下らない内容を長々と書く事になりますが、
よろしければお付き合い下さい。
ビッチA「付き合ってぇ・・・欲しいんだけどぉ。」
非リア「ぼぼ、僕と?」オドオド
ビッチA「うん。」
非リア「えっ? ななな、なん、何で?」オドオド
ビッチA「え~・・・何つうかぁ、一目惚れぇ? みたいなぁ。運命じゃん? みたいなぁ。」
非リア「・・・・・・い、良いの? 僕で・・・」オドオド
ビッチA「良いよ、ってかぁ・・・アンタじゃなきゃぁ、嫌だぁ・・・みたいな。」
非リア「は、はぁ・・・」
ビッチA「・・・好きです。」ボソッ
非リア「!!」ドキッ
ビッチA「」
非リア「」
ビッチA「」
非リア「あ、あの・・・あ、握手・・・って、しないか。はははっ。しないよn」
ビッチA「プッ!」
非リア「?」
ビッチA「アッハッハッハッハッハッ!」
非リア「!?」
ビッチA「アハッ! ア~ッハッハッハッハッハッ! ちょ、待って、マジ腹痛いし!」
非リア「???」
ビッチA「あ~、ヤバい、涙出てきた。ちょ、監督ぅ! もう良いっスかぁ?」
?「キャハハハハッ!」
ザッザッザッ
非リア「!?」
ビッチB「ちょ、もうA子サイコー!」
ビッチC「名演技じゃん! 『好きです』とか、マジ萌えるんですけどぉ!」
キャハハハハッ
非リア「えっ、あの・・・」オドオド
ビッチA「ん? なにぃ?」
非リア「何・・・なの? こここ、これ・・・」オドオド
ビッチA「えっ? わかんない? 罰ゲ。」
非リア「ば、罰ゲ?」オドオド
非リア「!!」
ビッチC「あ~、思い出しただけでもウケるぅ! ってかムービー撮ったしぃ! スマホマジ高画質ぅ!」
ビッチA「マジぃ? 後で送ってぇ。」
非リア「」ウルッ
ビッチB「ちょ、非リアなに涙目とかなってんのぉ?」
ビッチC「キャハハハハッ! ウケるぅ!」
ビッチA「ヤッバ! あたしマジ名演技じゃん! 女優なれんじゃね?」
非リア「・・・」グスッ
ビッチB「帰ろ帰ろ。」
ビッチC「ヤッバ! 今日笑いすぎで死ぬかも! キャハハハハッ!」
ザッザッザッ
非リア「・・・いよ。」ポロポロ
非リア「酷いよぉ!!」ポロポロ
同時刻 体育館のトイレ
キャハハハハッ
DQN「・・・・・・。」
酷いよぉ
DQN「・・・・・・。」
ビッチA「あ~、ウケたぁ。非リアの顔、サイコーだったねぇ。言葉も噛み噛みだったしぃ。」
ビッチB「ってか、お前がA子と付き合えるワケないじゃん。調子乗んなよみたいな。キャハハハハッ。」
ビッチC「ね、ね、見て。さっきのムービー。」サッ
『付き合ってぇ・・・欲しいんだけどぉ』
『ぼぼ、僕と?』
『うん』
『えっ? ななな、なん、何で?』
ビッチA「キャハハハハッ! ヤッバ! このムービーサイコー!」
ビッチB「ウケるぅ! てか画質綺麗すぎじゃね?」
ビッチB「良いなぁ。あたしもスマホ欲しいんだけどぉ。」
タッタッタッタッタッ
DQN「お~い!」
ビッチA「えっ?」クルッ
ビッチB「あっ、DQNじゃん!」
ビッチC「おつかれぇ。」
DQN「おぅ、おつかれ!」
ビッチA「どしたの、そんな走って?」
DQN「いや~、カワイイ女の子が三人歩いてたもんだから。」
ビッチA「いらないいらない、そんなの。」
ビッチB「キモいしぃ!」
ビッチC「キャハハハハッ!」
ビッチA「さっきの?」
DQN「アレだよ。体育館裏で非リアにコクったヤツ。」
ビッチB「えっ? 何で知ってんの?」
ビッチC「DQNいなかったよね?」
DQN「いや、体育館のトイレでタバコ吸ってたんだよ。そしたら外から『付き合って欲しい』とか聞こえてくるからよぉ。」
ビッチA「キャハハハハッ! 盗み聞きぃ?」
DQN「いや、もう換気窓によじ登ってガン見。」
ビッチA「キャハハハハッ! 必死!」
DQN「いや、意外にカッコいいかもよ?」
ビッチA「ないないない。」
ビッチB「非リアのリアクション超ウケるくない?」
DQN「お~、俺も笑い堪えるの必死だったわ。」
ビッチC「あいつキモいから余計ウケるんだよねぇ。」
ビッチA「言えてるぅ。あんなキモい奴はああやって遊ぶのにちょうど良いよぉ。」
DQN「はははっ。あっ、ところで、お前ら今日の夜ヒマ?」
ビッチC「夜ぅ? 何時ぃ?」
DQN「ん~、9時以降。」
ビッチB「あたしもぉ。」
ビッチC「あたしビミョー。バイト9時までだしぃ。」
DQN「あっ、別に9時ちょうどじゃなくても良いぜ。9時半とかでも良いから。」
ビッチA「何かあんのぉ?」
DQN「駅前のクラブあんだろ? 地下に降りてくトコ。あそこで今日、ツレがイベントやんだけどよぉ、『女の子連れて来て』とか頼まれてよぉ。来てくれる娘探してんだわ。」
ビッチA「クラブかぁ。最近行ってないなぁ。」
ビッチB「あたし行っても良いよぉ。」
ビッチC「9時半ならバイトから直行で間に合うしぃ、良いよぉ。」
ビッチA「じゃあ、あたしも行くぅ。」
DQN「おっしゃぁ! 助かるわ! そんじゃ9時半にクラブの前に集合って事で。」
ビッチ三人「あ~い。」
DQN「おし、揃ったな。」
ビッチA「B子の服エ○くね?」
ビッチB「クラブ行く時にしか着ないお気に入りだしぃ。」
ビッチC「あ~あ、ネール行っとけば良かったぁ。」
DQN「暗いから誰も爪なんて見ねぇよ。さっ、入ろうぜ。」
カツ カツ カツ カツ
ギィ
ズンズン ドンドン ズンズン ドンドン
チャラ男「あっ! DQNさんチィーッス!」
DQN「おぅ! おつかれ!」
チンピラ「DQN! 久しぶりだな!」
DQN「チィーッス! ご無沙汰してます!」
B系「カワイイ娘つれてきたなぁ!」
DQN「おぅよ! 良い仕事すんだろ、俺!」
DQN「おぅ、この席空いてるからお前ら座れよ。俺は立ち見で良いから。」
ビッチA「DQN顔広くね?」
DQN「まぁな。俺、小6ん時からこのクラブ通ってっから、常連仲間が結構いんだよ。」
ビッチB「マセすぎだしぃ。」
ビッチC「今日イベント開くっていうDQNの友達ってどの人ぉ?」
DQN「おぅ。さっきのB系の奴だよ。ここらじゃちょっと有名なMCなんだぜ。知らねぇ?」
ビッチA「知らなぁい。」
ビッチB「てか、今日、色んな服装の人いるけど、何系のイベントなの? B系の人主催ならヒップホップぅ?」
DQN「あぁ、今日はな・・・・・・」
DQN「レ○プ系だよ。」
ビッチA「はぁ?」
ビッチB「レ○プ系?」
DQN「ちげぇよ。レ○プだよ。レ・○・“プ”。」
ビッチA「えっ?」
ビッチB「何それ?」
シーン
ビッチC「えっ、何? 音が止まった・・・」
刺青男「おぅ、DQN。今日姦(まわ)す女ってソイツらか?」
DQN「おぅ、そうだよ。」
ビッチA「はぁ?」
ビッチB「何、あたしらDJとかできないけど・・・」
ビッチC「!?」
ビッチA「DQN!?」
ノソノソ
ヤク中「その真ん中の女、超タイプだ。」ハァハァ
DQN「あぁ、B子でしょ? ヤク中さんは絶対そう言うと思ってましたよ。」
ビッチA「ちょっと待って!!」
ビッチB「DQN、何これ!?」
DQN「仕返し。」
ビッチC「はぁ!?」
DQN「俺の親友を泣かせてくれやがった仕返し。」
プツン
DQN「あぁ!! イライラすんなぁテメーらぁ!!!!」
ガシッ
ビッチA「ちょっ!! 痛い!!」
DQN「非リアだよ!! アイツぁ中学ん時からの俺の親友だ!!」
ビッチB「!!」
ビッチC「ウソ・・・だって、学校じゃ全然絡んでないじゃん・・・・・・」
DQN「アイツは吃音にコンプレックスを持ってんだ。だから、例え俺が相手でも、二人きりにならねぇと喋らねぇ。」
ビッチA「そんな・・・」
ドレッド「あっ、俺っス。俺、バイなんで。」
DQN「アイツら、あの後どうなったんだ?」
ドレッド「さぁねぇ。俺、途中で帰ったんでよく知らないんスけど、何か、さんざっぱら掘られた後、ヤク食わされたとか聞きましたよ。」
ドッ
ハハハハハハハハッ
ビッチA「ふ、ふざけないでよ!! そんな事したら警さt」
DQN「言えば? けどホラ、あれ見てみ。」チョイチョイ
ビッチ三人「?」クルッ
ジー
黒人「Hey,girls. Smile Smile.」
DQN「あの通り、ビデオ回してっから。俺らん事チクったら、世界中に配信されんぜ?」
ハハハハハハハッ
ビッチA「・・・・・・ど、DQN・・・」ガタガタ
DQN「あっ?」
ビッチA「・・・許して・・・」ブルブル
DQN「はいぃ?」
ビッチB「お、お願い!! もうしないから!!」ガタガタ
ビッチC「何でも言う事聞くから!! 非リアにも謝るから!! だから助けt」ブルブル
DQN「やかましいわゴルァ!!!!」
ビッチ三人「!!」ビクッ
ビッチA「うっ・・・グスッ・・・・・・」ガタガタ
DQN「アイツの傷は一生消えねぇよ!!!! なんでテメーらにアイツの未来に傷残す権利があんだゴルァ!!!? “ごめんなさい”の言葉さえありゃぁ何でも買えるってのか!!!? おぉ!!!? 頭沸いてんじゃねぇよクソッタレ共が!!!! あぁ、もうキレたぜ!!!! チンピラさん!!」
チンピラ「おぉ?」
チンピラ「お~、あるぜ。」
DQN「コイツら姦したら、その人んトコ渡してくれ!! ド底辺のビデオでも上海の裏○俗でも、何でも良い!! 二度とシャバの空気吸えねぇトコにブチ込んでやる!!!!」
チンピラ「お~、良いねぇ。それならよぉ、タコ部屋の肉○器って手もあるぜ? このレベルの娘なら向こうも大喜びだ。」
ハハハハハハハハッ
ビッチA「・・・許して・・・許して・・・・・・」ガクガク
ビッチB「・・・・・・うぐっ・・・・・・お願い・・・」ブルブル
ビッチC「ヒック・・・・・・ママぁ・・・」ガクガク
DQN「さぁて・・・」
DQN「・・・もう良いぜ、みんな。ありがとう。」
ビッチ三人「?」
金髪「DQNさんパネェ! マジ怖かったっスよぉ!」
マッチョ「お~、演技と分かっててもちょっとビビったなぁ。」
DQN「はははっ。まぁ、キレてたのはガチだしな。」
ビッチA「・・・・・・な・・何?」
鼻ピアス「チンピラさん、ナイスアドリブでしたね。」
チンピラ「ヘヘヘッ。さすがに山内組にまでコネはねぇよ。おぅ、アドリブって言うならさっきのドレッド兄ちゃんも大したモンだろ。」
ドレッド「あざっス!」
B系「掘られてヤク食わされるとか、実際ありそうだしなぁ!」
ハハハハハハハハッ
ビッチB「・・・何なの・・・・・・」
ビッチC「・・・DQN?」
DQN「ん~? まだ分かんねぇ?」
ビッチ三人「?」
ビッチA「」
ビッチB「」
ビッチC「」
DQN「ビックリしただろ?」
ビッチA「うぅ・・・」ジワァ
DQN「へへっ。」
ビッチ三人「うわあぁぁぁん!」ヘナヘナ~
DQN「ほい、ハーブティー。俺のおごりだ。飲め。」
ビッチA「・・・・・・ねぇ。」
DQN「ん?」
ビッチA「どこからが・・・ウソだったの?」
DQN「ん~、男A・Bの事とお前らが姦されるって事だけがウソ。後は全部マジだ。俺と非リアはマジで中学からの仲だし、アイツは吃音を気にして、人のいる場所じゃ話したがらねぇ。何でも、俺とか家族とか、気を許した相手とサシで話す分にはそれほどどもらねぇみたいなんだが、周りに人がいると、な。それと、俺がこのクラブに小6から通ってるのもマジ。今日集まってくれたみんなも常連仲間だ。まぁ、さっきチンピラさんが言ってたように、山内組の偉いさんにまでコネのあるヤバい奴はいねぇけど、実際、みんなそれなりに悪い事はしてっからなぁ。決して堅気の人間じゃねぇよ。」
DQN「あ~、それは単純な話だよ。俺が呼び出してボッコボコにしたんだ。そしたら次の日から学校来なくなった。はははっ。」
ビッチC「・・・。」
DQN「どした、C子?」
ビッチC「グスッ・・・怖かった・・・・・・ホントに犯されるかと思った・・・グスッ」
DQN「ふふっ。さすがに堅気じゃねぇ奴らの集まりったって、女子高生を集団レ○プなんてしねぇよ。俺はただ、非リアに酷い事した奴をよ、同じ方法でイテ込ましてやりたかったんだ。男AとBは非リアの事を殴ってやがったからな。だから俺もアイツらを殴った。でも、お前らは非リアを騙しただけで手は出してねぇ。だから俺も、お前らを騙すだけにしたんだ。」
DQN「騙される辛さ、分かった?」
ビッチB「・・・うん。」コクッ
ビッチC「普通に楽しみに来てたし、カッコいい人にナンパされないかなぁとか考えてたから・・・・・・犯されるって聞いた時、心臓止まりそうになった・・・」
DQN「・・・・・・まぁ、その、何だ。女にとって犯されるってのがどんだけ怖い事なのか、男の俺には理解はできねぇが、どんなモンなのかってのは話には聞いてっからな。それこそ、鬱病になっただとか、怖くて家から出られなくなっただとか。だから、ガラの悪い男集めてそれをチラつかせるってのは、最低だったかも知んねぇ。そこんトコは悪かった。」
ビッチB「非リア、謝っても許してくんないよね・・・」
ビッチC「だね・・・」
DQN「いや、アイツは許すよ。」
ビッチA「そうかなぁ・・・」
DQN「アイツはホントに優しいんだよ。俺はアイツより優しい奴なんて知らねぇ。絶対大丈夫だ。心から謝ったら、アイツは必ず許してくれる。」
ビッチA「DQN・・・」
DQN「あ~、そうだ。アイツ、シュークリーム好きなんだよ。生クリームとカスタードクリームが両方入ってるヤツ。それ買ってけよ。そしたら100%許してくれるわ。」
ビッチB「ふふっ・・・・・・分かった。」
ビッチC「あたし、良い店知ってる。」
DQN「お前ら三人だから、一人二個買ってけ。合計六個。そのうち三個は俺が食うわ。はははっ。」
非リア「」
ビッチA「」
ビッチB「」
ビッチC「」
DQN「いや、誰か喋れよ!」ズコッ
非リア「だだだ、だって・・・DQN、これは・・・」オドオド
ビッチA「非リア・・・君・・・」
非リア「!」ビクッ
ビッチA「その・・・昨日はごめん。」
非リア「?」オドオド
ビッチB「ホントに・・・酷い事・・・・・・しちゃって・・・」
非リア「あ、あの・・・」チラッ
非リア「う、うん・・・」オドオド
ビッチC「謝っても許してもらえないかもだけど、ホントに悪い事したって思ってるかr」
非リア「ど、DQNに、ななな、何か・・・された?」オドオド
ビッチ三人「えっ?」
DQN「はぁ?」
ビッチA「・・・。」
ビッチB「・・・。」
ビッチC「・・・。」
DQN「おいおい・・・」
非リア「さすがに女の子を、ななな、殴ったりはしないだろうけど、こわ、怖い思いとかしてないか、ちち、ちょっと心配で・・・」オドオド
ビッチA「・・・。」
ビッチB「・・・。」
ビッチC「・・・。」
非リア「・・・DQN?」
DQN「ハハハハハッ! なぁ! 言った通りだろ、お前ら! コイツはこんなに優しいんだよ! 騙されたってのに、お前らの心配とかする奴なんだよ! ハッハッハッハッ! さすがだよ非リア!」
ビッチA「うっ・・・グスッ・・・・・・非リア君・・・」
ビッチB「ホントごめん!!」
ビッチC「あの、これ! 食べて! シュークリーム・・・」サッ
非リア「えっ? ぼぼ、僕に? 良いの?」
非リア「あああ、ありがとう! 嬉しいよ!」
ズシッ
非リア「ははっ・・・・・・け、結構重いね。」
ビッチA「六個入ってるから。」
非リア「えっ? 六個?」
ビッチB「DQNが半分食べるからって・・・」
DQN「ヘヘヘッ。いただきゃ~っス!」
非リア「もぉ~。さささ、三個も食べれないでしょ!」
非リア「じゃあ・・・」
非リア「今、みみ、みんなで食べようか。」
非リア「う、うん。めめめ、迷惑じゃないなら。」
DQN「おい、待て! 俺の取り分が減るじゃねぇか!」
非リア「みみみ、みんな一個ずつ。ど、DQNだけ二個。じじ、十分でしょ。」
ビッチB「超優しい・・・」
ビッチC「うぅっ・・・あたし、もっと良い子になるぅ。」
ガチャ
DQN「気~が狂いそ~お~ナァナァナァナァナァナァな~♪」
DQN「・・・。」ジー
DQN「ドルァ!!」
バゴン
非リア「!!!!」ビクゥ
DQN「クォルァ!! 非リアぁ!! テメー便所で飯食ってんじゃねぇよ!!」
ガンッ ガンッ ガンッ
非リア「・・・!」ビクッ ビクッ
DQN「外で食うぞ外でぇ!!」
ガンッ ガンッ ガンッ
非リア「い、嫌だぁ!!」
DQN「聞・こ・え・て・欲・し・い~ア・ナ・タ・に~も~♪」
すぅ
DQN「ガンバレー!!!!」
ドカアァァァン
非リア「ギャー!! ドアがぁ!!」
非リア「あ、あ、・・・」
DQN「体育館裏に連行じゃ~い!」
非リア「ああぁぁぁぁぁぁ!」
ズルズルズル
体育館裏
DQN「ったくよぉ。お前、あのビッチトリオの一件以来、ちょいちょいこの体育館裏で食うようになってたじゃねぇか。」モグモグ
非リア「・・・。」モグモグ
DQN「特にここ2週間なんて、連続でここ来て俺と一緒に食ってたのに、なんで今日になってまた便所に逆戻りなんだよ?」
非リア「・・・気まぐれ・・・」モグモグ
非リア「」モグモグ
DQN「」モグモグ
非リア「」モグモグ
DQN「」モグモグ
非リア「・・・ごちそうさま。」
DQN「お粗末さん。」
非リア「じゃあ・・・」スクッ
DQN「行かすかぁ!!」
グイッ
非リア「うわっ!!」
ドサッ
DQN「必殺『行かすか落とし』!!」
非リア「ブレザーを引っ張っただけでしょ!」
DQN「さっさと吐け! でなきゃお前、次は『アルゼンチンバック行かすかー』を食らわせんぞ!」
非リア「何だよその技! っていうか『アルゼンチンの裏に行かすかー』って、アルゼンチンの裏は日本だよ!」
非リア「“裏”って意味もあるの! 舞台裏の事をバックステージとか言うでしょ!?」
DQN「お~。そっかそっか。」
DQN「で? 何があった?」
非リア「う~・・・」
DQN「言えよ。」
非リア「・・・。」
DQN「よっぽど話したくねぇなら聞かねぇがよ、『何かあったか?』って訊かれてキッパリ否定しねぇって事は、お前も『まぁ、話しても良いかな』ってどっかで思ってんだろ?」
非リア「うっ!」ギクッ
非リア「・・・・・・はい。」
DQN「よぉし。タバコでも吸いながら聞こうじゃねぇか。」
シュポッ
非リア「あの、確かにDQNの言う通り、僕は最近、学校でも君と喋るようになった。」
DQN「そうだな。アレだろ? こないだのビッチトリオがお前の吃音を笑わずに聞いてくれたから、ちょっと自信ついたんだろ?」プカプカ
DQN「そんで?」プカプカ
非リア「・・・・・・こないだ、聞いちゃったんだ。」
DQN「・・・何を?」プカプカ
非リア「・・・お、男C君とD君が、『アイツら、最近急に仲良くなったけど、もしかしてゲイなんじゃね?』って・・・・・・」
DQN「カハッ!!」ゲッホ ゲッホ
非リア「ど、DQN!」
DQN「・・・・・・コロス!」ぜぇ ぜぇ
非リア「ダメだってば!! 君はいつもやりすg」
DQN「うっせぇボケ!! 冗談だ!!」
非リア「あっ・・・な、なら良いけど・・・」
非リア(全然目が冗談じゃないんですけど・・・)
非リア「ち、違うよ。僕は別に平気だよ。その・・・・・・陰口には・・・慣れてるから。」
DQN「?」
非リア「その・・・・・・君がそういう目で見られたら、迷惑だろうと思って。」
DQN「!」
非リア「ごめん・・・。」
DQN(そうだ。コイツはそういう奴だった。)
非リア「何?」
DQN「男CとDはどんな感じでその陰口言ってやがった? 冗談っぽくか? それとも結構ネチネチした感じか?」
非リア「・・・・・・ネチネチして・・・た。」
DQN「だろうなぁ。アイツらはそういうタイプだ。」
非リア「知ってるの?」
DQN「アイツら、隣町に住んでんだろ? 俺、小学校の頃、隣町の少年サッカーに入っててよ、アイツらとはそこで一緒だったんだ。」
非リア「あ~、あの二人、サッカー部だもんね。」
非リア「嫌な感じだね。」
DQN「だろ? もうなぁ、アイツらがどんなツラで俺らのその噂してたのか、余裕で想像できるわ。」
DQN「何だそれ?」
非リア「噂はあくまで噂だから、75日もすればみんな忘れるよっていうことわざ。」
DQN「ふざけんな!! 75日って2ヶ月半じゃねぇか!! 長すぎるわ!! そんな期間噂され続けたら全学年に広まるじゃねぇか!!」
非リア「あっ・・・確かに75日って長いね。ははははっ。」
DQN「笑い事じゃねぇ!! ふっざけんじゃねぇぞあの陰険コンビ!! やっぱフルボッコにしてやる!!」
DQN「暴力じゃねぇ!! コイツは聖戦だバカヤロー!!」
非リア「分かったから落ち着こうよ。とにかくさ、暴力は逆にDQNが不利になるよ。」
DQN「はぁ? なんでだよ?」
非リア「もしDQNが男C君とD君を殴ったとするよね? 『テメーら下らねぇ噂してくれてんじゃねぇよ!』とか言ってさ。すると『あの人、ただの噂ごときに必死だなぁ。もしかして事実なのかな? 』って、見てる人は思うよ。」
DQN「そんな事思う奴がいんなら、ソイツも一緒にフルボッコだよ!!」
DQN「ソイツもフルボッコだよ!!」
非リア「じゃあ、その人が(ry」
DQN「ソイツも(ry」
非リア「じゃあ(ry」
DQN「ソイ(ry」
非リア「じ(ry」
DQN「ソ(ry」
非リア「(ry」
DQN「(ry」
非(ry
D(ry
(ry
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
DQN「・・・。」ぜぇ ぜぇ
非リア「・・・。」
DQN「・・・・・・私が悪ぅございました。」ぜぇ ぜぇ
DQN「おい、でもマジでどうすんだよ? このままじゃ俺ら、マジでゲイカップル扱いだぞ!」
非リア「いや、そもそもあの二人だって、本気で僕らをゲイだと思って言ってるんじゃないでしょ。人の事を悪く言うしか出来ない人達なんだよ。」
DQN「だとしても嫌だろうがよ! それにお前知ってっか!? 世の中にはよぉ、ゲイのエ○漫画見て喜ぶ女がいるんだぜ!?」
非リア「腐女子だね。」
非リア「うんうん。」
DQN「しかも、しかもだぞ・・・」
非リア「結構身近なトコロにもいる、でしょ?」
DQN「お、おぉ。そうだよ。クラスに一人、二人は絶対いるらしいじゃねぇか! メガネに白のハイソックスとか履いてる暗い女から、体育会系やら普通の娘やらギャルまで、幅広くよぉ!」
非リア「主婦やOLさんの間にもいるらしいね。」
非リア「良いじゃない。人の自由でしょ。」
DQN「良くねぇよ!! 確かに人の自由だし、その趣味自体は別に構わねぇけどな、俺をオカズにすんな!! しかもお前との抱き合わせとかよぉ!! 想像しただけでもゾッとするわ!! どんな手ぇ使ってでも、これ以上の噂の広まりは阻止してやんよ!!」
非リア「でも、どうやって?」
非リア「・・・。」
DQN「・・・あの・・・ほら・・・・・・」
非リア「・・・。」
DQN「・・・・・・どうすれば良いんでしょうか?」シクシク
非リア「ん~、結局さ、そういう噂や陰口が好きな人は殴られたぐらいじゃ黙らないよ。一瞬は黙っても、ほとぼりが冷めれば。」
DQN「あ~、それもそうだなぁ。」
非リア「その噂がどうでも良くなるぐらいの、もっと上の噂が出回れば良いんだけどねぇ。」
DQN「もっと上?」
DQN「確かに。」
非リア「ワイドショーの情報も、人から聞く噂も、結局は誰かと共有したいからみんな聞くんだよ。だったら、その内容は、より過激で盛り上がる物の方が良いって事。」
DQN「う~ん。言われてみりゃそうだな。」
非リア「だからってDQNがC君・D君の根も葉もない噂を流すのは・・・」
非リア「うん、そうだね。」
DQN「何かないかぁ? 俺らの噂を吹っ飛ばして、尚且つアイツらをイテこます方法・・・」
非リア「難しいねぇ。」
DQN「はい、思い付いた!」
非リア「は、早っ!!」
DQN「イ~ッヒッヒッヒッヒッヒ! 思い付きましたよぉ。俺らの噂もアイツらも、木っ端にできる作戦を。」ニヤニヤ
非リア「ちょ、顔! 怖い怖い!」
DQN「やっぱな、非リア。目には目を、歯には歯を、ゲイ疑惑にはゲイ疑惑を、だぜ。」
非リア「はぁ・・・。」
DQN「けど、これは俺ら二人だけじゃ無理だ。協力者がいる。」
非リア「協力者?」
DQN「おうよ。」ニタァ
非リア(うわぁ。島田紳助より悪い顔になってるよぉ。)
DQN「ってなワケで、俺達はアイツらをイテ込ます協力者を探してんだ。」
非リア「ま、待って。俺“達”じゃないよね? 僕は一言もイテ込ましたいなんて言ってないよね?」
DQN「どうよ? 協力してくんねぇか?」
ビッチA「別に良いけどぉ。」
ビッチB「やるぅ。」
ビッチC「あたしもあの二人キライだしぃ。ず~っと人の悪口言ってんだもぉん。」
ビッチC「あたしもぉ、前聞いちゃったんだわぁ。『あのビッチトリオは色んな奴とヤリまくってるから性病の火薬庫だ』とか言ってんのぉ。」
ビッチB「ウザッ! ちゃんとゴム着けてるっつーの!」
ビッチC「だよねぇ。性病とかなった事ないしぃ。」
DQN「マジ? 俺、中二ん頃、毛ジラミもらったけど?」
ビッチB「中二とか早いしぃ!」
ビッチC「ウケるぅ! チェリー捨てたんいつぅ?」
DQN「中一だけど?」
ビッチB「早っ!」
ビッチC「超ウケるぅ!」
非リア(もげろ!!)
