男(この爆弾を解除するには……赤のコードか青のコード、どちらかを切らねばならない!)
男「おい、どっちだ!? どっちを切ればいいんだ!?」
爆弾魔「ク、ククク……」
爆弾魔「私の爆弾はきっと爆発を起こし、世界を滅ぼしてくれるであろう……」ガリッ
爆弾魔「……」ガクッ
男「あ、この野郎、毒で自害しやがった!」
男「くそっ……!」
男(赤を切るべきか、青を切るべきか……)
男(個人的には青だと思うんだけど……)
男(だって、青の方が安全なイメージあるし……青信号とか)
男(ゲームでも、体力が満タンの時はゲージが青色だったりするし)
男(うーん、だけどそんなことで決めちゃっていいんだろうか?)
男(俺だけじゃ決められねえ! みんなにも聞いてみよう!)
同僚「なんだ? 爆弾は解除できたか?」
男「いや……まだこれからなんだ。あとはコードを一本切るだけなんだけど、犯人がくたばりやがってさ……」
男「お前は赤のコードと青のコード、どっちを切るべきだと思う? ちなみに俺は青なんだけど」
同僚「俺は……赤だと思うなぁ」
男「なんで?」
同僚「いや、青っていかにも安全って感じだし、あの犯人ならそれを逆手に取ってきそう」
男「なるほど、お前はそう読むわけか」
上司「赤だ」
男「なぜです?」
上司「だって、赤は“止まれ”じゃないか。だから爆弾も止まるんじゃないか?」
男「信号理論というわけですか」
後輩女「青ーっ!」
男「どうして?」
後輩女「だってぇ、青のが色がキレイじゃないですかぁ~」
後輩女「だからぁ、青ーっ!」
男「実に君らしい答えだ」
同僚「イーブンだな」
上司「いや、私は上司だから2ポイントでいいんじゃないか?」
後輩女「そんなのずるいですー! だったら私は女だから2ポイントにしてー!」
男「二人とも落ち着いて。重要なことだから特別扱いはしないよ」
同僚「どうする? 同数じゃ決められないぞ」
男「……家族に電話して聞いてみる!」
男「親父、俺だ」
父『おお、今何やってるんだ?』
男「爆弾処理の真っ最中だ」
父『すごいじゃないか。気をつけろよ。で、なんの用だ?』
男「赤のコードと青のコード、どちらかを切らなきゃならないんだけど、親父はどっちだと思う?」
父『青だな。安全なイメージがある』
男(やっぱり父子だな……俺と同じだ)
母『私は赤ねえ』
男「どうしてそう思う?」
母『私、梅干し好きだし』
男(そういや、お袋の弁当はしょっちゅう日の丸弁当だったなぁ……)
男(もし、爆弾をうまく解除できたら、また食べたいな……)
妹『赤ーっ! 今赤い服着てるし』
男「お前も赤か……これで4対3、答えは出たな」
ポチ『ワオ!』
男「ん? この鳴き声はポチか?」
ポチ『ワオ! ワオ!』
妹『ポチは青だってー!』
男「な……なんだと!?」
同僚「どうするよ? 他の人にも聞いてみるか?」
男「そうするしかないだろうな」
男「いっそのこと、どうせやるならもっと大勢の人の意見を聞きたい」
男「こうなったら、この件をマスコミに報道してもらうか!」
キャスター「えー……ニュースです」
キャスター「ただいま、ある建物で爆弾解除作業が行われており、大詰めを迎えています」
キャスター「赤のコードを切るか、青のコードを切るか、作業員が判断に悩んでいるとのことです」
キャスター「テレビの前の皆さんは、どちらを切るべきだと思いますか?」
「ニュース見た?」
「見た見た」
「どっちだと思う?」
「俺は青だな~」
「あたしは赤だと思う~」
「僕は……」
ザワザワ… ガヤガヤ…
司会者「さぁ、本日のテーマは、今巷で話題のテーマ『赤を切るか、青を切るか?』です!」
司会者「各方面からさまざまな方に集まっていただきました!」
