勇者「はい」
店長「じゃあ見せて」
ぱらり
店長「……う~ん」
勇者「………」
店長「これはどういうことかなぁ……」
勇者「え?」
店長「コンビニのバイトだからって舐めてるのかなぁ?」
勇者「はい?」
店長「まず、君の歳が約2500歳ってどういうことなの?」
勇者「あ……、すいません、約って付けたのはしっかり覚えていないからで……」
店長「いやね、俺は約に引っかかってる訳じゃないんだよ」
勇者「はあ」
勇者「成長が止まってるんです……」
店長「……あ、ちゃんと理由も書いてたね、え~っと19歳の時に魔王と戦ったんだね」
勇者「ええ……」
店長「で、その魔王が不老不死だったんだ?」
勇者「はい」
店長「そして死闘の末魔王の返り血を浴びて口に入って君も、不老不死になってしまったと……」
勇者「そうなんです」
店長「不老不死ならバイトする必要無いと思うんだけどねぇ……」
勇者「お腹は減るんです……」
店長「不老不死なのにお腹は減るの?不老不死も案外不便だねぇ~」
勇者「今もお腹減ってます……」
店長「でも餓死はしないんでしょ?」
勇者「餓死しそうになります……」
勇者「いや、剣道じゃなくて……」
店長「ああ、ごめんごめん、剣で魔王と戦ってたんだね」
勇者「はい」
店長「あとずっと気になってたんだけど、額になんかマーク書いてあるけど、それ何?」
勇者「ああ……これは紋章で……」
店長「それ消せる?働く時はそれは消してもらわないとならないよ?」
勇者「け、消せるっていうかこれは浮かび上がってるもんなんで……」
店長「油性で書いちゃったんだ?」
勇者「い、いや書いた訳じゃなくて……」
勇者「笑顔ですか………」
店長「ちょっと言ってみて」
勇者「……いらっしゃいませ……」
店長「う~ん、全然笑顔になって無いなぁ、暗いし」
勇者「……魔王も倒してないのに……笑えないっていうか……」
店長「じゃあ先に魔王倒してからうち来た方がいいねぇ」
勇者「……いや……でも現世に魔王いないし……」
店長「というか何しに来たの君」
勇者「えっ、バイトの面接ですけど……」
店長「友達にやらされてるの?それとも本気?本気でやってたらちょっとおかしいよ君」
勇者「………」
店長「俺も別に暇って訳じゃ無いからね、付き合ってられないんだよ」
店長「落ちたよ、落ちた、そもそも君は受かる気無いでしょ」
勇者「えっ……そんな……」
店長「君ももう十分大人なんだから自分を見つめ直したほうが良いよ」
勇者「は…はい………」
店長「じゃあこれで面接終わるから、帰っていいよ」
勇者「……し……失礼しました……」
店長「魔王倒せるといいねー、頑張ってねー」
ガチャ
バタン
店長「はぁ……舐めくさりやがって……」
少女「あ、店長、さっきの人どうでした……?」
少女「変わった人でしたよね……」
店長「これぞゆとり教育の弊害と思ったわ、何考えてるんだか」
少女「なんか勇者っぽい格好してましたよね……」
店長「勇者も勇者よ、名前に勇者って書いてたから……」
少女「ははは……あの人ここで働くんですか?」
店長「働かせる訳ねぇだろ、あんなの何しでかすか分かんねぇ」
少女「ですよね……」
店長「なんだお前あんなのがタイプなのか?」
少女「ま、まさか……やめてくださいよ」
「すいませ~ん」
店長「ああお客さん呼んでるぞ」
少女「あ、は~い、今行きま~す」
コンコンッ
ガチャ
少女「て、店長、バイトの面接の人来てます……!」
店長「お~、じゃあ通していいよ~」
魔王「キタゾ……」
カラス「カァーカァー」
店長「はあ……またか」
店長「じゃあそこに座ってください」
ズシッ
魔王「………」
店長「こんにちわ」
魔王「コンニチワ………」
カラス「カァーカァー」
店長「………」
魔王「コレダナ……」
ぱらり
店長「う~~~ん……ふむふむ……」
魔王「………」
カラス「カァーカァー」
店長「……ちょっとその肩に乗ってるカラス黙らせてくれるかな?」
魔王「ア……コンナトコロニ……」
店長「えっ、肩に乗ったカラスに気付かなかったの?鈍感なのかな?鈍感な人なのかな?」
魔王「………」
店長「本当よくできてるなぁ、そのカラス……」
魔王「………?」
魔王「ソウダ……」
店長「さっき勇者が面接に来たよ」
魔王「……ナンダト……」
店長「勇者は友達なのかな?友達とやってるのかな?」
魔王「トモダチナワケガナイダロ………」
店長「だよね、魔王と勇者は宿敵だもんね、友達な訳が無いよね」
魔王「ワカッテルジャナイカ……」
店長「え~っと、魔王さんは50万歳なのね」
魔王「アア……」
店長「きりがいいなぁ~」
店長「あれ、先週が誕生日だったんだ?」
魔王「アア……」
店長「魔王の50万歳っていう記念すべき日に俺は立ち会ってるんだ?」
魔王「イワイタマエ……」
店長「祝いんたいんだけどね~、面接中だから祝え無いんだわ~」
魔王「グヌヌ……」
店長「住所が魔界になってるけど……、魔界に住んでるの?」
魔王「ソウダ……」
店長「アバウトだな~、魔界って広いんでしょ?もっと詳しく書いてもらわないと」
魔王「マカイハワシノニワ……」
店長「庭だろうけどさぁ~」
魔王「ソウダ……」
店長「どれだけ近所でも一分はかかっちゃうからそうだろうね~」
カラス「カァー」
店長「それ魔界のカラス?魔界のカラスだったらちゃんと魔界に返してね」
魔王「マカイニカラスハイナイ……」
店長「じゃあ人間界のカラスだね、来る途中に肩に乗ったんだ?」
魔王「キットソウダロウ……」
店長「テレポートできるならテレポートでここまで来れば良かったのに」
魔王「ハジメテクルトコロハテレポートデキナイ……」
店長「ああ、じゃあもしここでバイトし始めたらテレポートで通勤する訳だ?」
魔王「ソノツモリダ……」
魔王「ヨンジュウネンマエノダ……」
店長「40年前なのに顔が全然変わって無いね、まぁ50万年生きてるから変わる訳がないかぁ」
魔王「アア………」
店長「手のこんだイタズラするねぇ、本当」
魔王「……イタズラ……?」
店長「あ、特技の欄に世界征服ってあるね」
魔王「……マアナ」
店長「したことあるんだ?世界征服」
魔王「イチドダケダガナ……」
店長「一度でもすごいと思うよ~、世界征服は」
魔王「ガハハ………」
店長「あ、志望動機にお金を稼いで魔王女にプレゼントを買う為って書いてあるねぇ」
魔王「………///」
魔王「ヒミツダ………」
店長「やっぱり秘密か~……魔王なのに盗んだりしないの?簡単なんじゃない?」
魔王「ジブンデハタライタオカネデカイタイ………」
店長「泣かせるせぇ、魔王さんにそこまでさせるってことはさぞお綺麗な方なのでしょう」
魔王「マアナ………///」
店長「あ、そうそう、働くことになったら角取ってもらうよ?」