非リア「はっ、はい!?」ビクッ
ビッチA「協力しても良いけどぉ、一個訊いて良い系?」
非リア「えっ? あっ・・・どど、どうぞ系・・・」オドオド
ビッチA「まぁ、これはDQNにも質問する感じになるんだけどぉ。」
DQN「?」
非リア「?」ドギマギ
ビッチA「アンタ達二人ぃ、マジでゲイじゃないよね?」
DQN「はぁ!?」
非リア「んな!? ななななな、なに、なに、何を!?」
ビッチB「キャハハハハッ!」
ビッチC「ウケるぅ! 二人テンパりすぎだしぃ!」
DQN「アホかテメー! 余裕でゲイじゃねぇわ!」
非リア「ぼ、僕もゲイじゃないよ! れれれ、恋愛対象は女の子だけだから(付き合った事ないけど)!」
ビッチA「マジだよねぇ? 信じるよぉ?」
DQN「いやいやいや、当たり前だろ! 信じろよ、そこはよぉ!」
非リア「な、何でそんなに疑うの?」
ビッチA「いや、別にぃ・・・・・・何となくぅ。」
DQN「はっ!! ま、まさか・・・」
非リア「えっ?」
ビッチA「何ぃ?」
DQN「お、お、お前、噂の腐女子ってヤツか!?」
ビッチB「キャハハハハッ!」
ビッチC「ヤバい、笑いすぎで腹痛いしぃ!!」
DQN「BL? 何だそれ? ベーコン・レタス?」
非リア「ボーイズ・ラブ。君がさっき言ってた、ゲイのエ○漫画の事だよ。」
DQN「お~、なるほど。そういうの、BLっていうんか。」
ビッチA「まぁ、でも分かったぁ。ゲイじゃないんだねぇ。じゃあ信用するぅ。」
DQN「当たり前だ、バカヤロー。」
非リア「信じてもらえるなら何より。」
DQN「おう。そんじゃ、作戦を説明すんぜ!」
翌日 非リア達の教室
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン
DQN「うっし! 昼休みだ! 非リア、飯行くぞ!」
非リア「うん。今日は僕、お弁当じゃないんだ。購買まで付き合ってくれる?」
DQN「おう。」
ヒソヒソ ヒソヒソ
ねぇ、あの二人って付き合ってんの?
らしいよぉ 何かラブラブじゃん
どっちが掘る側なんだろ?
非リアって喘ぐ時も噛むのかな?
ヒソヒソ ヒソヒソ
非リア「予想以上に噂が広まってるね・・・」ヒソヒソ
DQN「やっぱ皆殺しに・・・」ボソッ
非リア「だだだ、だからダメだってば! 」アタフタ
DQN「冗談だボケ! 殺すぞ!」ピクピク
非リア「タイミングをじっくり待つって言ったのはDQNだろ。」ヒソヒソ
DQN「分かってるボケ! 殺すぞ!」ピクピク
更に翌日
男C「ホントさ、あのゲイカップル、キモいよな。」
男D「だな。いつもいつも一緒に昼飯とか食ってさ。」
男D「ダハハハハ! すげぇ似てる、それ! でも、俺はDQNの方がキモいと思うなぁ。なんか“かわいそうな知恵遅れを相手してやってる俺、超善人”みたいな。ほら、女の方はすっげぇカワイイのに男の方が超絶ブサいカップルっていんじゃん? あれだって絶対女の方がDQNと同じような事考えてると思うんだわ。」
男C「あぁ、それも分かる。要するにキモい奴同士が見栄で引っ付いてんだろ。」
男C「えっ?」クルッ
男C「お、ゲイカップルご登場だ。よし、話題変えようぜ。」ニヤニヤ
DQN「・・・。」スタスタ
非リア「・・・。」スタスタ
男C・D「・・・。」ニヤニヤ
非リア「絶対僕らの事話してたよね。」ヒソヒソ
DQN「だろうな。」ヒソヒソ
非リア「それもきっと、周りに聞こえるような音量で・・・」ヒソヒソ
DQN「非リアよぉ。俺はこの2日間でずいぶん大人になったぜ。」ヒソヒソ
非リア「えっ?」
DQN「ストレスってのは溜まれば溜まるほど、ブチまけるのが楽しみになってきて、逆に元気が湧いてくる。その事実に気付いちまった。」ヒソヒソ
非リア「はぁ・・・。」
DQN「イ~ッヒッヒッヒッヒッヒッ!」
ザァァァァァ
ザワザワザワ
雨だよぉ
最悪だ 体育中止じゃねぇか
保健の教科書持って来てねぇよ
ザワザワザワ
DQN「非リア。雨だ。」
非リア「・・・雨だね。」
DQN「恵みの雨だ。」
非リア「血の雨の間違いじゃない?」
DQN「この時を待ってたんだ! 体育の日に、雨!」
非リア「いよいよ・・・やってしまうんだね・・・」
DQN「おうよ! これは時代が俺に、奴等を殺せと言ってんだ!」
非リア「はぁ・・・。」
DQN「さぁ! 作戦実行だ!」
体育教師♀「~というワケで、未成年の喫煙は体にもたらされる害が多いワケです。」
ビッチA(うぅわぁ、何か緊張してきたし。)ドキドキ
ビッチB(ヤッバ! 口の中カラカラ!)
ビッチC(あと30秒・・・・・・5)
ビッチA(4)
ビッチB(3)
ビッチC(2)
ビッチA(1)
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン
体育教師「はい、では今日はここまで。授業の冒頭でも言ったけど、今日の内容をレポートにまとめて、来週の体育の時に提出するように。来週晴れだったら、予定通りソフトボールをします。以上。」スタスタスタ
ガラッ
スタスタスタ
ビッチB(今しかなくね? 先生以外みんなまだいるし!)コクッ
ビッチC(A子! B子! Go! Go!)コクッ
ビッチA「・・・。」
すぅ
ビッチA「えっ、ちょ! 何、これぇ!」
一同「?」
ザワザワザワ
同時刻 教室へ戻る男子体育一行
ゾロゾロ
男C「レポートとかマジ面倒くせぇよ。」
男D「“タバコは二十歳になってから”の一言で終わりじゃん。」
男E「ははっ。まぁ、仕方ないじゃん。レポートっつってもA4一枚。すぐだよ。頑張ろうぜ。」
男D「柔道部の顧問だからって何か勘違いしてんじゃね? こっちがバットとか持って殴りかかったら柔道もクソもないっての。」
男E(チッ。また悪口かよコイツら。あぁ、嫌だ嫌だ。聞きたくない。)
男E「おう、俺ちょっとトイレ寄ってくわ。先に戻ってて。」
男C・D「「あいよぉ。」」
男E「」スタスタ
男C「なぁ、男Eってさ、何か真面目ぶってて嫌な感じしねぇ?」
男D「分かる。本物の真面目とは違うよな。あくまで“真面目ぶってる”だけ、みたいな。」
男D「あぁ、キモいキモい。」
ガラッ
ザワザワザワ
マジかよ
え~、ウソォ
そんな趣味が
ザワザワザワ
男C「ん?」
男D「何か騒がしいな。」
男C「あれ? 何かみんな、俺の席に群がってないか?」
男D「おい、どうしたんだよ?」
一同「!?」クルッ
シーン
男C「・・・えっ? 何?」
男D「・・・何かあったん?」
シーン
男C「いや、おい、黙んなよ! 何なんだよ!?」
ビッチA「あ、あのさぁ、男C・・・」
男D(出た。性病火薬庫A。)
ビッチA「さっきの保健の時間であたしぃ、アンタの席だったんだけどぉ・・・」
男C「?」
男D(うっひゃ~。男C、机と椅子消毒しなきゃな。)
ビッチA「こ・・・こんなのがぁ・・・出て来たんだけどぉ・・・」スッ
男C・D「!!!?」
二週間と二日前 空き教室
DQN「おう。そんじゃ、作戦を説明すんぜ!」
DQN「まず、この作戦を決行すんのは、雨で体育が中止になる日だ。」
ビッチA「えぇ? そんなの、いつになるか分かんないじゃん。」
ビッチB「そんでぇ?」
DQN「雨で体育が中止になれば、教室で保健の授業になるわな。男子は4組の教室、女子は俺らの教室でよぉ。」
ビッチC「うんうん。」
DQN「男子はそこでの席の並びは、体育ん時の整列の順になってんだけど、お前らもそうか?」
ビッチA「どうだっけぇ? 覚えてないなぁ。」
ビッチB「あたし覚えてるぅ。男子と一緒ぉ。体育の整列順。」
ビッチC「えぇ? 待ってぇ。男CとDの席ってぇ、それぞれ何番なワケぇ?」
DQN「え~っと・・・」
非リア「C君が5番、D君が20番、だね。」
DQN「おっ、サンキュー。どうよ、お前ら?」
ビッチA「あ~、あたし5番だわぁ。」
ビッチB「あたし20ぅ。」
DQN「うぉ!! キター!! ダブルビンゴぉ!!」
非リア(嗚呼、C君・D君、アーメン・・・)
DQN「じゃあ、この作戦の協力者はA子とB子だ。」
DQN「悪ぃな。よし、じゃあA子、B子。お前らは作戦当日、まずは普通にアイツらの席で授業を受けてくれ。そんで授業が終わって、先生が先に出てって、まだ他の女子が残ってる状況の時に、アイツらの机に“ある物”を入れて欲しいんだ。まぁ、その“ある物”ってのは、まだ用意はできてねぇ。この作戦も、さっき思い付いたトコだからよぉ。当日までには用意するぜ。そんでだなぁ、その“ある物”を入れると同時に、A子には『何これぇ!』って叫んで欲しいんだ。」
ビッチA・B「ある物ぉ?」
ビッチC「何ぃ? 教えてよ。」
DQN「イ~ヒッヒッヒッヒッヒッ。それはなぁ・・・」
男C「しゃ、『射○管理刑務所』ぉ!?」
男D「げ、ゲイのDVD!?」
ビッチA「あ、あのさぁ・・・これ、アンタのぉ?」
男C「ふっ、ふざけんな!! 俺のモンなワケあるかぁ!!」
ザワザワザワ
いや、でも実際アイツの机から出てきたし
マジかよ
いや、別にゲイが悪いワケじゃないけど
ザワザワザワ
男C「ま、待てよ!! 誤解だって!! っていうかビッチA!! お前、なに人の机勝手に漁ってんだ!! プライバシー侵害だろ!!」
男C「だ、だからってお前・・・!!」
ザワザワザワ
えっ? DVDよりプライバシーの心配?
じゃあ、やっぱあれって男Cの物なんじゃ
ザワザワザワ
男C「い、いや、もちろんそのDVDだって俺のじゃねぇよ!! マジだって!!」
ヒョコッ
DQN「よぉ! 男Cの机からそんなん出てきたって事はさぁ、いっつも一緒にいる男Dはどうなんだろうな?」
男D「はぁ!?」
男D(いやいや、黙れよゲイ野郎!!)
男D「ちょ、おい!! やめろよテメー!! 人の机を!!」
DQN「ぬおぉぉぉぉぉ!!!! 何じゃこりゃぁ!!!?」
ババーン
男C「!?」
男D「なっ!?」
ザワザワザワ
DQN「『射○管理刑務所2』・・・って、続編じゃねぇかぁ!!!!」
男D「ば、バカな!! そんなモン、俺は知らねぇよ!!」
ザワザワザワ
うわぁ、これはガチだろぉ
だって、続編だよぉ
アイツら、そうなのか
ザワザワザワ
男C「いや、違う!! 本っっっ当に違うから!!」
男C「はぁ!? な、何を!?」
ザワザワザワ
陰棒!?
ハメる!?
ザワザワザワ
男D「お前、部活での俺のポジションを奪う気だろ!! だからこんな真似を!!」
男C「何言ってんだよ!! お前、補欠じゃねぇか!! レギュラーがケガした時の数合わせだろうが!!」
ザワザワザワ
オケツ!?
汚(けが)した!?
