嫁「あ…ぁ…」
許嫁「おと……こ…」
許嫁「私が……ちゃんと帰っていれば…」
許嫁「私が……男にあんなこと…言わなければ………」
許嫁「ぁ……あぁぁぁあ…」
許嫁「私の……せいだ………」
許嫁「おと…こ…?」
男「……」
許嫁「起きて……ねぇ、男……」ユサユサ
許嫁「ぁ……あぁ…」
許嫁「男…起きて、ねぇ、男」ユサユサ
男「……」
許嫁「おと……こ…」ポロ
許嫁「私の……私の…せいで……」ポロポロ
許嫁「男…」ポロポロ
男「……」
許嫁「男…置いていかないで…」ポロポロ
許嫁「私……今になって、気付いたの…」ポロポロ
許嫁「あなたがいないと…生きていけないくらい…」ポロポロ
許嫁「どうしようもないくらいに…あなたのことが……」ポロポロ
許嫁「…好き」
許嫁「馬鹿よね、私って」ポロポロ
許嫁「今になって、気付くなんて…」ポロポロ
男「……ん」
許嫁「!!」
男「いいな、ずけ…?」
許嫁「ぁ……」
許嫁「お……おとこ…」
許嫁「男!!」ギュウウウウ
男「……いたい」
許嫁「ご、ごめんなさい」パッ
男「よかった……無事で」
許嫁「ごめんなさい、私のせいでこんな目にあわせてしまって…」ポロポロ
許嫁「カッコ悪いなんて言って……本当に……ごめんなさい………」ポロポロ
許嫁「お願いだから……許して……下さい……」ポロポロ
男「………」
男「…かっこよかった?」
許嫁「…!」
男「さっきの俺……かっこよかったかな?」
許嫁「……グスッ(これって電車のときの…)」
男「…なにか、言ってよ」
許嫁「…グスッ」
許嫁「…かっこよかったわ」ニコ
許嫁「ぁ……」
男「なら、いいんだ」ニコ
許嫁「…///」
男「よし、宿に戻ろうか」
・
・
ロビー「おかえりなさいませ…?!」
ロビー「どうなさいました?その怪我は…!!」
男「あぁ…これは…」
許嫁「……」
男「階段で、転んじゃって…」ハハ
許嫁「!?」
許嫁「なんで嘘ついたの?」
男「…だって本当のこと言ったら警察沙汰になるじゃんか」
許嫁「なるべきよ」
男「…そしたら、明日2人で泳げなくなるだろ」
許嫁「ぁ……」
男「まぁこんな怪我なんて、寝れば治るしな!多分!!」ハハ
許嫁「男……」ズキ
許嫁「ごめんなさい。私のせいで…」
男「もういいから…」ナデナデ
許嫁「ん………」
男「今日はもう、寝ようか」
許嫁「ええ…」
男「…(身体が痛くて寝れない)」ズキズキ
許嫁「男…」
男「ん?(名前で呼ぶようになったな)」
許嫁「あの……こんなこと言える立場じゃないんだけれど…1つお願いしていい?」
男「…なに?」
許嫁「そっちの布団に、行きたい」
男「?!」
男「今、なんて?」
許嫁「…あなたの布団に、入りたいの」
男「?!…(よく見たら許嫁、震えてるな)」
男「…(よっぽど怖かったんだな)」
男「…いいよ。おいで」
許嫁「…ありがとう」スッ
許嫁「あったかくて…なんだか安心するわ」
男「そう…」
許嫁「…」フルフル
男「…怖かったんだね」ナデナデ
許嫁「ぁ…だ、だめ。怪我してるんだから、私に気を遣わないで」
男「こうすると…眠りやすいの」ナデナデ
許嫁「んぅ……」
男「許嫁……次からはちゃんと言うから」
許嫁「……え?」
男「絶対助けに行くって…胸張って言うから」
許嫁「……もう来てくれたじゃない」ギュウ
男「…すぅ…すぅ」zzz
男「…すぅ…すぅ」zzz
許嫁「……」ギュゥ
許嫁「すぅ……」ギュウウ
許嫁「男の…匂い…」ギュウ
許嫁「幸せ…」
許嫁「…」ギュウ
許嫁「顔、近いわね」
許嫁「……ほっぺなら、いいわよね?」
許嫁「おやすみ、男」チュッ
許嫁「……///」ギュッ
DQN「チッ…んだよあのガキ」
DQN2「やりすぎだぜ、あれは流石に」
DQN「また明日もビーチ行くぞ…」
DQN2「まじかよ…」
藤原「こんばんは」
DQN「誰だてめぇ」
藤原「僕はキラです」
DQN2「は?」
藤原「あと10秒…お前達は死ぬんだ」
DQN「意味わかんねぇことほざくな」
藤原「このssにおいて…お前達は役目を果たした…明日出てこられたら作者に都合が悪いんだよ…」
DQN「俺たちの役目ってなんだよ」
藤原「それは…」
藤原「結果的に2人の仲を強く結びつけるキューピット」
藤原「兼 ホモ枠だ」
DQN「は?」
ドクン
藤原「お前達はけつを掘り合って、痔になって死ぬ運命だ」
DQN「あ、ぁぁぁぁあっ」
「「アッー!!」」
藤原「ジャマ者は消した…」
藤原「…アリーヴェデルチ」
To be continue?!