魔王「ツ、ツノヲトレダト……!?」
店長「大体ねぇ、面接中にそんなの付けてるのがありえないんだけどねぇ」
魔王「オマエ……コロスゾ……」
店長「わーこわーいまおーにころされるー」
魔王「………」
店長「……もういいだろ、俺は良く付き合ったほうだよ」
魔王「………?」
魔王「ドウイウコトダ……?」
店長「さっきの勇者と友達なんだろ?んで勇者と魔王の格好してバイトの面接受けようぜとか盛り上がってやっちゃったんだろ?」
魔王「……ナニヲイッテイル……」
店長「そうやってバカ話をするまでいいんだけど、本気でやるとかバカだよ」
魔王「バ……バカ……?」
店長「もう他ではするなよ~、じゃあもう帰っていいから、俺も暇じゃないし」
魔王「ワシハオチタノカ……?」
店長「まだ言ってるのか」
店長「落ちたよ、落ちた」
魔王「リレキショノウラヲ……ミテミロ……」
店長「履歴書の裏?まだなんかあるのか」
ぱらり
店長「……え~っと、わしを落としたら貴様を石にする……」
魔王「ワカッタカ………」
店長「人間を石にできるんだ、できるもんならしてもらいたいねぇ」
魔王「!?………」
店長「あ、そうだ俺の足を石にしてみてよ、もしできたら働かせてあげるから」
魔王「……ホントウダナ……」
…………
……………………
ジャラジャラ
少女「ふう…」
少女(さっきの人本当に怖かったなぁ……)
少女(なんか大魔王って感じで)
少女(店長取らなきゃいいなぁ)
少女(取るわけないか)
「マジだったあああああああああああああぁぁぁぁ!!!」
少女「!?」
少女「この叫び声は店長!」
ドンッ
少女「て、店長!どうしたんですか!」
店長「マジだった……マジだった…マジだったああああああああああああ!!!」
少女「お、落ち着いて下さい、どうしたんですか!」
店長「本当だったんだ…!本当に魔王だったんだ…!」
少女「ま、魔王ってさっきの人がですか??」
店長「そ、そうだ!!見てみろ!俺の足を!!」
少女「え…きゃ、石になってる!!」
店長「どうすんだよこれ!!病院で治るのか!!?」
少女「わ、分からないです!」
店長「そうだ!!というよりあの魔王が治してくれるか!?取ってあげたんだし!!」
少女「え??え!?あの魔王を取ったんですか!?」
店長「取ったよ!!」
少女「な、なんで取ったんですか!!魔王を!!」
店長「取らなきゃ全身石にされるところだったんだぞ!!」
少女「ま、魔王はいつからバイトに入るんですか!?」
店長「明日からだよ!!明日から!!」
少女「あ、明日から!?明日ってあたしも入ってるじゃないですか!!最悪!!」
店長「早い方が良いって言われたんだよ!!」
少女「最悪だ!!最っ悪だ!!」
店長「あ、そうだ!!勇者も来たんだった!!ツイてた~!!」
ガサゴソ
店長「よし履歴書に番号書いてたぁ!!良かったぁ!!」
ピポパポ
少女「勇者に電話してるんですか!?」
店長「ああ!!あいつ魔王倒したいとか言ってたし!!この履歴書に書いてあること全部マジだったんだよ!!」
少女「み、見せて下さい…!」
店長「出てくれ!!出てくれよ~!!」
少女「………え!?………これが全部本当のこと……!?」
店長「……あ!もしもし!勇者君!?さっきはゴメンね!君やっぱり受かったから!うんうん!本当!!明日から!!明日四時から来て!!」
ガチャ
少女「て、っていうか明日うちと魔王と勇者でバイトするんですか!?超怖いんですけど!!」
店長「とりあえず俺病院行って来るから店頼んだ!!」
少女「て、店長!!」
店長「うぉおおお!!!」
ドンッ
店長「うおおおお!!」
ドンッ
少女(あれ病院で治るのかな……)
少女(っていうか明日あたしも魔王に石にされちゃったらどうしよう……)
少女(店長が石にさせられくらいだからあたしなんか……)
ウィ~ン
店長「おい!!たむろしてるヤンキー!!」
ヤンキー「なんだよ」
店長「俺足石にされたんだぞ!!」
ヤンキー「知らねぇよ!!」
少女(なんだかどう接していいか分からないなぁ……)
少女(魔王の接し方が分かる方がおかしいか……)
少女(もっとファンタジーの小説とか読んでおくべきだった……)
少女(明日ちゃんと教えれるかなぁ……)
少女(ああ……頭が痛くなってきた……)
おっさん「お嬢ちゃ~ん、ぼ~っとしてないでレジお願~い」
少女「あ、すいません!」
医者「今日はどうしたんですか?」
店長「み、見て下さい!!足を!!」
医者「……変わった靴をお履きになってますね~」
店長「こ、これは靴じゃなくてね!!」
医者「どうしたんですか?」
店長「ま、魔王に魔法でこう!ジュルルンド~ンとっ!!」
医者「……魔王に魔法でジュルルンド~ン……ですか」
店長「な、治りますかねこれは!!?」
医者「申し上げ難いんですが……この科では治りませんね……」
店長「外科じゃ治らないんですか!?」
医者「ちょっと仕事で心が疲れているみたいですね……」
店長「ち、違う!!そういうのじゃない!!そういうのじゃない!!」
ピコピコ
少女「ねぇ」
弟「………」
少女「ねぇってば」
弟「なんだよ~、ゲームやってる時に話しかけるなよ~」
少女「魔王ってどのくらい悪いやつなの??」
弟「は?分かんね~よ」
少女「あんた魔王倒すゲームやってるじゃない」
弟「俺あまりストーリーとか読んでね~もん」
少女「チェ、本当あんたは役に立たないわねぇ」
弟「うるせ~よ」
ピコピコ
弟「あ~、レベル上げめんど……」
少女(あんたは呑気でいいね……)
少女「店長おはようございます……」
店長「おお来たか……」
少女「……あ!やっぱり病院じゃ足は治らなかったんですか!?」
店長「ああ……、精神科に回されそうになっただけだった……」
少女「昨日のことは夢じゃなかったんですね……」
店長「俺も朝起きる時に夢だと願ったが……」
ドンッ
店長「この足だよ……」
少女「大丈夫ですか?足……」
店長「重くて股が筋肉痛さ……」
少女「魔王さんか勇者さん来てますか?」
店長「いや、まだどちらも……」
店長「来なかったら一生俺はこの足だよ……」
少女「店長……」
店長「ベストは魔王が先に来て俺の足を治してもらって、その後勇者が来て魔王を倒して貰えればな……」
魔王「コンニチワ……」
少女「ま、魔王さん!!」
店長「い、いつの間に!!!」
魔王「ナニヲシャベッテイタ………」
店長「な、な、な、なんでもありません……!お早いご出勤で!あは!あはは!」
少女「わ、わたしは同じ夕勤のものです!よろしくお願いします!」
魔王「………ヨロシク………」
魔王「ナンダ……」
店長「働いていただくので、こ、この足を治していただけはいけないでしょうか???」
魔王「……オオ………ワスレテイタ………」
ジュルルンド~ン!