ザワザワザワ
男D「みんな騙されるな!! コイツは俺の事もみんなの事も騙そうとしてる極悪人だ!!」
DQN「え~? 自作自演って、そのDVDお前らが主演なのぉ?」ニヤニヤ
阿部寛「うほっ!」
郷ひろみ「カマァァァン!」
男C「黙れお前ら!! みんな信じてくれ!!」
男D「信じてくれ!!」
「「信じてくれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」
放課後 体育館裏
DQN「ブワハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
非リア「いつまで笑ってるんだよ。」
ビッチB「さっき一回、笑いすぎで吐いてたしぃ。」
ビッチC「さすがにもうウケないんですけどぉ。」
DQN「アーッ! アーッ! 腹痛ぇ! 完璧だ! 完璧すぎる大勝利だぁっハハハハハ!!」
非リア「まったく。」
ビッチA「悪魔だね。」
ビッチB「悪魔ってか大魔王じゃね?」
ビッチC「マジ恐怖だわ。」
DQN「あ~、勝利の後のタバコはうめぇなぁコレ!」ぷはー
非リア「ねぇ、これで終わりで良いのかな? 下手すればあの二人、登校拒否だよ?」
非リア「いや、それはまた別の話だと思うよ。僕らはその娘と知り合いじゃないし、この騒動だってその娘の敵討ちってワケでもないんだから。」
ビッチB「あ~、それもそっかぁ。」
非リア「DQNはあんな噂流されて、かなり気を害したみたいだけど、僕は別にそんなでもないから。何か、あの程度の陰口の報復で登校拒否というは、さすがに可哀想な気がするんだけど・・・。」
ビッチA「・・・。」
非リア「や、優しくなんかないよ。能天気なだけだから。」
DQN「いや、お前の優しさは本物だよ。そこは俺が保証する。そんでよぉ、多分あの二人はあれしきの事じゃ登校拒否にはならねぇよ。」
非リア「そうかな?」
DQN「あぁ。そもそも誰にも心開かねぇで、他人の悪口だけで会話して、挙げ句、その悪口を言い合える相方の事すら信用してなかった奴らだぜ。結局、今回のこの件でアイツらが失った物って、実は何もないんだよ。」
非リア「そうなのかなぁ?」
非リア「う~ん・・・」
DQN「そうだって。まぁ、見てな。明日アイツらは普通に学校には来るぜ。ただし、もうお互いに口利く事はねえだろうけどよ。もしアイツらが来なかったら、俺、お前らにラーメンおごってやんよ。」
ビッチA「マジ?」
ビッチB「あたしチャーシューメン!」
ビッチC「あたしトンコツ!」
DQN「そんかわりお前ら、アイツらがちゃんと来たらチャーシューメン大盛りネギ増しとチャーハン大盛りと餃子5人前と生中5杯、1人1セットずつ俺におごりだぞ。」
ビッチB「あっ、あたしバイトだぁ。帰るねぇ。」
ビッチC「あたしもぉ、何か今日バイト休みじゃない気ぃしてきたぁ。」
ビッチB・C「じゃあねぇ。」ソソクサ
DQN「・・・あれ? A子はバックレねぇのか?」
ビッチA「ん~、まぁねぇ。共犯じゃん? 特にB子・C子よりぃ、あたしの方が共犯度高いじゃん? だからその賭ぇ、付き合ったげるぅ。」
非リア「そ、そんな、良いよ。お金がもったいないよ。」アセアセ
ビッチA「良いのぉ! あたしも参加すんのぉ!」ビシッ
非リア「!!」ビクゥッ
ビッチA「・・・良いっしょ?」
非リア「は、はい・・・」
DQN「おいおい、何でそんなヤル気満々なんだよ。」
DQN「ん?」
非リア「?」
ビッチA「なんでアンタら二人ってぇ、そんなに仲良いワケぇ?」
DQN「はぁ?」
非リア「な、なんでと言われても・・・。」
ビッチA「だって普通さぁ、アンタらみたいなのってぇ、ツルまないじゃん?」
DQN「まぁなぁ。」
ビッチA「違うじゃん? 何か、そのぉ・・・種類?がさぁ。」
非リア「人間の種類がね。」
DQN「キッカケは、まぁ、中一でクラスが一緒だったからだけど・・・・・・よぉ。」チラッ
非リア「何っ?」
DQN「話して良いんか?」
非リア「えっ? 別に良いでしょ? 何か隠す事がある?」
DQN「いや、お前の姉ちゃんの事とか・・・」
ビッチA「?」
非リア「あぁ、大丈夫だよ。ありがとう。完全に吹っ切れたワケじゃないけど、さすがにもう、平気だよ。」
DQN「そっか。よし、A子。そんじゃ話すぜ。」
シュポッ
DQN「ふぅ~。えっとな、俺と非リアは中学で初めて出会ったんだ。小学校は別々でよ。」
ビッチA「うん。」
DQN「最初の頃は全っ然話もしなかった。さっきお前が言った通り、人間の種類が違うからな。俺も非リアも、お互いに全く関わる気もなかった。」
非リア「そうだね。何なら、僕は君の事・・・少し嫌いだったかも。ははっ。ごめんね。」
DQN「はんっ! 言ってくれんぜ。まぁ、確かにあの頃の俺は今よりもっとガキだったからなぁ。きっと周りは迷惑で仕方なかっただろうな。」
DQN「まぁ、そんでだ、あれは中一の・・・・・・10月だったか?」
非リア「ん? 9月かな? ごめん。よく覚えてないや。」
DQN「まぁ、とりあえずその辺だ。中一の二学期。とある事件が起きるんだ。そこで俺とコイツは、実質、初めて口を利く事になる。」
ビッチA「事件? 何それぇ?」
DQN「あぁ、それはな・・・」
担任「おっ、ここにいたかDQN!」
ザッザッ
非リア「!」
ビッチ「!」
DQN「げっ! 先生・・・」
ビッチA(タバコ・・・)
担任「ったく、また校内でタバコなんか・・・まぁ、良い。今は緊急だ。見逃してやる。」
DQN「はっ? 緊急?」
非リア「どど、どうしたんですか?」
ビッチA「何かあった系ぇ?」
担任「DQN、お前、今すぐ荷物まとめて、医大病院に行け。」
DQN「病院?」
担任「お前のお母さんが、職場で倒れられた。」
ビッチA(タバコ・・・)
担任「ったく、また校内でタバコなんか・・・まぁ、良い。今は緊急だ。見逃してやる。」
DQN「はっ? 緊急?」
非リア「どど、どうしたんですか?」
ビッチA「何かあった系ぇ?」
担任「DQN、お前、今すぐ荷物まとめて、医大病院に行け。」
DQN「病院?」
担任「お前のお母さんが、職場で倒れられた。」
DQN「骨折っスか?」
医者「うむ。そうだね。」
DQN「えっ? 何か、学校からはオフクロがブッ倒れたって聞いたんスけど。ブッ倒れたって事は、何かしらの病気じゃないんスか?」
医者「あぁ、それは恐らく、病院側と学校側との間で、少々会話に食い違いがあったんだろう。申し訳ない。正しくは“階段を上っている時に貧血で倒れて、そのまま階段から転がり落ちて両足骨折”だね。」
DQN「はぁ・・・。」
医者「まぁでも、両足とは言え、骨折で済んだのは不幸中の幸いだったよ。階段で気を失うというのは本当に怖い事なんだ。事故の一部始終を見ていた同僚の方のお話では、お母さんは階段を上っている時に気を失って、前のめりに倒れられたらしい。この“前のめり”だった事は本当に幸いだったと言える。」
医者「そうだとも。これがもし後ろ向けに倒れていたりしたら、それこそ大惨事になっていたかも知れないよ。まったくのノーガードで後頭部を強打し、そのまま階段を転がり落ちて行くんだから。」
DQN「あぁ、そっか。そうっスね。想像したら怖ぇっスね。」
医者「とりあえずね、足以外、骨折した箇所はないし、CTも撮ったけど脳にも異常はなかったからね。」
DQN「そっスか。先生、完璧に治るまで、どんぐらいかかります?」
医者「2ヶ月ほどだろうね。もちろん、絶対安静が大前提だから、その間は仕事も控えてもらわなくてはならない。」
DQN「あっ、はい。それはもちろんっス。」
ガラッ
DQN「えっと、一番窓側のベッドだったな・・・」
ツカツカツカ
DQN「おっ、いたいた。オフクロ・・・」
DQN母「Zzz・・・Zzz・・・」
DQN「なんだ、寝てんのかよ。」
DQN母「Zzz・・・Zzz・・・」
DQN(無理もねぇ。女手一つで俺を育てながら、クソ親父の残した借金返す為に、昼はビルの清掃業、夜は居酒屋で働いてんだ。ケガでもしなきゃ、こんなゆっくり横になれる暇なんて、なかなかねぇもんな。)
DQN母「Zzz・・・Zzz・・・う、う~ん」むにゃむにゃ
DQN母「Zzz・・・Zzz・・・」
DQN「明日また来んぜ・・・」クルッ
向かいのベッドの老人「兄さん、帰るのかい?」
DQN「あぁ。起きる気配がねぇかんな。ジィちゃん、悪いけどオフクロが起きたら『バカ息子が見舞いに来てた』って伝えてくれや。」
向かいのベッドの老人「よしよし。分かった。伝えよう。」
DQN「すまねぇ。ジィちゃんもお大事にな。」
ツカツカツカ
シュポッ
DQN「ふぅ~・・・。」
DQN「・・・。」
DQN(清掃業の方は、足が治れば復帰できるだろう。何だかんだで10年ぐらい勤めてる会社だ。向こうとしてもベテランパートのオフクロには、いて欲しいハズ。)
ふぅ~
DQN(問題は居酒屋の方だ。あっちはまだ勤めて半年も経ってねぇ上に大手のチェーン店。たかがパートのババア1人に、清掃業の方みたいな情は望めねぇ。代えはいくらでも利く。2ヶ月も穴空けりゃあ、確実にクビだ。)
ふぅ~
DQN(これはもう、居酒屋はやめさせるべきだ。到底身がもたねぇ。そんで、後は借金をどうするかだなぁ・・・)
ジジッ
DQN「熱っ!!」バッ
ポトッ
DQN「・・・っつぅ。いつの間にか根本まで吸っちまってた。」
ヒョイッ
ジュゥ~
DQN「・・・。」
DQN「・・・・・・単車買うために貯めてたバイト代、切り崩すか。」
DQN「はぁ・・・すっかり暗くなっちまったな。あっ、しまった! ベスの飯と水、空っぽじゃねぇか!?」
キィ
DQN「ベス! 帰ったぞぉ!」
シーン
DQN「?」
DQN「ベスぅ!」
シーン
DQN「ベス公!」
シーン
DQN(おかしい。いつもなら門のきしむ音だけで喜んで飛び付いて来んのに。犬小屋で寝てんのか?)
ザッザッ
DQN「ベス?」
シーン
DQN「!!」
DQN(べ、ベスがいねぇ!)
キョロキョロ
DQN(誰かがベスを連れ去った? でも、何の目的で?)
DQN(あぁ、クソ! 1日に色々起きすぎだバカヤロー!)イライラ
シュポッ
ふぅ~
DQN(えっと、こういう場合は、警察で良いのか? それとも保健所か?)
イライラ
イライラ
イライラ
イライラ
DQN「あぁ、もう!! 両方電話してやんよ!!」
ハッ ハッ ハッ
DQN「ん?」
DQN「犬の足音・・・ベスか?」
?「ちょ、ちょ、ちょっとストップぅ!! 早すぎるよぉ!!」
?「ちょ、必死すぎぃ!マジウケるんだけどぉ!」
DQN「?」
?「うわあぁぁぁぁぁ!!」
ズルズルズル
?「キャハハハハッ! あれぇ? 門開いてるよぉ? DQN帰ってんじゃね?」
DQN「何だ?」
ベス「ウォン! ウォン! ウォン!」
ハッ ハッ ハッ
DQN「うぉっ! ベス! お前、どこ行ってやがっt」
非リア「ギャアァァァァァァ!!」
ズルズルズル
DQN「非リア!? A子!?」
非リア「ぜぇ・・・や・・・・・・やぁ・・・ぜぇぜぇ・・・・・・DQN・・・ぜぇ」
ビッチA「やっぱDQN帰ってたんだぁ。」
ベス「ハッ ハッ ハッ ハッ」フリフリ
DQN「お、お前ら・・・・・・どうしたんだよ? なんでベスを?」
非リア「えっと・・・ぜぇぜぇ・・・・・・えっとね・・・ぜぇぜぇ・・・・・・あのね・・・ぜぇぜぇ・・・」
ビッチA「言えてないしぃ。あたしが説明するわ。あのねぇ、学校でDQNのお母さんが倒れたって聞いてぇ、DQN、学校飛び出してったじゃぁん?」
DQN「そうだな。」
ビッチA「でねぇ・・・」
DQN「ちょ、悪ぃ!! 俺、行くわ!!」
非リア「う、うん。分かった。」
ビッチA「急いで行ったげてぇ!」
DQN「おぅ!! じゃあな!!」
バタバタバタ
非リア「・・・・・・大丈夫かな・・・」
ビッチA「きっと大丈夫だよぉ。倒れたってだけでぇ、別にすごい病気とは限らないしぃ。」
非リア「そう・・・だね・・・」
ビッチA「・・・。」
非リア「・・・。」
ビッチA「・・・。」
非リア「・・・。」
ビッチA「・・・ねぇ。」
非リア「えっ? あっ、はい!」ビクッ
非リア「え? どどど、どうするとは?」オドオド
ビッチA「今からどうすんのかって事ぉ。この後ヒマぁ?」
非リア「えっと、別に用事とかはないけど・・・」ドギマギ
ビッチA「ふぅん・・・・・・スタバでも行くぅ?」
非リア「え? スタバ?」オロオロ
ビッチA「うん。」
非リア「えっと・・・・・・い、良いよ」アセアセ
ビッチA「じゃ、行こっかぁ。」
非リア「うん・・・・・・」
非リア「・・・・・・あっ、ま、待って!」
ビッチA「何ぃ?」
ビッチA「DQNの家ぇ? なんでぇ?」
非リア「もし、DQNの帰りが遅くなるようだったら、ベスのご飯をあげる人がいなくなっちゃう。」
ビッチA「ベスぅ?」
非リア「犬。DQNが飼ってる犬。」
ビッチA「へぇ。DQN、犬飼ってんのぉ?」
非リア「う、うん。ベスのご飯や散歩は、全部DQNの仕事なんだ。だから・・・」
ビッチA「そっかぁ。じゃあ、そうしよぉ。」
非リア「えっ?」
ビッチA「DQNん家。行くんでしょ?」
ビッチA「ダメ?」キョトン
非リア「!!」ドキッ
非リア(く、首を傾げるポーズ、カワイイ!)
非リア「い、良いよ。」
ビッチA「じゃあ、行こぉ。」
非リア「う、うん。でも、その前にホームセンターに寄ろう。」
ビッチA「ホームセンター?」
非リア「DQNの家には入れないから、ベスのご飯と水を買ってかなきゃ。」
ビッチA「あ、そっかぁ。」
非リア「ドッグフードって、色々あるんだなぁ。」
ビッチA「ベスがいつも食べてんのはどれぇ?」
非リア「それが、分からないんだ。さすがにドッグフードのパッケージまでちゃんと見た事はないから。」
ビッチA「まぁ、人ん家の犬のドッグフードなんてぇ、そんなに注意して見ないよねぇ。」
非リア「う、うん・・・。」
ビッチA「ベスって何犬?」
非リア「大型犬。」
ビッチA「じゃなくて種類ぃ。セントバーナードとかぁ、シベリアンハスキーとかぁ。」
非リア「あぁ、な、何だったかなぁ。黒くて優しい顔してて、なんとか“レト”なんとかって・・・」
ビッチA「ラブラドール・レトリーバー?」
非リア「あっ、それだ!」
ビッチA「へぇ~、ラブ飼ってんだぁ。」
非リア「ラブ?」
ビッチA「ラブラドールのあだ名ぁ。あたしも昔飼ってたんだぁ。ラブラドール飼ってる人はぁ、みんなラブって呼ぶのぉ。」
非リア「へ、へぇ。そうなんだ。」
非リア「あっ、ホント? じ、じゃあこれにしよう。」
非リア(ついて来るって言われた時は焦ったけど、今となってはホントに来てもらって助かったなぁ。)
非リア「・・・。」
すぅ はぁ すぅ はぁ
ビッチA「何で深呼吸してんのぉ?」
非リア「い、いや、ベスは良い子なんだけど、ちょっとジャレつき方がパワフルなんだ。」
ビッチA「あ~、大型犬だしねぇ。うちのラブもそうだったなぁ。」
すぅ はぁ すぅ はぁ
非リア「・・・よし。は、入るよ。」
ビッチA「うん。」
キィ
ワフッ
非リア「!!」
ベス「ウォンッ! ウォンッ! ウォンッ!」
ドドドドド
非リア「来たあぁぁぁ!!」
ベス「わお~ん!」
ガバァッ
ドシャァッ
ビッチA「うわぁ、ラブ久しぶりに近くで見たけど、やっぱデカッ!」
ベス「ハッ ハッ ハッ ハッ」フリフリフリ
ベロベロベロ
非リア「うわ・・・ちょ・・・ベs」
ベス「ハッ ハッ ハッ ハッ 」
ベロベロベロ
ビッチA「キャハハハハッ! 気に入られてんねぇ!」
ベス「ハッ ハッ ハッ ハッ 」
ベロベロベロ
非リア「助けてぇぇぇぇ!!」
ベロベロベロ
非リア「よしよし、ベス。ご飯持って来たよ。」
ジャラジャラジャラァ
ベス「ウォン! ウォン! ウォン!」フリフリフリ
非リア「ベス! 待て!」
ベス「・・・。」ピタッ
非リア「・・・。」
ベス「・・・。」
非リア「・・・よしっ!」
ベス「ワフッ!」
ガツガツガツ
ビッチA「超食ってるしぃ。」
非リア「良かった。や、やっぱりお腹空いてたんだ。」
ガツガツガツ
ビッチA「ってワケぇ。そんでぇ、ご飯食べたらベスが犬小屋の中からリード持って来たからぁ、散歩連れてったのぉ。」
DQN「そっかぁ・・・・・・いや、二人とも悪ぃな。マジ助かったぜ。俺もさっき、門の前まで来たトコでベスの飯の事思い出してよぉ。『しまった』って思ってたんだ。」
非リア「DQN。ベスのご飯ってこれで合ってるかな?」サッ
DQN「お~、ビンゴだぜ! ベスがいつも食ってる奴、まさにこれだ!」
ビッチA「キタ! あたし神チョイス!」
非リア「いや、良いよ別に。僕が出しとくよ。」
DQN「いや、そんなワケにいくかよ! ちゃんと返すっつーの!」
非リア「良いよ、ホントに。一番小さいのを選んだから、安かっt」
ビッチA「ストーップ!!」
DQN「!?」
非リア「!?」ビクッ
ビッチA「も~。男同士のそのやり取りキリがないしぃ! こうすればぁ? 明日のラーメンの賭は無し! で、DQNはあたしと非リア君にラーメンおごってくれる! どう?」
DQN「よっしゃ、上等だ! 半チャンセットでおごってやんよ!」
ビッチA「イエ~イ! 決まりぃ! ゴチになりやぁす!」
非リア「ま、まぁ、DQNが良いのなら、それで・・・。あっ、それより、おばさんは!?」
DQN「あぁ、骨折だけで、命に別状はねぇよ。」
ビッチA「えっ? 骨折ぅ?」
非リア「だ、大丈夫なの?」
DQN「あぁ、そうだなぁ・・・・・・はぁ~。とりあえず、中入らねぇか? あんま人に話聞いてもらうのは好きじゃねぇんだけど・・・・・・今日はもう疲れた。ちょっと聞いてやってくれ。」
非リア「う、うん・・・」
ビッチA「いくらでも聞くしぃ。」
DQN「ベス。今日はお前も家ん中入れ。」
ベス「ウォン!」
ベス「ハッ ハッ ハッ ハッ 」フリフリフリフリ
DQN「~ってワケだ。」ナデナデ
非リア「そっか・・・おばさん、ついに体壊しちゃったのか・・・」
ビッチA「っていうかさぁ、その借金ってぇ、ホントにDQNママが返さなきゃいけない系なのぉ? 闇金とかじゃ・・・」
DQN「いや、闇金じゃねぇ。ちゃんと法律の範囲内でやってる、まともな金貸しだ。非リアには前に話したが、親父とオフクロは俺が小3の時に離婚したんだ。っつっても、円満離婚だったからよぉ。それ以降も連絡は取ってたし、親父が俺を釣りや映画に連れてったりもしてたんだ。で、俺が小6ん時に、親父が新しい商売をする為に金を借りたいから、連帯保証人になってくれと抜かしやがってよぉ。」
DQN「あぁ。オフクロも考えが甘いぜ。当時、親父は毎月の養育費の振込を一度も欠かした事がなかったから、金の事なら大丈夫だろっつって信用しちまったんだ。まぁ、元夫婦の腐れ縁ってのもあったんだろうけどよ。で、それからしばらくして、親父と連絡が取れなくなっちまった。まぁ、要するに親父の野郎、飛びやがったワケだな。養育費の振り込みも途絶えて、親父の借金は丸々オフクロの物になっちまった、と。」
非リア「ねぇ。借金って、あといくら残ってるの?」
ビッチA「そっかぁ。じゃあ、とりあえずはまだ安心なんだねぇ。」
DQN「まぁな。だからとりあえず、俺が単車買うために貯めてた60万をそこにブッ込んでよぉ、一気に減らしてやろうと思ってんだ。」
非リア「ん~、仕方ないけど・・・・・・DQNの大事なお金なんだよね・・・」
DQN「良いんだよ。単車に乗れなくたって死にやしねぇ。けど、オフクロをこれ以上働かせたらマジで死ぬかも知んねぇんだ。使わねぇ手はねぇ。」
DQN「俺はよぉ、今までオフクロに甘えすぎてたって、今日思い知ったぜ。中学ん頃から知り合いのコネで工場の短期のバイトとか内緒でやらしてもらって、高校入ってからもバイトで自分の金作って、オフクロに小遣いも誕生日プレゼントもせびらねぇ事で満足してたんだ。クソ間抜けな話だぜ。自分の遊ぶ金を自分で作るっつう、当たり前の事をしてただけなのに、それでオフクロに迷惑かけてねぇとか、俺は自立してるだとかって勘違いしてたんだ。実際、俺の学費や税金や光熱費は全部オフクロが払ってくれてたのによぉ。」
ビッチA「あたしもぉ・・・」
DQN「まぁ、でも、俺ももう高3だ。卒業まであと9ヶ月。もうここまで来たからにゃ、キッチリ卒業したいと思う。コイツは俺のチンケなプライドだ。今すぐ学校やめて働かねぇ代わりに、少ねぇけど、この単車代をブッ込もうってワケだ。世の中ギブアンドテイク。タダで楽しい思いはできねぇよ。」
非リア「・・・。」
ビッチA「・・・。」
シュポッ
DQN「ふぅ~・・・・・・ありがとな、お前ら。聞いてもらったら何かちょっと楽になったわ。たまには人に話すってのも良いモンだな。」
ビッチA「・・・。」
DQN「さぁて、色々面倒見てもらっといて悪いんだが、俺そろそろ寝るわ。さっき、帰ってくる時によぉ、バイト先の先輩に電話して、先輩が明日入るハズだった6時~16時の枠、代わってもらったんだ。って事だから非リア、明日俺、学校休むんで、よろしく。」
非リア「う・・・うん・・・・・・分かった・・・」
ビッチA「・・・バイト、頑張ってね・・・・・・」
DQN「おうよ。バリバリ稼ぐぜぇ。」
スクッ
ビッチA「うん・・・お邪魔しましたぁ・・・」
スクッ
DQN「おぅ、悪ぃな。追い返すみたいでよぉ。」
非リア「・・・・・・良いよ。」
ビッチA「・・・。」
非リア「・・・じゃあね。」
ビッチA「・・・またねぇ。」
パタンッ
トボトボ
トボトボ
ビッチA「DQNは偉いよねぇ。あたしなんて何も考えずに生きてんのにぃ。」
非リア「・・・僕は・・・DQNの友人失格だ。」ボソッ
ビッチA「・・・・・・そんな事なくね?」
非リア「DQNは、こんな僕の友達になってくれて、僕をイジメから助けてくれたりした。」
ビッチA「非リア君が優しいからでしょ。」
非リア「違う。DQNが優しいからだよ。なのに僕は・・・僕は・・・・・・グスッ。」
ビッチA「非リア君・・・」
ビッチA「・・・。」
非リア「うっ・・・グスッ・・・」
ビッチA「・・・。」
非リア「・・・ヒック・・・ご、ごめん。こんな事言われても、関係ないA子ちゃんには、迷惑だよn」
ビッチA「関係ないとか言わないでよ!!」
非リア「!!」ビクッ
非リア「えっ? あ、あの・・・」オロオロ
ビッチA「あたしが・・・グスッ・・・非リア君の事、騙したから? ねぇ、だったら何回でも謝るからぁ・・・・・・ヒック・・・許してよぉ!! お願いだから・・・非リア君に関わらせて!!」ポロポロ
ビッチA「・・・グスッ」
非リア「その・・・」アタフタ
ビッチA「・・・ヒック」
非リア「ごごご、ごめん。A子ちゃんの事、仲間外れにしようとか、そそ、そんなつもりはないんだ。ごめん。」
ビッチA「・・・あたしこそごめん。何か・・・グスッ・・・カッとなって頭おかしくなってた・・・」
非リア「い、いや。別に、気にしてないよ。」
ビッチA「ごめんね・・・グスッ」
ブーン
『会いた~くて 会い~た~くて ふ~る~える~』
ブーン
非リア「どうぞ。出て。」
ピッ
ビッチA「もしもしぃ・・・もしもぉし・・・・・・えっ? 何ぃ? 聞こえないんだけどぉ。もしもぉし・・・ちょっとぉ。お母さぁん?」
ブッ
ツーツーツー
ビッチA「・・・切れちゃったぁ。」
非リア「電波悪いの?」
ビッチA「ううん、二本立ってるぅ。このケータイぃ、最近調子悪いんだよねぇ。」
非リア「お母さん、かけ直さなくて良いの?」
ビッチA「良いよぉ。どうせ早く帰って来い系だしぃ。それよりケータイ、修理に出そっかなぁ?」
非リア「!」ピクッ
ビッチA「たまに電波3本でも聞こえない時とかあるs」
非リア「それだ。」ボソッ
ビッチA「えっ?」
非リア「A子ちゃん。誰か知り合いで、壊れたまま乗ってない、古いバイクを持ってる人、いない?」
そんな人物の名前がいつまでも“ビッチ”っていうのも何かアレですし、
>>163のご指摘にもあります通り、
もはやビッチではないので、
名前をA子に改めさせていただきます。
翌日 放課後 A子の自宅のガレージ
非リア「ま、まさかA子ちゃんの家に来る事になろうとは・・・」
A子「だってさぁ、昨日の話で思い付くのってぇ、うちのアニキしかいないんだもぉん。」
非リア「あ、ち、違うよ。文句じゃなくて・・・その・・・お、女の子の家に来るの、初めてで・・・って、家って言ってもガレージだけど。」アタフタ
A子「良いんじゃない? ガレージも家の一部だしぃ。ってかぁ、あたしも家に男の子呼ぶの初めてだしぃ。」
非リア「えっ? そうなの?」
非リア「そうなんだ・・・」
非リア「あっ、それで、バイクって、あれ?」
A子「うん。アニキが昔乗ってたヤツなんだけどぉ、車の免許取ってからは家の車乗り回すようになってぇ、もう2年ぐらいほったらかしてんのぉ。」
非リア「修理できるって?」
A子「昨日訊いたらぁ、多分直せるけどぉ、ちょっと高くつくかもってぇ。アニキ、結構雑な乗り方してたらしいんだぁ。オイル交換? を忘れたせいでぇ、エンジンが壊れてるんだってぇ。」
A子「そこまでは言ってなかったよぉ。なんかぁ、ちょうど車の免許取る直前ぐらいに壊れちゃってぇ、バイク屋に来てもらったんだってぇ。そん時の見積もりがぁ、20万ぐらいだってぇ。バイク修理で20万って高いのぉ?」
非リア「ごめん、それはよく分からないや。僕、バイクとか車は全然知らなくて。最近になってその排気ガスの出る筒が、マフラーって言うんだって知ったぐらいだし。」
非リア「でも、DQNはバイクを買うために60万貯めてたのに、それでもまだ買ってないって事は、新品は60万より高いワケだよね。」
A子「多分そうだろうねぇ。」
非リア「お兄さんは、このバイクはもう・・・」
A子「うん、もういらないからくれるってぇ。修理でも改造でも勝手にして良いって。」
非リア「よしっ。じゃあ、このバイク、修理に出そう。20万も大金だけど、それぐらいなら短期のバイトで何とかなる。」
非リア「きっと受け取ってくれる。DQNはああいう性格だから、きっとお金では受け取ってくれないと思うんだ。『気持ちだけもらっとくわ』とか言ってね。だから、もういっそ、バイクっていう“形”にして渡した方が良い。僕は免許持ってないから、『お前が乗れよ』とも言えないだろうし。ちょっと押し付けがましいけど、僕がDQNにできる事なんて、これぐらいしかないんだ。」
A子「“これぐらいしか”なんて言っちゃダメだよ。」
非リア「えっ?」
非リア「いや、カッコよくないよ。こんな方法しかできないんだもん。むしろカッコ悪いよ。」
A子「そのカッコ悪さがカッコイイんじゃん。分かってないなぁ。」
非リア「ん~・・・」
A子「まぁ、良いけどねぇ。そんでさぁ、バイトの話だけどぉ、あたしもバイトするからぁ、修理代ぃ、割り勘にしようよぉ。」
非リア「えっ?」
A子「半分ずつ出し合ってぇ、残ったお金は自分らで使おぉ。」
A子「関わらせて。」
非リア「うっ・・・」ギクッ
A子「か・か・わ・ら・せ・て。」
非リア「・・・はい。」
A子「ふふっ。よろしい。」
非リア「う~・・・」
A子「さて、そうと決まればぁ、さっそくバイト探してだねぇ。」
非リア「そうだね。フリーペパーを集めないと。」
A子「確かこないだぁ、アニキが何冊か持って帰ってきたのがあるよぉ。非リア君、あたしの部屋行こぉ。」
非リア「あ、それは助かr」
非リア「えっ!!!?」
非リア「あっ・・・えっ・・・えっ!?」アタフタ
A子「なにぃ?」
非リア「え、え、A子ちゃんの、へへ、部屋に?」オロオロ
A子「そうだけどぉ?」
非リア「あっ・・・あっ・・・その・・・」アタフタ
A子「いや?」キョトン
非リア「!!」ドキッ
非リア(その首傾げポーズ、反則!)
