魔族娘「この、圧倒的な戦力差の前で、そんなセリフをいえるのかい?」
勇者「………」
魔族娘「で…ですから…どうか見逃していただけませんか?」
勇者「何をいってるんだ。実際にたたかってみないとわからないじゃないか」
魔族娘「お…お願いします…後生ですから…」
シャキンッ
魔族娘「ひっ……そ…そんな、明らかに強そうな武器…」
勇者「ああ、これね。裏ダンジョンにあったんだよ。
魔王を倒した後暇でね」
魔族娘「む…無理です。私なんて1ターンもちません…一撃で死んじゃいます」
勇者「やってみないとわからないじゃないか」
私なんかの相手をすること自体がおかしいんですよ」
勇者「いや、でも君のデータ図鑑に無いし」
魔族娘「…ずっと隠れてたんです」
勇者「へぇ」
魔族娘「魔王様も倒されたし……やっと安心して暮らせると思ったのに……
ひっく……ぐすっ……なんで…」
仲間になりたそうな目でこちらを見てるなんて展開もあるし」
魔族娘「上半身と下半身がさよならした状態で起き上がるなんて無理ですよ!」
勇者「右半身と左半身かもよ」
魔族娘「ひぃいいいいいい!」
魔族娘「お願いします!どうか…どうか…」
勇者「でも人型の魔物ってことは、高位魔族っぽいし…」
魔族娘「そんなことないですっ!雑魚ですし、経験値も美味しくないです!」
勇者「それでも珍しい魔物だし…レアアイテム落とすかもしれないし…」
魔族娘「あ、持ち物なら何でもおいてくんで…ですから…」
魔族娘「えっと…えっと…」
ゴソゴソ
魔族娘「何か…何かいいもの…」
ゴソゴソ
勇者「………まだ?」カチャッ
魔族娘「ひっ…そ……その……」
勇者「何?」
魔族娘「…薬草くらいしか」
魔族娘「ま…待ってください!本当にこれくらいしかないんです…」
勇者「お金は?」
魔族娘「……12Gくらいしか」
勇者「この剣、まだ試し切りしてないんだよねぇ…」
ブンッブンッ
魔族娘「…ま…巻き藁なら用意しますから」
魔族娘「…干し肉なら」
勇者「生の肉ね」
魔族娘「な…なな、なま肉は痛んじゃうので…市場にでもいかない限りは…」
勇者「何を言ってるんだ。ここに良い生肉があるじゃないか」
魔族娘「ど…どこですかねぇ?こんなところには…」
魔族娘「…後ろ?」キョロキョロ
勇者「………」
魔族娘「ははは…そうですよね………
ひっく…私ですよね…ぐすっ…」
勇者「作戦はガンガンいこうぜでいいかな」
魔族娘「せめて…命を大事にで…」
勇者「敵の命は関係ないからね」
ブンッ
魔族娘(お母さん…)
ピタッ
勇者「………ん?」
魔族娘「………」
勇者「あれ?どうした?」
ツンッ……パタッ
魔族娘「………」
勇者「まだ攻撃してないのに………死んじゃったのかな?」
魔族娘「………」
勇者「とりあえず、ふくろにでも入れておくか」
勇者「あ、生きてた」
魔族娘「えっと、ここどこですか?」
勇者「宿屋だよ」
魔族娘「え…なんで私、こんなところに…」
勇者「死んだのかなと思ってさ、ふくろに入れてきたんだ」
魔族娘「……ふくろ?あ…あの……」
勇者「いやね、このふくろ意外とけっこう入るんだよね」
魔族娘「…何が困るんですか?」
勇者「剥製にでもしようかと、珍しいし」
魔族娘「…は……はく」
勇者「あ、別に生きててもいいか」
魔族娘「だ…駄目です…」
魔族娘「そうですね…そのほうが…」
勇者「でもさぁ、金持ちってのはヘン夕イが多いって聞くし」
魔族娘「かまいませんよ!」
魔族娘(この人から離れられるならなんでも…)
勇者「わかった。魔物美食会の会長に連絡いれてくるね」
魔族娘「ま、まってください!」
魔族娘「た…食べるって…生きたまま売るんですよね?」