男「ん…」パチ
許嫁「…すぅ…すぅ」ギュウ
男「!?」
男「…な(なんだこの状況は…許嫁さんが…俺の左腕に抱きついて寝てる…)」
許嫁「すぅ…すぅ…」
男「いつっ…(身体が痛い…そういえば…そうだった…)」
男「許嫁さん、起きて、朝だよ」ユサユサ
許嫁「んぅ……」パチ
許嫁「おと、こ…?」
男「うん、よく眠れた?」
許嫁「…!」バッ
許嫁「あ……(私…昨日…あんなことやこんなことを…男に…)」
許嫁「~~~///」カァッ
男「ど、どうかした?」
許嫁「!…///」ボンッ
許嫁「ご、ごめんなさい!」ダッ バタン
男「…?」ポカーン
許嫁「…」ガチャ
男「あ…」
許嫁「おはよう」
男「お、おはよう…(いつもの感じに戻ったな)」
許嫁「朝食を済ませましょうか」
男「うん」
【朝食後】
男「ふぅ~美味しかった」
許嫁「そうね…」
男「さて、海に行こうか」
許嫁「…」
男「…大丈夫だよ。なんとなくだけど、昨日の人達は来ない気がするんだ」
許嫁「男が良いなら、良いけど…」
男「それに、許嫁さんだって初めて海に来たんだから、もう一回入りたいだろ?」
男「…許嫁さん?」
許嫁「そ、そうね…じゃあ今日も行きましょう」
男「うん」
許嫁「…」
男「…」
許嫁「…あの」
男「ん?」
許嫁「…マエデ、ヨン…」ゴニョゴニョ
男「え?」
許嫁「名前で…呼んでくれない…?」
男「いきなりどうしたの?」
男「そうだったっけ…昨日は必死だったから…」
許嫁「…」
男「わ、わかったよ」
男「…」ゴホン
男「い、許嫁…」
許嫁「…//」
許嫁「はい…」ニコ
男「」ズッキューン
許嫁「…なにか言いなさい」
男「す、すいません…」(朝っぱらから心臓に悪いな)
男「帰りの電車は15時発だから、昼前まで泳ごうか」
許嫁「まだ朝だし、人は少ないわね」
男「よっし、泳ぐぜー」
許嫁「…(男の身体に…たくさんの痣が…)」ズキ
男「…気にしなくていいよ。海に入れば見えないし」
許嫁「…うん」
男「Here we go! レッツパーリィ!!」ダッ
許嫁「あっ…ま、待ちなさい!」ダッ
男「うぉぉぉお」バシャバシャ
——–
許嫁「もう少し右よ…あっ、行き過ぎ」
男「うぉらっ」ブン
許嫁「…空振りね」
男「くそっ…難しいな。次は許嫁がやってみてよ。割れるまで帰れま10」
許嫁「見てなさい…」
———
外人美女「Yeah!!」ユッサユッサ キャッキャッ
男「!?…(いくらなんでもデカすぎないか…?デカけりゃいいってもんじゃないけど、アレはやばいな…)」ジー
許嫁「…」ゲシ
男「痛!」
許嫁「…」スタスタ
男「?…ちょ、待ってよ」ダッ
男「ふぃー…疲れた」
許嫁「たくさん泳いだわね…」
男「名残惜しいけど…帰ろうか」
許嫁「…ええ」
【帰りの電車】
ガタンゴトン ガタンゴトン…
男「くかー…」zzz
許嫁「…」
男「すぴー…すぅ…」zzz
許嫁「…お疲れ様」
ガタンゴトン ガタンゴトン…
男「ただいまー」
許嫁「ただいま」
男「んー♪ やっぱり我が家(ではないけれど)が一番だな」
許嫁「そうね…」
男「今日の夕飯は買い物してないし、ピザでも取る?」
許嫁「それがいいわね」
男「ピザホットにする?ピザーランにする?」
許嫁「私はどちらも食べたことないわ」
男「まじか…じゃあ>>320にするか!」
『まさかの初安価 ちなみになににしてもまったく変化はありません』
許嫁「…♪」ワクワク
男「どのピザがいいかな?アイダホスペシャル、好きだったけど無くなっちゃったんだよな」
許嫁「このプルコギのやつとか、美味しそうね」
男「おー、確かに。じゃあコレと照り焼きチキンので頼もう」プルルルル
ガチャ 『もしもし、こちらピザホット〇〇店です』
男「Mサイズのピザ一枚をハーフ&ハーフ、プルコギと照り焼きチキンで下さい。あ、あとポテトも付けてお願いします」
『かしこまりましたー。お時間40分ほど頂戴いたしますけど、よろしいですか?』
男「はい、住所は〇〇町の△△丁目です」
『わかりましたー。では、お届けに参ります』
男「お願いします」ガチャ
男「ん?あぁまぁ、1人で済ますときとか、便利だからよく頼んでたしね」
許嫁「…そう」
男「さて、テレビでも見ようかな」
許嫁「…」ソワソワ
男「…」
許嫁「…」スタスタ ソワソワ
男「…あと40分しないと、来ないよ?」
許嫁「!…わ、わかってるわ。初めてだから…ちょっと緊張してるだけ」
男「…(可愛い)」
ピンポーン
許嫁「」ビクゥ
許嫁「え、えと…お金…お財布…」アタフタ
男「もう右手に持ってるよー」ボソ
許嫁「!…わ、わかってるわ」
男「…俺が行くから、お皿とか、出しといてもらえる?」
許嫁「そ、そう…ありがとう」
——–
男「ほい、ピザ」ドン
許嫁「大きいわね」
男「残ったら明日食べればいいよ」
許嫁「そうね」
許嫁「…」パク
男「どうかな?」
許嫁「お、美味しいわ…」
男「たまにはいいよね」
許嫁「そうね…明後日にでもまた頼みましょうか」
男「凄い気に入ったんだね」ハハ
許嫁「照り焼きの方も美味しいわ」パク
男「あっ!速い!俺も負けてらんねー」パク
———–
男「」ゲフ
許嫁「ご馳走様でした」
男「ご馳走様」
男「…(よっぽど気に入ったんだな)」
男「おっ、映画やってるじゃん」ポチ