非リア「い、嫌じゃないです・・・」
A子「うん。じゃあ行こぉ。」
非リア(お、女の子の部屋だ・・・)ドギマギ
A子「はい、これ!」
ドサッ
非リア「あ、ありがとう。お兄さんもバイト探してるの?」
A子「今やってるトコと掛け持ちにするんだってぇ。何かぁ、家の車乗り回してたらぁ、マイカーが欲しくなったらしくてぇ。」
非リア「あ、なるほど。頑張るんだねぇ。」
A子「まぁ、何つうかぁ、遊びとS○xに命かけてるような奴だからぁ。車あると色々便利なんだってぇ。」
非リア「・・・。」
非リア(リア充爆発しろ!!)
非リア「あ、うん。」
バサバサ
A子「バイトっつっても色々種類あるんだねぇ。」
非リア「そうだねぇ。とりあえず、短期OKのところが良いなぁ。」
A子「ずっと続ける気はないのぉ? DQNのバイク代が貯まったら辞めちゃう系?」
非リア「そうだね。受験勉強があるから。本格化する夏休みまでに、放課後にできる短期バイトで貯めてしまいたいんだ。」
A子「あぁぁぁぁ、受験勉強ぉぉぉ。聞くだけで嫌んなるぅ。」
非リア「あっ、ご、ごめん。そうだね、確かに嫌だよね。」アセアセ
A子「冗談だしぃ。そんないちいち謝んなくて良いからぁ。」
A子「謝らない!」ビシッ
非リア「うっ・・・」ギクッ
A子「キャハハハハッ! も~、真面目すぎぃ! ウケるんだけどぉ!」
非リア「あう~・・・」タジタジ
A子「まぁ、あたしぃ、非リア君のそういうトコぉ、好きだけどねぇ。」
非リア「!!!?」ドッキィ
A子「あっ、ねぇ。これどう?」
非リア「す、好き・・・好き・・・」ブツブツ
A子「非リア君? ちょっとぉ。非リア君!」
非リア「えっ? あっ、はい。」
非リア「ホール係・・・・・・お客さんと喋らなきゃいけないよね。」
A子「そうだけど?」
非リア「そうだよねぇ・・・」
A子「・・・・・・あっ、そっか。」
非リア「うん。吃音が・・・」
A子「・・・ごめん。最近、非リア君がどもってるトコ、あんま見なくなったから、完全に吃音の事忘れてた。」
非リア「いや、良いんだ。DQNから聞いてると思うけど、僕、気を遣わなくて良い相手の前だと、あまりどもらなくなるんだ。最近、A子ちゃんと喋る機会が多かったから、そろそろ平気になってきたみたい。でも、やっぱり知らない人、それもお客さん相手じゃ、まだちょっと不安で・・・。」
非リア「うん。もちろん。」
A子「・・・・・・ふふっ。何か嬉しいかもぉ。ごめんね、それなのにあたし無神経で。」
非リア「ちちち、違うよ! A子ちゃんが悪いんじゃないよ! 世の中、吃音を全く気にせず働いてる人もたくさんいるんだし、僕がちょっと気にしすぎなだけだから! A子ちゃんは何も気にしないで!」
A子「・・・・・・うん。」
A子(どこまでも優しすぎぃ。)
非リア「ん~、僕もそう思ってさっきから探してるんだけど、工場はどこも朝から夕方までのフルタイムばかりなんだよねぇ。」
A子「だねぇ・・・倉庫整理・・・あ~、これもフルタイムだぁ。」
非リア「・・・・・・あっ、これが良いかも。ラーメン屋さんの厨房スタッフ。」
A子「えっ? でも厨房は厨房で、スタッフと話はしなきゃいけないんじゃ・・・」
A子「大丈夫なのぉ?」
非リア「うん。大丈夫だよ。僕だって将来、本格的にバイトや就職はするんだし、それの足慣らしだよ。」
A子「そっかぁ。あっ、じゃあ、これも良くね? そば屋の厨房。短期OK。」
非リア「あっ、良いねぇ。そこも応募しよう。あっ、これも良さそう。宅配ピザの厨房スタッフ。これも短期可だって。」
非リア「どうかなぁ? 宅配ピザって、電話もらってから作ってるんでしょ? 余ったりするのかな?」
A子「あ~、確かにそうかもねぇ。材料は余るけどぉ、ピザは余らないぃみたいな?」
非リア「うん。そんな気がするんだけど。」
A子「ありそうだねぇ。残念。ピザ余ったらぁ、持って来てもらおうと思ったのにぃ。」
非リア「はははっ。まぁ、もし受かって、ホントに余ったピザを貰えたら、持ってくるよ。ところで、A子ちゃんは何のバイトするの?」
非リア「そっかぁ。確かにA子ちゃんなら何でも、できそうだね。」
A子「ふふっ。あたし神経ず太いからねぇ。『別に体力仕事以外ぃ、何でもできんじゃね?』とか思ってるぅ。あはっ。」
非リア「はははっ。強いね。」
非リア「よし。じゃあ僕はとりあえず、この3つに応募してみるよ。」
A子「うん、そうだねぇ。あたしもテキトーに何か3つぐらい絞ってぇ、応募してみるぅ。」
非リア「お互い健闘を祈ろう。」
非リア「そうだね。じゃあ、そろそろ帰ろうかな?」
A子「えっ?」
非リア「お邪魔しました。」
スクッ
A子「待って! 帰んの?」
非リア「えっ? う、うん。」
A子「マジ?」
非リア「マジ・・・だけど? えっ? 何か他に話し合う事、あった?」
A子「それは・・・別にないけどぉ・・・」
非リア「・・・だよね?」
A子「・・・。」
非リア「?」
A子(まぁ、仕方ないかぁ。もうじきお母さんも帰ってくるしぃ。)
A子「ごめん、何でもない。下まで送るねぇ。」
非リア「あっ、うん。A子ちゃん、今日は色々ありがとうね。」
DQN「らっしゃあせぇ! お好きな席どうぞぉ!」
ドスッ
サラリーマン「ふぅ。」
DQN「あぁい、お水失礼っしゃぁす! ご注文お決まりっすかぁ?」
サラリーマン「あぁ、鮭定食。」
DQN「あざっす! はい、5番さん鮭一丁ぉ!」
厨房「「あいよぉ~」」
DQN「いやぁ、朝から暑いっすねぇ。」
サラリーマン「えっ? あ、あぁ。そうだね。」
DQN「スーツ、大変じゃないっすか?」
サラリーマン「あぁ。ま、まぁね。でも、営業だからね。いくらクールビズと言っても、ジャケット無しで得意先は回れないから、大変だよ。」
サラリーマン「はははっ。ありがとう。お兄さんは新人かな? おじさんは週3日ぐらいはこの時間に来るけど、君は見た事ないなぁ。」
DQN「いえ、普段は夕方のシフトなんすけど、最近、朝の時間に人足んない時にも入るようにしてんすよ!」
サラリーマン「そうかそうか。いやぁ、こうやって話しかけてくる店員さんは初めてだからねぇ、ちょっと驚いたよ。」
DQN「あっ、さぁせん! 馴れ馴れしいっすよね。」
サラリーマン「いや、良いよ。おじさんは古い人間だからね、こうやって話しかけてくれる店員さんは大好きなんだ。君、良い店員さんだね。」
DQN「あざっす! 恐縮っす!」
非リア「・・・。」
A子「・・・。」
B子「DQN、今日も休みだねぇ。」もぐもぐ
C子「最近、午前中にもバイト詰めてるらしいよぉ。」もぐもぐ
非リア「・・・。」
A子「・・・。」
B子「なんでそんな急に頑張り出したんだろ?」もぐもぐ
C子「分かんなぁい。ってかぁ、そろそろ出席日数ヤバくね? バイト詰める前からちょいちょいサボったりしてたじゃん。」もぐもぐ
非リア「・・・。」
A子「・・・。」
B子「・・・・・・何か二人暗くね?」
非リア「・・・ば、バイトの応募、全部落ちた。」
A子「あたしもぉ。コンビニ・ファミレス・カフェ、全部落ちてぇ、その後別のコンビニとミスドも応募したけど落ちたぁ。」
非リア「僕も最初の三ヶ所落ちた後、更に三ヶ所応募したけど、落ちた。」
B子「えっ? 何ぃ? 二人バイト探してんのぉ?」
C子「何で今頃ぉ?」
非リア「えっ・・・いや、その・・・」
非リア「えっ?」チラッ
A子(テキトーに合わせて)ウィンク‐☆
B子「マジぃ? A子の親、厳しいねぇ。」
C子「えっ? そう? 10万出してくれるだけ優しくね? あたしのお姉ちゃん、免許代、パパに立て替えてもらってぇ、毎月2万ずつ返してってるよぉ。あたしもきっとそうなるしぃ。」
C子「非リア君はなんでバイト探してんのぉ?」
非リア「あっ、ぼ、僕も一緒。免許代、親が10万しか出してくれないって言うから。」
B子「・・・。」
C子「・・・。」
A子(ちょ、嘘ヘタすぎだってぇ!何で金額まで被せてくんのよぉ!)
B子「怪しくね?」
C子「だね。」
非リア「えっ? えっ?」
A子(も~! あんまりDQNの家の事情を言い広めるのは良くないって、非リア君が言うから誤魔化したのにぃ!)
C子「思ったぁ。」
非リア「いや・・・その・・・」
B子「もうじき夏休みで予備校とか忙しくなんのにぃ、急にバイト探し始めるとかぁ、二人なんか隠してんじゃね?」
C子「まさかぁ・・・」
非リア「あわわわわ・・・」
A子(終わったしぃ。まぁ、この二人になら話しても良いk)
B子「もしかしてぇ、二人付き合ってんじゃね?」
非リア「えっ?」
A子「はっ?」
C子「こないだの男C・Dん時ぃ、A子、非リア君がゲイじゃないかって超気にしてたじゃん?」
B子「罰ゲでコクってみたら、マジで好きになっちゃったとかぁ?」
C子「“ウソから始まる恋”みたいなぁ?」
A子「う~・・・」
B子「二人だけの卒業旅行の為にぃ、今から慌ててバイト探してる的なぁ?」
非リア「あははははっ! それはないよ!」キッパリ
A子「!」ピクンッ
非リア「僕らが付き合うなんて、あるワケないじゃないかぁ。ははははははっ。」
A子「“あるワケない”?」カチン
B子「え~? マジぃ? あたし結構良い線いったと思ったんだけどぉ。」
C子「え~? なにぃ? 親が出してくれる免許代ってぇ、10万が最近の相場なのぉ? だったらあたしぃ、ちょっとパパ・ママにも掛け合ってみよっかなぁ?」
非リア「いや、家庭によりけりだと思うよ。DQNもバイクの免許は自分のお金で取ってたもん。」
C子「うわぁ、良いなぁ。パパぁ! あたしにも10万出してくれぇ~!」
A子「あー、そーっすねー。」ブスッ
非リア「・・・・・・な、何か怒ってる?」
A子「別にー。」
B子「ねぇ、その事だけどさぁ、二人合わせて11ヶ所も落ちてんでしょ? それって絶対変だよぉ。二人さぁ、履歴書によっぽど変な事書いてんじゃね?」
非リア「えぇ? どうかなぁ? 全然そんな自覚はないけど。」
C子「ねぇ。今度さぁ、その履歴書見してくんない? ちょっと気になるかもぉ。」
非リア「あっ、今持ってるよ。」
A子「えっ? 何で持ってんのぉ?」
非リア「今朝、家を出る時、郵便受けを見たら通知が来てたんだ。でも、時間がなかったから、学校で見ようと思って、持ってきたんだ。」ゴソゴソ
B子「ちょっと見て良い?」
B子「どれどれぇ・・・」ジー
C子「あっ、あたしも見してぇ・・・」マジマジ
B子「これかなぁ?」
C子「思ったぁ。そうじゃない?」
非リア「えっ? 何?」
A子「何か分かった系?」
B子「え~っとさぁ、この希望欄のトコぉ、“週3、4日程度勤務可能ですが、雇用期間は短期で希望します。最長でも3ヶ月でお願いします”って、これぇ、全部の履歴書に書いてるぅ?」
C子「A子も同じような事書いてんのぉ?」
A子「うん。あたしも長居する気ないしぃ。まぁ、非リア君みたいに丁寧な書き方はしてないけどぉ。」
B子「決まりだねぇ。」
C子「うん。絶対これだぁ。」
非リア「えっ? その希望欄って事?」
B子「うん。絶対この希望欄のせいで切られてると思うわぁ。」
A子「マジぃ? なんでぇ?」
非リア・A子「「えっ?」」
B子「うん。新人ってさぁ、ぶっちゃけ最初の1~2ヶ月なんてぇ、いてもいなくても一緒なんよぉ。だって最初の内は仕事全然できないワケだしぃ。3ヶ月経ったぐらいからなんだよねぇ、安心できるのってぇ。」
C子「んでさぁ、“最長3ヶ月”って事はぁ、『もし2ヶ月で20万貯まったら、その時はさっさと辞めまっせぇ』って感じじゃん? それってぇ、全然使えない子にお金だけあげてんのと大して変わんないって事になるっしょぉ? それじゃあやっぱ雇ってもらえないよねぇ。」
B子「そうは書いてあってもさぁ・・・何つうか・・・・・・こうもはっきり辞める事前提で応募して来られたらぁ、やっぱ店長は良い気はしないじゃん。分かるかな、その感じぃ?」
C子「例えば友達が遊びに来てぇ、あたしのマグカップ割ったとすんじゃん? そしたら当然『良いよ、気にしないで』って言うけどさぁ、それで全然気にされなさすぎたらぁ、ちょっとイラっと来んじゃん? そういう感じぃ?」
非リア「あぁ・・・・・・何となく分かるよ。」
B子「それは・・・通じない事はないけどぉ、かなり波風立つよねぇ。」
A子「だよねぇ。って事はさぁ、ぶっちゃけホントに短期で雇ってくれるバイトってぇ・・・ない系?」
C子「いや、あるけどぉ、A子が受けたファミレスとかコンビニとかカフェとかミスドとか、非リア君のラーメン屋とか、そういう・・・何つうか、普通の仕事?じゃあ、難しいと思うなぁ。」
非リア「そうかぁ・・・」
A子「考えが甘かったかぁ・・・」
B子「ねぇ、絶対短期じゃなきゃダメなのぉ? あたしもC子もぉ、夏休みからはバイトの本数減らす方向で行こうって言ってんのぉ。」
非リア「う、う~ん。僕はそんな要領良い方じゃないから、両立をさせられる自信がなくて・・・」
A子「あたしもそんな感じぃ。それにさぁ、あたしは前もB子・C子には言ったと思うけどぉ、バイトって何か面倒くさそうでぇ、あんまやりたくないんだよねぇ。それでもぉ、やっぱ大学入ったらしなきゃいけなくなるワケじゃん? だったらぁ、今回みたいな緊急のバイトはぁ、できるだけ短く済ませたいぃみたいな。」
非リア「はははっ。そ、そうだよねぇ・・・」
A子「何か別の方法を考えるしかないかなぁ・・・」
B子「・・・・・・それかぁ、もういっそぉ、塾や予備校の夏期講習を捨てるかぁ・・・だねぇ。」
非リア「えっ?」
A子「どういう事ぉ?」
C子「夏休みの短期バイトあんじゃん? プールの監視員とかぁ、海の家のスタッフとかぁ、デパートのお中元のラッピング係とかぁ。もう、そういうのにかけるしかないかもって話ぃ。」
非リア「あっ・・・」
A子「その手が・・・」
B子「でもぉ、夏期講習捨てるワケだしぃ、後から受験勉強のシワ寄せ半端なく来るよねぇ。」
C子「あんま良い方法じゃないかもぉ。」
ゴロン
A子「・・・。」
TV「『さぁ、続いては、女性漫才コンビのお二人です。』パチパチパチ」
A子「・・・。」
TV「『もうじき夏ですねぇ。』『私、今年の夏こそは燃えるような恋をしますよぉ。』『ははっ、ご冗談を。』『気ぃ悪いわ自分!』」
A子「・・・。」
(『それはないよ。』)
A子「・・・。」
(『あるワケないじゃないかぁ。』)
A子「・・・はぁ~。」
ゴロンッ
A子「んも~~~~」バタバタバタッ
A子「結構傷付いたしぃ・・・」ボソッ
A子(あたしの押しが弱いのかなぁ?)