勇者「うん、生きたまま食べるのがいいらしいよ。ははは、気持ち悪いよねぇ」
魔族娘「お…お願いします…それだけは…」
魔族娘「せめて…ペットとかとして飼ってくれるところに…」
勇者「……変な趣味だね君。わざわざ自分から進んでそんなこと言うなんて」
魔族娘「…まだマシなだけです」
魔族娘「え…なんですか急に…」
勇者「黙れ」
魔族娘「………」
兵士「そうか、上にいるんだな?」
店主「へ、へぇ…」
勇者「ちっ…もうばれたのか…」
勇者「話は後だ」
ドカンッ
兵士「勇者め!ついに見つけ…」
ズバッ…バタンッ
魔族娘「きゃあああ!」
勇者「今だ!走れ!」
魔族娘「はぁ…はぁ…何なんですか…」
勇者「この国の兵だ」
魔族娘「え…何でですか?貴方は勇者様なんですよね?」
勇者「ああ…魔王を倒すまではな…」
勇者「ああ、いいだろう。
あれは、魔王を討伐して国に戻ったときの話だ」
王「勇者よ。よくぞ魔王を討伐してくれた」
勇者「はっ、ところで褒美のほうは?」
王「いいだろう。望むものなら何でもくれてやろう」
勇者「では、この国をもらおうか」
王「………は?」
魔族娘「………」
勇者「王の野郎……少し剣で脅したくらいで指名手配なんてしやがって…」
魔族娘「…あ…あの」
勇者「なんだ?」
魔族娘「悪いの貴方のほうでは……」
勇者「………は?」
魔族娘「お、王様ケチンボですよね。
世界を救ってくれたんですから一国くらい良いですよね」
なんせ魔王を倒した存在だ」
魔族娘(一番の原因はその性格じゃあ…)
勇者「まぁいい…数だけの兵なんて、どうにでもなる。
なんせ魔王を倒した俺だからな」
魔族娘(魔王様より魔王っぽい…)
魔族娘「…はぁ」
勇者「とりあえずは変装だな」
魔族娘「あ…あの、私と一緒にいたら目立つと思うんで…その…」
勇者「そうだな。お前も変装しなきゃな。
大丈夫だ、元々人に似た姿なんだ。なんとかなる」
魔族娘「…そうじゃなくて」
魔族娘「は…はい…」
勇者「もしばれたら…兵ごと斬ってやるからな。
きちんと演技しろよ」
魔族娘「…はい」
魔族娘「あ…あなたぁ…あれ欲しいなぁ」
勇者「はっはっは、いいだろう。買ってやるぞ」
兵士「ちっ、新婚馬鹿夫婦か……こちら異常なし!
次のポイントに行くぞ」
魔族娘「はぁ…はぁ…」
勇者「どうした?」
魔族娘「緊張とストレスで…その…」
勇者「そこまで緊張することか?
別にお前が指名手配されてるわけじゃないんだぞ」
魔族娘(…命かかってますから)
勇者「まぁな」
魔族娘「そうですか…なら私はもう…」
勇者「用済みだな」
魔族娘「はい、ですから…」
勇者「始末するか。追ってにばれるのも面倒だ」
魔族娘「あ…きっと役に立つんで、どうか連れていってください!」
勇者「ああ、かつての魔王城だ」
魔族娘「中に入るのは初めててです」
勇者「まぁ、これからは勇者城となるわけだがな」
魔族娘(…魔王の玉座があんなに似合うなんて)
魔族娘「あ、ところで元々いた魔物さん達はどこに行ったんでしょうか?」
勇者「全部殺した」
魔族娘「…は…ははは…そうなんですか」
いくら俺でも、あの国全てと相手をするとなると疲れるぞ」
魔族娘「…そうですか。
疲れるだけなんですか……あ、一つ気になることが」
勇者「なんだ?」
魔族娘「勇者様の手駒の一匹って何ですか?」
勇者「お前」
魔族娘「あ…はは…手駒ですか…少しランクアップですね…」
勇者様も今忙しいから簡単に逃げれるはず…)
魔族娘「や…やった。
普通に出れそう。あれが出口だよね」
カチッ
魔族娘「あ…あれ?なんだろ?この床」