店長「……も、戻ったあああああ!!」
少女「良かったですね店長!!」
店長「魔王さんありがとうございますううううう!!」
魔王「ハタラクゾ………」
店長「働いてもらいますともおおお!!!」
店長「きょ、今日は初日ということで見て覚えていただくだけで結構です!!」
魔王「ワカッタ………」
店長「あ、あと、魔王さん、これに着替えちゃったりしちゃってもらえますかね……?」
魔王「ナンダコレハ………」
店長「こ、コンビニの制服でございます!!」
魔王「マントヲヌゲトイウノカ……?」
店長「で、ですよね~!!こんなの着れ無いですよねぇ!!」
魔王「………キヨウ………」
店長「き、着てくれるんですか!ではマントをお預かりします!」
少女(着るんだ……)
魔王「キヅライナ………ドウダ………?」
店長「お、お似合いです!!」
魔王「ソウカ………」
バイト君「お疲れ~………あ、あれ?これなんすかwwwwwwwwww」
魔王「ン………?」
店長「お、おいっ!!!」
さわさわ
バイト君「なんかのキャンペーンなんすかwwwwwwwwww良くできてるじゃないすか角とかwwwwwwww」
店長「や、やめろ!!お前!!すいません魔王さん!!こいつ右も左も分からない馬鹿なんで!!」
グイッ
バイト君「なんすかなんすか店長なんすか」
店長「いいからお前は黙って帰れ………!死にたくなかったらな………!」
バイト「は、はぁ?なんだよ、調子狂うなぁ……」
少女(あ、危ないとこだった……)
魔王「ワカッタ………」
店長「ふ、ふう……」
バタンッ
勇者「す、すいません!!遅れました!!」
店長「シ、シー!!こっち来て……!!」
勇者「ど、どうしたんです?」
店長「勇者君……!このコンビニの平和、いや、世界の平和は君の手にかかっている……!!」
勇者「いきなりどうしたんですか……」
店長「魔王が現れたんだよ……!!」
勇者「え?魔王が?現世に?まさかぁ……」
店長「じゃああいつはなんだ……!?」
勇者「あいつ?………えっ……………あ、あいつは………!!!………………………………
魔王「ガハハ……モウオワリカ……」
勇者「ハァハァ……あれだけダメージを与えたのに……!!」
魔王「ココマデノコウゲキヲウケタノハ……オマエラガハジメテダ……」
戦士「あ……あいつは不死身だ……俺達が敵う相手じゃ……ない……」
バタリッ
勇者「お、おい!!し、しっかりしろ戦士!!!」
魔法使い「もうあたし……ダメ……魔翌力がもう……」
バタリッ
勇者「なっ!!魔法使いまで!!」
僧侶「わ……私の力も……これまでです……」
バタリッ
勇者「み、みんなあ!!くっそおお……!!」
魔王「コレデオワラセテヤル………」
勇者「俺がやるしか無い……俺がやるしか……!!」
魔王「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…………
勇者「うおおおおおおおおおおおおおおおおお…………
…………
店長「な、魔王だろ!?お前が戦った魔王じゃないのか!?」
勇者「……あ、あいつだ……俺達が戦った魔王だ……!!」
店長「よ、良かった……思い出したんだな!!」
勇者「でもなんであいつがこんなところに!?」
店長「俺も驚いているが魔王がバイトしに来たんだよ……!!」
勇者「ま、魔王がここでバイト!?マジかよ……なんで……うわぁツイてなさ過ぎ……」
店長「さあ、勇者よ、魔王を倒してくれ!!」
勇者「え!?俺が魔王を倒すんすか!?」
店長「おいおい!!お前以外いないだろ!!」
勇者「だ、だって相手魔王ですよ……??」
店長「お前勇者だろ!!面接の時魔王倒すとか言ってたし……!!」
勇者「そうですけど……実際目の前にするとちょっと……」
店長(なんだこいつーーー!!めちゃめちゃ頼り無いーーー!!)
勇者「2500年前も四人でかかっていってやっとだったのに……?」
店長「俺魔王の上で働く自信なんか無いんだよ……!!」
勇者「あの……店長……本当言いづらいんですけど……」
店長「な、なんだ?」
勇者「……俺と魔王シフトずらして貰えませんかね??」
店長(ま、マジかよこいつーー!!)
勇者「魔王とバイトするのに時給700円は割に合わないっていうか……」
店長「駄目だ……!!お前と魔王は一緒に入って貰う……!!そうじゃなきゃ辞めてもらうぞ……!!」
勇者「え~~~………」
勇者「……初めてだ……」
店長「何が……!?」
勇者「何の装備もしないで魔界の生き物と接触するのは初めてです……!!」
店長「えっ?装備?ん~~………じゃあ、ほら、これを使え!!」
サッ
勇者「ほ、ほうきで魔王を倒せる訳無いじゃないですか……!!」
店長「魔王を倒せるものなんてコンビニに置いてる訳が無いだろ……!!」
勇者「まあそうですけど……」
店長「じゃあこれを装備していけ……!!」
サッ
勇者「……コンビニの制服じゃないすか……」
ウィ~ン
少女「ありがとうございました~、また起こし下さいませ~」
魔王「………」
少女「この時間帯はめちゃめちゃ暇なんです」
魔王「ホウ………」
少女「なんか分からないことがあったら何でも聞いて下さいね」
魔王「……イラッシャイマセトハナンダ……」
少女(そ、そこからー!?)
勇者「こんにちわ……」
少女「あ、勇者さん……!!」
魔王「……………………………」
勇者「……………………………」
少女(何この張り詰めた空気…!!)
少女(戦い始めるのかなぁ…!?恐いよう!!)
勇者「……あ、あれ?ま、魔王さんじゃない?久しぶりじゃーん!!」
少女(同級生の再会みたいに喋りかけたーー!!!)
