学生当主ちゃん「手伝いのできない事情があるのだから、仕方ないでしょう?」
学生当主ちゃん「……はあ? なぜあなた方に事情の詳細を?」
学生当主ちゃん「……納得? そもそもこれは義務でも強制でもないでしょう」
学生当主ちゃん「当初から全員で張り切っていたわけでもなく……粗末な出し物で完成に人手がいるわけでもない」
学生当主ちゃん「あなた方が何に憤っているか、私には理解できません」
学生当主ちゃん「……もういいですか? こうしている時間も勿体ない」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「ああ……同じクラスの」
学生当主ちゃん「……何の用ですか?」
学生当主ちゃん「すみませんが、あまり時間に余裕がありませんので……」
学生当主ちゃん「差し入れのキャンディ? ……手伝ってもない私に」
学生当主ちゃん「はあ……それはどうも」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……それでは私はこれで」
学生当主ちゃん「……なんです?」
学生当主ちゃん「引き留めにきたのでしょうか?」
学生当主ちゃん「……フォロー?」
学生当主ちゃん「……はあ」
学生当主ちゃん「いえ、お気遣いなく」
学生当主ちゃん「あなたにフォローなど、される謂れもありませんので」
学生当主ちゃん「暇ではないんです」
学生当主ちゃん「……あなたには関係のないことでしょう?」
学生当主ちゃん「さようなら」
学生当主ちゃん「……? ああ、昨日の」
学生当主ちゃん「……なんですか? 私に何か用でも?」
学生当主ちゃん「さっきのHR? ……別に、どうでもいいですよ」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……たかが文化祭の準備ごときであんなにガタガタと……随分と私が気に入らないようですね?」
学生当主ちゃん「あのような非論理的な主張を誰も疑問に思わないのは、一種の恐怖ですが」
学生当主ちゃん「ああいうのを同調圧力というのでしょうか? なんて馬鹿馬鹿しい」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)
学生当主ちゃん「またフォローですか?」
学生当主ちゃん「こんな誰にも見つからない場所で」
学生当主ちゃん「フォローする気があるのなら、あの教室の場で言えばよかったのでは?」
学生当主ちゃん「……あいにく、私は自己満足の偽善に付き合ってあげるほど余裕がないんですよ」
学生当主ちゃん「放っておいてください。うざったいな……」
学生当主ちゃん「構わないでと言っているんです」
学生当主ちゃん「……ちっ」
学生当主ちゃん「HRで教師に言われたからなんだというのです? あんな非論理的な言葉に従う理由がありません」
学生当主ちゃん「どいつもこいつも暇人が……」
学生当主ちゃん「さも自分が正しいと言わんばかり……」
学生当主ちゃん「……帰ります」
学生当主ちゃん「ついてこないでください」
学生当主ちゃん「クラスの手伝いでもなんでもやっていてください」
学生当主ちゃん「そうして馬鹿同士で親睦を深めていれば満足なのでしょう?」
学生当主ちゃん「あいにくと、私はそんな茶番に付き合っている暇はありませんので!」
学生当主ちゃん「ではさようなら」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……遅れてすみません。学校の用事で……」
学生当主ちゃん「はい……はい……」
学生当主ちゃん「……申し訳ございません」
学生当主ちゃん「以後気を付けます」
学生当主ちゃん「……はい」
学生当主ちゃん「会合と言っても、大して話すことなどないというのに」
学生当主ちゃん「……どいつもこいつも」
学生当主ちゃん「馬鹿馬鹿しい」
学生当主ちゃん「……はやく今日の仕事をすませないと」
学生当主ちゃん「あとは勉強を終わらせないと……成績を落とすわけにはいきませんからね」
学生当主ちゃん「ふー……」
学生当主ちゃん「……最近、授業の内容が難しくなってきたから」
学生当主ちゃん「……頑張らないと」
学生当主ちゃん「……もう、朝か」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「はぁ……」
学生当主ちゃん「……おはようございます」
学生当主ちゃん「悪いのですが、私は今あなたと話している余裕がないもので」
学生当主ちゃん「自分の席に戻っていただけませんか?」
学生当主ちゃん「……なんですこれ。ラムネ?」
学生当主ちゃん「何でこんなものをもって……いえ、それ以前に、どうして私に渡すのでしょうか?」