勇者「ん?何してんだそんなところで…」
ビクッ
魔族娘「………」
勇者「その辺、罠だらけだからな。うっかり発動させるなよ」
魔族娘「…え…罠?」
勇者「ああ、イロイロと鋭いものが落ちてくるからな」
魔族娘「あ…あ…あああ…」
魔族娘「…あうぅ…鋭いものが…鋭いものが…」
勇者「俺がいなかったら串刺しになってたところだったんだぞ」
魔族娘「あぅ…あぅ……」
勇者「これからは勝手に城をうろつかないことだな」
勇者「腹が減ったな」
魔族娘「…はぁ」
勇者「お前、何か作れたりしないのか?」
魔族娘「…簡単なものなら」
勇者「そうか、じゃあ作ってもらおうか」
魔族娘「あのぉ…キッチンは…」
勇者「今連れてくよ」
カチッ
魔族娘「………」
勇者「あーあ…そこ動くなよ。罠が発動するから」
魔族娘「…も…もっとはやく言ってくださいよぅ」
魔族娘「とげとげ…落ちる…挟まれる…」
勇者「お前もドジだな。何回罠にかかれば気が済むんだよ」
魔族娘「だって…だって…」
勇者「まぁいい、さっさと飯つくれよ」
魔族娘「はい………あっ」
勇者「どうした?」
魔族娘「材料……」
勇者「ああ、そこの保管庫にまだあるんじゃないか?」
魔族娘「ここですか……あの」
勇者「わかってるよ。俺が行ってきてやる」
魔族娘「…ありがとうございます」
魔族娘「そうですね…しばらく放置されてたみたいですから」
勇者「だけど、干し肉やジャガ芋とか日持ちするものは大丈夫だったみたいだ」
魔族娘「じゃあ、これらで簡単なものを…」
ブヒ…ブヒブヒ…
魔族娘「……ぶひ?」
勇者「おお、そうだった。こいつもいたな」
魔族娘「…ぶ…豚」
勇者「残ってたものから、腐ってたもまで、なんのそので食ってたぞ。
すごい生命力だと思わないか?」
魔族娘「…こ…これは?」
勇者「調理しとけよ」
魔族娘「えぇええ!?」
魔族娘「ありがとうございます」
勇者「で、どれがあの豚なんだ?」
魔族娘「え…えっと、これです…」
勇者「これか、やっぱり干し肉とは違うな」
魔族娘「…あはは」
豚「ぶひ、ぶひぶひ」
魔族娘「干し肉をもどしたものだったんだけど……
絶対ばれると思ったんだけどなぁ……」
豚「ぶひぶひ」
魔族娘「はい、残り物だけど」
ガツガツガツガツ
豚「ぶひぶひ」
魔族娘「じゃああそこには罠はないんだよね。
この子も普通に生活してたみたいだし。
食べものの状況も知りたいし入ってみよう」
ガチャ
魔族娘「でも…一応、罠は無いか慎重に…足元は気をつけていかなきゃ」
プツッ
魔族娘「………あ、なんか糸のようなものを」
サクッサクッサクッ
魔族娘「あわわわわ…壁からナイフが……」
豚「ぶひぶひ」
魔族娘「そうか、人間くらいの身長が無いと、この糸は切れないんだね」
豚「ンガッンガッ…」
魔族娘「うーん…本当に腐ったものばっかりだねぇ」
ガツガツガツガツ
魔族娘「ああ!そんなの食べたらお腹壊しちゃうよ!」
ゴソゴソ
魔族娘「私達だけならしばらくは持ちそう」
ガツガツガツガツガツガツガツガツ
魔族娘「ああ…この子がいたんだっけ…」
豚「ぶひぶひ」
魔族娘「…えっと、勇者様の余りと私のぶんも半分くらいあげるから」
ガツガツガツガツガツガツガツガツ
魔族娘「あ、だから腐ったもの食べちゃ駄目だって」
勇者「あの豚は早めに始末しといて正確だったな。
かなり食うんだよね。豚って」
魔族娘「あ…あの…」
勇者「なんだ?」
魔族娘「作戦といっても…私は戦力外ですし、
勇者様お一人で戦うようなものなんじゃ…
それなら作戦も…」
勇者「何を言ってるんだ?駒の役割は戦うだけじゃないだろ」
魔族娘(…えっと、後方支援ってことかな?)