TV「『山奥のコテージに二人で泊まり込みのバイト。そこで一気に距離が縮むワケですよ。』『中尾彬さんと?』『違うわ!』」
A子「!」
TV「『綺麗な星空ですねぇ。』『ほっほっほっ。見事じゃないか。』『中尾出てくんなぁ!』『愛しているよ志乃。』『誰が志乃や!』」
A子「・・・。」
TV「『やめさしてもらうわ!』『バイトを?』『このネタを! えぇ加減にせぇ!』『ありがとうございましたぁ。』パチパチパチ」
A子「・・・・・・一か八か、これいってみよっかなぁ。」
非リア「な、長野のペンションに泊まり込みのバイト?」
A子「そっ。7月21日~8月16日までの間でぇ、2週間働ける人を募集しますってぇ。」
非リア「な、何で長野?」
A子「昨日B子・C子が夏の短期バイトって言ってたじゃん? でもぉ、海の家とかプールの監視員ってぇ、目の前に海やプールがあんのに入れないじゃん? あたしぃ、それはちょっと嫌かなぁって思ったんだぁ。そんでぇ、ふと思い出したのぉ。子供の頃ぉ、毎年家族で行ってたペンションでねぇ。オーナーのブログ見たらぁ、バイト募集してたからぁ。」
A子「6時半~19時半まででぇ、休憩2時間あるから実働9時間。時給850円。14日間勤務でぇ、100,710円。」
非リア「目標の半額かぁ。」
A子「二人足せば目標じゃん。」
非リア「それは・・・そうだけどぉ・・・」
A子「あたしがいてマジ正解じゃん。」
非リア「ほ、ホントに良いの? A子ちゃんの手元には1円も残らないかも知れn」
A子「しつこいぃ。怒るよぉ?」
非リア「あぅ・・・」タジ
A子「非リア君にどこまでも関わってやんだからぁ。引き下がると思うぅ?」
A子「ふふっ。ってかさぁ、実際そうした方が良いってぇ。受験勉強の時間削って働くんだからぁ、できるだけ短く済ませた方が良いじゃん。そもそもぉ、その為にコンビニやラーメン屋の短期探してたんだしぃ。願ったり叶ったりじゃん。」
非リア「・・・・・・ありがとう。正直、ホントに助かる。」
A子「・・・・・・ふふっ。なんかぁ、そう言ってもらえるとぉ・・・嬉しいよねぇ。」
非リア「ホントに、感謝してるよ。」
A子「あっ、でも待ってぇ。ホントに感謝してもらうのはぁ、無事にバイク修理できてからだよぉ。まだもう一個、難問が待ってんじゃん?」
A子「これが一番手強いよぉ、多分。」
非リア「そうだね。」
A子「何か対策考えてるぅ?」
非リア「いや、こればかりは一切作戦無し。事情をありのまま話して、正面衝突しかないと思ってる。」
A子「だよねぇ。受験勉強放り出して2週間も家空けるんだしぃ、どう考えたって有力な言い訳なんてないよねぇ。」
非リア「うん。それに、遊びに行くワケじゃない。端から見ればフザけた理由かも知れないけど、僕は大真面目なんだ。だから、一切嘘はつかない。ありのまま、本心でぶつかるよ。」
A子「そうだねぇ。それしかないねぇ。」
A子「ねぇ、お父さん、お母さん。聞いて欲しい事があんだけどぉ・・・」
A子父「ん~?」
A子母「なに?」
A子「あのさぁ・・・」
同時刻 非リアの自宅 リビング
非リア父「お前、本気で言ってるのか?」
非リア母「何をバカな事を・・・」
非リア「バカでも何でも良い。僕は・・・今まで生きてきた中で、今が一番本気なんだ!!」
※以下、壮絶な親子喧嘩が繰り広げられるワケですが、上手く描ける自信がないので、勇者と魔王のイメージカットでお送りいたします。
勇者(非リアとA子)「くっ! なんて手強いんだ!」
魔王「はぁ!!」
ボワアァァ
勇者「炎魔法(お説教)!? ならばこっちも!!」
ボワアァァ
魔王「ふん! 小賢しい!!」
ゴゴゴゴゴッ
勇者「くっ!! お、圧される(気迫負け)・・・」
ボワアァァ
勇者「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
メラメラメラ
魔王「ふんっ。愚か者め。」
ドシャァッ
勇者「はぁ・・・はぁ・・・」プスプス
勇者(クソッ! 甘かった・・・炎魔法(お説教)に炎魔法(逆ギレ)で立ち向かっても意味がない・・・)
勇者「ならばこれだぁ!! 水魔法(説得)!!」
ドバァッ
魔王「ふむ。少しは考えたな。」
勇者「食らえぇぇぇぇ!!」
ドドドドドッ
魔王「だが・・・甘いわぁ!!!!」
ビカビカビカッ
勇者「なっ!! 雷魔法(大激怒)!?」
魔王「カアァァァ!!」
ドカアァァァァン
勇者「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ドシャァッ
勇者「くっ・・・うっ・・・」
魔王「ふっふっふっ。弱い。」
勇者「うぅ・・・・・・」
魔王「そぉら!! まだまだ行くぞぉ!!」
ビカビカビカッ
ドカアァァァァン
勇者「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
ドカアァァァァン
勇者「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」
ドカアァァァァン
勇者「がはあぁぁぁぁぁ!!」
ドシャァッ
魔王「ふははははっ!! 弱い弱い!! 所詮、その程度かぁ!!」
勇者「はぁ・・・はぁ・・・」プスプス
勇者(耐えるんだ! 雷魔法は最初の一発目(キレ始め)こそ強力だが、二発目、三発目と重ねるにつれて、徐々に威力(語気)が落ちていく! ぐっと堪えて、タイミングを待つんだ!)
ムクッ
バチバチバチッ
勇者「くっ・・・」
勇者(耐えろ!! 耐えるんだ!!)
魔王「カアァァァ!!」
ドカアァァァァン
勇者「ぐあぁぁぁぁぁぁ・・・・・・くっ・・・くっ!!」ギロッ
魔王「ぬっ!?」
勇者「やはり・・・一撃目に比べれば、随分と威力が下がった!!」
魔王「貴様・・・!!」
勇者「元より、貴様は私より魔法(社会経験)において上回る!! そんな貴様に魔法勝負を挑んだのがそもそもの間違い!!」
シャキンッ
勇者「やはり貴様は、物理攻撃(若さと勢い)で倒す!!」
魔王「くっ!! 物理攻撃!? 我がとうの昔に、不要と見切って捨てたスキルか!!」
勇者「覚悟ぉ!!!!」
ダッ
魔王「ぬぉ!!」
勇者「せいやあぁぁぁぁぁ!!!!」
キン キン キン
魔王「うっ・・・ぐっ・・・」
キン キン キン
勇者「そこだぁ!!」
ザシュッ
魔王「ぐはあぁ!!」
ドシャァッ
勇者「はぁ・・・はぁ・・・よ、よしっ!!」
魔王「うっ・・・おのれ・・・貴様ぁ・・・」
ダッ
魔王「ぬぅ!! さ、させるかぁ!!」
バッ
キラキラキラキラキラ
勇者「なっ!? ひ、光魔法(母の涙)だと!?」
魔王「はははははっ!! 正義の味方(正直者)である貴様にとって、この光魔法はかえって強力であろう!!」
キラキラキラキラキラ
勇者「ぐっ・・・うぅ・・・」
魔王「はははははっ!! 更にコイツでどうだぁ!?」
ドロドロドロ
勇者「なっ・・・や、闇魔法(昔の事を蒸し返す)!? クソォ!! 貴様、手段を選ばぬ気かぁ!!!?」
ゴゴゴゴゴッ
勇者「ぐあぁぁぁぁぁぁ!! こ、心が・・・心がぁ・・・闇に犯されそう(言い負かされそう)だ!!!!」
魔王「ふっはっはっはっはっ!! 形勢逆転だな勇者よ!!」
勇者「あっ・・・くっ・・・がはっ・・・」ガクガクガク
魔王「死ねぇ(受験に専念しろぉ)!!!!」
ズゴゴゴゴゴゴッ
ズゴゴゴゴゴゴッ
勇者(こうなれば・・・最後の手段だ!!)
ポイ ポイ ポイ
ガシャン ガシャン ガシャン
魔王「何!? 武具を捨て始めた(泣き出した)!?」
勇者「すぅ・・・はぁ・・・すぅ・・・はぁ・・・」
魔王「貴様・・・・・・」
勇者「剣だけを残し・・・・・・全武装解除(号泣)!!!!」
ゴゴゴゴゴッ
魔王「ほう・・・捨て身(一生のお願い)か・・・・・・」
魔王「面白い・・・我もかつての勇者(若い時はあった)。貴様のその魂、全力で受け止めてみたくなったわ。」
勇者「いざ・・・」
ザッ
魔王「・・・・・・来い!!!!」
勇者「おおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ダダダダダッ
魔王「ぬあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ダダダダダッ
勇者「伝説の最強物理攻撃!!!!」
シャキンッ
勇者「魂丸(懇願)斬りいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」
ズドオォォォォォォン
バスアナウンス「終点・茅野でございます。本日もSS交通をご利用いただき、誠にありがとうございます。」
プシュー
ゾロゾロ
A子「ふぁ~」ノビー
非リア「着いたね。」
A子「4、5年振りぐらいかなぁ、長野来んのぉ。」
非リア「もっと涼しいかと思ってたけど、意外と暑いんだね。」
A子「ここは平地だからねぇ。今から行くトコはぁ、標高2000メートルぐらいの場所だからぁ、向こう着けばもっと涼しいよぉ。」
非リア「うわぁ、すごい場所なんだねぇ! どうやって行くの?」
非リア「あっ、そうなんだ。」
A子「買いに行こぉ。」
非リア「うん。」
テクテクテク
A子(うぅわぁ、あたしついに非リア君と長野来ちゃったしぃ。なんか信じらんない。)
非リア「次のバスまで20分か。」
A子「そうだねぇ。座って待ってよぉ。」
非リア「うん。」
A子「ついに来ちゃったねぇ、長野ぉ。」
非リア「どうにかねぇ。長い道のりだったよ。」
非リア「ホント、どーーーにかね。僕の場合、更に期末テストで全科目90点代取るって条件もあったし。もう、吐きそうになりながら勉強したよ。」
A子「・・・・・・ねぇ、非リア君。」
非リア「ん?」
A子「先に言っとくねぇ。」
非リア「何を?」
非リア「うっ・・・言ってしまいそう・・・」
A子「絶っっっ対ダメだしぃ。言わせないぃ。あたしが選んだ事なんだからぁ。非リア君に責任なんて感じさせてあげないしぃ。」
非リア「う~・・・」
A子「それだけは覚えといてねぇ。あっ、バス来たよぉ。」
非リア「えっ? あっ、ホントだ。」
ブロロロロロ
プシュー
プシュー
非リア「うわぁ、すごい。綺麗な高原だねぇ。ホントに駅前と違って、こっちはかなり涼しいんだね。」
A子「この入口で標高1500メートルぐらいだったかなぁ? あの山頂が2000メートルなんだよねぇ。スカイツリー3本分以上の高さだよぉ。」
非リア「そうかぁ。そうやって例えられると、改めてすごいトコに来たんだって実感が沸くなぁ。」
A子「だよねぇ。」
非リア「あっ、ところで、バスはここが終点みたいだけど、バイト先のペンションって、この近くなの?」
A子「ここから車で5分ぐらいだったかなぁ。オーナーが迎えに来てくれるらしいけどぉ。」
A子「えっとねぇ・・・・・・何かぁ、灰色のハイエース?って言ってたけどぉ・・・分かるぅ?」
非リア「あ、うん。ハイエースは知ってるよ・・・あっ、あれじゃない?」チョイチョイ
A子「あれぇ? あの大きいヤツぅ?」
非リア「うん、そうそう。四角くて大きい・・・あっ、人が降りて来たよ。」
A子「あっ! オーナーだぁ! うわぁ、全然変わってないしぃ!」
オーナー「え~っと、バイトに応募してくれたA子ちゃんと、非リア君かな?」
非リア「あっ、ははは、はい。」
オーナーの車中
オーナー「いやぁ、A子ちゃん大きくなったねぇ。一瞬、分からなかったよ。」
A子「えっ? あたしの事ぉ、覚えてるんですかぁ?」
オーナー「覚えてるよぉ。昔、ご家族でよく来てくれてただろう?」
A子「あぁ、はい。そうですそうですぅ。」
オーナー「昔来てくれていた子供さんが、大きくなったらバイトに来てくれるなんて、こんな嬉しい話はないねぇ。しかも彼氏まで連れて。」
A子「あはっ。」
A子「・・・。」チーン
オーナー「おや? 違うのかい?」
非リア「はい。とと、友達です。」
オーナー「なんだ、そうか。すっかりカップルだと思い込んでたよ。」
A子「・・・。」ゴーン
オーナー「さぁ、そうこうしてる間に、着いたよ。」
バタン
A子「あ~、超懐かしいしぃ。全然変わってなぁい。」
非リア「お、お、オシャレなペンションですね。」
オーナー「はっはっはっ。ありがとう。さぁ、中へ入って。」
オーナー妻「よく来たわねぇ。あらぁ、A子ちゃん大きくなっちゃってぇ。」
A子「お久しぶりですぅ。奥さんもぉ、覚えてくれてるんですかぁ?」
オーナー妻「もちろんよ。A子ちゃん、2歳ぐらいの頃から毎年家族で来てくれてたじゃない。忘れるワケないわ。ご家族はお元気?」
A子「あっ、はい。超元気ですよぉ。あたしが中学入って反抗期んなっちゃったからぁ、家族で来る事なくなっちゃいましたけどぉ、今でもリビングにこのペンションで撮った写真、飾ってるしぃ。」
A子「あはっ。」
非リア「あっ、すすす、すいません。ぼぼ、僕は・・・」
オーナー「彼氏じゃないらしいよ。」
A子「・・・。」チーン
オーナー妻「あら、そうなの? でも、一緒にバイトに来てくれるなんて、よほど仲の良いお友達なのね。」
非リア「あっ、はは、はい。だだだ、大事な友達です。」
A子「・・・。」ゴ―ン
オーナー「よし。じゃあ今、午後3時だね。4時になったら夕食の準備に取りかかろう。確か、A子ちゃんが配膳、非リア君が調理補助をそれぞれ希望だったね?」
オーナー「よし。じゃあ、4時になったら仕事を始めよう。それまでは自由にしてくれて良いよ。それで、君達の部屋なんだけどね、うちにはバイト部屋が一つしかないんだ。」
A子(マジぃ? 非リア君と相部屋ぁ?)ニヤニヤ
オーナー「だから、バイト部屋はA子ちゃんに使ってもらって、非リア君は悪いんだけど、離れを使ってもらえるかな?」
A子「・・・。」ガクッ
非リア「あっ、はい。わわわ、分かりました。」
オーナー「普段は物置なんだけど、ちゃんと寝泊まりできるように整理はしといたから。ごめんね。」
非リア「い、いえ。ぼぼぼ、僕はどこでも、かま、構いませんから。」
オーナー妻「はい、非リア君。このお皿達に順に盛り付けていって。」サッ
非リア「はは、はい!」テキパキ
オーナー「盛り付け終えたらこっちへ回して。」
ガチャッ
A子「4番テーブルさん、魚料理完了ですぅ!」
オーナー「OK! じゃあ6番さんは僕が行くから、次は5番さんのご両親とお姉ちゃんにレギュラーサイズ、弟君にキッズサイズ、それぞれ持って行って。」
A子「はぁい!」スタスタ
非リア「さささ、魚料理、ぜぜ、全部盛り付け完了です!」
非リア「わわ、分かりました!」テキパキ
ガチャッ
A子「5番さん完了でぇす! 」
オーナー「A子ちゃん。空いてるお皿があったら下げてきて。多分、そろそろ2番さん辺りのサラダが空く頃だから。」
A子「はぁい!」スタスタ
オーナー「いやぁ、良いね、君達。」
非リア「えっ? なな、何がですか?」
オーナー妻「非リア君もA子ちゃんも、作業の覚えが早くて助かるって話よ。」
非リア「いや・・・そそそ、そんな・・・」
非リア「きき、恐縮です。」
ガチャッ
A子「お皿下げてきましたぁ!」
オーナー「ほい、ご苦労さん。じゃあお次は・・・」
A子「ごちそうさまでしたぁ。」
非リア「ごご、ごち、ごちそうさまでした。」
オーナー妻「はい、お粗末さま。お皿は後で全部洗っちゃうから、流しに置いといてくれて良いわよ。」
A子「はぁい。」
非リア「お、おね、お願いします。」
オーナー「二人はタバコの臭いは平気?」
A子「あっ、はい。私以外、家族みんな吸ってるんで。」
非リア「ぼぼ、僕も平気です。」
オーナー「ごめんね、失礼するよ。」
シュポッ
オーナー「ふぅ~。君達はタバコ吸わないの?」
A子「吸わないですぅ。家族みんな『一月のタバコ代もバカにならない』とか言ってるんでぇ、お金かかるんならやめとこぉみたいな。」
オーナー「はははっ。それはまさにそうだね。うん、大正解だよ。」
非リア(DQNもそんな事言ってたなぁ。)
オーナー妻「そう思うなら禁煙してよね。」
オーナー「勿論。今度生まれ変わったら禁煙するよ。」
オーナー妻「もう。」
A子「キャハハハ! ウケるそれぇ。」
A子「超言いますよぉ。“面白い”より言いやすいですしぃ。」
オーナー「なるほどねぇ。」
オーナー妻「ねぇ。ちょっと訊いても良いかしら?」
A子「何ですかぁ?」
オーナー妻「アナタ達、どうしてこの時期にバイトをしようと思ったの? 高三の子がこの時期にバイトに来るのって、初めてだから少し気になってね。」
A子「あっ・・・え~、えっとぉ・・・」チラッ
非リア「・・・とと、友達のバイクを、しし、修理する為です。」
A子「あれ? 言っちゃう系?」
非リア「う、うん。ががが、学校で言い広めるのは良くないけど、お、オーナーさん達には別に良いかなって。う、嘘はできるだけ、つき、つきたくないから。」
A子「そっかぁ。そうだねぇ。」
オーナー夫妻「?」
非リア「じ、実は・・・」
オーナー妻「アナタ達、本当に良い子なのね。おばさん、ちょっとウルっときちゃったわ。」
非リア「いえ、そそ、そんな。ぼ、僕は頭も良くないし、けけ、喧嘩もできないから、こんな時ぐらいしか、かかか、彼の役には立てなくて。」
オーナー「いや、もうその気持ちがすごいじゃないか。そんな友達想いの子、そうそういないよ。そのDQN君って子も、お母さんの負担を減らす為にバイトを頑張るなんて、素晴らしい子だね。」
A子「頭を冷やすぅ?」
非リア「どど、DQNはお母さんが倒れた日以来、ば、バイトを頑張るようになったけど、その・・・ばば、バイトの為に学校を休む回数が、日に日に増えていったでしょ? きき、きっと、バイク代の60万を返済に充てた事で、い、勢いがついてしまったんじゃないかと思うんだ。」
非リア「はい。そそそ、そうなった時、あ、安心して手を抜く人と、勢いづく人とに別れると思いますが、どどど、DQNは間違いなく後者でして。」
A子「・・・。」
オーナー妻「私も後者ね。アナタは・・・」
オーナー「ははっ。お恥ずかしながら、前者だね。」
オーナー「確かに。」
非リア「こここ、この事を僕が普通に忠告しても、きき、きっと彼は『何とかなるって』とか言って、ままま、真面目には聞かないと思うんです。む、昔から向こう見ずな性格だから。」
A子「・・・。」
非リア「ぼ、僕の忠告を聞き入れさせるには、かか、彼の注意を引く“何か”が必要なんです。」
非リア「はい。う、上手く言えませんけど、バイクを渡す事で、ふり、振り向いてくれるというか・・・」
オーナー「分かるよ。変な言い方だけど、バイクという“恩”を売る事で、恩人である非リア君達の言う事を聞かざるを得ないようにするんだね。」
非リア「そそ、そうです。と、友達を相手に駆け引きとか、よよよ、良くない事ですけど。」
オーナー妻「いえ、そんな事はないわよ。だって、それは下心のある駆け引きじゃないもの。全て相手の事を思ってするんでしょ? それはね、至極正しい駆け引きよ。あなたは何も間違ってないわ。」
A子「最初からそこまで考えてたのぉ? その駆け引きの話とかぁ、初耳なんだけどぉ。」
非リア「いや、さささ、最初はホントにDQNの為に何かしたいって気持ちだけだったよ。でで、でも、DQNが学校を休む日が増えるにつれて、こ、このバイクにはそういう役割もあるんだって気付いたんだ。」
A子「そっかぁ。」
オーナー「そのサプライズが上手くいく事を祈ってるよ。」
非リア「ありがとうございます。」
オーナー妻「その為にも、明日から張り切って働かなきゃね。」
非リア「はい。」
オーナー「明日は朝6時半にこの厨房に集合してね。お客さんの朝食の配膳から始めるから。」
A子「はぁい。」
非リア「分かりました。」
ゴロン
A子「・・・。」
(『DQNは間違いなく後者でして。』)
A子「・・・。」
(『昔から向こう見ずな性格だから。』)
A子(DQNの事は全部お見通しかぁ・・・)
A子「はぁ~・・・」
A子(良いなぁ、DQN。非リア君にあんなに想ってもらえてぇ。)
A子「・・・はぁ~。男に妬くなA子ぉ。情けないぞぉ。」
A子(そうだよ。あの二人は中学からの友達なんだしぃ。付き合いの浅いあたしにはまだまだ及ばない事もあるっつーの。でもぉ、それが諦める理由にはならないよねぇ。)
A子「負けないしぃ。見てろよぉDQN!」
DQN「ぶえっくしょん!」
店長「こら、DQN! くしゃみする時は手で口を押さえろ!」
DQN「うっす。すんません。」ずずっ
店長「お客さんがいなかったから良かったけどな、飲食店じゃ、そういう咳やくしゃみのマナーが大事なんだ。」
DQN「あい。了解っス。」
店長「しかし盛大なくしゃみだったな。誰かに噂されてたんじゃないか?」
DQN「きっとアレっすよ。板野友美が『DQN君に抱かれたいわぁ』って言ってたんすよ。」
店長「はははははっ! バカ言ってんじゃねぇよ!」
DQN「『いやぁ、ここまで抱かれたい人も珍しい』って。」
店長「いやいやいや、どこまで抱かれたい人なら珍しくないんだよ!」
DQN「へへへへっ。」
ガチャッ
A子「はぁい、これで全席食器下げ終わりましたぁ。」
オーナー「ご苦労さん。じゃあ、このダスターでランチョンマットを全部拭いて、重ねて持って来て。」サッ
A子「はぁい。」スタスタスタ