学生当主ちゃん「差し入れ? 余計なお世話です」
学生当主ちゃん「私が眠そうだろうがなんだろうが、あなたには関係のない事でしょう」
学生当主ちゃん「……どこかへ行ってください」
学生当主ちゃん「ぼーっとしてしまう」
学生当主ちゃん「はあ……」
学生当主ちゃん「……どいつもこいつも、間抜け面を晒して」
学生当主ちゃん「遊ぶ時間があるくせに、私に無駄な労働を強制しようとして……」
学生当主ちゃん「……ああ、腹が立つ」
学生当主ちゃん「……早く、誰もいないところに行こう」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……なんで、あなたがここに?」
学生当主ちゃん「もう授業が始まる? アラームは……鳴っていたのか……気付かなかった」
学生当主ちゃん「……ん? いや……なんであなたがここにいるのですか?」
学生当主ちゃん「ふらふらしてたから心配でついてきてた?」
学生当主ちゃん「……余計な、お世話ですよ!」
学生当主ちゃん「ええ、見た通りお昼なんて食べていませんが、何か?」
学生当主ちゃん「……はあ? 私の腹なんてあなたに関係ないでしょう!」
学生当主ちゃん「キャラメルって……あなた、お菓子持ちすぎでは?」
学生当主ちゃん「いりません。結構です。もう行きますから」
学生当主ちゃん「……いりませんってば!」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……大阪のおばちゃんか」
学生当主ちゃん「帰るところなのですが」
学生当主ちゃん「……話? あの、私、急いでいて……」
学生当主ちゃん「……いえ、事情は先生にも散々お伝えしたと思いますが。家のことで忙しいので無理です」
学生当主ちゃん「はい、はい……はあ、協調性?」
学生当主ちゃん「……いや、他の生徒から批判があるから、何だというのですか?」
学生当主ちゃん「先生。私が今家のことで忙しいということはご存知ですよね?」
学生当主ちゃん「そういう話じゃない? じゃあどんな話なんです」
学生当主ちゃん「私は忙しくて、文化祭の手伝いをすることができません。それ以外のどんな話があるんですか?」
学生当主ちゃん「……言い方って、そういうことなら、あの人たちにまず言ってください」
学生当主ちゃん「私が文化祭を手伝えないと言っただけで、あからさまな害意を受けました」
学生当主ちゃん「……っち」
学生当主ちゃん「……あの」
学生当主ちゃん「……先生のおっしゃっていることには理屈が通っていません」
学生当主ちゃん「私を悪者にして」
学生当主ちゃん「そうやって、あの人たちのご機嫌を取りたいだけなら、あの人たちにだけ話しかけてればいいんじゃないのでしょうか?」
学生当主ちゃん「……これ以上話しても、時間の無駄だと思うので、もういいですか?」
学生当主ちゃん「私、急いでいるので」
学生当主ちゃん「失礼します」
学生当主ちゃん「……なんですか? あなたと話している暇など1秒たりともないのですが」
学生当主ちゃん「……疲れたときには甘いもの?」
学生当主ちゃん「いりませんよ。こんなもの」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……ほら、あなたの大好きなお菓子が向こうに行ってしまいましたよ」
学生当主ちゃん「早く拾わないと蟻に食べられてしまいます」
学生当主ちゃん「……さっさと、どこかに消えてください」
学生当主ちゃん「……いえ、はい」
学生当主ちゃん「すみません。はい、すぐに始めます……」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……なんでしょう」
学生当主ちゃん「……あ、これは……」
学生当主ちゃん「……すみません、私の不注意でした」
学生当主ちゃん「はい、今後このようなことは」
学生当主ちゃん「申し訳ございません……」
学生当主ちゃん「……はい」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……親のことは、今、関係……」
学生当主ちゃん「……いえ」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……なんでもありません」
学生当主ちゃん「……馬鹿だらけ」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……最近、授業の内容が理解できない」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……でも、成績を落としたら」