『デスノート』バン
許嫁「コーヒー煎れたけど、飲む?」
男「あ、お願い。出来るだけ甘くして下さい」
許嫁「…わかったわ」クス
藤原『松田ァァア!貴様!誰を撃ってるんだァァア!!』
男「もう終盤だな」
男「ありがとう」
藤原『死にたぐないぃぃぃ!死にたぐないぃぃぃい!!』
男「…」ズズ
許嫁「…(なんだか和むわね)」フゥ
男「あ、明日は学校行くんだった」
許嫁「…補習?」
男「幸いそれは免れたよ。ちょっと用事があってね」
許嫁「そう…」
男「まだまだ夏休みはあるし、またどこか行こうか」
許嫁「!…うん」ニコ
男「…ふぅ」
男「さて、帰ったら何しようかな」スタスタ
女「あれ…男くん?」
男「ん?あ、女さん。久しぶり」
女「久しぶりー。今日は学校来てたんだー」
男「…不登校みたいな言い方すんなよ」
女「アハハ、ごめんごめん」
女「…!」スタスタ
ガヤガヤワイワイ
男「ん…?」
女「?」
男「なんか今日は商店街が騒がしいな」
女「あ、今日はね。花火大会があるんだってさ!」
男「へー。来たことあるの?」
女「無いよ。あ、でも、行ってみたいかなー…なんて//」チラ
男「うわ~なかなか楽しそうじゃん!」キョロキョロ
女「……」
女「ねぇ。男くん」
男「ん?」
女「今日、さ。その、もし、良かったら、その、お祭り行かない?ふ、ふた…」ゴニョ
男「ん?ごめんもう一回言って?」
女「み、みんなで!!お祭り、行こうよ!」
男「き、急にそんな大声出すなよ…あ、でもそれいいね!」
女「よ、よかった~(よくないよあたしのばか!!)」
男「ん~。じゃあさ、俺は友達呼ぶから、女さんも友達呼んで、みんなで行こうか」
女「う、うん…」
男「じゃあ待ち合わせは駅前で17時な」
女「わかった。楽しみだね」
許嫁「おかえりなさい」
男「何してたの?」スタスタ
許嫁「宿題やってたわ…あなたはちゃんとやってる?」
男「ぅ…(忘れてた…)」
男「そ、それよりさ!」アセアセ
許嫁「…(露骨に話を逸らしたわね)」
男「今日さ!花火大会があるんだってさ!」
許嫁「!」
男「許嫁が今日暇なんだったら、行かない?」
許嫁「それは、あの、で、デートなのかしら?//」
男「?…あ、違うよ。女さんに誘われたから、みんなで行こうってことになった」
許嫁「……」
男「?…え?」
許嫁「…………行くわ」スタスタスタスタ バタン
男「…」prrrr
友1「はい」ガチャ
男「あ、友1?今日さ、花火大会があるんだけどさ。一緒に行かない?」
友1「ほぅ…聖戦ラグナロクが今宵開かれるのか…それは興味深い…」
男「誰なんだお前は…」
友1「だが…すまんな男。血の盟約を交わした貴様の頼みでも、私は今宵、魔との契約を果たさねばならんのだ…また会おう開闢の使者よ…」ガチャリ
男「……」
男「要するに、バイトがあるんだな」
友2「はい」ガチャリ
男「もしもし、友2?」
友2「おう、男か。なにかあったのか?」
男「いや、今日さ、花火大会があるんだけどさ」
友2「嫌だよ。なんで高校生男子だけで花火見なきゃなんねーんだよ、浴衣とか着てるクラスメイト女子と来るのが鉄板だろー
俺だって男なんだか(ry」
男「女友さんも来るらしいのにな。あーあ、残念だな」
友2「行かせてください。お願いします。お願いします。」
男「了解」
・
・
・
友3「あ、今日…花火大会…あるんだ…」
・
・
男「…?」
男「なんか忘れてるような…」
許嫁『わかったわ』
男「ん。じゃあ駅で会おう」ガチャ バタン
[許嫁ルーム]
許嫁「…」ゴソゴソ
許嫁「着るのは、去年の夏以来かしら。」
許嫁「……」
友2「なーなー。女友ちゃん。本当に来るんだよな?」
男「くるくる。きっとくるよ」
友2「来なかったら、南斗水鳥拳が火を吹くからな」
男「まじかよ…顔面が八つ裂きかよ…」
「お待たせー!」
女「ごめん待った?」
男「いや…全然…」
女「どうかした?」
男「……(これが…Japanese YUKATA)」
男「なんという…破壊力だ…」ボソ
男「すごい…可愛いです…」ボーッ
女「…ふぇ?!///」
男「ハッ…あ、ご、ごめん//」
女「え、あ、う、うん…ありがと///」
女友「ちょっとー…なんか私、置いてけぼりじゃなーい?」ヒョコッ
友2「はぅあ?!」
男「あ、その、女友さんも、凄い似合ってるよ」
女友「なんかテキトーな感じー」
男「えー…友2からもなんか言ってあげてよ」
友2「」
男「し、死んでる!!」
女友「ちょ、ちょっと、大丈夫?」ポン
友2「はぅあ?!」
男「蘇生しおった…」
女「…///」プシュー
友2「ゆ、ゆーとぴあ…」ボソ
女友「あと来るのは、許嫁ちゃんと、イケメン君だね」
男「イケメン…あいつか」
女友「イケメン君のこと知ってるの?」
男「たしか…頭が凄い良かったよね」
女友「まぁ完璧人間ってやつね」
男「…」
女友「それはそうとして、許嫁ちゃんとも仲がいいの?」
女友「いや、最初に女から許嫁ちゃんも来るって聞いた時、びっくりしたんだよねー」
女友「許嫁ちゃんって、女の子の友達は多いし、いい子だけど、男嫌いって噂だし…」
女友「それに…聞いた話によると、男くんが誘ったらしいから、尚更不思議なんだよねー」
男「そ、そっか…(実は同棲してるなんて言えない…)」