勇者「囮、盾など様々な活用方がある」
魔族娘「そ…それは……」
勇者「気にするな。冗談だよ」
魔族娘「あの…私は…」
勇者「適当なところで寝ればいいさ」
魔族娘「………」
勇者「で、なんでついてくるんだ?」
魔族娘「罠が……」
勇者「それなら全部解除しておいたよ。
王の軍がくるまでは邪魔だろうからな」
魔族娘「…………え?」
勇者「じゃあな、お休み」
魔族娘「………え?え?」
魔族娘「しつれいしまーす……誰もいないでしょうけど…」
豚「ぶひぶひ」
魔族娘「わっ……どうやってこんなところに……」
豚「…………」
魔族娘「もしかして、あなたの寝室なの?」
豚「ぶひぶひ」
魔族娘「ふふっ、そんなわけないよね」
豚「ぶひ」
魔族娘「じゃあ決定しちゃいます。ここは私の部屋」
豚「ぶひ、ぶひ、ぶひ」トコトコトコ
魔族娘「あれ?どこ行くの?」
ボフッ
魔族娘「あ…ベッド…」
豚「…………」
スピー…スピー…
魔族娘「……私のベッド」
私の家のベッドより寝心地良さそうなくらいだもん…」
豚「………」
魔族娘「…………」
魔族娘(…やっぱり食べとけばよかったのかなぁ)
ブンッブンッ
魔族娘「こんな朝はやくからどうしたんですか?」
勇者「稽古だ。体が鈍らないようにな」
魔族娘「毎日やってるんですか?」
勇者「まぁな、ここ最近は逃亡生活で出来なかったがな」
魔族娘「…はぁ」
勇者「だが…やはり実際に相手がいたほうが…」
魔族娘「朝ごはんの準備してきますね!」
豚「ぶひぶひ」
魔族娘「豚さん、一緒に逃げようか」
魔族娘「………あ」
豚「ぶひぶひぶひぶひ」
魔族娘「そうですよね。堀だってあるし、城門を開けないと出れないですし」
豚「ぶひっぶひっ」
魔族娘「…しばらくここに居ましょうか」
魔族娘「…本当に大丈夫なんでしょうか」
勇者「問題は無い。こちらが負けることはまず無いのだからな」
魔族娘「なんでですか?」
勇者「ここに来るまでで、奴らの半分くらいはいなくなるからだ」
魔族娘「…なぜですか?」
勇者「ここの前のダンジョンの仕掛けを全て作動させておいた。
強力な魔物もうじゃうじゃといるからな」
勇者「ああ、まぁ俺達の前に現れることは無かったみたいだかな。
かたや、魔王を倒した勇者、そして同族のお前。
当然といっちゃ当然だが」
魔族娘「…なるほど、いろいろ考えてたんですね」
勇者「当たり前だ。世界を敵にまわしてんだからな」
魔族娘「あの…私はどうなるんでしょうか?」
勇者「そうだな、まぁその辺の魔物と同じように殺されるか……」
魔族娘「………」
勇者「あ、そこそこ可愛いから大丈夫かもしれんな」
魔族娘「……え?…可愛い?」
勇者「ああ、そこらの町娘なんかより断絶いけてる」
魔族娘「…そ…そんな…照れちゃいます」
勇者「あ、俺が何言いたいのかわかってないのか」
魔族娘「人間に?」
勇者「人質だとでも思うだろうさ」
魔族娘「……なるほど」
勇者「まぁ、俺が負けるわけないから、そんな心配自体が無駄なんだが」
勇者「ばれたんじゃない、ばらしておいたんだよ」
魔族娘「…どういうことですか?」
勇者「ここに来るまでの間に、わかりやすいように痕跡を残してきたのさ」
魔族娘「…わざわざなんで」
勇者「敵を潰すためさ、王都で全軍を相手にするより。
守りの固いここで相手をするほうが楽だろ」
勇者「なんだ?」
魔族娘「倒すって、殺すことなんですよね?
人間…同族を……」
勇者「殺しなら今までだってしてきたさ。
お前らの同族を沢山ね」
魔族娘「でも…」
勇者「命の重みに違いは無い。
魔物だって人間だって同じさ」
魔族娘「………」
勇者「だから、平等にぶっ殺す」
魔族娘「豚さん…」
豚「ぶひ」
魔族娘「勇者様の考えがわかりません……
良い人……でないことはわかるんですけど…」
豚「ぶひっぶひっぶひっ」
魔族娘「なぐさめてくれ…」
カプッ
魔族娘「痛っ……あ、ご飯ですか…そうですか…」
魔族娘「何がそろそろなんですか?」
勇者「王国軍のやつらがそろそろ来るってことだ」
魔族娘「た、大変じゃないですか!なんでそんなに冷静なんですか!」
勇者「慌ててもどうもならんだろ。
第一負ける気はないんでね」
魔族娘「私はどうすれば…」
勇者「ああ…知らん」
勇者「冗談だ。お前に死なれては、うまい飯が食えんからな」
魔族娘「ご飯だけですか………」
勇者「そんなことないさ」
魔族娘「勇者様!」
勇者「掃除、洗濯、その他もろもろ…」
魔族娘「……勇者様」
勇者「冗談だ。気にするな」
ガタン…ゴトゴトゴト…
魔族娘「あ…玉座が…」
勇者「この下に隠れてれば大丈夫だろうさ」
魔族娘「あ、ありがとうございます!」
勇者「まぁ、俺が死んだら閉じ込められるわけだけどな」
魔族娘「………」
勇者「いらん心配だがな」
勇者「おお、いるいる。結構生き残ってたみたいだな」
兵「あ、いたぞ!勇者だ!城門の上にいるぞ!」
勇者「おっと、見つかった。まぁいいか…
お前ら!よく聞けよ!