魔王「………」
勇者「魔王もここでバイトしてるの??奇遇じゃーん!!俺もここでバイトすることになったんだー」
魔王「ダレダオマエハ……」
勇者「ほ、ほら、死闘死闘、昔に死闘したじゃーん、忘れちゃったの??」
魔王「……アア……アノオマエカ……」
勇者「あ、あんな激闘したのに忘れたなんて酷ーい」
魔王「……ナゼイキテイル……トックニジュミョウヲムカエテイルハズ……」
勇者「不老不死の魔王の返り血浴びちゃってー、んで俺も不老不死になったみたいなんだよねー」
魔王「ソウダッタノカ……」
勇者「あの時の仲間全員今も生きてるんだよ~??」
魔王「ホウ………」
勇者「い、いやぁ~懐かしいなぁ~」
勇者「今もあれしてるの~??」
魔王「アレトハ……」
勇者「ほらほら、世界征服だよ~」
魔王「……シテルヨウニミエルカ……?」
勇者「見えないけど本当は狙ってるんでしょ??」
魔王「モウキョウミナイワ………」
勇者「そ、そうなんだ、じゃあただ本当にバイトしてるだけかぁ……」
魔王「ソウダ………」
勇者「……………」
少女(か、会話終わっちゃった!何々!?どうなんの!?)
勇者「君、バイトの子?よろしくね」
少女「よ、よろしくお願いします……勇者さんちょっといいですか?」
勇者「え?……何?」
少女「あの……魔王さんを倒したりしないんですか……?」
勇者「……君もか」
少女「君も?」
勇者「店長もだけど勇者だからって魔王を倒すという先入観やめてくれないかな……」
少女「え?でも昔戦ったんですよね?」
勇者「……あれは魔王が世界征服していたからで……」
少女「勝ったんですか?」
勇者「えっ?」
勇者「ええ……いやぁ……まあ……引き分けかな……」
少女「えっ、引き分けたんですか?」
勇者「いやもうあれは……引き分けという名の勝ちかな……」
少女「え?勝ったんですか?」
勇者「いや……まあ……なんていうか……」
魔王「キコエテルゾ……」
少女「!」
勇者「ッ!!!!!」
魔王「ナゼウソヲツク……」
少女「え?嘘……??」
勇者「あ、あわわぁぁぁ~~~~~………」
魔王「コイツハナ……」
勇者「や、やめろ!!分かった……!!自分で言う……!!」
少女「何です??」
勇者「聞いた後……絶対……ダサいとかショボいとか言わないでくれ…………」
少女「え?は、はい……」
勇者「……実は………………………………………
魔王「コレデオワラセテヤル………」
勇者「俺がやるしか無い……俺がやるしか……!!」
魔王「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
勇者「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ……」
バタッッッッ……!!!
魔王「……!??」
戦士「……ゆ、勇者のやつやられたのか……!?」
魔法使い「……な、何だあの体制は……!?」
僧侶「……いや、やられてはいない……何か呪文のようなものを呟いている………」
勇者「……もぅゃめてくれょぉぉおおおおおお……人間を苦しめなぃでくれょぉぉおおおおお………魔界に帰ってくれょぉぉおお……頼むよおおおぉぉぉぉ……グス……グス……」
勇者「グッス…グッス…いやもうどうでもいい……なんでもいい……頼む……!!」
魔王「オマエニプライドトイウモノハナイノカ……」
勇者「こうするしか無い……こうするしかしかないからこうしている……!!グスッ……」
魔王「コレガニンゲンノダイヒョウダトオモウトナケテクル……」
勇者「グッスグッス……ゲホッ……ゲホッ……」
魔王「アキレハテタワ……」
戦士「ま……魔王の動きが止まったぞ……?」
魔法使い「……も…もしや勇者のやつ自爆する気じゃ……!?」
僧侶「ん!?……ま、魔王の姿が消えたぞ……!?」
スタッ……
勇者「………」
トボ……トボ……
戦士「お、おい勇者……!!魔王に何をしたんだ……!?」
魔法使い「大丈夫?……一体何があったの……!?」
僧侶「おい勇者……勇者の証の紋章が消えているぞ……!?」
勇者「………最強低姿勢魔法を使った……」
戦士「な、なんなんだ最強低姿勢魔法って!?」
魔法使い「魔法使いの私でも聞いたことが無い………」
僧侶「そ、それは紋章と引き換えの魔法なのか!?」
勇者「………」
戦士「何しょぼくれた顔してるんだ!!お前は英雄なんだぞ!?」
勇者「帰るぞ……」
戦士魔法使い僧侶(なんだあの背中の哀愁は………)
……………
………
勇者「その後……村に帰ったら魔王を倒した勇者として飲めや歌えの大歓迎を受けたが……」
勇者「それも数日間しか続かず、ただ俺が魔王に土下座して呆れて人間界から手を引いたという情報が魔界から漏れ……」
勇者「そこから一気に俺は村人から集中砲火を受け家を追い出され村を追い出され山に篭って生活することになった……」
勇者「という訳だ」
少女「………」
勇者「………」
少女「……だ、ださしょぼっ!!!!!!」
勇者「……う、うわああ……ぁああぁ!……こ、こいつ言いやがった……!」
少女「あっ…!」
勇者「言うなって前置きして言うなって言ったのにどっちも言いやがったぁぁあああぁぁ……!」
勇者「そ……それ一番駄目なやつじゃんそれ一番駄目なやつじゃんそれ一番駄目なやつうううあああああああああああああああああああ!!!!!!!」
バカッ!!!
ズコッ!!
少女(で、電子レンジに頭突っ込んだーーー!!!)
勇者「…………………………」
少女「…ゆ、勇者さん?」
勇者「…………………………」
少女「勇者さ~ん?」
勇者「私は今……………レンジ界にいます……………」
少女(頭突っ込んでるだけじゃないか……)
少女「……一生突っ込まれたら困るんですけど……!」
勇者「………」
スッ
バタンッ
勇者「……いや、っていうより」
少女(もう帰って来たーーー!)
勇者「……俺のあの土下座がなかったら今の世界は無い……そして君もいなかったかも知れないのだよ……!?」
少女「は、はあ………」
勇者「あれだけおでこを地面にこすり付け無かったら君もここに存在していなかった………言うなれば俺のおでこが君のお父さんなのだよ」
少女「ちょ、ちょっと言ってる意味分からないんですけど……」
魔王「……ナゼダユウシャ……」
勇者「……え、な、何がだ魔王」
勇者「えっ」
魔王「ユウシャノハドウガカンジナイノニ……」
勇者「ど、鈍感になったんじゃないか魔王……」
魔王「カイタロ……」
勇者「!!?」
少女「えっ?その紋章って自分で描いたんですか……?」
勇者「ま、まさか……」
魔王「ケシテミルガイイ……」
少女「ちょっと、じっとしてて下さい……」
勇者「や、やめろ」
キュキュ
キュキュ
キュキュキュキュ
勇者「や、やめろおおおおおおおおおおおお!!!」
ピカピカ
少女「き、綺麗に消えた……」
勇者「か、描くのに小一時間かかったのにぃぃいいいいいいい……………」
少女「魔王さんの言う通り、ニセモノでした」
魔王「ダロ……ユウカンナハドウヲカンジナカッタ……」
勇者「ど……どうしてくれるんだ……俺のアイディンティティを……」
少女「勇者さん……もう自分を偽るのはやめましょう……」
勇者「これじゃまるでただの不老不死じゃないかぁぁぁああああ!!!」
魔王「ソウダロ……」
勇者「え!?俺ただの不老不死なの!?」
少女「ただのっていうかダメな方の不老不死です」
勇者「え!!?俺ダメな方の不老不死なの……!!?」
ガタンッ
ズコッ!