学生当主ちゃん「馬鹿にされてしまう」
学生当主ちゃん「……頑張らないと……」
学生当主ちゃん「…………」
学生当主ちゃん「……?」
学生当主ちゃん「なんですか? 教室に入りたいんですけど」
学生当主ちゃん「まだ駄目って、なんですか、あなた。もうすぐHRの時間では」
学生当主ちゃん「何をそんなに慌てているのですか?」
学生当主ちゃん「というかなんで雑巾なんか……っ!」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……ははあ……私の机が随分と、汚れているようで」
学生当主ちゃん「……首謀者は……あそこでにやついているグループでしょうね。他は傍観者……」
学生当主ちゃん「……ところで、あなたは何をしているのですか?」
学生当主ちゃん「どいてください。あなたには関係のないことでしょう」
学生当主ちゃん「他と一緒に黙って見ていればいいんですよ」
学生当主ちゃん「余計な事はしないでください」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……私に、同情なんてするな」
学生当主ちゃん「……わかったら、自分の席に戻ってください」
学生当主ちゃん「……ふん、くだら」
学生当主ちゃん「……! ぐっ」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……椅子の脚が、随分と緩んでいるようで……」
学生当主ちゃん「……っ」
学生当主ちゃん「……笑うな……馬鹿共が……」
学生当主ちゃん「……っ」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……なんですか」
学生当主ちゃん「ついてこないでください。放っておけと言っているでしょう」
学生当主ちゃん「いいんですか? もう直に先生が来てHRが始まりますよ」
学生当主ちゃん「……だから……なんで……」
学生当主ちゃん「ついてくるなと言っているのに……」
学生当主ちゃん「……あなたが運ぶ必要はありません。消えてください」
学生当主ちゃん「私が非力だとでも? 見た目で判断しないでください。机くらい運べます」
学生当主ちゃん「……んっ、くっ……」
学生当主ちゃん「……はぁ……はぁ……」
学生当主ちゃん「……っ、だから、邪魔、しないで、ください!」
学生当主ちゃん「手助けなんて、不要です!」
学生当主ちゃん「……私、一人で……っ」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「少し、休んでるだけです。私一人で行けます」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……この先の階段だろうが、長い廊下だろうが、途中のHR中のクラスの前を通ろうが」
学生当主ちゃん「一人で、大丈夫、なんで、す……」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……ぐ」
学生当主ちゃん「……っく、ひぐっ、うぇ……」
学生当主ちゃん「……多分、一限目が始まってると思うんですけど」
学生当主ちゃん「……いいんですか」
学生当主ちゃん「……ああ、そうですか」
学生当主ちゃん「なんですか」
学生当主ちゃん「……なんでそっち見る必要があるんですか」
学生当主ちゃん「なんですか、なに、なにを……」
学生当主ちゃん「……チョコレート?」
学生当主ちゃん「……あなた、実家がお菓子屋さんとかなんですか?」
学生当主ちゃん「な、慰めとか、あなた、何様の……もが!」
学生当主ちゃん「もが、もがー、もごごご!」
学生当主ちゃん「……もご」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……苦くないですかこれ。ビターチョコ? ふうん……」
学生当主ちゃん「じゃない! なんで無理やり食べさせるんですか?!」
学生当主ちゃん「大体、毎度毎度お菓子をよこしてきて、不審者なんですか!?」
学生当主ちゃん「……はあー」
学生当主ちゃん「……ああ、なんか、もう……」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……そろそろ、授業に行かないと」
学生当主ちゃん「……なんですか」
学生当主ちゃん「……何で腕を引っ張るんです……」
学生当主ちゃん「……もう少しって」
学生当主ちゃん「……確かに、もうすでに遅刻していますが、だからといって」
学生当主ちゃん「授業を受けるのは、お金を払って得た権利です」
