魔王「魔界の皆様の信頼を裏切る行為を重ねてしまい、大変ご迷惑とご心配をおかけいたしました」
魔王「誠に申し訳ありませんでした」
魔王「このたびの不祥事を重く受け止め、私は魔王を辞職いたします」
パシャッ! パシャッパシャッ! パシャシャッ!
これにより魔王の座は空位となり、新たな魔王を選出する『魔王選挙』が行われる事となった。
魔王Jr「フフン、パパとは違うってところ見せてあげるよ」
側近「魔王様の後を引き継げるのは、長年仕えた私しかおりませぬ」
ドラゴン「ガハハハハッ! オレこそが魔王に相応しいぜぇ!」
吸血鬼「アンデッドの王たるこの私に一票を投じるのだ」
闇魔術師「力が魔界を支配する時代は終わりを告げた。これからは魔力の時代だ」
オーク「オレも魔王選挙にチャレンジするぜ!」
スライム「よろしくお願いします!」
キラービー「僕が虫だからって無視しないで下さいね」
ミミック「投票箱に立候補したつもりが、なぜか魔王選挙そのものに立候補してました」
・側近(上級魔族)
・ドラゴン(竜族)
・吸血鬼(上級魔族)
・闇魔術師(上級魔族)
・ワイバーン(竜族)
・オーク(中級魔族)
・ベヒーモス(中級魔族)
・ミノタウロス(中級魔族)
・魔剣士(中級魔族)
・スライム(下級魔族)
・ゴブリン(下級魔族)
・コカトリス(鳥族)
・キラービー(昆虫族)
・ミミック(魔法生物)
・エルフ老師(亜人)
立候補者が出揃い、いよいよ選挙戦が幕を開けた。
下馬評はやはり魔王Jrが最有力候補、他の上級魔族がどこまで票を伸ばせるか、という具合であった。
魔王Jr「武器や防具を軍に積極的に取り入れるし、産業だって発達させる」
魔王Jr「そうして兵を強くしていけば、魔王軍は人間界をたやすく征服できる軍隊になる」
魔王Jr「たとえ伝説の勇者が現れたとしても、ボクらの敵じゃない!」
ワアァァァ……!
ジュニア! ジュニア! ジュニア! ジュニア! ジュニア!
側近「魔界の歴史は長い……急激な変化など起こすべきではありません」
側近「私は魔王様のこれまでのやり方を踏襲しつつも、変えるべきところは変えていきます」
側近「それが魔界が強くなるための最良な道なのです!」
ワアァァァ……!
ソウダソウダー! イイゾー! ソッキーン!
ドラゴン「オレが魔王になったあかつきには、強いヤツにはどんどんいい地位をくれてやる!」
ドラゴン「弱えヤツはオレが守ってやる!」
ドラゴン「みんな、オレについてきやがれ!」
ワアァァァ……!
ドラゴンドラゴン! ドラゴンドラゴン! ワカリヤスイ!
吸血鬼「奴らはみな、私の手によって闇の配下となり、永久に家畜として生き続ける」
吸血鬼「人間は我らにとって、良質な食料となるからなぁ……」
吸血鬼「そして我ら魔族は、奴らの血と肉を糧に強くなるのだ!」
ワアァァァ……!
ヴァンパイアバンザーイ! スゲーケイカクダゼ!
闇魔術師「これからは“魔力”の時代だ」
闇魔術師「ワタクシが魔王になったら、魔界の民全員が魔法を使えるよう教育制度を整えることを約束する」
闇魔術師「そうなればもはや人間など敵ではない!」
ワアァァァ……!
ヤミマジュツシー! マリョクノジダイダー!
ワイバーン「ワイが一番好きなアルファベットはワイや! ワイルドやろぉ~!?」
オーク「オレが魔王になったら女騎士に『くっ、殺せ!』って言わせる方法を教えます!」
コカトリス「私が魔王になったら焼き鳥を全面的に禁止します」
魔剣士「負けん!」
ミミック「魔王になったら魔王城に宝箱を増やします」
エルフ老師「婆さんや、メシはまだかいのう?」
やはり魔王Jrを始めとする上級魔族たちの争いになると思われた。
ところが、この魔王選は意外な結末を迎えることになる。
スライム「魔族や魔物をバラけて配置しません。戦力の逐次投入はしません。勇者が育つのを待ちません」
スライム「お遊びもお約束も一切なし。全力で人間を倒す魔王軍にします」
ウオオオオオオオオオオオオッ!!!
この余りにも斬新なマニフェストは、有権者どころか、他の立候補者の支持をも集めた。
スライムが次期魔王になるのはもはや確定的であった。
危うし、人間界!
<おわり>
乙