女友「ん…?なんだあのオーラは」
男「人が集まってるな」
「なにあの美男美女カップル…」
「花火大会に来てる他のカップルが霞んじゃうな…」
ワイワイ ガヤガヤ
イケメン「まさか許嫁さんも来るなんて…ビックリだよ」
許嫁「そう…私も、アナタがなんでいるのか不思議だわ…」
イケメン「女さんに誘われたから来たんだよ…君もそうなの?」
許嫁「…ええ」
イケメン「今日は楽しみだね~」ハハ
女友「なにあれ…もはや芸能人じゃん」
男「よく見えないな…」
女「あ、許嫁ちゃん!イケメン君!こっちこっち!」
イケメン「お、女さん!お待たせ」
許嫁「お待たせ…」
女「キャー!許嫁ちゃん凄い可愛い!!」
許嫁「ありがとう。女さんも、凄い似合ってるわ」
女「ありがとー」
イケメン「確かに、二人とも凄い似合ってるね」
女友「ちょっと~私を忘れんなよ~」
イケメン「女友さんも凄い可愛いと思うよ」
女友「ありがと♪」
友2「ぐぬぬ…」
男「…?」
許嫁「…どう、かしら」
イケメン 女友「!?」
男「ん…凄い、可愛い、と思う//」
許嫁「そう…//」
女「むぅ……」
イケメン「(これはこれは…)」
女友「(なかなかに…)」
イケメン 女友「(面白そう…!!)」ニタァ
女「わー 屋台たくさんあるねー」
女友「けっこうレベル高いのね」
男「おー 射的とか、金魚救いとかもやっぱりやってるんだな」
女「あ、射的!やろやろ!」
男「得意なのか?」
女「昔から何回もやってるから、余裕余裕」ドヤァ
女「むっ…疑ってるね?まぁ見てなよ!」
パン パン パパン
女「おっかしいなー。なんかしっくりこないなー。もっかい!」
パパン パパン パン
女「うー…もっかい!」
パパパパン パパン
女「…」グス
男「…貸してみ」ヒョイ
男「とりあえず、あのぬいぐるみでも…」
パン ポロッ
男「!!」
男「おー…俺もびっくり…」
男「せっかくだから、これはあげるよ」
女「いいの?」
男「ぬいぐるみは男が持つものじゃないと思うし…」
女「ありがとう!大事にするね!」ニコ
男「お、おう」ドキ
許嫁「……」
男「ん?」
許嫁「私にも…取って…」
男「え?ぬいぐるみ欲しいの?」
許嫁「……」コクン
男「…うん、わかった」
パン パン
男「あれ?さっきは一発だったのに…」
パンパン パンパン
男「ぐっ…」
パンパン パンパン ガチャ
男「弾切れ…?」
男「うっ…(そんな悲しそうな顔しないでよ…)」
男「おじさん、もう一回!」
おじさん「あいよ」ガチャガチャ
パンパン パン パンパン パパン
男「もう一回!」
パパン パンパンパンパン
男「ぐっ…」
許嫁「男…もういいから…」
男「いやまだだ!ラスト一発…」
許嫁「男…」
男「…!(黄金の回転!)」パン
ポロッ
許嫁「!」
男「!!」
おじさん「…そんなに欲しかった?」
男「あ…いや、その、すいません」
男「…コホン、はい」スッ
許嫁「ありがとう…」ニコ
男「取れて良かった~」ハァ
イケメン「けっこうギリギリだったね」
ワイワイ ガヤガヤ
許嫁「…(男が取ってくれたぬいぐるみ…)」
許嫁「……」ギュッ
男「…(気に入ってくれたみたいだな…)」
友2「俺だって…」ガチャガチャ
パンパン パンパン パン
女「次はどこ行くー?」
女友「あ、焼きそばあるよ?あそこ」
スタスタ スタスタ
友2「くっそー!もっかい!」
友2「…ってあれ?みんなは?」
イケメン「人が賑わってきたね」
ワイワイ ガヤガヤ
男「楽しみだなー」
許嫁「そうね…」
ワイワイ ガヤガヤ
女「きゃっ」ドン
男「うぉっ、人が!」ドン
イケメン「…流されるね」
許嫁「うっ」ドン
ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ
男「…あ、あれ」
男「みんなは?」
男「花火始まっちゃった…」
ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ
女「あ…みんな…」
女「男くん…」
ガヤガヤ ワイワイ
イケメン「…?」キョロキョロ
ガヤガヤワイワイ
許嫁「男…」スタスタ
パン パン パパン
「綺麗!」「すげー」
友2「結局…ぬいぐるみも取れず、みんなとははぐれ…」グス
友2「…」ハァ
パン パンパン パン
「綺麗だねー」「来てよかった…」
「なにしてんの?」チョイチョイ
友2「ぇ…?」クルッ
女友「一人でなにしてんのさー」
友2「あ…女友…さん」ドキ
友2「あ…うん」
ワイワイ ガヤガヤ
ヒューー パン!!
男「…」ハァハァ
男「…!」
ガヤガヤワイワイガヤガヤ
女「…」キョロキョロ
「見つけた」チョイチョイ
女「!」クルッ
許嫁「…」キョロキョロ
「見つけた」チョイチョイ
許嫁「?」クルッ
女「男君!」
男「許嫁とイケメンは?」
女「えーと…まだ会えてない」
男「そっか…とりあえず、お腹空いたからたこ焼きとか食べる?」
女「うん!」
———
イケメン「やっと見つけたよ」
許嫁「イケメン君…」
イケメン「あれ?みんなは?」
許嫁「まだ会えてないわ」
イケメン「そっか…」
許嫁「(男…)」
イケメン「あ、飲みものでも買ってくるよ」
許嫁「ありがとう」
女「アハハハ。もう、大丈夫?」フキフキ