学生当主ちゃん「私はそれを放棄するのが、酷い怠慢に思えるだけです……」
学生当主ちゃん「……いや、少しくらいって」
学生当主ちゃん「きゃっ……」
学生当主ちゃん「ちょ、ちょっと、無理やり座らせないでください」
学生当主ちゃん「……放してください」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「授業は、授業ですから」
学生当主ちゃん「それに……」
学生当主ちゃん「……ただでさえ、最近ついていけてないのに」
学生当主ちゃん「……はあ?」
学生当主ちゃん「……あなたが? 私に? 教える?」
学生当主ちゃん「意味不明なことを言わないでください」
学生当主ちゃん「……はあー」
学生当主ちゃん「……なんか、どっと疲れる」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……ふあぁ……」
学生当主ちゃん「……ん?」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……! な、な!」
学生当主ちゃん「な、なんで、あなた、膝枕……!」
学生当主ちゃん「わ、私、いつの間に……寝て……」
学生当主ちゃん「も、もたれかかってきたから、膝枕に移行した……? す、するな……!!」
学生当主ちゃん「う、ぐぅ、ぐううう……」
学生当主ちゃん「あ、赤くなって、なんか……ぐ……くぅ……!」
学生当主ちゃん「は、はあ!? も、もう帰りのHRの時間じゃないですか……!!」
学生当主ちゃん「だ、誰も探しに来なかったんですか……?」
学生当主ちゃん「い、家に連絡とかされて……ど、どうしましょう……」
学生当主ちゃん「あ、謝ればって……あなた……!」
学生当主ちゃん「くぅ……!」
学生当主ちゃん「も、もう行きますよ!」
学生当主ちゃん「何をニヤニヤ笑ってるんですか!!」
学生当主ちゃん「よだれ垂れてた!? はあ!? はああ!? ぶ、ぶっとばしますよ!!」
学生当主ちゃん「あ、赤くなんかなってない!!」
学生当主ちゃん「全く、もうこんな時間……」
学生当主ちゃん「……まあ、昼に眠ったから、まだ頭は冴えてますが、く……!」
学生当主ちゃん「……忘れよう」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……でも」
学生当主ちゃん「……結構、熟睡できたな」
学生当主ちゃん「な、なんですか……何の用ですか」
学生当主ちゃん「……今日は、まあ少しくらいなら時間はありますが」
学生当主ちゃん「……勉強?」
学生当主ちゃん「……ああ。あれ冗談じゃなかったんですか?」
学生当主ちゃん「いや、そもそも承諾していませんが」
学生当主ちゃん「いいって……あなた、孤立しますよ」
学生当主ちゃん「もう孤立してる? どうして……」
学生当主ちゃん「……はあ」
学生当主ちゃん「……前のことで? それはまた面倒な」
学生当主ちゃん「馬鹿馬鹿しいですね」
学生当主ちゃん「……どうして笑うんです」
学生当主ちゃん「……何が仲間ですか」
学生当主ちゃん「……馬鹿らしい」
学生当主ちゃん「あなた、成績いいんですね。騙された気分です」
学生当主ちゃん「なんだか屈辱ですよ。あなたのような人間が私より勉強ができるだなんて」
学生当主ちゃん「菓子を持ち歩いているような不審な人間が……」
学生当主ちゃん「いや別に菓子をねだったわけではありません」
学生当主ちゃん「……チュッパチャップス」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……正直、半信半疑で、きたのですが」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……い、一応、礼は、言っておきます」
学生当主ちゃん「いつか借りを返すことも約束しましょう」
学生当主ちゃん「……あなた、中々いい性格をしているじゃないですか」
学生当主ちゃん「もういいですよ。折りを見て勝手に返しておきます」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「それでは、あの……」
学生当主ちゃん「……では、また」
学生当主ちゃん「……ああ、あなたですか」
学生当主ちゃん「……どうぞご勝手に。どうせあなたも教室で昼ご飯を食べられないのでしょうから」
学生当主ちゃん「……文化祭が終わってもまだ根に持つだなんて、陰湿だと思います」
学生当主ちゃん「まあ、あんなのはきっかけで、私が単に嫌われたというのは理解していますが」
学生当主ちゃん「あなたはまだ許されないのですか?」