オーナー妻「非リア君、食洗機まだ入る?」
非リア「あっ、はい。ままま、まだ大皿4枚ぐらいは入ります。」
オーナー妻「OK。じゃあA子ちゃんの下げてくれたヤツ、まとめて入れて回しちゃって。」
非リア「はい。」ガチャガチャ
非リア「は、はい。こここ、コース料理じゃないですしね。」
オーナー「うん。モーニングプレートって形で一気に出しちゃうからね。」
非リア「そ、そうですね。」
オーナー「A子ちゃんのランチョンマットが終わったら僕らも朝食にしよう。」
非リア「はい。わわわ、分かりました。」
ガチャッ
A子「ランチョンマット終わりましたぁ。」
オーナー「お疲れさん。そこに置いといて。」
A子「はぁい。」ドサッ
オーナー「よし。じゃあ、これからの流れを説明しとくよ。」
非リア「はい。」
A子「はぁい。」
非リア「わわ、分かりました。」
A子「分かりましたぁ。」
B子「あづい~」
C子「今日特に暑いねぇ。」
B子「海行きてぇ~」
C子「今年は無理だねぇ。」
シュポ
B子「ふぅ~」
C子「あれぇ? 禁煙したんじゃなかったっけぇ?」
B子「もう無理ぃ。こんだけストレス溜めて頑張ってんだからぁ、タバコぐらい吸わしてよぉ。」
C子「まぁ、仕方ないかぁ。」
B子「受験勉強って何なのぉ? マジ地獄すぎんだけどぉ。こんなん許されるワケぇ?」
C子「だよねぇ。あたしさぁ、こないだ夢ん中でも模試受けててぇ、起きた時マジ凹んだわぁ。」
B子「うわぁ、それ最悪ぅ。せめて夢の中ぐらいそっとしといて欲しいよねぇ。」
C子「あ~あ、あたしらがこんな地獄見てる時にぃ、A子と非リア君は長野の高原でイチャイチャしてんだよぉ。」
C子「今日でぇ・・・1週間だねぇ。」
B子「良いなぁ。あたしも長野行きてぇ。」
C子「長野、海ないじゃん。」
B子「良いのぉ。海でも山でも良いからぁ、勉強しなくて良いトコに行きたいぃ。」
C子「・・・・・・あの二人さぁ、マジで付き合ってないのかなぁ?」
B子「やっぱ気になるぅ?」
C子「そりゃぁなりますよぉ。」
B子「だよねぇ。でもさぁ、あたし的にぃ、付き合ってないってのはマジだと思うんだぁ。」
C子「そうなのぉ?」
C子「あぁ~、確かにぃ。非リア君、そんなにウソ上手くなさげだしねぇ。」
B子「だからぁ、A子が非リア君に片想い中なんじゃないかなぁって思うワケぇ。」
C子「ん~、なるほどねぇ。非リア君はA子に興味ないのかなぁ?」
B子「う~ん、非リア君がどう思ってるかは分かんないよぉ。ただぁ、A子が非リア君に片想いしてんならぁ、男C・Dん時にぃ、非リア君のゲイ疑惑を気にしてた事も納得じゃね? それにぃ、今回の長野のバイトもぉ、A子が昔家族でよく行ってたペンションなんだってぇ。って事はぁ、確実にA子が非リア君を誘ったワケじゃん?」
B子「A子って何気にちょっとロマンチストなトコあんじゃん? 自分のお気に入りの場所にぃ、好きな人と一緒に行きたいぃみたいなぁ。」
C子「生まれた~ま~ちの あの白さを~♪」
B子「あなたに~も~見せたい~♪」
B子・C子「「会いたいから~あ~ 恋~しくて~♪」」
B子「的な?」
C子「キャハハハハッ! ウケるぅ! ってか、生まれた町じゃないじゃん。」
B子「いや、そうだけどぉ、ほらぁ、何かそういう感じぃ。分かるぅ?」
B子「そうなんじゃないかなぁって。まぁ、分かんないけどねぇ。」
C子「・・・・・・ねぇ、B子ぉ。ぶっちゃけぇ、非リア君と付き合えるぅ?」
B子「ん~、付き合えるよぉ。あたしねぇ、あの一件以来ぃ、ちょっと非リア君の見方が変わってきたんだぁ。」
C子「あの一件ってぇ、罰ゲでコクった事ぉ?」
B子「そうそう。」
B子「そうそうそう。許すどころかぁ、あたしらの心配までしてくれてぇ。あの優しさはちょっと来たなぁ。」
C子「あたしはアレぇ。シュークリーム一緒に食べようって言ってくれた時ぃ。」
B子「あぁ、うん。アレは来た。ヤバかった。」
C子「濡れた?」
B子「軽く、って何言わしとんじゃい!」
C子「キャハハハハッ!」
C子「なるほどねぇ。って事はさぁ、このバイトから帰って来たらぁ、何か動きがあるかもだねぇ。」
B子「あるかもねぇ。」
C子「ちょっと楽しみかも、それ。」
B子「だねぇ。あっ、言ってる間にそろそろ1時じゃん。昼休み終わりだしぃ。」
C子「うわぁ、萎えるなぁ。また予備校という名の牢屋に戻されるのかぁ。」
非リア「えっ? ごご、5時まで自由ですか?」
A子「長っ!」
オーナー「そうなんだ。今日はお客さん一組しかいないから、夕食の準備も5時で全然間に合うんだ。食材も昨日の買い出し分で十分だし、今日は買い出しの必要がなくてね。だから、今日は1時~5時まで自由。まぁ、この仕事はたまにこういう大きな無風地帯ができるもんなんだよ。」
非リア「はぁ・・・」
オーナー「勿論、時給は普段通り、二時間休憩の扱いで付けるから安心して。」
非リア「い、良いんですか?」
オーナー「良いよ良いよ。こうやってヒマな時間ができるのは誰のせいでもないんだし。それに、君達はよく働いてくれるから、この8日間、ホントに助かってるんだ。これはボーナスだと思っといて。」
A子「やったぁ。ありがとうございますぅ。」
非リア「あり、あり、ありがとうございます。」
オーナー「どういたしまして。ところで、ここからの4時間、どうやって過ごすつもり?」
非リア「あっ、ふ、普通に、いつもの休憩と同じように、へへへ、部屋で勉強します。」
オーナー「はははっ。真面目だね。まぁ、確かに本来なら受験勉強してる時にバイトに来てるんだし、空いた時間で少しでもそれを補うってのは大事な事だけどね。ただね、もし良かったら、二人で高原の自然公園に行ってきたらどうかなと思うんだけど?」
非リア「しし、自然公園ですか?」
A子「あっ、それ超行きたいしぃ。」
オーナー「勿論、無理強いはしないよ。受験勉強が大事なのは百も承知だからね。ただ、せっかく夏のシーズンにうちに来てくれて、こうやって時間が余ったんなら、是非この地域の名物である、高原の景色を満喫して欲しいなぁと思ってね。」
A子「ねぇ~非リア君、行こうよぉ。マジで山頂からの景色、ヤバいぐらい綺麗なのぉ。あたし行きたいしぃ。」ユサユサ
非リア「うわぁ、あっ、ちょ、揺すらないでぇ」グワングワン
オーナー「もし行くんだったら、商工会のスタッフパスを貸してあげるよ。それがあればリフト代もタダになるから。」
A子「はい。行きまぁす。非リア君、行くよねぇ?」
非リア「えっ? あ、はぁ。い、い、行きます。」
オーナー「公園までは無料送迎バスがこの辺りを巡回してるから、それに乗ってくと良いよ。」
オーナー「おっ? 何? 歩いて登るの?」
非リア「えっ!?」
A子「はい。やっぱぁ、ここの高原は歩いて登ってなんぼかなぁって思うんでぇ。」
オーナー「そっかぁ。うん、関心関心。歩けば片道1時間ぐらいだしね。まぁまぁ良い運動になるよ。」
非リア「い、1時間!?」
ぜぇ ぜぇ
はぁ はぁ
A子「非リア君遅いしぃ。」
非リア「ちょ、ちょっと待って・・・ぜぇ・・・・・・何でそんな・・・はぁ・・・・・・元気なの・・・」ヒィヒィ
A子「何でってぇ・・・・・・若さ?」
非リア「ぜぇ・・・同い年でしょ!」
A子「ってかまだ登り出して10分だしぃ。10分じゃさすがにバテなくね?」
非リア「って事は・・・はぁ・・・・・・あと50分!?」クラクラァ
A子「さぁ、アゲアゲで行くよぉ。」タッタカ タッタカ
非リア「ま、待ってぇ・・・ぜぇ・・・ゲッホ」
非リア「そ・・・はぁ・・・そうなんだ。」ヒィコラ ヒィコラ
A子「木とか生えまくりの普通の山はさぁ、あたしもそんな登るの好きじゃないんだぁ。何かジメジメしてんじゃん? そんでぇ、自分がどんだけ登ってきたかってのもぉ、分かりにくいじゃん? でもさぁ、ここは高原で見晴らし良いしぃ、涼しいしぃ、景色とか超キレイだから登るの苦じゃないんだよねぇ。」タッタカ タッタカ
A子「ほれ、ファイットぉ!」タッタカ タッタカ
非リア「・・・イッパァァツ・・・ゲッホ」ヒィコラ ヒィコラ
A子「よぉし! 来たぁ!」タッタカ タッタカ
非リア「さ・・・山頂?・・・はぁ」ヒィコラ ヒィコラ
A子「ううん、中腹ぅ。あと半分だしぃ。」
非リア「ヒイィィィィィ!!」
非リア「・・・」フラフラァ
A子「非リア君・・・山頂着いたよぉ!」
非リア「・・・・・・やったぁ・・・ゲッホゲッホ」
A子「はぁ・・・・・・標高1952メートルぅ。約2000!」
非リア「ぜぇ・・・はぁ・・・・・・ぜぇ・・・」
A子「ねぇ、こっち来てぇ。向こうの崖っぷちぃ。あそこが一番見晴らし良いんだよぉ。」スタスタ
非リア「あっ、うん。」スタスタ
非リア「うわぁ・・・」
A子「すごいっしょぉ?」
A子「あの辺のさぁ、ちょっと建物がごちゃごちゃしてる場所あんじゃん? あそこが高速バス降りた茅野駅だよぉ。」
非リア「うわぁ、すごいなぁ・・・なんか、改めてとんでもないトコに来たって実感するよ。」
ビュウゥゥゥ
非リア「わっ! な、何、この白い煙?」
A子「あぁ、これぇ? これねぇ、雲ぉ。」
非リア「えっ!? 雲!? 僕ら、雲と同じ高さにいるの!?」
A子「そうだよぉ。」
非リア「・・・・・・。」
A子「感動しちゃった系?」
A子「ふふふ。」
非リア「すごいなぁ・・・」
A子「ここねぇ、冬になったら雪積もってぇ、ゲレンデになんのぉ。」
非リア「へぇ。そうなんだ。雪の積もったこの景色もキレイだろうねぇ。」
A子「うん。すごいよぉ。またそん時はぁ、二人で一緒に来ようねぇ。」
非リア「うん・・・・・・えっ?」
A子「二人で。」
非リア「・・・う、うん。」
A子「あはっ。やったぁ。まぁ、あたしスキーもボードもできないけどねぇ。」
非リア「僕もやった事ないよ。」
非リア「あっ、DQNは確かボード上手いみたいだよ。DQNも一緒n」
A子「イヤ!」
非リア「!!」ビクッ
A子「ふ・た・り が良いのぉ。」
非リア「そ、そう?」オロオロ
A子「約束ぅ。」スッ
非リア「あっ・・・はい。」スッ
キュッ
A子「指切りね。」
非リア「・・・うん。」
A子「・・・。」
非リア「・・・。」
A子「・・・。」
非リア「・・・。」
A子「・・・帰ろっかぁ。」
非リア「うん。うわっ!」グイッ
A子「ダメだしぃ。固い約束だから簡単には離しませぇん。」
非リア「ちょ! せめて反対の手にしてよ! 歩きにくいから!」ヨタヨタ
A子「キャハハハハッ! その歩き方ウケるぅ!」
非リア「あわわわわっ!」ワタタタ
A子「あっ、そうだぁ。」
非リア「えっ? 何?」
A子「スタッフパス持ってきてないからぁ、帰りも歩きねぇ。」
非リア「ヒイィィィィィ!!」
DQN「おはざっす。」
店長「おぅ、DQN。悪いな、早くに来てもらって。」
DQN「いや、良いっすけど。何なんすか? 話あるから30分早めに来いとかって。」
店長「ん~、その、何だ、お前さぁ、借金返す為に最近、出勤の回数増やしてるんだよな?」
DQN「はい。そうっすよ。」
店長「で、高校卒業後は進学せず、うちでバイトしながら職を探すつもりなんだっけ?」
DQN「そうっすね・・・・・・って、どうしたんすか?」
店長「いや、それならさ、いっそ、うちに就職したらどうかと思ってな。」
店長「お前、ホントに頑張ってるし、お前が朝の枠に入るようになってから、朝の常連さんが増えてきてるんだよ。」
DQN「えっ? そうっすか?」
店長「うん。お前、夜の時間帯の時もそうだけど、年配のお客さんに話しかけるだろ? あれを気に入って下さってる人が多いんだ。ほら、年配の世代の人たちって、店員と話したがる人が多いだろ?」
DQN「そうっすね。」
店長「でも一方で、若いお客さんには話しかけてないよな? あれも正解だと思う。若い世代のお客さんは、店員にベタベタされるのを嫌うからな。お前、あれは意識してやってんのか? 」
店長「そうかそうか。お前と喋る事を目当てに来てくれる常連さん、朝から夜までの中で、俺が思い付くだけでも10人以上はいるぞ。」
DQN「えっ? そんなにいます? えっと、あの人とあの人と・・・・・・」ひぃ ふぅ みぃ
DQN「あ~、そうっすね。そんぐらいはいるかなぁ、いっつも来る度に喋ってくれる人。」
店長「俺はそれを見てな、関心してたんだ。なかなか接客って物を分かってるなぁと。しかも、お前はそうやって喋りながらでも、絶対手は休めない。必ず何かテキパキ仕事しながらお客さんと喋る。あれはなぁ、なかなか見事だぞ。」
店長「それでだ、昨日の昼も、そういうお前目当てのお客さんが来てくれて喋ってただろ? あの土建屋の二人組。」
DQN「あぁ、はい。あのスキンヘッドの大将と金髪の兄さんっすね。」
店長「そうそうそう。そんであの時、本社の偉いさんが視察に来てただろ?」
DQN「来てましたねぇ。メガネにオールバックの、ちょっとヤクザっぽい人でしょ?」
店長「はははっ。確かに、あの人ちょっと怖いな。あの人はな、うちの会社の東日本店舗事業部の部長なんだ。」
DQN「???」
DQN「ほぇ~。そうだったんすかぁ。あっ、だから店長、しっかり挨拶しろって言ってたんすね。」
店長「そうさ。今月は年に一回の“恐怖の部長巡回月間”なんだ。そんな偉いさん相手に『ちぃっす』とか『おはざっす』とか言われたら、俺の立場が危うくなるからな。」
DQN「はははははっ!」
DQN「えっ? マジっすか?」
店長「うん。さっきも言った通り、お前は喋りながらでも必ず手は動かしてるからな。そこが良かったらしい。『接客と仕事の両方ができるとは、なかなかやるじゃないか』ってな。」
DQN「へへっ。あざっす。」
店長「そこで、余計なお世話かも知れないが、俺は部長にお前の事情を話した。借金の事、進学せずに就職する気である事。」
店長「いや、すまん。俺にしか話してないお前の事情を勝手にバラした事は本当に謝る。ただな、これには俺なりの狙いがあったんだ。」
DQN「狙い?」
店長「あぁ。そして、見事俺の狙いは的中した。部長はな、『アイツが卒業後にうちで働きたいって言うなら、俺が人事に話つけてやるからいつでも言ってこい』と言って下さった。」
DQN「えっ!? マジっすか!?」
DQN「いや、もう願ったり叶ったりっすよ! 雇って下さい!」
店長「おぉっほっほ、決断が早いな。はははっ。お前らしいよ。じゃぁ、部長には俺から話とこう。まぁ、うちとしても、お前みたいな奴が社員に入ってくれれば心強いからな。こんな外食産業で良ければ、歓迎するよ。」
DQN「うっす! すんません店長! マジでありがとうございます!」
コンコンッ
非リア「はい。」
A子「あたしぃ。」
非リア「あっ、どうぞ。」
A子「ごめん、非リア君出てきてくんなぁい?」
非リア「えっ? あぁ、分かった。」スタスタ
ガチャッ
非リア「どうしたの?」
A子「あっ、うん・・・・・・ちょっと外で話さない?」
非リア「えっ?」
A子「外ぉ。庭のベンチんトコでぇ。」
非リア「う、うん。良いよ。」
非リア「何、話って?」
A子「いやぁ・・・そのぉ・・・・・・特に話もないんだけどぉ。」
非リア「?」
A子「上見てぇ。」クイッ
非リア「上?」チラッ
非リア「あっ!!」
A子「・・・。」
非リア「うわぁ・・・」
A子「星ぃ・・・すごくね?」
非リア「すごい・・・図鑑の写真みたいだ。」
A子「これもねぇ、ここの魅力なんだぁ。非リア君にこの事教えるの忘れてたなぁと思ってぇ。」
非リア「その為にわざわざ?」
A子「迷惑ぅ?」
A子「ふふ。良かったぁ。」
非リア「うわぁ・・・」マジマジ
A子「あんまり見上げてると首こるよぉ?」
非リア「良いよ。地元に帰ったらこんな星空見れないもん。首がこるぐらい平気さ。」
A子「明日の昼には帰っちゃうもんねぇ。」
非リア「そうだね。」
A子「・・・なんかぁ、寂しいねぇ。」
非リア「うん。ずっとここにいたいねぇ。」
A子「二人でねぇ。」ポツリ
A子「あ、うぅん。何でもなぁい。」
非リア「?」
A子(どうしよぉ。ヤバい。マジで緊張して言えないしぃ。)
非リア「A子ちゃん。ありがとう。」
A子「えっ?」
非リア「こんな素敵な場所に連れてきてくれて。そして、僕に手を貸してくれて。」
A子「うぅん。気にしないでぇ。あたしも超楽しかったしぃ。」
非リア「約束、絶対守るよ。冬に一緒に来ようね。今年は受験だから無理だとしても、来年には。」
A子「あっ、うん。絶対だよぉ。」
非リア「うん。絶対。」
非リア「いやぁ、それにしてもすごい星だなぁ・・・」マジマジ
A子「・・・。」ソワソワ
非リア「こんな星空、初めて見たよ。」マジマジ
A子「・・・。」ソワソワ
非リア「こんな事なら小・中学校の星座の授業、もっと真剣に聞いてれば良かったなぁ。」マジマジ
A子(ちょっとA子ぉ! 何か喋んないとぉ、マジで明日になっちゃうよぉ! これが二人きりになれる最後のチャンスなんだってばぁ!)アセアセ
非リア「あっ、そうだ。A子ちゃん。」
A子「はっ、はい!」ビクッ
A子「あぁ、そう言えばそうだねぇ。あたしもバタバタして忘れてたぁ。」
非リア「もし、まだ興味があるなら話すよ? まぁ、そんな面白い話じゃないけど。」
A子「あっ、超聞きたぁい。聞かして聞かしてぇ。」
A子(よし! とりあえず話題ができたしぃ!)
非リア「うん。分かった。中一の二学期の事なんだけど・・・・・・」
理科教師「え~、これがいわゆる夏の大三角形だね。この部分はテストにも出すつもりなので、しっかり頭に入れておくように。」
ガラッ
一同「?」
DQN「・・・。」
ツカツカ
ヒソヒソ
DQNだ
おいおい、五時限目に登校かよ
良いご身分ねぇ
そこまでサボったんならいっそ学校来んなよ
迷惑だよねぇ
ヒソヒソ
理科教師「おい!! 今何時だと思ってるんだ!?」
DQN「あぁ?」ギロ
理科教師「うっ・・・」タジ
DQN「・・・。」ジロォ
DQN「・・・・・・腕時計見ろよ。」
ツカツカ
理科教師(チッ! クソガキが!)
非リア「・・・。」
ドスッ
DQN「・・・。」
非リア「・・・。」
DQN「・・・。」
非リア(タバコ臭っ。まいったなぁ。なんでこんなのが隣の席なんだろ。)
DQN「・・・。」
非リア(早く席替えにならないかなぁ。)
委員長「・・・せ、先生・・・授業を続けましょう。」
理科教師「えっ? あ、あぁ、そうだね。失礼。え~っと、では・・・」
ガラッ
キャー
な、何だ君達は
一同「!?」
ざわざわ
非リア(1組の教室からだ・・・)
?「どうだ!? こん中いるか!?」
?「いえ!! いません!!」
?「じゃあ隣の教室行くぞ!! 邪魔したな!!」
ガラッ
?「ここはどうだ!?」
?「ここにもいません!!」
?「んだよ!! じゃあ次行くぞ!!」
非リア(1組の方から順に来てる。って事は三番目はうちじゃないか・・・)
ガラッ
暴走族「ここはぁ!?」
舎弟「え~っと・・・あっ、いました! 窓際の!!」
ざわざわ
なんだなんだ
窓際ぁ?
ざわざわ
非リア「えっ? ま、ま、窓際って・・・ぼぼ、僕?」キョロキョロ
DQN「・・・・・・ちげぇよ。」チラッ
舎弟「アニキ、アイツっす!!」
暴走族「テメーか!!」
DQN「誰かと思ったら、さっきゲーセンでボコった奴じゃねぇか。」
暴走族「うちの舎弟が世話んなったらしいな!?」
DQN「“世話”って程のモンでもなかったぜ。弱すぎてよぉ。」ニヤニヤ
暴走族「!!」カチン
舎弟「テメー!!」ワナワナ
おい、あの特攻服って
飛鬼仁異斗(ヒキニート)じゃねぇか
DQN殺されるぞ
ざわざわ
理科教師「君達!! け、警察を呼ぶぞ!!」
暴走族「心配すんなよ先生!! そのガキ借りてくだけだ!! すぐ帰んよ!!」
舎弟「ってワケだ!! テメー面貸しやがれ!!」
DQN「・・・・・・ギャーギャーうるせぇなぁ。」スクッ
暴走族「さっさと来い!!」
DQN「・・・・・・場所変えんの面倒くせぇ。」コキコキ
暴走族「ああっ?」
DQN「ここで済まそうぜ。」ギロッ
ダッ
暴走族「!?」
ダダダダダッ
DQN「ドゥルァァァァァァァ!!!!」
バキッ
暴走族「ガッ!!」
うわぁ
キャー
非リア(うわぁ! た、大変だ!)
理科教師「こ、こら!!!! 止さんかぁ!!!!」
舎弟「テメー!!」
DQN「・・・。」
ガシッ
舎弟「うっ!!」
DQN「ふんっ!!」
ゴンッ
舎弟「カッ・・・ハ・・・」クラクラァ
バターン
DQN「頭突き一発で終了かよ。テメー、マジどうしようもなく弱ぇな。」
暴走族「こんの・・・クソガキぃ!!」
ムクッ
暴走族「調子くれてんじゃねぇぞゴルァァァ!!」
ダダダダダッ
DQN「おぉぉぉぉぉ!!!!」
ダダダダダッ
ドガッ
バキッ
ゴキッ
ゲシッ
委員長「ちょ、ちょっと先生!! 早く警察を呼んで下さい!!」
理科教師「えっ!? あっ、あぁ!! 分かっているとも!!」
理科教師(呼べるものなら呼びたいよ!! だけど、本当に警察沙汰にしてしまったら当然、新聞やニュースに載るし、各高校のうちに対する内申点も下がる!! そうなると『暴動を止められなかった現場の責任だ』とか何とか言って、校長に責められるのは私なんだぞ!!)
ダッ
委員長「お願いします!!」
理科教師(とりあえず職員室に駆け込んで、体育の先生を呼んでこよう!! あの人の腕っぷしなら何とかなるだろう!!)