ここにいるのは、世界を救った勇者様だ!」
兵「なにが勇者だ!国の侵略を目論む逆族が!」
勇者「逆族か…いいだろう。そう思うのならのぼってこい。
一番奥で待っているからな。
まぁ…辿り着けるとは思わないがな…」
勇者「おっと、それは卑怯だろ。ちゃんと中に入ってこいよ」
兵「放てー!」
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
勇者「お…あ…危っ…」
兵「次だ!矢を絶やすな」
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
勇者「ま…待てって…ちょっと…」
ヒュンヒュンヒュンヒュン
勇者「待てって………言ってんだろがぁあああああ!」
バチバチバチ…ドッカーン…
兵「ぎゃああああ」
勇者「はぁ…はぁ…中で待ってるからな」
魔族娘「こっちだよ。はやく」
豚「ぷぎー!ぷぎー!」
魔族娘「言うこと聞いて…あなたも死にたくないでしょ」
勇者「……何やってんだ。まだ隠し部屋に入ってなかったのか。
あとその豚……」
魔族娘「あ……あの…この子は…その…あの……」
勇者「……いいからさっさと隠れろ。
その豚も邪魔だ。さっさと連れていけ」
勇者「なにがだ?」
魔族娘「だって、あんなに沢山を相手にして…」
勇者「問題ない」
魔族娘「でも…」
勇者「大丈夫だ。なんせ俺は魔王を倒した男なんだからな」
魔族娘「………はい」
勇者「奴ら全員血祭りにあげてやるさ」
勇者「意外とはやくついたな」
兵「いたぞっ!勇者だ!」
勇者「ちっ…意外と残ったな」
兵「この軍勢に焦っているようだな」
勇者「いや、ただ面倒だと思っただけだ。何の問題もない」
足音からしてもかなりの大勢みたいだし……」
豚「ぶひぶひぶひ」
魔族娘「豚さん…勇者様は大丈夫かな?」
豚「ぶひっぶひっ」
魔族娘「大丈夫…ですよね…」
勇者「クククク…ハッハッハッハ!
どうした!その程度か!」
兵「くっ…ここでは思うように隊がうごかせん…」
勇者「ハッハッハッハッ!広さの限定された空間では思うように動けまい!
おのずと戦える人数も限られてくるのさ!」
兵「…なんということだ」
勇者「こんな所までのこのこ来やがって!お前らは間抜けかっ!」
豚「ンガッンガッンガッ」
トコトコトコ
魔族娘「…豚さん、どこに行くんですか?」
豚「ぶひぶひぶひ」
魔族娘「あ、魔王様の絵ですね。上の部屋にあるのと同じやつですかねぇ?」
豚「ぶひぶひぶひぶひ」
魔族娘「はい、とても素敵なお姿ですね」
豚「ぶひぶひぶひぶひ」
魔族娘「豚さんも同じ考えなんですね?」
豚「ぶひっ………」
魔族娘「豚さん?急に黙りこんでどうしたんですか?」
豚「………」
魔族娘「豚さんの言葉がわかればいいのに…
あら?魔王様の絵が傾いてますね」
豚「ぶひ!」
魔族娘「でも今はそんなこと気にしてる時間はありませんね」
兵「なんてことだ…もう半数近くが…
いや、だが奴も疲弊しているはずだ」
勇者「…なかなかやるな。
やろうと思えば魔王だって討伐できたんじゃないのか?」
兵「……何が言いたい」
勇者「魔王を倒したこの俺をここまで追い詰めたんだ。
やろうと思えば魔王だって倒せたんじゃないかって言ってんだよ」
兵「………」
勇者「それをお前らは……お前らは国を守る盾だろうが!」
兵「……そんなこと!」
魔王を倒したを俺を倒してみろ!」
兵「…い…言われなくともっ!」
………
……
…
ザスッ
勇者「…ふっ…やれば…できるじゃない…か…」