少女(またレンジ界行ったー!!)
魔王「ゲンジツトウヒカ………」
少女「こんなのが昔世界を救ったなんて信じられない……」
スッ
バタンッ!
勇者「時代が悪い」
少女「じ、時代?」
勇者「勇者を求めない時代が悪い」
少女「は、はあ……」
勇者「そりゃ紋章も消える」
少女「……紋章って何をすれば浮かび上がるんですか?」
勇者「勇者っぽいことをすれば浮かび上がる」
少女「ひ、ひどくアバウトですね……」
勇者「こいつが世界征服してた頃は良かった……」
少女「良かったって言っていいんですか……」
勇者「当時は本当に苦しかったが、今振り返るとそう思う……」
少女「何が良かったんですか??」
勇者「全てがシンプルだった……勇者として産まれて魔物や魔王を倒すだけの日々……単純明快でなんていうか生き生きとしていた……」
少女「………」
勇者「目的に一直線っていうか、悪いやつを倒す、そして人に認められる、分かりやすかった……」
勇者「それに比べて現世は何が悪いのかさえも分からない……一体俺は何を倒せばいい……辛い……辛いんだ……」
少女「勇者さん……」
勇者「なあ魔王……もう一回世界征服してみないか??」
少女「魔王さんを世界征服に誘うなーーー!!」
勇者「俺が生きがいを感じるにはそれしかないんだよ……!」
魔王「……オノレノイキガイヲワシニオシツケルナ……」
勇者「……じゃあ俺は何をしていけばいいんだよ……!」
少女「……今こうやってバイトしてるんだしいいじゃないですか勇者さん」
勇者「え……?そうなの……?本当にそう思う?魔王はどう思う?」
魔王「……コノコガイウナラソウナンダロウ……」
少女「ほら、魔王さんもこう言ってることですし!」
勇者「そ、そうか……」
少女「勇者さんは理想が高すぎるんですよ」
勇者「……魔王はなんでバイトしてるの?」
店長(勇者のやつ一体何をしている……!)
店長(このままいくのか……!?このまま魔王はここでバイトすることになるのか……!?)
魔王「カノジョニプレゼントヲカウタメダ……」
勇者「か、彼女だと……!?」
少女「へ~!魔王さん彼女いるんですか、何買うんですか?」
魔王「シリタイカ……?」
少女「はい!」
魔王「……インディードルゴドルマリンだ……」
店長(インディードルゴドルマリン……!?)
店長(なんだそれは……!?)
店長(調べてみよう……!)
カタカタ
店長「インディー……ドルゴ……ドルマリン……っと」
カタンッ!
店長「……ん!?」
カタカタ
店長「こ、これは……ほ、宝石じゃないか……!!」
カタカタ
店長「し、しかも一番小さいやつで2億5000万!?」
店長(こ……これを買うまで魔王はバイト続けるのか……!?)
店長(か、買うまで何百年ここにいるつもりだよーー!?)
店長「お……終わった………………………………」
魔王「ソ……ソウカ……///」
勇者「彼女…ブツブツ…魔王が…ブツブツ…」
少女「勇者さんは彼女いるんですか?」
勇者「えっ!?」
魔王「イルノカ……?」
勇者「……いないよ……!」
少女「いつからいないんですか?」
勇者「……2519年前から……!!」
少女「えっ……っていうか勇者さん魔王さんと戦った後何してたんですか?」
勇者「…………寝てた……」
少女「寝てたって、どのくらい……?」
勇者「2450年間くらい……」
少女(寝過ぎだろーー!!)
勇者「……りんごの木の下で寝てた……」
少女「そんなに寝れるもんなんですか……?」
勇者「たまに起きて落ちてきたりんごをかじりまた寝てたまに起きてりんごをかじりの繰り返しをしていた……」
少女(だ、駄目人間だーー!!)
勇者「もう食い過ぎてりんごは見たくもない……」
魔王「ホカノヤツラハドウシテル……」
勇者「え?」
魔王「ナカマモフロウフシニナッタンダロウ……」
勇者「ああ……あいつらは……それぞれ生きている……」
少女「仲間達は今何をやってるんですか?」
勇者「……戦士は格闘技のチャンピオンになった後子供に格闘技教えてるらしい」
勇者「あと僧侶はでっかい大学病院の教授になったとか聞いたな……」
少女「………」
ジ~
勇者「な、なんだその目は………」
少女「なんかそうやって並べられると……」
勇者「……ほっ、ほら俺も何かしなきゃいけないじゃないかああああああああああ!!!!!」
勇者「う、うわああああああああああああああああああああああああ」
ガチャッ!
バタンッッ!
勇者「!!?」
少女「……レンジ界にはいかせません……!」
勇者「頼む行かせてくれ……!」
少女「現実を受け止めましょう……!」
勇者「……う、うぐぐぐぐぐぐぁぁぁぁぁああああぁぁ……ッ!!」
ガクンッ……
少女(気絶したーー!!!)
魔王「……シズカニナッタナ……」
少女「そうですね……」
魔王「ソウダロ………」
少女「……そうだろ?」
魔王「ハイッテコヨウトシタオキャクヲ……イシニシテオイタ……」
少女「えっ……」
カチンコチン
ズラ~~~~~~!
少女「い、石になったお客さんが店の前にたくさん……!!」
魔王「ドウダ………」
少女「ど、どうだじゃないですよ魔王さん!!」
魔王「エ………」
少女「お客さんを石にしては絶対に駄目です……!!」
魔王「ナゼダ………」
少女「っていうか基本的に人間を石にしてはいけません覚えてください……!!」
魔王「ソウナノカ………」
ズラ~~~~リ
少女「美術館みたいになってるじゃないですか……!!今すぐ治してください……!!」
魔王「ワ……ワカッタ……」
ジュルルンド~ン!
少女「ひゃ~、魔法が溶けたお客さんでいっぱいになった~」
魔王「ダカライシニシテオケバイイモノヲ……」
少女「それは駄目です……!!」
お客1「あら、なんでこんなに込んでるのかしらねぇ」
お客2「昼時じゃないのになんでだろうねぇ、何かあるの?店員さん」
少女「さ、さあなんででしょうねぇ、ははは、はは」
ピッ
ピッ
少女「合計で560円になりま~す!」
魔王「ギョウレツガデキテルゾ……」
少女「魔王さんのせいですよ、本当にもうっ!」
少女「あ~、ダメだ~~~、一人じゃ乗り切れない~~~、店長呼んで来なきゃ~~~」
スクッ
勇者「……任せろ!」
少女「ゆ、勇者さん!!レジ打ちできるんですか!?」
勇者「俺を誰だと思ってるんだ……!!俺はコンビニバイト経験者なのだよ……!!」
少女「た、助かった~」
サッ
勇者「二番目でお待ちのお客様こちらへどうぞ~!!」
ガヤ ガヤ ガヤ ガヤ
魔王(グヌヌ………)
少女「ふう、なんとかなりましたね」
勇者「やってやったぜ……!」
少女「初めて勇者さんが頼もしく見えましたっ」
勇者「初めては余計だぞ……」
少女「……あれ?魔王さんは?」
魔王「……ワシハイマデンシレンジカイニイル……」
少女(魔王さんがレンジ界行ってるーーー!!)