司会者「お集まりの皆さんは、どちらを切るべきだと思いますか?」
司会者「朝まで徹底討論していただきましょう!」
教授「心理学的な観点からいえば、やはり青を切るべきだと思いますねえ」
女史「そうかしら? あたくしは赤だと思いますわぁ~」
医者「血液の色である赤にすべきでは?」
政治家「青です! 間違いありません! 青色のような清き一票を!」
タレント「いっそ間をとって、紫なんてのはどうでっか?」
アハハハ… ハハハハ…
アーデモナイ… コーデモナイ…
「青でしょ! こないだ読んだ小説では、青が正解だったし!」
「いやいやいや、赤に決まってる。いかにも正解っぽい青は罠だよ」
「絶対赤! 青とかいってる奴は情弱!」
「青髪キャラが好きだから、青!」
…………
……
副大統領「大統領、日本(ジャパン)で今、話題になっている爆弾(ボム)の件ですが」
副大統領「大統領は赤(レッド)と青(ブルー)、どちらを切るべきだと思いますか?」
大統領「赤だね、絶対赤!」
大統領「私が彼らだったら、間違いなく赤を切るよ!」
副大統領「私はそう思いませんなぁ……」
大統領「ほう……だったら賭けるかね?」
副大統領「面白い」
同僚「このままじゃ収拾がつかなくなる!」
男「うーん……参ったなぁ」
男「まさか、こんなことになるとは思わなかった……」
同僚「うかつな決め方すると、それこそ俺たち大バッシングにあうぞ……」
男「こうなったら――」
パシャッ パシャシャッ パシャシャッ
男「全世界投票を行います!」
男「投票権があるのは年齢、性別、国籍、人種全て関係なく――全人類!」
男「一票でも多く入った方のコードを切ります!」
ワァァァァァ… ワァァァァァ…
「絶対赤を勝たせるぞ!」
「赤! 赤!」
「投票日までは時間がある! なんとしても赤に投票してくれる人を確保しろ!」
青コード派――
「青だ!」
「私は全財産を青に賭けているぞ……」
「どんな手を使ってでも、青を勝たせるんだぁぁぁぁぁっ!」
同僚「棄権者はいないようだ。マジで全人類の意志が反映されてるぞ」
男「すっげえな……」
男(赤か青か、果たして答えは出るのか!?)
男「……!」
同僚「……!」
男「な、なんてことだ……」
男「全人類投票でも……同数だなんて……」
同僚「こんなことってあるのかよ……」
男「あっちまったんだから、しょうがないだろ……」
同僚「どうする?」
男「やるしかないだろ……第二回を」
……
男「ふぅ~……あれからどれぐらいの月日が流れたんだろう」
同僚「赤か青か、こんなに揉めるとは思わなかったな」
男「ああ、これじゃこの爆弾のコードを切れるのはいつの日になるやら――」
チッチッチッチッチッ
ピーッ
男「!?」
同僚「!?」
同僚「今までずっとタイマー音を刻んでたのに、音が変わった!」
男「ま、まずい……爆発する……!?」
男「あれ?」
同僚「爆発しないのかよ」
同僚「なんだよ……結局よくできたイタズラ爆弾だったのか? 人騒がせな……」
男「……」
男「いや……そうとも限らないかもしれない」
同僚「どういうことだよ?」
男「例の全人類投票のために、赤コード派と青コード派がやったことは同じだった」
男「その方法とは――」
男「その結果、今や世界人口は事件前の何倍……いや何十倍にも膨れ上がってしまった」
同僚「人口爆発ってやつか!」
男「ああ……この爆弾は見事に爆発を起こしたんだ」
男「そして、もしかしたら世界が滅びる日もそう遠くはないのかも――」
ウジャウジャウジャウジャウジャウジャウジャウジャ…
ウジャウジャウジャウジャウジャウジャウジャウジャウジャウジャ…
―終―