騎士長「王宮をクビになってしまった」

1: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 18:57:21 ID:l.WyCDxE
王様「…ふむ」

側近「王、最近の我が国は財政難。速急に対策を打たねばなりません」

王様「…側近、いい案はあるか?」

側近「案…ですか。おい財務大臣、何か意見はないか?」

財政大臣「我輩ですか。なら、いい案が」

王様「ふむ…申してみよ」

財政大臣「…このところ、我が国では兵力が余っており――…」

2: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 18:58:01 ID:l.WyCDxE
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――――【 王宮都市・演習広場 】

…ビュンッ!!ビュンッ!!

王宮騎士「やぁっ!!」

王宮兵士「たぁぁっ!」

王宮戦士「おうっ!」

騎士長「いいぞ…その調子だ!腕の振りが甘いぞ!」

王宮騎士「はいっ!」ビュンッ!

騎士長「よし、そうだ!」

3: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 18:58:46 ID:l.WyCDxE
王宮騎士「ありがとうございます、いつもながら的確な指示ですね」

騎士長「当たり前だ、俺を誰だと思っているんだ」

王宮騎士「いやはや…さすがですよ。貴方がいれば王宮都市の未来も安泰だ」

騎士長「俺が魔物や、賊からこの国を救うさ」

王宮騎士「本当にご立派です。見習わなければなりませんね」

騎士長「ははは、誉めても何も出ないぞ」

王宮騎士「はははっ!」

…カツ、カツ、カツ

???「どーも、今日も演習場から元気な戦士達の声…頼もしいですなぁ」

4: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 18:59:26 ID:l.WyCDxE
騎士長「む…」クルッ

側近「やぁやぁ、今日も精が出ますね騎士長殿」ニコッ

騎士長「側近殿でしたか…。いえ、それほどでも。いつ蛮族が襲うやもわかりませんし、いつも本気で取り組みますよ」

側近「それはいい心がけですね」

騎士長「この王宮、王国に務めて早10年…。少年時代よりお世話になった事をいつも感謝してます」ハハハ

側近「…」

騎士長「…」

側近「…」

騎士長「…側近殿?」

5: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:00:02 ID:l.WyCDxE
側近「その事なのですが、少しお話がありまして」

騎士長「…お話、ですか?」

側近「はい…実はですね…」

…………
………
……

6: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:00:50 ID:l.WyCDxE
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くの酒場 】

…ドンッ!!!

騎士長「…だってよ、笑えるだろう!?」ハハハ

店主「…お前が”クビ”、ね」

騎士長「はぁ~…何でだよぉ!!」グスッ

店主「それにしても、どうして急にクビなんだろうな。お前程、王国に捧げた奴もいないだろうに」

騎士長「この歳で、俺は高給取りの立場だったしな…」

騎士長「最近は王国が財政難っつーだろ?それに最近は平和だし…、高給取りの騎士はいらないんだろうよ!」グビグビ

7: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:01:24 ID:l.WyCDxE
店主「だからって、お前をクビ切りか…最近、王国の様子も大分変わったよな」

騎士長「店主は、今の一代前の王のことを知ってるんだろ?どんな感じだったんだ?」

店主「あの頃の王様は優しくてなぁ…、この酒場にも飲みに来てたんだぜ」

騎士長「うっそぉ!?この汚い酒場に!?」

店主「お前、そのビールの値段2倍な」ピクピク

騎士長「うっそぉ!?ぼったくりだぞこの店はみーなさーん!!」

店主「うっせぇよ!今は昼間だから誰もいねぇよ!…まぁ、それより前の王は、本当にいい王だったよ」

騎士長「へぇ…何で交代したんだ?」

店主「前王が病になって、当時のナンバー2が指揮をとって…そのままズルズルだな」

8: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:02:13 ID:l.WyCDxE
騎士長「羨ましい話ですわ、全く」グビッ…

店主「それからはキツイったらありゃしない。税は増えるわ、変な輩が城に出入りするわ…」ハァ

騎士長「変な輩…あぁ、最近王室に出たり入ったりしてたな」

店主「治安が良いとはお世辞にもいえねえな。まぁ…そんな王国、見切られて良かったんじゃねえの?」

騎士長「…何だかなぁ」

店主「それよか、お前はこれからどうするんだよ。まだ23だろ?若い出世だったのにな」

騎士長「あ~…どうしよう。魔物退治とかでいい依頼出してる所とか知らない?」

店主「うちの酒場も一応、そういう紛いの依頼受付だのの事はしてるが…」

騎士長「いい依頼ないよな、ここ」

9: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:02:50 ID:l.WyCDxE
店主「やかましい!」

騎士長「どれどれ、何があるんだーっと」ガタッ

トコトコ…ペラッ

騎士長「ふむふむ、どぶさらい…、迷い猫探し…、掃除…」

店主「…」

騎士長「ぷっ…はーっはっはっはっは!!漫画かよ!!」

店主「うるっせぇぇ酔っ払いが!!お前今日の代金3倍だからな!!」

騎士長「うっそぉ!?ぼったくりですよみーなーさーん!!!」

店主「昼間だから誰もいねえし、同じこと繰り返してるんじゃねーよ!」

店主「ったく…まだ昼間なのに出来上がってるんじゃねーっつーの」ハァ

10: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:03:40 ID:l.WyCDxE
騎士長「他の客なんざいないんだから、騒いだっていいじゃねーかぁ!」