男「あ、ありがと」
女「一個もらっていい?」
男「もちろん。あ、でも熱いよコレ」フーフー
女「…///」
男「…いらないの?」
女「え、あ、いる!いるよ」ヒョイ
女「(楽しいな…)」
男「これ食べたら、みんなを探そう」
女「うん…」
女「(本当は…このまま…)」
——–
許嫁「…」キョロキョロ
イケメン「…」
許嫁「…え?」
イケメン「フフッ…いや、彼を探してるのかなーって思ったからさ」
許嫁「…みんなを探してるわ」
イケメン「本当にそうかな?」
許嫁「…イケメン君って性格悪いわね」
イケメン「ひどいな」ハハ
イケメン「…」
イケメン「男君と女さん、合流してたりして」
許嫁「…」ピク
イケメン「もしそうだったら、みんなと合流するまでは、しばらく二人きりだろうね」
許嫁「……」
女「……」
男「ん…あれは…」
男「(イケメンと…許嫁?)」
男「見つけたよ。合流しよう」
女「ぁ…」
男「おーー…」グイ
女「……」ギュッ
男「!(いきなり袖を掴まれた…)」
男「…どうしたの?」
女「ごめん…ちょっと…来て…」
男「?…せっかく見つけたんだよ?」
女「二人で…話したい…」ウル
男「」ドキ
男「…わかった。行こう」
———-
イケメン「(あれは…男くんと女さん?)」
———-
人がほとんどいない、林の中まで来ると、女さんは俺の袖から手を離した
女「…」
男「…」
女「……」
男「…女さん?」
女「ごめんなさい。無理やりこんな所まで…」
男「大丈夫だよ。それより話って?」
女「…」
許嫁「…?」
許嫁「どうかしたの?」
イケメン「ん?…いいや、何も」
イケメン「…動き回っててもなんだし、ここでしばらくみんなを待ってようか」
許嫁「…ええ」
———
女「聞いてください…」スゥ
男「はい…」
男「…」
女「わたし…あなたのことが…」
女「好きです」
女「付き合って下さい」
男「…」
男「………」
男「他に好きな人が…いる」
女「……」
女「…ぅん」グス
女「うん…知ってた」ポロポロ
男「女さん…ごめん…」
女「いいの…せっかくの花火大会なのに…ごめんなさい…」ポロポロ
男「女さん…」
女「……」ポロポロ
女「3つ…お願い事聞いてくれる?」ポロポロ
男「…うん」
男「うん…」
女「もう1つは…早く許嫁ちゃんに…グスッ…気持ちを伝えてあげて…」
男「!…うん」
女「最後に……少しだけ、胸…貸して…」ギュッ
男「女さん…」
女「うぅぅぅぅ~」グスッ ポロポロ
男「…」ナデナデ
女「好きだったぁ…ヒック…好きだったんだぞぉ……グスッヒック」ポロポロ
男「ありがとう…こんな俺なんかを…」
男「ありがとう…」ナデナデ
女「男くんに恋して…良かった」ギュッ
男「俺も…女さんに会えて…良かったよ」
女「うん………さて、これ以上は許嫁ちゃんに悪いしね」スッ
女「…これからも、よろしく」ニコ
男「ありがとう…よろしくね」
女「許嫁ちゃんを不幸にしたら、許さないからね!」
男「うん、絶対に幸せにしてみせる!」
許嫁「!」
男「あ、二人とも、ここにいたんだ」
女「探したよ~」
許嫁「…(本当に…2人きりだったのね…)」
イケメン「?…女さん、目元が赤いけど、大丈夫?」
女「!…え、あ、本当?ゴミでも入ったのかな?あはは」
男「女さん…」
許嫁「……」
イケメン「…(なるほど…大体わかったぞ)」
イケメン「とりあえず、まだまだ花火は続くし、早く女友さんたちも見つけよう」
男「そうだね」
許嫁「ええ…」
イケメン「おーい、二人ともー!」
女友「?…あ、いたいた!やっと見つけたー!」
友2「揃ったなー」ニコニコ
男「なんか機嫌いいな…」
友2「まぁ…色々あってな…」ニコニコ
男「そっか…」
女友「…!」
女「!…わ、私は大丈夫だよ?」
女友「…大丈夫なわけないでしょ。ったく…みんなまた今度ね!友2君、また明日!」フリフリ
友2「また明日…」フニャア ニコニコ
許嫁「またね…」フリフリ
男「…女友さん、ありがとう」ボソボソ
女友「いいから。アンタはアンタでやることやりな」ボソボソ
男「…うん」
許嫁「……?」
友2「そうすっかー」ニコニコ
男「そうだね」
許嫁「ええ…」
友2「そんじゃ、またな~」
男「おう」
イケメン「また今度も誘ってもらえると嬉しいな」ニコ
男「うん、今度も誘うよ」
イケメン「今日は楽しかったよ。じゃあね」スタスタ
男「…(良い人だったな…)」
許嫁「…」フリフリ
許嫁「そうね…」
ヒューーーー ドン パパアッ
男「…」
男「ちょっと寄り道して、帰らない?」
許嫁「?…ええ、いいわよ」
許嫁「ここは…」
男「いつもの公園。高台にあるから、花火がよく見えると思って」
ヒューードン パパァ
許嫁「…綺麗」
男「うん…」
許嫁「…」
男「…(本当に、綺麗だなぁ)」ジーッ
ヒューードン パパァ パン
許嫁「…」
許嫁「…?」
許嫁「どうかしたの?」
男「…うん」
男「許嫁に…言いたいことが…ある」
許嫁「なにかしら」
男「…」
女子とまともに話せなかった俺が、今では立派に恋愛してるわけで、物腰も柔らかくなった…気がする。
それもこれも、許嫁がいつも側にいてくれるお陰であって…これからも側にいてほしい。
ずっと…ずっと……
許嫁「…?」
あれ?言葉に出てなかったかな?!