魔王「グヌヌ……」
少女「ど、どうしたんですか魔王さん!!」
スッ
バタンッ
魔王「……マケタ」
少女「えっ?」
魔王「ワシハユウシャニマケタ……」
魔王「アア………」
少女「そんなの魔王さんはやったこと無いんだからしょうがないじゃないですか……」
魔王「イカナルトキデモマオウハマケテハナラナイ……!!」
少女「れ、レジ打ちに勝ちも負けも無いですよ……ちょっと勇者さんからもなんか言ってくださいよ」
勇者「………次があるさ、魔王っ!!」
少女(それ勝者のコメントーーー!!)
魔王「グヌヌヌヌ……ユウシャメェェェェェ……!!」
勇者「き……気持ち良い~~~~~!!」
少女「ちょ、ちょっと……仲良くしてくださいよ……二人とも」
少女「ゆっくり覚えて行きましょうよ、魔王さん」
魔王「ソンナユウヨハナイ……!」
ジュルルンド~ン!
少女「えっ」
魔王「………」
少女「ま、魔王さん今何したんですか!?」
魔王「……ジカンヲトメタ………」
ピタッ
勇者「………」
少女「ほ、本当だ!勇者さんピクリとも動かない……!」
魔王「ガハハ……」
少女「なんで時間なんか止めたんですか……!?」
勇者「………」
少女「ま、まさか、時間が止まってる間に勇者さんを……!!!」
少女「じゃ、じゃあ……!」
魔王「……レジウチヲオシエテクレ……」
少女「レジ打ちをうちに教わる為にわざわざ時間を止めたんですか……!?」
魔王「ソウダ……」
勇者「………」
少女「そ、そういえばあたしは動けますしね……」
魔王「タノム……レジノスベテヲ……オシエテクレ……」
少女「は、はい!」
…………
ジュルルンド~ン!
勇者「優った……俺は魔王より優った……」
ウィ~ン
少女「いらっしゃいませ~」
コトンッ
パラッ
おじさん「缶コーヒー一つで悪いけど、一万円からお願い」
少女(魔王さん……!)
魔王「………」
カタッッン!カタッッ!カタッッ!カタタッッッ!
ダゴーン!!
ペラペラペペペペラペラペラッ!!
ジャンジャラジャラジャラジャラ!!
勇者「!!!!??」
少女(ゆ、指先が見えない!!)
魔王「……9880エンノオカエシデス……」
おじさん「こ……こりゃおったまげた……」
魔王「ショニチダ……」
おじさん「な、なんだって!?この腕で初日……!?」
魔王「アア………」
おじさん「……君みたいな天才をこんなところで腐らせておくのはもったいない」
魔王「………?」
おじさん「実は私はスーパーを経営してるんだが、うちに来ないか?」
少女(スカウトされたーーー!!!)
魔王「………ワルイガコトワル………」
おじさん「………何かこのコンビニにすがりつく理由があるのか?」
魔王「………」
おじさん「無理強いはしない……、だが、いいか?レジは一つじゃない……それだけは覚えておけ」
魔王「…………」
おじさん「お嬢ちゃん、トイレ借りるよ」
少女「は、はい……」
少女「や、やったじゃないですか!魔王さん!」
魔王「ナンノコレシキ………」
勇者「あわわわわわわわわわわ……!!」
少女(そ、そうだ、こいつがいたんだったーー!!)
勇者「な、な、な、なななんかしたろ……!?なんか魔法を使ったんだろ!?」
魔王「ジカンヲトメテレンシュウシタダケダ………」
少女「そうです、全ては魔王さんの努力です」
勇者「どのくらい時間を止めたんだよ………!?」
魔王「シドウイチジカン……ジシュレンシチジカン……ケイハチジカン………」
勇者「止めすぎだろーーー!!!!」
勇者「っは、っていうかあんなの別にすごくねぇし……!」
魔王「マケオシミカ……」
勇者「いや、負け惜しみとかじゃなくてマジで、さっきのただボタン押すのが早かっただけだし……!!」
魔王「ホウ………」
勇者「レジ打ちってのは総合点なんだよ……!!そうだよなあ小娘……!?」
少女「こ、小娘!?………う~ん……正直……そこまでレジ打ちについて考えたこと無かったですけど……」
勇者「なんだ素人のガキか……」
少女「し、素人のガキ!?」
勇者「お前は自分でレジを打っているつもりだろうが……実際はレジを打っていない……」
少女「え?私レジを打ってないんですか……?」
勇者「お前はレジに打たされてるだけだ………」
少女「打たされてるだけ……!?」
少女「な、何言ってるんですか、レジ打ちごときで……」
勇者「ごとき……!?」
少女「ご、ごときでしょ……」
勇者「お前……死ぬな」
少女「えっ……」
勇者「レジに殺される……」
少女「あ、あたしレジに殺されるの!?」
勇者「お前にとってレジとはなんだ……??」
少女「……え……レジです……」
勇者「レジはレジか……一理あるな……」
少女(え!?十理じゃないの!?)
少女「あたしはレジの核心をついていない……?」
勇者「レジを見ようとし過ぎてレジから遠ざかっている……」
魔王「……レジノスベテヲシッテルヨウナクチブリダナ……」
勇者「まあな……俺は前のコンビニでこう呼ばれていた……」
少女「な、なんて??」
勇者「レジに一番近い男……」
少女「レジに一番近い男……???」
勇者「………」
少女(ど、どういうこと!??)
勇者「レジ談義もこれくらいにするか……つい熱くなっちまった……」
魔王「………」
勇者「これ以上続けると……、この中の誰かがこの店を辞めざる終えなくなる……」
少女(えっ!?そんなに危険なものなのレジ談義ってっ!?)