学生当主ちゃん「ふうん。まあ、あなたも性格に問題がありますからね」
学生当主ちゃん「……ふふっ」
学生当主ちゃん「要領を得てきたのでしょうかね」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……まあ、あなたのおかげもあります。勉強面では」
学生当主ちゃん「……ああ、そうだ。お返しがまだでしたね」
学生当主ちゃん「食べてください。それで今回の借りもチャラです」
学生当主ちゃん「……いえ、勝手につかんで食べてください……おいしいですか、そうですか」
学生当主ちゃん「……いや、お返しって」
学生当主ちゃん「私があなたのを食べたら私のお返しになりませんよ」
学生当主ちゃん「いやまあでも、ダウングレードしてますから、差分で十分お返しにはなっているかもしれません」
学生当主ちゃん「……あーんとか、やめてください。馬鹿らしい」
学生当主ちゃん「……スイカバー? アイス系を持ち歩いてるんですか?」
学生当主ちゃん「……どうも。頂きます」
学生当主ちゃん「あなたといると、太ってしまいそうです」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……戻りましょう」
学生当主ちゃん「……腰が重そうですね。教室に戻るのがそんなに嫌なんですか?」
学生当主ちゃん「さっきはああ言いましたが、私はあなたなら十分元の立ち位置に復帰可能だと思っています」
学生当主ちゃん「……こうして私と一緒にいるのをやめて、謝罪の一言でも入れて元の友達に」
学生当主ちゃん「……なんですか……別に嫌ではない?」
学生当主ちゃん「しかし、戻るのが随分と苦痛そうでしたが……」
学生当主ちゃん「……! ざ、戯言ですね」
学生当主ちゃん「私は別に、あなたがいようがいまいが、どうでもいいです」
学生当主ちゃん「……どうでもいいですよ、別に」
学生当主ちゃん「……私が人前で喋るのですか? なぜ私がそんなことを……」
学生当主ちゃん「はあ……毎年、当主自らが……」
学生当主ちゃん「……べ、別に私が喋らずとも……もっと適任は……」
学生当主ちゃん「……伝統と、言われましても」
学生当主ちゃん「来るのは一般の方たちですよね? 原稿は誰かが用意してくれるのでしょうか」
学生当主ちゃん「……原稿も私が?」
学生当主ちゃん「……いえ、大丈夫です。はい」
学生当主ちゃん「……お任せください」
学生当主ちゃん「人前で、演説だなんて」
学生当主ちゃん「下手は打てません。家名を汚すわけにはいきません」
学生当主ちゃん「な、内容を、とにかく、考えないと……」
学生当主ちゃん「……うー」
学生当主ちゃん「……人とのコミュニケーションを軽視していました。理屈だけじゃダメなんですね」
学生当主ちゃん「……どうしたら」
学生当主ちゃん「どうしよう……どうしよう……」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……ふうー、よし」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……あ、あの」
学生当主ちゃん「○○、くん、の電話で、間違い、ないでしょうか」
学生当主ちゃん「あ、私です。あの、すみません、休日に」
学生当主ちゃん「え、ええ、ちょっと……ご相談が」
学生当主ちゃん「緊急、というわけでもないのですが、月曜日まで待つと、その、考えが変わりそうで」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)
学生当主ちゃん「……や、やけに、弾んだ声ですね」
学生当主ちゃん「し、新鮮ですか、そ、そうですか」
学生当主ちゃん「う、嬉しいって……あの、はい」
学生当主ちゃん「……実は、そのう……」
学生当主ちゃん「お返しは、必ず……え? い、いいと言われましても、私の気が」
学生当主ちゃん「友達の頼み、ですか」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……な、なら、まあ、いいです。よ、よろしく、お願いします」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「な、なんで顔がにやけているのでしょうか」
学生当主ちゃん「……うう」
学生当主ちゃん「……ど、どうも」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……じゃ、じゃあ、私の部屋に」
学生当主ちゃん「な、なんです? 私服がどうかしましたか?」
学生当主ちゃん「そ、そういうのは、いいですから」