店主「ま…気持ちは分かるけどよ」

騎士長「だろう!?もっと酒もってこぉ~~い!!」

店主「ったく、仕方ねえなあ…ん?」

…コンコン

店主「…また客か?昼間から珍しい」

騎士長「俺がドア開けてあげますよぉ~っと」ガタッ

フラフラ…

店主「お、おいおい!他の客だったら迷惑かけないでくれよ!」

11: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:04:22 ID:l.WyCDxE
騎士長「わかってるってぇ~」

ガチャッ…ギィィ…

騎士長「はーい!いらっしゃいまー…せ…?」

女の子「…」

騎士長「客、なの…?」

店主「ん…お、女の子…?」

女の子「…」キョロキョロ

12: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:05:16 ID:l.WyCDxE
騎士長「店主、アンタの知り合いか?」

店主「まさか!見たこともないぜ」

騎士長「ふむ…」

騎士長(黒髪…薄らとした褐色気味の肌…。砂漠地方の出か…?)

女の子「…」

騎士長「おい、お母さんとお父さんはどうした?」

女の子「…たい」

騎士長「あん?」

13: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:05:46 ID:l.WyCDxE
女の子「聞きたい事がある。ここなら依頼を受けてくれるのか?」

騎士長「あ…?」

店主「お嬢ちゃん、今何て言った?」

女の子「ここで、依頼を受けてくれるのかと聞いた」

店主「そりゃ受けてるが…」

女の子「どうすればいい」

店主「そ、それなら、この紙に書いてもらえればいいが…」ペラッ

女の子「わかった」

トコトコトコ…

騎士長「な…何なんだ一体」

店主「さぁ…」

14: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:06:22 ID:l.WyCDxE
トコトコトコ…ピタッ

女の子「…」ジー

店主「…」

女の子「…」ジー

店主「…どうした?書かないのか?」

女の子「高くて届かない」

騎士長「…お嬢ちゃんに、カウンターはまだ高いか。ほらよっ」ヒョイッ

女の子「!」フワッ

騎士長「ここに座れば届くだろう。ほら、これで書けるだろ」

15: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:07:01 ID:l.WyCDxE
女の子「…ありがとう」

騎士長「いんや、礼するほどじゃねえよ」

女の子「…」

騎士長「…」

女の子「…」ジー…

騎士長「…こ、今度はどうしたんだ?」

16: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:07:40 ID:l.WyCDxE
女の子「…私は字が書けないんだった」

騎士長「…」ハァ

騎士長「仕方ない、俺が変わりに書いてやるよ、ペンを貸せ」

女の子「…色々ありがとう」

騎士長「だからそれくらいイイっつーの。で、内容は?」

17: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:08:17 ID:l.WyCDxE
女の子「”お父さんを殺して”」

騎士長「はいよ、お父さんを殺してっと…」カキカキ

騎士長「…」

騎士長「…何て言った、今」

店主「おい、今このお嬢ちゃん…何て言った…?」

女の子「聞こえなかったか?”お父さんを殺して”と言った」

騎士長「お前…」

…ガチャアン!!!

傭兵「どこだコラァ!!」

奴隷商人「ここに逃げたのは分かってるんだからな、出て来い!!」

店主「こ、今度は何だ!」

18: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:08:57 ID:l.WyCDxE
傭兵「アンタがここの店主か?聞きたい事がある…ここに子供が逃げ込まなかったか?」

騎士長「こいつのことか?」ヒョイッ

女の子「わわっ」

傭兵「そうそう、そのくらいの…って、ソイツだコラァ!!!」クワッ

騎士長「やかましいー奴だなー」

店主「お前が言うな」

傭兵「そいつをおとなしく渡せ。そいつはうちの奴隷なんでね」

騎士長「…お嬢ちゃん、奴隷だったのか?」

女の子「…」

19: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:09:46 ID:l.WyCDxE
奴隷商人「そいつはうちの大事な品物なんだよ。早く返してくれるか」

女の子「…」

傭兵「…早く戻って来ないと、また鞭で打つぞコラァ!!」

女の子「!」ビクッ

騎士長「まぁ…待てよ。この子は砂漠地方の出だろ?あそこは奴隷の扱いを禁止してなかったか?」

傭兵「…うっせぇ!お前には関係ないだろう!」

騎士長「お前がうるせぇよ。で、お嬢ちゃん・・・どうして奴隷になったか聞かせてくれないか?」

女の子「あ…あの連中が…、村を襲った…」ビクビク

騎士長「…ははーん」

21: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:10:37 ID:l.WyCDxE
傭兵「そ、それがどうしたんだコラァ!」

奴隷商人「そうだぞ、そいつはもううちの商品なんだからな!」

女の子「…」ブルブル

騎士長「…」

店主「…騎士長、店は気にするな」

騎士長「あん?」

店主「…俺もあいつらはちょっとムカつくからな」

騎士長「いいのか?」

店主「やっちまえ」

騎士長「…恩に着るぜ」ニカッ

22: ◆qqtckwRIh. 2014/03/01(土) 19:11:13 ID:l.WyCDxE
傭兵「いいからさっさと、こっちに寄越せっつうんだよコラァ!!」

奴隷商人「早くしないと、この傭兵が店を壊すぞ?」

女の子「…」ビクビク

…ポンッ

女の子「…え?」

騎士長「おい、お嬢ちゃん…名前は?」

黒髪幼女「く…黒髪幼女…」

騎士長「そっか、じゃあちょっと…店主にジュースでも貰ってな!」

黒髪幼女「じゅ…ジュース…?」

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