まずい…緊張してる?!何て言えば…
女『しっかりしろ!許嫁ちゃんに思ってること、ちゃんと伝えてあげなさい!!』
そうだったな…
ちゃんと伝えるって、決めたんだったな
許嫁「え?」
男「俺が思ってること…そのまま言う。だから…聞いてください」
許嫁「…うん」
男「許嫁との関係は、突然 許嫁として始まった関係なわけで、自然に生まれたものじゃない」
男「最初は多分、嫌われてたと思うし、もし何も無かったら、お互い気づけなかったかもしれないね…」
許嫁「…」
男「だけど…俺たちの関係が、偶然生まれたものだったとしても…」
男「始まりが…普通じゃなかったとしても…」
許嫁「うん…」
男「好きだ」
男「俺は…ずっと側に…いてほしい」
許嫁「…」
男「…許嫁?」
許嫁「…」ギュッ
許嫁「もう…頼まれたって、離れてあげないからね」ギュッ
男「許嫁…」ギュッ
許嫁「よかった…グスッ…」ポロポロ
許嫁「私も好き…大好き…」ギュゥゥウ
許嫁「……グスッ」ポロポロ
男「なんで泣くのさ…」ハハ
許嫁「グスッ…安心したの」
許嫁「…あなたは、きっと女さんのことが…って思ってたから…」ギュゥゥウ
男「許嫁…」ギュッ
許嫁「男…」
許嫁「しっかりつかまえて…おきなさいよね」ニコッ
男「…わかった。頼まれたって、離してあげない」ニコッ
許嫁「…んっ」チュッ
男「…ん」
許嫁「…ふふふ」ニコニコ
男「…帰ろうか」
許嫁「…うん♪」
許嫁「…はい、コーヒー」
男「ありがとう」
許嫁「お砂糖とミルクは?」
男「もらおうかな。エメマンくらいの甘さにしてね」
許嫁「…わかったわ」コトコト
男「えっ?!できるの?!」
許嫁「はい…」スッ
男「あ、ありがと…」ゴクッ
男「に、にがぁぁぁあ」ダバー
許嫁「…ふふ」フキフキ
TV【藤原竜也、風俗ぶらり旅】バン
男「おっ…久しぶりだな…」
藤原竜也『おっ。ここは良さそうですね』
藤原竜也『ちょっと入ってみましょう』
許嫁「…」ズズッ
藤原竜也『あっ。この、田所さんで、お願いします』
店員『大丈夫ですか?その娘は結構ハードですよ』
藤原竜也『ハードな方が、好みなんでね』
男「大丈夫かよ…」ズズッ
藤原竜也『ん?アイスティーが置いてありますね』
藤原竜也『気が利きますね。ちょうど喉が乾いていたので、いただきます』ゴクゴク
藤原竜也『…ふぅ。田所さんが来るまで、待っていましょうか』
男「…」ズズッ
許嫁「…」ジーッ
男「?…俺の顔になにか付いてる?」
許嫁「いいえ…」ニコッ
男「…?」
藤原竜也『ずいぶん枕が大きいですね…』ハハ
藤原竜也『では…おやすみなさい』
男「…」ズズッ
許嫁「…」ジーッ
田所『オッスお願いしま~す♪』
藤原竜也『…ん?』
藤原竜也『は?だ、誰ですかあなたは?!』
藤原竜也『て、手錠?!』ガチャガチャ
田所『僕が田所ッス。フゥー↑』
藤原竜也『あんた男じゃないか!』ガチャガチャ
田所『ま、多少はね?』
藤原竜也『なにが多少だ!!キャンセル!!キャンセル!!!!』
野獣先輩『ハードになるって言いましたよね?』ニッコリ
藤原竜也『やめろぉぉぉお』
野獣先輩『暴れんなよ…暴れんなよ…』
野獣先輩『悔い改めて』スッ
藤原竜也『入って、どうぞ』スッ
野獣先輩『ンアッー!!』
アッー!アッー!イキスギィー!
HAHAHAHAHAHA
男「結局受け入れるんかいwwww」ゲラゲラ
許嫁「…ふふ」ニコニコ
許嫁「そうね…肩、借りるわよ…」スッ
男「…眠い?」ナデナデ
許嫁「ん……眠くはないわ…」
男「そう…」
許嫁「なんだか…幸せだわ…」
男「ん……そうだね」ギュッ
許嫁「…♪」ギュ
男「…少し、眠くなってきたかも」
許嫁「おいで…」ポンポン
男「ひざまくら…いいね」スッ
許嫁「ん…」
男「なんか…柔らかい…」グテ
許嫁「…(可愛いわね)」ナデナデ
男「んぅ…」スリスリ
許嫁「ひゃっ…くすぐったいわよ…」ナデナデ
男「…zzz」
許嫁「おやすみなさい…ふふ…」ナデナデ
許嫁「…」
男「…すぅ…すぅ…」zzz
許嫁「っ…(ずっとこうしていたいのだけど…足が痺れてきたわね)」
許嫁「男…起きて…」ユサユサ
男「んー…」ボケー
許嫁「お布団敷くから…少しだけどいてちょうだい…」スッ サッ ババッ
男「ぐー…zzz」ドサッ
許嫁「もう…そこで寝ちゃだめよ…」
男「…すぅ…すぅ」
許嫁「仕方ないわね…んっ」グイッ
男「んぐ…んー…zzz」ゴロゴロ
男「んー…zzz」
許嫁「…」バサッ
許嫁「私も寝ようかしら…」
許嫁「おやすみなさい…男…」チュ
男「…むふふ…zzz」
許嫁「…どんな夢見てるのかしら」クスッ
【始業式】
ガヤガヤ ワイワイ ヒサシブリー アッー! キャー
友1「久しぶりの登場…か」
友3「…(結局、夏休みの中で誰からも遊びに誘われなかった…)」
ガヤガヤ ワイワイ オォー ヤベー
友1「…歓声?」
ガヤガヤ ウツクシイー ガヤガヤ
許嫁「…」スタスタ
モブ「相変わらず美しいでやんす」ボー
モブ「うわっ…」カランカラン
モブ「眼鏡…眼鏡…」キョロキョロ
ヒソヒソ 「許嫁さんの目の前に…」
「どうなるんだ…?!」ヒソヒソ
許嫁「…」ヒョイ
モブ「あれ…眼鏡…」キョロキョロ
許嫁「…」チョンチョン
モブ「?」クルッ
許嫁「これ、あなたの?」スッ
モブ「あ、え、あ、ぼ、ぼきゅのでし、す」
許嫁「…どういたしまして」ニコ スタスタ
モブ「」
「おい、なんだよ今の」
「朝から女神を見たよ!」
ワイワイ ガヤガヤワイワイ
許友「許嫁、久しぶりー」
許嫁「許友…久しぶりね」
許友「あんた…見ないうちに変わった?」
許嫁「?」
許友「なんか…雰囲気が柔らかくなったような?」
許友「いや、そうは言ってないけど…」