タタタタタッ
暴走族「ゼアァッ!!」
ドガッ
DQN「ぐあっ!!」
ドシャーン
ガンッ
委員長「キャッ!!」
女生徒「い、委員長!?」
DQN「やってくれんじゃねぇか!」
ムクッ
DQN「しゃあぁぁぁぁ!!!!」
ダダダダダッ
バキッ
ガスッ
ドガッ
ムクッ
女生徒「い、委員長!! 大丈夫!?」
委員長「あっ、うん。大丈夫よ。ちょっとぶつかっただけだから。」
ガリ勉「い、いや、大丈夫じゃないだろう!? 唇から血が!!」
非リア「!!」ピクン
委員長「えっ?」サスサス
委員長「あっ、ホントだ。」
女生徒「ほ、保健室に行かないと!!」
委員長「だ、大丈夫よ! ちょっと切れただけだから!」アセアセ
非リア「・・・。」
暴走族「ウルァ!!」
バキッ
DQN「グルァ!!」
ゴスッ
暴走族「ぜぃ!!」
ボゴッ
DQN「じゃあっしゃぁ!!」
ドグッ
非リア「・・・。」ワナワナ
ワナワナ
ワナワナ
ワナワナ
ワナワナ
ワナワナ
ワナワナ
ワナワナ
プツン
非リア「・・・。」キッ
DQN「はぁ・・・はぁ・・・」
暴走族「中坊のクセに・・・ぜぇ・・・なかなかやるじゃねぇか・・・」
DQN「テメーが・・・はぁ・・・良い歳こいて弱ぇだけだろ・・・」
暴走族「こんの・・・!!」カチン
DQN「へへっ!」
ざわざわ
えっ? おい
非リア?
アイツ、何する気だ
ざわざわ
非リア「こここ、こっちを向けぇ!!!!」
暴走族「ん?」クルッ
DQN「あぁ?」クルッ
非リア「うわあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ぷしゅうぅぅぅぅぅ
DQN「消火器!?」
しゅわあぁぁぁぁぁ
もくもくもく
暴走族「うぉ!! ゲッホ!!」
もくもくもく
DQN「ちょ、おい!!」
もくもくもく
もくもくもく
もくもくもく
DQN「ゲッホ・・・・・・痛ぇ! 目に入った!」
非リア「わあぁぁぁ!!!!」
バギャッ
暴走族「ぎゃふっ!!!!」
ドサッ
DQN「!?」
DQN(何だ? 何が起きてんだ? クソ、目が開けられねぇ!)
非リア「ああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ガバッ
DQN「!!!?」
ドサァァァァ
非リア「い、委員長さんに、あや、謝れぇ!!」
バキッ
DQN「ぐはっ!! テメー!!」
非リア「謝れぇ!!!!」
ボカッ
DQN「ぐぅっ!! な、何言ってやがr」
非リア「お、お、女の子の顔に、ききき、傷が残ったらどうするんだぁぁぁぁ!!!!」
DQN「!?」
非リア「謝れぇ!!!!」
ベキッ
DQN「ぐぉっ!!!!」
非リア「謝れって、い、い、言ってるだろぉ!!!!」
ぎゅうぅぅぅ
DQN「あっ・・・ぐぅ・・・」ジタバタ
DQN(く、首が・・・)
非リア「謝れぇ!!!!」
ぎゅうぅぅぅ
DQN(息が・・・)
非リア「謝れぇ!!!!」
ぎゅうぅぅぅ
DQN(いや、首絞められたら謝るも何も・・・)
非リア「謝れってばぁ!!!!」
ミシミシミシ
DQN(かはっ・・・わ、分かった!! 謝る!! 謝るから首離せ!!)
メキメキメキ
DQN(いや、だから!! お前・・・マジ・・・・・・死ぬ・・・)
バタバタバタッ
体育教師「こ、コラ!! お前、何してるんだ!!」
グイッ
非リア「は、は、離して下さい!!」
理科教師「ど、DQN!! おい!! しっかりしろ!!」
DQN「・・・。」ガクッ
DQN「・・・。」すぅ すぅ
DQN「・・・・・・んっ?」パチッ
担任「おっ、目が覚めたか。」
DQN「・・・・・・病院?」
校長「いや、保健室だ。」
DQN「保健室・・・そっか・・・」
DQN母「こんのバカ息子ぉぉぉぉ!!!!」
バチイィィィン
DQN「がふっ!?」
担任「ち、ちょっと! お母さん!」
校長「落ち着いて下さい!」
DQN「・・・・・・オフクロ?」
DQN母「アンタはホントにぃ!!!! 何考えてんだい!!!!」
バチイィィィン
DQN「ぐぉっ!!」
DQN母「止めないで下さい、先生!!!! こんなバカはねぇ、殴らないと分かりゃしないんですよ!!!!」
バチイィィィン
DQN「ぐぇっ!!」
DQN母「教室で喧嘩なんかしたら、どれだけ先生や友達に迷惑がかかると思ってんだい!!!? 喧嘩は外でするもんだろうが!!!!」
校長・担任((そこ!!!?))
バチイィィィン
DQN「ぐほっ!!」
バチイィィィン
DQN「ぎゃはっ!!」
バチイィィィン
バチイィィィン
バチイィィィン
バチイィィィン
※以下、50往復にも及ぶビンタの嵐が続きます。
DQN「おっ・・・おっ・・・」ピク ピク
DQN母「この大バカ息子がぁ!!!!」スッ
担任「うわぁ!! お母さん!! もうやめましょう!!」
ガシッ
校長「これ以上はいけません!! 息子さんのライフはすでに0ですぞ!!」
DQN母「離して下さい!!!! こんなモンじゃ、こんなモンじゃ足りません!!!!」
DQN「・・・。」
DQN母「アンタも頭下げなぁ!!!!」
ゴンッ
DQN「痛っ!!」
DQN母「悪い事したら謝るんだよ!!!! 幼稚園児でも分かるだろう!!!!」
DQN「・・・・・・す、すんませんっした。」
校長「まぁ、そのぉ・・・・・・何ですかなぁ・・・ハッキリ言って、我が校創設以来の大事件です。殴り込んできた暴走族と教室で喧嘩を起こすなどとは。」
校長「いや、お母さん。我々もそこまでしようとは思っていません。幸い、今回はどうにか警察沙汰にもならずに済みました。今回の事は、息子さんへの特別課題と反省文50枚の提出をもって、穏便にすまさせていただく所存です。」
DQN「はぁ!? 50枚ぃ!? 冗談じゃn」
DQN母「!!!!」ギロッ
DQN「・・・・・・やります。」ショボン
DQN「・・・・・・先生。」
担任「なんだ?」
DQN「あのゾクの奴、どうなったんだよ? 非リアの野郎が消火器ブチ撒けた後よぉ。」
DQN母「アンタ!!!! 先生に何て口の利き方を!!!!」
担任「いえいえ、お母さん。構いません。」
担任「一部始終を見ていた生徒の話では、非リアが空になった消火器で顔面を思いっきり殴り付けて、気を失ったそうだ。」
DQN「マジかよ・・・」
DQN(おいおい、いくら空になったっつっても、消火器なんてあの入れ物だけでかなり重さあんだろ・・・・・・何なんだよ、アイツ・・・)
DQN「・・・・・・ふ~ん。」
ガラッ
DQN「ふぅ・・・・・・んっ?」
委員長「あっ・・・」
DQN「・・・。」
委員長「・・・・・・だ、大丈夫だった? その・・・意識失ってたけど・・・」
DQN「・・・。」ジー
DQN(唇が腫れてる。そうか。俺の肘がぶつかった時か・・・)
(「お、女の子の顔に、ききき、傷が残ったらどうするんだぁぁぁぁ!!!!」)
DQN「・・・。」ジー
委員長「な、何?」
DQN「・・・・・・悪かった。」
委員長「えっ?」
DQN「唇。」
DQN「関係ねぇのに痛ぇ思いさせたし、何より、女の顔に傷をつけちまった。マジですまねぇ。」ペコッ
委員長「・・・・・・。」
DQN「謝って許されるとは思ってねぇけど、とにかく謝りたい。何なら、殴ってもらっても構わねぇ。」
委員長「そんな事はしないよ・・・・・・アナタと同レベルにはなりたくない。」
DQN「・・・・・・。」
委員長「・・・・・・友達には大丈夫って言ったけど、正直、唇が切れた時、ショックだった。」
DQN「・・・・・・すまねぇ。」
DQN「・・・・・・。」
委員長「少し見直した。だから、もう良いよ。顔上げて。」
DQN「・・・・・・すまねぇ。」
委員長「何日かすれば治るだろうから、大丈夫よ。じゃあ、帰るから。」
DQN「あぁ。」
スタスタスタ
DQN「・・・。」
ガラッ
DQN「・・・。」
ざわざわ
DQNだ
朝一から登校してきた
珍しい
あんな事件起こした後によく来れるなぁ
ざわざわ
DQN「・・・よう。」
委員長「・・・・・・おはよ。」
DQN「これ。」スッ
委員長「えっ?」
DQN「塗り薬。」
委員長「・・・。」
DQN「前に、喧嘩で唇切って腫れた時、これ塗ったらすげぇ効いたんだ。」
委員長「・・・・・・買ってきてくれたの?」
DQN「良かったら使ってくれ。」
DQN「・・・・・・ここ、置いとくからよぉ。要らなきゃ捨t」
委員長「ふふふ。」
DQN「?」
委員長「さっき、非リア君も同じ薬持ってきてくれた。」
DQN「!?」
委員長「体育のサッカーで、顔にボールが当たって唇を切った時、これを塗ったらよく効いたんだって。」
DQN「・・・・・・そうか。」
委員長「ふふふ。しかも、この箱に貼ってあるテープ。」
DQN「ん? ビニール袋いらねぇって言ったら、貼ってくれんだろ?」
委員長「非リア君のも同じお店のテープが貼ってあったの。」
委員長「面白い偶然だね。」
DQN「・・・。」キョロキョロ
DQN「非リア、どこ行ったんだ?」
委員長「さぁ。トイレかな? あっ、戻って来た。」
DQN「!」バッ
非リア「・・・。」スタスタスタ
DQN「・・・。」ジー
委員長「DQN君?」
DQN「・・・。」
ツカツカツカ
委員長「えっ?」
DQN「・・・。」ジー
非リア「・・・あ、あの、ききき、昨日は、その・・・」オドオド
DQN「・・・・・・ツラ貸せ。」
ヤバい
非リアが殺される
アイツ、この為に朝一で来たのか
最低
ざわざわ
非リア「ももも、もうすぐ授業が始m」
DQN「すぐ終わる。」
非リア「・・・・・・。」
DQN「来い。」
非リア「・・・わ、分かった。」
スタスタスタ
ガチャッ
DQN「ここなら邪魔が入らねぇ。」
非リア「・・・。」オドオド
DQN「体育館の裏や空き教室じゃ、先公に簡単に見付かっちまうからな。ゆっくり話すなら、ここが一番だ。」
非リア「・・・はは、話す?」アタフタ
DQN「お前とゆっくり話してみたくなった。」
非リア「ななな、何を?」シドロモドロ
DQN「座れよ。」
ドカッ
非リア「う、うん・・・」
スッ
DQN「タバコ吸うか?」
非リア「すすす、吸わない。」
DQN「そうか。」
DQN「ふぅ~」
非リア「・・・・・・。」オドオド
DQN「・・・・・・迂闊だったぜ。」
非リア「えっ?」
DQN「保育園の頃よぉ、オフクロのチャリの後ろに乗せられて、スーパーに買い物に行ったんだ。」
非リア「?」
DQN「その日は確か雨上がりで、濡れたマンホールの蓋踏んで、俺ら、チャリごと転倒したんだ。」
非リア「・・・。」
DQN「オフクロ、ガードレールに顔面ぶつけてよぉ、前歯が折れたんだ。二本とも。」
非リア「・・・・・・う、うん。」
DQN「俺、そん時のオフクロのツラ見て、めちゃくちゃ泣いたんだわ。口から血ぃ出てるのが怖いのと、歯抜けになったオフクロを可哀想って思う気持がぐっちゃぐちゃに混ざってよぉ、涙が止まらなかった。」
DQN「何かその瞬間、『あぁ、女の顔にケガさせちゃいけねぇんだ。』って思ったんだよな。ガキなりによぉ、肌で感じたっつうか。」
非リア「・・・うん。」
DQN「なのに俺は昨日、委員長にケガさせた。」
非リア「・・・。」
DQN「しかも、お前から言われるまで、その事に気付かなかった。」
非リア「・・・。」
DQN「・・・・・・ありがとな。」
非リア「えっ?」
非リア「い、いや・・・べつ、べつ、別にそんな・・・」
DQN「・・・・・・お前は昔、何かあったのか?」
非リア「えっ?」
DQN「『女を殴っちゃいけねぇ』『女の顔は傷付けちゃいけねぇ』ってのは、まぁ、誰でも知ってる。けど、だからって喧嘩してる奴らに消火器ぶっぱなして、首まで絞めるほどブチギレる奴なんて、普通なかなかいねぇだろ?」
DQN「違ぇよ。謝れっつってんじゃなくてよぉ、お前も、俺のオフクロの前歯の件みたいに、身に染みて感じる経験した事あんのかって訊いてんだ。」
非リア「そ、それは・・・・・・」
DQN「・・・無理に訊こうとは思わねぇけどな。」
非リア「・・・。」
DQN「・・・。」
非リア「・・・・・・ぼぼぼ、僕には姉さんがいたんだ。」
DQN「・・・“いた”?」
非リア「じじ、自殺した。」
非リア「い、い、良いよ。きき、君になら、な、何だか話しても良い気がする。」
DQN「・・・。」
非リア「と、歳が離れててね。ぼぼぼ、僕が小学校2年の時、ね、姉さんは高校1年だった。」
DQN「・・・。」
非リア「あ、ある夜、塾の帰り道に、ねね、姉さんは飲酒運転の車に跳ねられて、そそそ、そのまま100メートルほど引き摺られた。」
DQN「・・・。」
非リア「かか、辛うじて命は助かったけど、か、か、顔の右側がズタズタになった。」
DQN「うっ・・・」
非リア「もも、もう、“顔をケガした”なんて、れべ、レベルじゃなかった。かかか、完全に“顔を破壊された”んだ。」
DQN「・・・その・・・・・・整形はできなかったのかよ?」
非リア「むむ、無理だった。ひ、皮膚移植である程度は治せるけど、それでも完全じゃない。そそ、それに頬骨と耳と視力は、どどど、どうしようもない。」
DQN「・・・・・・そうか。」
非リア「じじ、事故から一ヶ月後、顔の包帯が取れた。ね、姉さんも僕ら家族も、そそそ、そこで初めて、その破壊された顔を見たんだ。」
DQN「・・・。」
非リア「そそ、その夜、姉さんは首を吊った。」
非リア「ね、姉さんは、ぼぼぼ、僕と違って明るい性格で、よ、よく笑う人だった。じじ、自殺とは一番縁遠い性格だったんだ。」
DQN「・・・。」
非リア「そそ、その姉さんを、あの事故は自殺に追い込んだ。もも、もっとも、あれだけの傷を負えば、お、男の人でも自殺するかも知れないけど。」
DQN「そんなに・・・」
非リア「うん。ひ、ひどい傷だった。あ、あの日以来、僕は女の子がケガするのを見るのが怖いんだ。ごご、5年生の時、低学年の女の子がブランコから落ちたのを見た時も、あ、あ、足の震えが止まらなかった。」
非リア「い、今は少しマシになった。も、も、もう5年経つからね。ででで、でも、やっぱり見るのは嫌だ。」
DQN「そうか・・・俺は・・・・・・お前のトラウマも抉っちまったんだな。」
非リア「ごご、ごめん。くくく、首を絞めたのはやり過ぎだった。」
DQN「構わねぇ。喧嘩してりゃ、首絞めなんてしょっちゅう経験する。慣れてんよ。」
非リア「そそ、そうか。すすす、すごいね。」
DQN「・・・・・・意識飛ばされたのは初めてだけどな。」
非リア「えっ? あっ・・・・・・」
非リア「あの・・・その・・・」
DQN「意外なトコに強敵がいたモンだ。」
非リア「あ、あ、あい、あい・・・」
DQN「ん?」
非リア「アイム、ちゃちゃちゃ、チャンピオン・・・」
DQN「・・・。」
非リア「・・・。」
DQN「・・・ぷっ!」
非リア「はは・・・」
DQN「だははははははははっ!」
非リア「あは。ははははは。」
DQN「ははははははっ! 何だよそれ! ぶはははははっ!」
非リア「あはは。」
非リア「えへへ。」
DQN「今更ながら、お前に負けた事が腹立ってきたわ。ここでもう一発おっ始めるか?」
非リア「いいいい、いやいやいや!! かかか、勘弁してよ!!」
DQN「冗談だよ。」
非リア「びび、びっくりしたぁ。」
シュポ
DQN「ふぅ~」
非リア「そそ、そう言えば、あの暴走族が、なぐ、殴り込んで来た時、げ、ゲーセンでブン殴った奴だって言ったよね?」
DQN「おぅ。」
非リア「どど、どういう喧嘩だったの?」
非リア「よ、4年?」
DQN「おぅ。多分、アイツも学校サボって来てたんだろうな。そんでよぉ、ソイツがガキの癖に結構上手くてよぉ、俺、ソイツの後ろに突っ立って見てたんだ。」
非リア「うん。」
DQN「そしたら、あの舎弟の奴が乱入しやがったんだけどよぉ、これがクソ弱ぇんだ。俺は『キングオブ~』派だからあんま『鉄拳』は得意じゃねぇんだけど、アレなら俺でも勝てるな。」
DQN「んでまぁ、案の定フルボッコよ。それもノーダメで。」
非リア「うん。」
DQN「そしたらあの野郎、ブチギレてその小学生にカラみ出したんだ。」
非リア「えっ? あ、あの舎弟の人、たた、多分僕らより1~2歳上ぐらいだよね?」
DQN「多分そうだろうな。大人げないを通り越して、頭イカれてんぜ。」
非リア「だだ、だよね。」
DQN「だから俺が止めに入って、トイレでボコッてやったんだ。」
非リア「そそ、そうだったんだ。」
DQN「『鉄拳』同様、喧嘩もクッッッソ弱ぇ。」
DQN「そしたら、あのバックのゾク野郎を呼んで、殴り込んで来やがったってワケだ。まぁ、あんな弱ぇ奴を舎弟にしてるって事は、多分あのゾク野郎も飛鬼仁異斗のド下っ端なんだろうな。今日登校したら、もしかして飛鬼仁異斗の本体が正門前で待ち伏せしてっかなぁって思ってたけど、誰もいなかったしな。」
非リア「そそ、そうだね。」
DQN「飛鬼仁異斗はあんま仲間意識の強くねぇゾクだって噂だ。中坊にやられるような下っ端の尻拭いまで、イチイチ持っちゃくれねぇって事だろう。」
非リア「ぼ、暴走族にも色々いるんだね。そそそ、それにしても・・・」
DQN「ん?」
DQN「あっ? 何が?」
非リア「きき、君はその・・・て、典型的な不良で、ままま、周りに迷惑ばかりかける、めん、めん、面倒くさい人だと思ってた。」
DQN「はっはぁ。言ってくれんなぁ。まぁ、実際そうだけどよぉ。」
非リア「い、いや。ききき、君は優しい人じゃないか。」
DQN「はぁ?」
非リア「かか、カラまれてる小学生を助けたり、ききき、昨日も委員長さんにちゃんと謝ってたし。け、今朝、委員長さんから聞いたよ。」
非リア「ううん。ききき、君は優しいよ。だって・・・」
DQN「・・・だって?」
非リア「ささ、さっきから君は、ぼ、僕の吃音を、一度も笑わずに聞いてくれてる。」
DQN「あぁ、それか。俺の従兄弟も吃音持ちなんだ。だから、吃音持ちの奴と喋んのには慣れてんだよ。」
非リア「あ、そそそ、そうなんだ。」
DQN「従兄弟は吃音のせいでイジメられてたんだ。今年の夏休みに従兄弟ん家泊まりに行ったらよぉ、イジメっ子どもが大声で従兄弟の悪口言いに来やがったんだ、家の前までな。『出て来いや言語障害!!』とか言ってよぉ。代わりに俺が家から飛び出して、ソイツら血祭りにしてやったぜ。」
非リア「いや、それだけじゃ俺が帰った後、また元に戻っちまうと思ってよぉ、パンツ一丁にひん剥いて土下座させたんだ。んで、それを写真に取って『次また従兄弟に何かしやがったら、これテメーらの学校にバラくぞ』って脅してやった。こないだ従兄弟と電話したら、あれ以降パタッとイジメが無くなったってよ。」
非リア「あはは。ほ、ほらね。やや、やっぱり君は優しいじゃないか。」
非リア「だだだ、だからそこが優しいんだよ。」
DQN「意味分かんねぇぞ。」
非リア「その日以来、DQNはちょくちょく僕の家に電話をかけてくるようになってね。『明日の放課後、暇なら遊びに来い』って、誘ってくれるようになったんだ。DQNは従兄弟の件もあって、僕が学校じゃあまり人と話したくないって思ってる気持ちも、察してくれてたみたいでさ。」
A子「そうなんだぁ・・・・・・何か、ごめん・・・」
非リア「えっ? どうして?」
A子「だってぇ、非リア君のお姉ちゃんの事とかぁ・・・・・・」
A子「そっかぁ・・・・・・ねぇ。じゃあ、一個訊いて良い?」
非リア「どうぞ。」
A子「犯人はどうなったのぉ?」
非リア「あぁ、犯人ね。自殺した。事故の後、車を捨てて自宅のマンションに引き籠ってたみたいなんだけど、警察に突入されてね。一瞬のスキを突いて、ベランダから飛び降りたらしい。」
非リア「両親はそうだったよ。でもね、僕は当時、小学校2年だったから、姉さんを殺した奴が死んだという事実だけで満足できたんだ。さすがにその年齢じゃ、死刑と自殺の意味の違いなんて、理解できないからね。」
A子「あぁ、そっかぁ・・・」
非リア「だから僕は、ある意味、不幸中の幸いだったかも知れない。それは両親も言ってた。両親は姉さんを失った悲しみと、行き場のない犯人への憎悪の板挟みで、本当に苦しんでたけど、僕は悲しみだけで済んだからね。」
A子「そうだねぇ。」
A子「そっかぁ・・・」
非リア「うん。」
A子「何かぁ、DQNってやっぱすごいねぇ。」
非リア「うん。ちょっと乱暴なトコはあるけど、優しさのケタが違うよ。」
A子「吃音の事もよく理解してるしねぇ。」
非リア「うん。どれだけどもっても、彼は絶対笑わないし気にも止めないって分かってるから、安心して話す事ができたんだ。そうしてるうちに、どんどん打ち解けてきて、気が付けばどもらなくなってた。家族以外で、話す時にどもらなくなった人は、DQNが初めてだよ。」
非リア「・・・・・・女の子では、A子ちゃんが初めてだけどね。」
A子「えっ?」
非リア「どもらず喋れる相手。女の子ではA子ちゃんが初めて。」
A子「・・・・・・マジ?」
非リア「というか、今まで女の子と仲良くなった事がないからね。」
A子「あたしが初めてぇ?」
非リア「うん。」
A子「あたしが初めての女ぁ?」