勇者「この声は………??」
スタスタ……
おじさん「……いやぁ、話は聞かせてもらったよ」
少女「さっきのスーパー経営者さん……!」
おじさん「ここのトイレの便座は熱い熱いと思っていたが間違いだったようだ……」
魔王「………」
勇者「………」
おじさん「熱いのは君達だったようだね……」
店長「ヒック……ヒック……なんだ……聞き覚えのある声が……」
少女「て、店長!!……酔ってるんですか!?」
店長「魔王と勇者が働いているコンビニの店長だというのに……飲まずにはいられないだろう……ヒック……」
おじさん「君が店長か?」
店長「……あ、あなたは!!」
店長「知ってるも何も、この方は……」
おじさん「…………」
店長「東日本スーパー協会会長様じゃないか……!!」
少女「すごい人なんですか??」
店長「東日本のスーパーの8割はこの人によって生み出されると言っても過言では無い……!」
少女「すごい人なんだ……」
おじさん「………仕事中に飲むとは君も大した男じゃないか」
店長「す、すいませんんんん……これは……」
おじさん「君は酒じゃない、この二人に酔っている……違うか??」
魔王「………」
勇者「………」
店長「そ、その通りでございます……!!」
店長「は、始めるってまさか……!!!!!」
おじさん「レジバトルを……!!!」
店長「レ、レジバトルをこのコンビニで……!!!?」
ジョジョワ~~~……
おじさん「おお……店長がウレションしてしまったようだ……」
店長「ま、まさかうちの店でレジバトルが行われる日が来るとは……!!」
ガクガク……
少女「れ、レジバトルって何!?」
店長「知らなくても無理は無い……何故なら今まで地球上で五度しか開かれていない伝説のバトルなのだから……!!」
おじさん「……早く始めたくてうずうずしているんだ……簡潔にルール説明を済ますよ」
少女「……お、思ったよりシンプルなルールですね」
店長「違う……ここからだ……!!」
おじさん「……ただその一時間はここのコンビニから半径5㎞以内にあるコンビニ、スーパー、デパート、飲食店、本屋、雑貨屋まで……ありとあらゆるレジが置いてある店の営業を完全停止させるッッッ!!!」
少女「……えっ!?そんなことができるのっ!?」
店長「言ったろ……スーパー界のドンなんだ……それくらい朝飯前さ……!!」
おじさん「そこのお嬢さん……」
少女「は、はい」
おじさん「そんなことをしたらどうなるか……分かる??」
少女「……えっと……このコンビニがすごい混みます!!」
おじさん「……違うな……、ここのレジが本当の意味でレジになるんだよ……」
少女(……ダメだあたしレジ関係の質問いつも外す……!!)
少女「それは……??」
おじさん「このレジバトルの敗者はレジ業界から足を洗ってもらう!!!!!」
少女「えっ、負けたらやめなきゃいけないの!?」
魔王「………」
勇者「………」
店長「お、おい!会長さんがご説明なさっているんだ!!何か言え!!」
おじさん「その必要は無い……、この二人は既にレジバトルに備え集中を高めている……」
店長「そ、そうなのかっ!?」
魔王「コンカイハマケテモドゲザスルナヨ………」
勇者「守るものが無いのに何故土下座をしなければならない………」
少女「や、やる気満々だぁ!!!」
スッ
店長「あ、あれはレジバトルボタン……!!」
少女「レジバトルボタンってなんですか……!?」
店長「レジバトルボタンとは、レジが置いてある店にレジバトルを知らせる為の警報を鳴らすボタンだ……!!」
少女「つまり……!?」
店長「あのボタンを押した瞬間……」
少女「レジバトルがスタート……!?」
おじさん「ククク………レジバトルスタート……!!」
ポチッ……!!
店長「は、始まったあああああああああああああ」
プォォーン!プォォーン!
店員「ん!?な、なんだこの音は」
お客「何なのこれ!?火災なの!?」
主任「……この警報は……まさか……」
レジ~がレジである為に~♪ 打ち~続けなきゃならない~♪
主任「あの警報の後のこの歌……間違いない!!!」
お客「逃げた方がいいの!?ねぇ、店員さん!!」
タタタタタタタタ
主任「マイクを貸せ!!」
受付嬢「は、はい!!」
主任『お客様の皆様にご連絡致します!!只今流れた警報は火災や事故の警報ではありません!!落ち着いてください!!レジバトルです!!レジバトルの警報です!!レジバトルというのは……
プォォーン!プォォーン!
板前「た、大将…、この警報は??」
大将「……………」
兄貴「大将、まずわコハダを貰おうか」
大将「………今日は何も言わずお引き取りになってください……」
兄貴「なんだと、どういうことだ……?」
舎弟「兄貴はまだ一貫も口にしてないじゃなねぇか!!舐めてんのか!!」
レジ~がレジである為に~♪ 打ち~続けなきゃならない~♪
大将「お引き取りください……!」
舎弟「て、てめぇあんま舐めてっと……!!」
兄貴「やめろ!……この大将の目を見ろ」
舎弟「えっ…!兄貴……」
大将「………」
兄貴「これは相当深い理由があるんだ……」
プォォーン!プォォーン!
婆「じ、爺さんや……これは……」
爺「まさか生きてるうちに再度……この警報が聞けるとは……!!」
レジ~がレジである為に~♪ 打ち~続けなきゃならない~♪
パン パン
婆「……ありがたやありがたや……爺さん……この音楽を冥土の土産に持っていきましょう……」
爺「また人間以外の生物同士のバトルなんじゃろか……」
婆「……人間同士でレジバトルが成立すると思いますか爺さん」
爺「それもそうじゃが……」
少女「何この静けさ……気味が悪い……」
店長「さあ、俺達は事務室に避難して防犯カメラで観戦するぞ……」
少女「え?店長ここは危ないの……?」
店長「レジバトルを店舗内で観戦するつもりか……!?」
少女「……レジバトルがどれだけのものかまだ知らなくて……」
店長「とりあえず一緒に事務室に来い……!!」
少女「あ、あのスーパーの会長さんは避難しないで大丈夫なんですか??」
おじさん「…………」
店長「レジバトルの立ち合い人を避難させてどうする……!」
少女「じゃあ会長さんはずっとここに……」
魔王「……マカイニハナイモノヲカンジル……」
勇者「そうだろ……辞めるなら今だぞ……」
魔王「バカイエ……」
勇者「相手が人間だからって魔法は使わないなんていう縛りはして無いよな……?」
魔王「……ソンナコトヲシタラツブサレルコトクライワカル……」
勇者「そうか……」
魔王「ソンザイスベテデイドム………」
勇者「そうこなくっちゃ………」
おじさん(ほほう……まだ喋る余裕があるとは……こいつら……ならば……!)
ガチャガチャ……
ギギギィィィ………
バタンッ……!
店長「これでよし……!」
少女「こんな重い扉ありましたっけ……!?」
店長「比較的できて新しいコンビニには、レジバトルに備えてこんな二重扉が設置されているんだ」
少女「そ、そうだったんですか……、店長なんだかあたし恐くなってきました……」
店長「あとは……」
ガラッ!
店長「これ、付けろ」
ガコッ…
少女「きゃ、何これ!?……ガスマスク!?」
ガコッ…
店長「俺も着けてっと……これで観戦準備OK」
少女(れ、レジバトルってなんなんだー!?)
店長「頼む~~、防犯カメラ~~、壊れるなよ~~」
魔王「………」
勇者「おい……どうした……怖じけづいたか?」
魔王「ワシハムクチナンダ………」
ズズズンッッッ……!!