許友「前のあんただったら、ああいう状況だと、機械みたいに対応してたと思うんだけど…」
許嫁「なによそれ…」
許友「さては彼氏でも出来た?」
許嫁「……うるさい」フイッ
許友「えっ?!図星ー?!」
「おい聞いたか今の!!」
「許嫁さんに彼氏だってよー!!」
ワイワイ ガヤガヤ ウソダロー ガヤガヤ ウワァァァア
許友「…ごめんなさい」
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ
キーンコーンカーンコーン
ガヤガヤワイワイ
男「…朝から騒がしいな」
友1「久しぶり」
男「うっす」
友3「…久しぶり」ジロッ
男「おう、久しぶり」
友1「男…いきなりだけど、こいつどうしたんだ?」
友2「でへへ…」ニヤニヤ
女友「みんなおはよー」
女「おはよー」
「久しぶりー」「元気ー?」
ガヤガヤワイワイ
男「女さん…」
女「あ、男くん!久しぶり!!」
男「久しぶり」
男『女さん…色々、ありがとう。』ヒソヒソ
女『ってことは上手くいったんだね。良かったねー』ヒソヒソ
女「どういたしまして。これからもよろしく!」ニコ
男「おう!」ニコ
友1「………リア充オーラは感じ取れんから、生かしといてやるか」
女友「私もぉぉお!」ギュゥゥウ
友1「…ん?」
友2「はぁ…こうしてると落ち着く…」ギュゥゥ
女友「アタシも…」ギュゥゥウ
友3「Oh…Hell Yeah!!」
友1「おかしいぞー。幻が見えるー。」
「おいどうなってる」ザワザワ
「なにあの2人カップルー?」キャー ガヤガヤ
友2「でへへ」テレテレ
「おめでとうー」「おめでと」「バカップルー」
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ
友1「………」ギリギリギリ
女友「だーりん♡」友2「はにー♡」
友3「時は来た…それだけだ」ハチマキギュッ
女「…男くんのお友達、大丈夫?」
男「今回はやばいかもな。友1は怒りがMAXになると黙る。友3は破壊王橋本になる」
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ
「午後は模試とかまじかよー」
「他のクラスでバカップル誕生したんだってさー」
ワイワイ ガヤガヤワイワイ
許友「…聞いた?バカップルだってさ」
許嫁「…そう」
許友「彼氏さんとはどんな感じなのよー」
「…」「…」「…」(聞き耳立ててます)
許嫁「別に…普通よ」
許友「えー…本当にー?」ニヤニヤ
許嫁「…私、そろそろ行くわね」スッ
許友「お弁当持って、どこ行くのよー?」ニヤニヤ
許嫁「許友…」ジロッ
許友「ご…ごめんなさい、調子乗りました…」
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ
「あ、許嫁さんだ」「彼氏いるんだってさ」
「えー嘘だー」「どうせ彼氏が一方的にゾッコンなんだろーねー」「あーわかるかも!」
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ
許友「…うん、普通そう思うよねー」コソコソ
許友「許嫁…ごめん。だけど、心配になっちゃうんだ…」コソコソ
許嫁「…」スタスタ
許友「…屋上?」
許嫁「ごめんなさい…少し遅くなっちゃったわね」パカ
「んー…大丈夫。昼寝してたみたい」
許嫁「どこでも寝ちゃうのね…」クス
「失礼だなー…あ、唐揚げもらい!」
許嫁「行儀が悪いわ…ちゃんとお箸使いなさい」
「えー…いいじゃないか。お、旨い!」
許嫁「もう…」ニヘラ
許友「…(え、なにこのやり取り)」
「ご馳走様」
「食ったらまた眠くなってきた…」
許嫁「また?…赤ちゃんみたいね」クス
「若いんだよ…ふわぁ」
許嫁「おいで…」ポンポン
許友「!?…(普通にひざまくらしようとしてる!?)」
許友「…(これ以上見てらんない!退却!)」ダッ
許友「心配無用だったみたいね…」スタスタ
許嫁『もう…』ニヘラ
許友「…(あんな顔…長い間友達やってきたけど、見た事ないよ…)」
許友「…(ちょっと悔しい…けど)」
許友「…良かったね、許嫁」ニコニコ
男「相変わらず柔らかい…」フニフニ
許嫁「ん…じっとしてなさい」プニプニ
男「…許嫁だって、お腹摘まないでよ」フニフニ
許嫁「…あなたがじっとしてれば、やめるわ」プニプニ
男「なんだと…」フニフニフニ
許嫁「…」プニプニプニプニ
許嫁「…ふふ」
男「今日は天気がいいね…」
許嫁「そうね…」
サワサワサワ-
男「いい風だね…」
許嫁「ええ…」
男「…(この様子だと、あの事は忘れてるな)」
キーンコーンカーンコーン
ガヤガヤワイワイ
友1「ふぅーやっと終わったー」
友3「疲れたな」
友1「友2、男!帰りゲーセン行かね?」
友2「ごめ、今日予定あるわ」チラ
男「…」コク
女友「だーりん!早くー!」
友2「ふぁぁぁぁぁあい!」ダッ
男「あー…ごめん。今日は無理かな」
友1「しゃあない。他に誰もいねーし、今日は帰るか」
友3「……」
友1「じゃあな男」ダッ
男「おう」
男「…友3、またな」スタスタ
友3「!…おう!!」
男「ごめん遅くなった」ガラッ
イケメン「いいや、ちょうどみんな揃ったところさ」
女「うんうん」
友2「だな」
女友「友1君たちは呼ばなくてよかったの?」
男「いや、あいつらは許嫁と面識が無いし、呼ぶとめんどくさくなりそうだからさ…」ハハ
男「一応考えておいた。今日はまず…」
————
許嫁「…」スタスタ
許嫁「(男…今日は一人で帰ったのかしら)」
許嫁「(学校を探したけど、いなかったし…)」
許嫁「…」スタスタ