非リア「そうだよ。」
A子「そ、そっかぁ・・・」
非リア「うん。」
A子「・・・・・・うふっ。」ニタァ
非リア「えっ、何? ちょっと・・・顔が笑み崩れてるよ?」
A子「え~? えへへへぇ。何か嬉しいしぃ。初めての女ぁ。」ニヤニヤ
A子「うん。」
非リア「・・・あっ、A子ちゃん!」
A子「えっ? 何なにぃ?」
非リア「気付けばもう深夜1時半だよ!」
A子「えっ? マジぃ? うわぁ、時間経つの早っ!」
非リア「全然気付かなかったねぇ。じゃっ、今日はもう寝ようか。」
A子「えっ?」
非リア「明日も朝食だけは手伝わなきゃいけないしね。」
A子「えっ? えっ? ちょ・・・」
非リア「じゃあ、部屋に戻るね。」スクッ
A子「あっ、ちょぉ・・・」
非リア「おやすみ。」
スタスタスタ
A子「あっ・・・」
A子「・・・・・・そんなぁ・・・」シクシクシク
非リア「お、オーナーさん。にに、2週間、お世話になりました。」
A子「お世話になりましたぁ。」
オーナー「いやいや、こちらこそ。本当に君達がいてくれて助かったよ。」
非リア「ききき、貴重な経験を、させ、させ、させていただきました。」
A子「また今度、冬に来まぁす。」
オーナー「あぁ、是非おいで。あの高原はスキー・ボード初心者の子にはちょうど良い難易度だしね。それに、山頂から眺める雪景色は最高だよ。」
非リア「たたた、楽しみにしてます。」
オーナー「そうそう。お給料だけどね、それぞれ1万円ずつボーナスで入れといたから。」
非リア「えっ!?」
A子「良いんですかぁ!?」
オーナー「良いよ良いよ。君達の働きはお世辞抜きに優秀で助かったからね。それと、お友達のバイクの話を聞いて、感動しちゃってね。だけど、そのバイクを直したら君達の手元に一円も残らないというのが何とも切ない話だからね、僕ら夫婦からの餞別だよ。」
非リア「すすす、すいませんオーナーさん。ほん、ほん、本当にありがとうございます。お、奥さんにも本当に感謝してますと、お、お、お伝え下さい。」
オーナー「君達と働けて楽しかったよ。また冬に来てくれるのを楽しみにしてるからね。」
非リア「は、はい。」
A子「その時はまたよろしくでぇす。」
オーナー「こちらこそ。おっ、バスが来たね。」
A子「あっ、ホントだぁ。」
非リア「お、オーナーさん。かかか、重ね重ねありがとうございました!」
A子「ありがとうございましたぁ!」
オーナー「こちらこそありがとう。気を付けて帰ってね。」
DQN「何なんだよ、見せたい物ってよぉ?」
非リア「内緒。」ニコニコ
A子「見てのお楽しみだしぃ。」ニヤニヤ
DQN「気持ち悪ぃな、おい。」
非リア「ふふふ。」
A子「ほれぇ! ちゃっちゃか歩くぅ!」グイグイ
DQN「押すな押すな! 」
非リア「DQNは夏休みの間、ずっとバイトづくしだったんだよね。どうだった?」
DQN「まぁ、死ぬ程働いたな。まず朝6時~9時まで牛丼屋で働いて、10時~17時まで短期でビール工場のラインやって、18時~22時までまた牛丼屋って生活だよ。」
非リア「よく体調崩さなかったね。」
非リア「いや、それが毎日ってワケじゃねぇよ。工場の方は完全に土日が休みだったけどよぉ、牛丼屋の方はシフト制だから不規則なんだ。さっき言ったスケジュールは、平日で牛丼屋にフルセットで入れた時のパターンだ。」
非リア「あぁ、なるほど。」
A子「いくらぐらい稼いだのぉ?」
DQN「ん~、23万ぐらいじゃねぇかな? まだちゃんと数えてねぇから分からねぇけど。」
非リア「すごいなぁ。」
A子「借金、一気に減るんじゃね?」
非リア「えっ? 入院費とか光熱費とか、DQNが全部払ってるの?」
DQN「ん~、一旦はオフクロの口座から引き落とされんだけどよぉ、その後、こっそりその口座に引き落とされた額を入金してやろうと思ってんだ。」
A子「なんでそこまですんのぉ? 親子二人で助け合うってのは分かるけどぉ、何かそれじゃDQNの負担の方が多くね?」
非リア「ん~、だとしても、もう少し穏便なドクターストップにして欲しかったよね。本物のドクターのお世話になる事になったんだから。」
A子「なんかぁ、立派すぎて溜め息出るんですけどぉ。」
A子「着いたしぃ。」
DQN「・・・・・・誰ん家だ?」
非リア「A子ちゃんだよ。」
DQN「へぇ~。結構デカいんだn・・・何でお前が知ってんだよ?」
非リア「ふふふ。実はね、“ある計画”を実行する為に、何度かA子ちゃん家にお邪魔したんだ。」
A子「うんうん。」
DQN「“ある計画”? 人類補完計画か?」
非リア「んなワケないでしょ!」
A子「何それぇ? ジンルイホカン?」
DQN「あ~、何でもねぇ。話すとエゲツなく長くなる。」
非リア「さて、それじゃあ、お披露目しようか。」
DQN「?」
非リア「シャッター!」
A子「オープン!」
ガラガラガラガラガラ
ガシャン
DQN「!?」
非リア「ふふふ。」
A子「どうだぁ!」
DQN「・・・・・・ドラッグスターじゃねぇか。」
非リア「流石だねぇ。見ただけで車種が分かるんだ。」
A子「車やバイク好きな人ってぇ、そういうトコマジすげぇよねぇ。」
DQN「いや、ドラッグスターは超有名ドコロだから、バイク興味なくても知ってる奴は結構いるぜ。」
非リア「へぇ。そうなんだ。」
非リア「うん。これをね、僕らからDQNにプレゼントしようと思って。」
DQN「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」
A子「遅っ!」ズコ
DQN「いやいやいや、俺にプレゼントって、コイツを!?」
A子「そうだよぉ。」
DQN「修理って・・・・・・」
ハッ
DQN「ま、まさかお前ら、夏に急に長野かどっかにバイトしに行ったのって!?」
非リア「うん。正解。」
A子「修理代稼ぐためぇ。」
DQN「な・・・なんで・・・・・・そんな・・・」
非リア「友達だからだよ。」
DQN「・・・。」
非リア「君は今まで、僕の事を何度も助けてくれたよね。なのに僕は、一度も君を助けてあげられた事がない。」
非リア「でも、今は違うよね? この状況は、決してピンチじゃないとは言い切れないでしょ?」
DQN「それは・・・・・・」
非リア「君は僕にとって、生まれて初めてできた親友なんだ。生まれて初めて、家族以外で心を開く事ができた相手なんだ。その親友の為に何かしたいと思うのは、当然でしょ。」
DQN「非リア・・・」
A子「あたしはぁ、非リア君が何か一人で頑張ろうとしてたから、手伝ってみたくなったぁみたいな。」
DQN「A子・・・」
DQN「・・・・・・。」
A子「新品じゃないのはご勘弁ねぇ。」
DQN「・・・いや・・・・・・十分だ。」
非リア「ふふふ。」
DQN「・・・・・・うっ・・・ぐすっ・・・」
A子「えへへぇ。」
非リア「でも、今は違うよね? 今の状況は、決してピンチじゃないとは言い切れないでしょ?」
DQN「それは・・・・・・」
非リア「君は僕にとって、生まれて初めてできた親友なんだ。家族以外で、初めて心を開く事ができた相手なんだ。その親友のがピンチに陥って、それを一人でどうにかしようと苦しんでるなら、微力でも何かしたいと思うのは当然でしょ。」
DQN「非リア・・・」
A子「あたしはぁ、非リア君が何か一人で頑張ろうとしてたから、手伝ってみたくなったぁみたいな。」
DQN「A子・・・」
DQN「・・・・・・。」
A子「新品じゃないのはご勘弁ねぇ。」
DQN「・・・いや・・・・・・十分だ。」
非リア「ふふふ。」
DQN「・・・・・・うっ・・・ぐすっ・・・」
A子「えへへぇ。」
非リア「ふふふ・・・・・・あれ?」
ポロポロ
非リア「お、おかしいな・・・ぐすっ・・・・・・なんで僕まで・・・ぐすっ・・・」
DQN「・・・ヒック・・・・・・泣いてんじゃねぇよ・・・テメー・・・・・・ぐすっ・・・」
非リア「うっく・・・・・・君もだろ・・・ぐすっ・・・」
A子「あはは。二人ともダサい顔だしぃ。」
DQN「・・・・・・うるせぇよ・・・ぐすっ・・・」
非リア「ぐすっ・・・良いよ、元々かっこいい顔でもないし・・・ヒック・・・」
うるっ
A子(あ~、ヤバい、あたしまで泣きそうだしぃ。耐えろA子ぉ!)
DQN「二人とも、この恩は一生忘れねぇ。本当に、すまねぇ。もし今度、何か困ってる事あったら言ってくれ。いくらでも力貸す。」
非リア「ねぇ、DQN。“すまねぇ”は違うよ。」
DQN「えっ?」
非リア「“ありがとう”って、言ってよ。」
DQN「・・・。」
非リア「・・・。」
A子「・・・。」
DQN「・・・・・・そうだな。」
ペコッ
DQN「二人とも。マジでありがとう。」
非リア「ふふふ。どういたしまして。」
A子(あ~、ダメだぁ。涙腺崩壊しまぁす。)ポロポロ
DQN「あぁぁぁぁぁぁぁ、寒ぅぅぅぅぅぅぅ!」ガチガチガチガチ
非リア「いぃぃぃぃぃ、良い加減、外でお昼食べるには厳しい季節だよねえぇぇぇぇ。」ガチガチガチガチ
DQN「冷暖房完備の体育館裏ってのは作れねぇのかよ。」
非リア「意味が分からないね。それ、外にエアコンが置いてあるだけだよね。」
DQN「ってか、最近A・B・C子はどうしたんだよ? めっきりここに来なくなったじゃねぇか。」
非リア「さすがに寒すぎて無理だって。教室でお昼食べてるよ。」
シュポ
DQN「ふぅ~」
非リア「君がタバコさえ吸わなきゃ、僕らも教室で食べられるんだけどね。」
DQN「お前、それはライオンに『シマウマ食うな』って言うぐらいの無茶ブリだ。」
非リア「大袈裟。」
非リア「もうすぐ冬休みだね。」
DQN「だな。」
非リア「DQN、二学期はほとんど学校サボらなかったね。」
DQN「仕方ねぇだろ。どっかの恩人二人に『出席日数ヤバくなるほどバイト詰めんな』って言われたんだからよぉ。」
DQN「まぁ、元金は消えたし、後は利息を返してくだけだからな。学校と両立させながらのんびりやってくぜ。」
非リア「それが良いよ。冬休みは、またバイトづくしになるの?」
DQN「そうだな。夏にやったビール工場のライン作業にまた雇ってもらう事になったんだ。年末年始は宴会ラッシュでビールが飛ぶように売れるからよぉ、手ぇ貸して欲しいってな。」
非リア「そっか。体には気を付けてよね。」
DQN「おぅよ。お前は、冬休みは受験の追い込みか?」
DQN「その・・・・・・俺の為に、夏休みの半分を犠牲にしてくれたじゃねぇか? その分の遅れは、どうだ?」
非リア「あ~、まぁ、確かにバイトから帰ってきて、塾の夏期講習に途中参加した時は、全くついていけなくて絶望したけど、そこから必死に勉強したからねぇ。今はどうにか真ん中程度のレベルには追い付けたよ。A子ちゃんもそんな感じだってさ。」
DQN「・・・そうか。」
非リア「心配しないで。それと、責任も感じないで。」
DQN「・・・・・・おぅ。」
DQN「いやぁ、すこぶる好調だよ。何のトラブルもねぇしな。」
非リア「そっか。なら良かった。」
DQN「まぁ、今の季節はちょっと単車乗りには厳しいけどな。」
非リア「だろうねぇ。自転車でもかなり寒いもん。」
DQN「人肌が恋しくなるなぁ。」
非リア「・・・。」
DQN「もうすぐクリスマスだぜ?」
非リア「・・・。」
DQN「お前、彼女どうすんだよ?」
非リア「・・・それは・・・」
非リア「・・・・・・そうだね。」
DQN「牛丼屋の女の先輩に頼んで、合コンでもセッティングしてもらうか?」
非リア「・・・・・・いや、良いよ。僕、彼女できたから。」
DQN「お~、そっかそっか。お前にもついに春が来t」
DQN「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」
DQN「かかか、彼女!? お前、『彼女できた』っつったか!?」
非リア「・・・うん。」
DQN「いつだよ!? ってか、相手誰だ!?」
非リア「告白されたのは昨日。相手は・・・・・・A子ちゃん。」
DQN「!!!?」
非リア「・・・以上、報告でした。」
DQN「・・・。」パク パク
非リア「・・・・・・じゃあ。」スクッ
DQN「行かすか落としぃ!!」
グイッ
非リア「わぁ!!」
ドサッ
DQN「以上じゃねぇだろ、以上じゃ!! 昨日のいつ、どこで、どんなシチュエーションだったのか、その辺まで話すのが報告だろうがテメー!!」
非リア「うぅ、照れくさいなぁ。」
DQN「吐けテメー!! 吐かなきゃアルゼンチンバック行かs」
非リア「もう良いよ、それ!!」
A子「付き合ってぇ・・・欲しいんだけどぉ。」
非リア「・・・・・・また?」
A子「えっ?」
非リア「またあの辺からB子ちゃん・C子ちゃんが出てくるんでしょ?」
A子「ち、違うよぉ!!」
非リア「・・・。」
A子「マジで違うからぁ!! B子もC子もいないしぃ!!」
非リア「・・・・・・ホントに?」
A子「うん・・・。」
非リア「・・・って事は・・・・・・」
A子「・・・・・・うん、マジ。」
非リア「・・・。」
A子「マジで非リアが好きなのぉ。」
A子「ん~、あたしらぁ、非リア君に罰ゲで告るっていう、酷い事したじゃん?」
非リア「う、うん。」
A子「でも非リア君、あたしらの事許してくれてぇ、それどころかDQNに怖い思いさせられてないかってぇ、心配までしてくれたじゃん?」
非リア「・・・うん。」
A子「何かぁ、その優しさにぃ、すっごいキュンってなったぁみたいな。」
非リア「はぁ・・・」
非リア「あぁ、そう言えば何か、すっごい念入りに訊いてきたよね。」
A子「だってぇ、好きになった相手がゲイだったとかぁ、シャレになんないじゃん?」
非リア「う、うん。」
A子「そんでさぁ、好きになってみるとぉ、非リア君とDQNの繋がりの強さもぉ、すっごい気になり出しちゃってぇ。何て言うかぁ、あたしには入れない世界ぃみたいな。恋愛と友情は別口って分かっててもDQNに嫉妬しちゃってぇ、勝てそうになくて凹んでぇみたいな。」
A子「分かってるよぉ。分かってるけどぉ、やっぱ気になっちゃうのぉ。好きになるってそういう事じゃん?」
非リア「そ、そうだね。」
非リア(恋愛した事ないから分からないけど)
A子「・・・・・・好きです。」
非リア「あ、え~っと・・・」
A子「・・・ダメ?」キョトン
非リア「!!」ドキッ
非リア(出たぁ!! 必殺ポーズ!!)
非リア「よ、喜んで。」
A子「マジ!?」
非リア「う、うん。」
A子「・・・。」
非リア「・・・・・・A子ちゃん?」
非リア「えっ、ま、まさか・・・・・・やっぱr」
A子「うわあぁぁぁぁん!」
ガバッ
非リア「!!!?」
ギュウゥゥゥゥ
A子「良かったぁ! 断られるかと思ったぁ!」
非リア「あ、あの、ちょ・・・・・・」
A子「大好きいぃぃぃぃぃぃ!」
ギュウゥゥゥゥ
非リア「!!!!」ドッキィ
非リア(萌え狂う!!!!!!!!)
非リア「って事なんだ。」
DQN「・・・・・・マジか。」
非リア「うん。それでクリスマスに、塾が終わったらちょっとだけ会ってクリスマスツリー見に行こうって誘われたんだ。」
DQN「うおぉ、マジかマジか! 良いじゃねぇか! 行けよ!」
非リア「う、うん。」
DQN「そうかぁ。お前もついに彼女できたかぁ。しかも相手が筋金入りギャルのA子とはなぁ。なんか面白れぇなぁ、おい。」ニヤニヤ
非リア「僕も意外だったよ。」
DQN「まぁ、何だなぁ、やっぱ大事なのは中身って事だなぁ。色んな男食い散らかしてみて、そこに辿り着いたって感じか。」
非リア「あっ、その事なんだけどね・・・」
DQN「ん?」
非リア「でも、意外だね。」
A子「何がぁ? ダーリン。」ニタニタ
非リア「だ、ダーリンって・・・その、A子ちゃんみたいなギャル路線の娘は、僕みたいな暗いタイプには興味ないと思ってたよ。」
A子「あぁ~、あたしねぇ、あんまりチャラい奴とかヤンキーには興味ないんだぁ。友達にはなれるけどねぇ。ナンパされても絶対ついてかないしぃ。」
非リア「そうなんだ。今までの彼氏も、真面目な人が多かったの?」
A子「今までってか、非リア君が初めてだよ?」
非リア「・・・えっ?」
A子「あたしこういうルックスだからぁ、ヤリ○ンだって思われやすいんだけどぉ、恋愛した事ないんだよねぇ。」
非リア「えっ? えっ?」
A子「非リア君が初めての彼氏だよ。」
非リア「・・・。」
A子「えへっ。ダーリン。」デレデレ
非リア(萌え死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!)
DQN「ぶはっ! ゲッホゲホ!」
非リア「ちょ、DQN! 大丈夫?」
DQN「ゲーッホゲッホゲッホ! ま、ま、待てお前! って事はアレか!? A子って・・・・・・処女?」
非リア「そうなるけど・・・・・・実際、どうなんだろ? なんか、そういうフリをする人もいるって言うし。」
DQN「いや、そう言えば確かに、A子の口から男の話なんて聞いた事ねぇな。B子・C子が訊いてもいねぇのに合コンでどこそこの会社員食ったとかって話、しょっちゅうしてきやがるから、完全にA子も同類なんだと思い込んでたぜ。」
DQN「おいおい、良いなぁ、お前。処女と童貞とかよぉ。男女の神秘じゃねぇか。」
非リア「あはは。」
DQN「ウゼッ! テメー、まんざらでもねぇみたいなツラしやがって!」
非リア「そ、そりゃ僕だって男だからね。初めての相手は・・・・・・やっぱりその・・・」
DQN「あぁ、あぁ、分かる分かる。だから言うな。」
DQN(チクショー。初体験の相手があのルックスで、しかも処女かよ。羨ましすぎんぜ非リア。)
DQN「えっ? おう。そうだぜ。」
非リア「忙しくなりそうだね。」
DQN「・・・そうだな。きっと今までとは比べモンにならねぇぐらいな。」
非リア「会う機会も・・・減りそうだね。」
DQN「・・・・・・あのよぉ・・・」
非リア「なに?」
DQN「どうやら俺、今いるトコとは別の店に配属されるらしいわ。」
非リア「えっ?」
非リア「べ、別の店って・・・・・・どこ?」
DQN「まだ決まってねぇ。隣町かも知れねぇし、電車で30分ぐらいのトコかも知れねぇし、もしくは一人暮らししなきゃいけねぇような他府県かも知れねぇ。それはまだ分からねぇんだ。」
非リア「そ・・・そうなんだ・・・・・・」
DQN「・・・・・・おぅ。」
非リア「・・・。」
DQN「・・・。」
非リア「・・・。」
DQN「・・・・・・切れたりしねぇよ。」
DQN「俺らの縁。何県に飛ばされようが、そんぐらいの事で切れるかよ。」
非リア「う、うん。」
DQN「会いに帰って来んよ。お前らのくれたドラッグスターに乗ってよぉ。」
非リア「ぼ、僕も・・・会いに行く。」
DQN「・・・・・・おぅ。来やがれ。」
非リア「うん。行く。」
DQN「A子に妬かれねぇ程度にな。」ニヤニヤ
非リア「えっ? う、うん。」アタフタ
DQN「かはははは。赤くなってんじゃねぇよ、気持ち悪ぃ。」
非リア「う、うるさいなぁ。」
DQN「あぁ?」
非リア「ずっと・・・・・・友達だよね。」
DQN「当たり前だろ、バーカ!」
The sky is blue
The Sun, It shine
It’s the same for everyone
You and I will meet again
So, I won’t say good bye
Dear my friend
Now you have your freedom
Dear my friend
Can you hear I’m calling
Dear my friend
「Dear my friend」/Hi-STANDARD
おしまい
お付き合い下さった皆様、ありがとうございました。
明日からスレ見れなくなるかもしれなかったから本編完結してくれて嬉しかった
このスレに最初からいたかいがある出来だったぜ
改めて>>1乙!
まさに青春時代って感じで最高だった
もうA子ならビッチでもいいやと思ってたら乙女だったでござる
面白かったよー
投稿ペースも速くてとっても楽しめた!
こういう話好きだわ
マジA子報われてよかった……
お付き合い下さった皆様、
本当にありがとうございました。
当初、この話は非リアに危害を加える人々(ビッチトリオやパワハラ体罰教師、学校裏サイトの住人等)を、
DQNがあの手この手の凄惨なやり口で闇に葬っていく、
ダークヒーロー的な話にしようと思ってたんですが、
序盤でビッチトリオが命乞いをする場面を書いてる内に、
「理由はどうあれ、ここまで怯えてる女の子を平然とレ○プするような奴は、それはそれでクズだな」
と思い、
路線を変えました。
ただ、その様に急遽路線を変えた事による歪みと言いますか、
A子が序盤とそれ以降とでキャラ変わりすぎてるというwwwwww
この点が一番の心残りですwwwwww
後日談は、うっすらではありますが考えております、卒業旅行編とか。
いつになるか分かりませんが、書けたらまたスレを立てます。
では皆様、重ね重ね、ご支援ありがとうございました。
おやすみなさい。