学生当主ちゃん「い、行きますよ……」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……え? あ、ああ……まあ、広いだけですよ。もう少し手狭な方が都合がいいのですが」
学生当主ちゃん「! だ、だから、そう、不意打ちみたいに……し、新鮮って……」
学生当主ちゃん「あ、あまり、見ないでください……」
学生当主ちゃん「どうしてそういう考えに至ったのか、逆に聞きたいですね」
学生当主ちゃん「寂しいときの話し相手って、私はそんなメルヘンな人間ではありません」
学生当主ちゃん「……これ? これは、熊の置物です。メジャーでしょう」
学生当主ちゃん「名前はポン太君です……なぜ吹き出すのですか」
学生当主ちゃん「いえ、話しかけたりはしませんが、小さいころから一緒なので」
学生当主ちゃん「愛着があって、結構大事にしています」
学生当主ちゃん「母が子供のころに、命名したそうです」
学生当主ちゃん「昔から家に置いてあるんです。まあ、両親が死んでからは私の部屋に持ってきたのですが」
学生当主ちゃん「……ああ、言っていませんでしたか」
学生当主ちゃん「……前に、交通事故で」
学生当主ちゃん「そうですね、だから、今、私がこの家の当主なんです」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……でも」
学生当主ちゃん「……信用できませんでした。両親が続けてきたこの家を、乗っ取られるんじゃないかって」
学生当主ちゃん「……それに、私ならできるって、思っていましたから」
学生当主ちゃん「私がやると、強引に言い張ったんです」
学生当主ちゃん「当主になった結果は、まあ、あれです」
学生当主ちゃん「私みたいな小娘を当主として支持してくれる奇特な人間は、いなかったようです」
学生当主ちゃん「……まあ、当然でしょうね」
学生当主ちゃん「……未熟で、傲慢で、小憎たらしい性格をしていますから」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……学校でも、私は嫌われ者ですから」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)
学生当主ちゃん「周囲に馬鹿にされないよう、舐められないように」
学生当主ちゃん「どうにか、形だけでも、取り繕ってきました」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……そうですね。正直、とても大変です」
学生当主ちゃん「……ですから」
学生当主ちゃん「……ですから、その……」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「あ、あなたが力を貸してくれて、本当に……嬉しいです」
学生当主ちゃん「普段、憎まれ口を言ってしまいますが、本当に助かっていて……」
学生当主ちゃん「……なんですか」
学生当主ちゃん「あ、赤くなってなんか、ないです」
学生当主ちゃん「ただ、いい機会なので、い、言っておこうと……」
学生当主ちゃん「……そ、そろそろ、今回の目的を果たしましょうか!」
学生当主ちゃん「はい、終わりです。恥ずかしい話は終わり」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「いえ、とても参考になりました。これで何とかなりそうな気がしてきました」
学生当主ちゃん「……こ、来なくていいですよ……恥ずかしい」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……あの」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……また、頼ってもいいですか?」
学生当主ちゃん「困ったことがあったら、また……」
学生当主ちゃん「いえ、ど、どうでもいいことでは、頼りませんけど」
学生当主ちゃん「……頼まないと、そっちから頼むって、もう……」
学生当主ちゃん「そういうものですか……」
学生当主ちゃん「……いえ、嬉しいです」
学生当主ちゃん「本当に、嬉しいです……」
学生当主ちゃん「今日はありがとうございました」
学生当主ちゃん「はい。帰ったらまた、連絡してください」
学生当主ちゃん「……」
学生当主ちゃん「……では、また学校で」
学生当主ちゃん「また、ご飯を交換しましょう」
学生当主ちゃん「……今度は、私が、腕によりをかけて作ってみますので」
学生当主ちゃん「……楽しみにしててくださいね。○○くん」
二時間かかった
もう寝る
俺は寝る