許嫁「最近はいつも一緒に、帰ってるのに…」ボソ
許嫁「家の明かりは…ついてないわね」ガチャ
パパパパパパーン
許嫁「……え?」
イエーイ オメデトー パチパチパチパチ
男「おめでとう。許嫁」
許嫁「え、あの、ありがとう…?」
許嫁「………今日って、そういえば誕生日だったわね」
許嫁「ええ…すっかり…」
女「誕生日おめでとう。許嫁ちゃん」ニコ
許嫁「ありがとう、女さん」ニコ
女友 友2「おめでとー」
許嫁「バカップル…」
女友 友2「名前みたいに言うな!」
許嫁「あなたたちも…ありがとう」
イケメン「おめでとう、許嫁さん」
許嫁「イケメン君まで…どうもありがとう」
女友 「私たちからも!」
イケメン「僕からも、送らせてもらうよ」
許嫁「…ありがとう……グス…」
男「許嫁…?」
許嫁「こんなに多くの人から祝ってもらったのは…初めて…グス」
許嫁「凄く…嬉しいわ…」ポロポロ
男「…」フキフキ
許嫁「…グス」
許嫁「…本当に……ありがとう」
許嫁「…幸せだわ」ニコ
「(なんだ唯の天使か…)」
————–
ワイワイ ガヤガヤ ア、ソレオレノチキン ウルサイ エー
許父「お、やっとるな」
許母「許嫁に…こんなに良いお友達が…」ポロポロ
「「お邪魔してます!」」
許父「みなさん、くつろいでいて下さい」
男「許父さん、初めまして。男といいます」
許父「男君!こうして会うのは初めてだね!我が家にようこそ!!」
男「よろしくお願いします」ペコリ
許父「まぁそんなに堅くならないで。今夜は君のおかげでここにいれるんだ。電話してくれてありがとう」
男「こちらこそ、わざわざ来てもらって、ありがとうございます。」
許父「さて、私達は久しぶりに愛娘と話しているよ。君は彼とゆっくりお話していたらどうかな?」
叔父「よっ!男!」
男「叔父!!」
許父「久しぶりだな、許嫁」
許嫁「お父さん…今日は帰ってこれたのね…」
許父「うむ。男君から、今日が許嫁の誕生日だからどうしても…と電話が着てな」
許嫁「男…」
許父「飛ばしてきてしまったよ…」ガハハ
許母「久しぶりね…グス…許嫁」
許嫁「お母さん…」
許母「とくにあなたと男君のこと…ね」
許嫁「…?」
許母「本来なら私たちがあなたたちの間を取り繕ってあげるべきだったのに、いきなり二人きりにしちゃったじゃない…?」
許母「だけど、今はホッとしてるわ。うまくいってるみたいね」ニヤニヤ
許嫁「…うるさい//」
男「来れたんだ」
叔父「来ちゃ悪かったか!二人の愛の巣にはお邪魔かな…?」ニヤニヤ
男「…うっせ//」
叔父「………楽しいか?男」
男「…ああ…凄い楽しいし、幸せだよ…」
叔父「そうか……お前の両親にも、報告しとくよ…」
男「……今までありがとう、叔父」ペコリ
叔父「……」ナデ
叔父「早く孫の顔見せろよな?」ニヤリ
男「…うっせ」ニコ
「「「「乾杯!!」」」
ガヤガヤワイワイガヤガヤワイワイ
・
・
・
「ここにいたんだ…」
許嫁「男…」
男「なんで主役がベランダにいるんだよ…」
許嫁「ちょっと…考え事してて…」
男「どんな…?」
許嫁「…怖いの」
許嫁「……今までは、一人でいることが普通だったし、それに慣れてたわ」
許嫁「だけど、あなたが来てから、私が一人でいることはほとんど無くなったし、私の周りに人がいることが多くなった…」
男「…」
許嫁「それは凄い幸せなことで…温かくて…嬉しかった…」
許嫁「…だけど、だから怖い」
許嫁「この温かさを…幸せを知ってしまった私は…」
許嫁「私は耐えられるのか…って」
男「許嫁…」
許嫁「もし…私からみんなが離れていって…」
許嫁「あなたが…離れていったら…」フルフル
許嫁「私は…きっと…」フルフル
許嫁「男…私…」
男「大丈夫…大丈夫だから…」ギュウ
許嫁「男…グス…私から離れていかないで…」ギュウウウ
男「…」ギュウ
男「許嫁…聞いてくれ」
許嫁「え…?」
男「俺は絶対に許嫁から離れないし、離さない」ギュウ
許嫁「男……ごめんなさい。信じてないわけじゃないの…」ポロポロ
男「わかってるよ…大丈夫」ナデナデ
男「…誕生日プレゼント、受け取ってくれるかな」
許嫁「これって…」
男「指輪…実は父さんたちの形見で、家から持ってきたやつだけど…」
許嫁「ずっと、一緒…」ギュッ
男「嵌めてみていい?」
許嫁「うん…」スッ
男「…」スッ クッ
許嫁「…ぴったり」
男「…俺のも」
許嫁「…ふふ」ニコニコ
許嫁「いいえ…もう大丈夫…」ギュウ スンスン
男「また不安になったら、ずっと撫でてあげるから」
許嫁「ん…」
男「ずっと、ずっと…側にいるからね…」
許嫁「男……ん」
男「…ん」チュ
許嫁「男…ありがとう。最高の誕生日だわ」ニコ
男「どういたしまして」ニコ
許嫁「はい…こちらこそ」ニコニコ
・
・
・
・
・
・
・
「ん…久しぶりにプリンでも、買ってくか」
————
「ただいま」
「おかえりなさい」
男「…ん」ギュッ スンスン
許嫁「ん…」ギュウウ スンスン
男「充電完了」
許嫁「こっちも」
藤原「今まで…僕の活躍を見てくれて、ありがとうございました!」
男「この人も引退かー…長いこと見てきたなー…」
許嫁「そうね…」
男「あ、プリン買ってきたよ!」
許嫁「じゃあ、スプーン持ってくるわね…」スタスタ
男「藤原竜也…引退か…」
思えば…許嫁と暮らし始めた頃も、一緒にプリン食べながら、藤原竜也を見たっけな…
色々あったな…… 許嫁と出会ってから、俺の人生は大きく変わったような気がする…
許嫁「?…食べないの?」
男「食べる食べる」
男「…『クーデレ許嫁がいきなり出来て世界が変わった件』ってか」
許嫁「?」
おわり
次の許嫁スレを待ち望んでやまない
ただ初夜も見たかったかな…