ドサッ
兵「やったぞ!ついに…ついに勇者を倒したぞ…」
ゴゴゴゴゴ…
魔族娘「あの絵が仕掛けだったんですね…もう、そうならそうと早く言ってよ…」
豚「ぷぎぃ……」
魔族娘「勇者様はっ……あ…れ?…勇者…様?」
魔族娘「勇者様!勇者さまぁああああ!」
兵「なんだあの娘はっ!…まさか……魔族か!?」
魔族娘「勇者様!起きて勇者様!」
兵「…やはり、勇者は魔性に堕ちていたのか」
カチャ…カチャカチャ…
隊長「待て!武器をおろせ」
兵士「隊長!?今までどこにいたんですか!」
隊長「細かいことは気にするなっ!」
酷いことしても気にしないから……おねがい…」
隊長「あの姿を見て…あの娘が邪悪なものだと思うか?」
兵「……それは」
隊長「もしかしたら、勇者は伝えたかったのかもしれない…
我等の脆弱な力でも…力を合わせれば魔王を倒すことができるということを」
兵「………」
隊長「さぁ、我等の英雄の亡きがらを丁重に運んでやろうじゃないか」
魔族娘「ひっく……」
隊長「勇者殿のは素晴らしいお人でした…おそらく、
世界のことを誰よりも考えていたのでしょう」
魔族娘「………」
隊長「彼は最後に教えてくれました…
勇者などという強大な存在が無くとも…一人一人が力を合わせれば…」
「カハッ……ククク…」
魔族娘「…え?」
「ククククク…アーッハッハッハッハッハ!
一人一人が力を合わせれば?馬鹿じゃないのか?」
兵「な…なんだと…」
スッ
勇者「馬鹿じゃねえの?」
勇者「ふっ、お前ら馬鹿すぎるな。
何度でも言ってやるよ。馬鹿じゃねえの?」
魔族娘「…ゆ…勇者様?」
勇者「どうかしたのか?」
魔族娘「な…なんで生きて……」
勇者「こんなもんで死ぬわけないだろうが。俺を誰だと思ってんだ」
勇者「邪魔だ」
パシュッ…
隊長「こっ…」シュゥ…
兵「隊ちょぉおおおおおおおおおお!」
勇者「さぁて、ぐっすり眠って体力も回復したし……」
兵「………」
魔族娘「………」
勇者「……皆殺しといこうか」
勇者「なんでお前の言うことを聞かないといけないんだ?」
魔族娘「…だって」
勇者「邪魔だ、どけ」
兵「…終わりだ……この世界は」
勇者「ククク…面倒だ。まとめて始末してやる」
魔族娘「勇者様っ!」
勇者「いいかげんにっ……」
魔族娘「おっ…お掃除が大変だから駄目ですっ!」
勇者「…………そうか。わかった」
勇者「そうだな。後始末が面倒だな。
やめておこう」
魔族娘(え……えぇええええええええええええ!?)
勇者「お前らっ!特別に見逃してやる!
死体や怪我人は残していくなよっ!」
兵「…………」
魔族娘「あ…あの…結局勇者様は何をしたかったんですか?」
勇者「さぁな…」
魔族娘「国が欲しかったんじゃ…」
勇者「あんな国もういらん」
魔族娘「………」
豚「ぷぎぃぷぎぃ」
魔族娘「あ…この子は…その…」
勇者「非常食か、なかなか考えたな」
魔族娘「あ…は、はい…そうなんですよ…」
豚「ぶひぶひ」
毎回、見事に返り討ちにあったという
「はい、わかりましたよ」
むかしむかし、ある勇者が魔王を倒しましたとさ
「ママぁ、それじゃあ、お話になってないよ」
「ふふふっ、ここから物語が始まるんですよ」
「……ほんとにぃ?」
「あ、パパだぁ」
「ふふっ、じゃあご飯にしないとね」
「ぷぎぃぷぎぃ」
「それにしても、その豚いつになったら食うんだ?」
「ふふふっ、なんせ非常食ですから。
非常事態にでもならない限りは……」
完
とりあえず魔族と人間のハーフいいわ
凄く楽しめました、ありがとう