勇者「う”っ…!?」
魔王「グクッ…!?」
キリ……キリ……
おじさん(ククク………)
店長「ん…!?なんだ!?」
少女「どうしたんです店長!」
店長「二人の様子が明らかにおかしい……!?」
少女「確かに苦しそうですね……」
店長「……か、会長……!会長の手の動きが……!」
少女「手の動き……?」
店長「あ、あれはレジバトルメモリを操作してる動き……!!」
少女「レジバトルメモリってなんですか!?」
店長「レジバトルボタンの側面に搭載されているレジバトルメモリだ……!!」
少女「だから何のメモリなんですか店長!!」
店長「レジバトルの営業停止5㎞の範囲を縮めたり……伸ばしたりするメモリのことだよ!!」
少女「やっぱり……伸ばしたらまずいんですか!?」
店長「レジバトル中のレジメモリを動かすこと自体ありえない事なんだ……!!」
魔王「グヌヌ……ドウナッテイル……!」
勇者「とにかくレジバトルに何かしらの変化が……!!」
魔王「グヌヌヌヌヌヌヌ……!!」
勇者「同じコンビニ内にいるのに会長余裕で笑ってやがる……!」
おじさん「ククク……」
魔王「アイツハナニモノダ……!!」
勇者「……!?……よし……キタ……!!」
カタッ…!カタッ…!
おじさん(ほう先手は勇者か…………)
勇者「分かる……!分かるぞ……!」
少女「勇者がお客さんもいないのにレジを打ち始めた……!!」
店長「もしもし……ああ……そうか……分かった……」
ガチャ
店長「ふう……」
少女「店長、どこに電話したんですか!?」
店長「7㎞先のコンビニでは警報は鳴っていたが、8㎞先のコンビニでは警報は鳴っていなかった……」
少女「つまり会長さんはレジバトルメモリで営業停止範囲を半径5㎞から7㎞まで広げた訳ですね??」
店長「そういうことだ……、会長がこれまでにないくらい熱くなってらっしゃる……!!」
少女「店長、質問があります!!」
店長「なんだ?」
店長「どれどれ……ああ……これはコンビニに集まる購買欲を先に読み取って何を購入するか察知しレジを打ち始めているんだ」
少女「購買欲だけで何買うか分かるもんなんですか……?」
店長「優秀なレジリストならな……」
少女「レジリスト……?店長は分かりますか??」
店長「いいや、俺なんて今レジの前に行ったら立ってるだけで内蔵ぐちゃぐちゃになるよ」
少女「な、内蔵ぐちゃぐちゃ……!?なんでぐちゃぐちゃになるんですか!?」
店長「おっと……魔王の方にも動きがあったみたいだな……」
少女(ダメだ……夢中になってる……)
魔王「…………」
おじさん(ほ~う……魔王の方はそちらの作戦でいくのか……かけに出たな……)
カタッ…!カタッ…!
勇者「ぐっ……指が……!!」
おじさん(そうだ勇者……先の読み過ぎは体力を消耗するだけに過ぎん……)
ウィ~ン
勇者「自動ドアが開いた……!!」
魔王「クルノカ……!?」
おじさん(さあ……ここからが本番だ……!!)
少女「店長、魔王さんは何をしているんですか??」
店長「魔王は購買欲から何を買うかを読み取り、商品を自ら取りに行っているんだ」
少女「先に持って来てお客さんに渡すということですねっ」
店長「ああ、でもそれもお客さんとの意思疎通ができて無いと、お客さんが商品を取りに行ってしまうというすれ違いが生じる危険性のある両刃の剣さ」
少女「そのリスクを背負って魔王さんは準備しているのか……」
店長「まあでもお客さんの入店前の二人のこの行動は気休め程度にしかならないけどな……」
少女「気休め??」
店長「まあ見ていれば分か……自動ドアが開いた……!?来るぞ……!!」
少女「何が来るんですか!?」
店長「客が……!!」
ズ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨!!!
ズ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ド!!!
ドカドカドカドカドカ!!!
ギュウギュウギュウギュウ!!!
勇者(!!……だいた予想はしていたが……これほどの客の密度とは……!!)
魔王(グヌヌ……!!ミウゴキガトレン……!!)
ギッシリ………!!
おじさん(ククク……これが7㎞の密度……!!!)
おじさん(さあ、見せてみるがいい……!お前達のレジレジェンドを……!!)
ギッシリ…!
少女「きゃ~~~!!何このお客さんの数~~~!!すし詰め状態~~~!!」
店長「半径7㎞のレジバトルの入店映像を見るのは始めてだ……!!」
少女「ものすごい勢いでお客さんが入ってきましたね……!!」
店長「ああ、ただ棚にお客さんが激しくぶつかったりしてないだろ!?」
少女「確かに……それはなんでです!?」
店長「あれは購買欲をレジが読み取り入店客数を自動計算し、店舗内の重力を調整して激しい衝動が起こらないようにしているんだ……!つまり重力のクッションをレジが作っているんだよ……!」
少女「れ、レジってそんなことができたんですか……!!」
店長「レジバトルで怪我人はご法度さ……!!」
少女「な、なるほど……!!」
店長「その通り、レジバトル中にまともにレジなんか打てないんだ……!!レジバトル中レジに一回も触れずに一時間経った人もいるくらいなんだ……!!」
少女「レジバトルって……まともにレジに触れ無いんですか……!!」
店長「会計し終わったお客さんをいちいち外に出さなきゃいけないし、お客さんの順番も守らなきゃならないんだ」
少女「え!?こんなにごちゃごちゃなのにお客さんの順番があるんですか!?」
店長「どう見ても折り重なってるようにしか見えないだろ……??」
少女「は、はい……」
店長「これでも本人達は並んでるつもりなんだ……!!」
魔王「チョウドオアズカリイタシマス……」
カタッ!カタッ!
勇者「380円のお返しになります!!」
魔王「デクチマデイッショニイキマショウ……」
勇者「次は誰だ次は!!」
「はいはいわたしよ~」
魔王「ソコカラウエヲメザセバソトニデレマス……」
ピッ
勇者「240円になります!」
ギュウ!ギュウ!ギュウギュウ!ギュウギュウ!
おじさん(こやつら……!!こやつら……!!)
店長「す、すごい……!!」
少女「何がすごいんですか!?」
店長「レジバトル中にお客さんが店から入る流れと店から出る流れがちゃんと出来ている……!!」
少女「本来できないものなんですか……!?」
店長「本来ならお客さんが入る流ればっかりで出るのはまばらなんだ……!!」
少女「そうなんですか!!」
店長「もしかしたら無意識のうちに魔王と勇者が協力しあって、入と出のお客さんの流れを作り出しているのかも知れない……!!」
少女「バトルなのに協力してるんだ……!!」
店長「こいつらはもう既にレジバトルの向こう側に到達している……!!」
少女「レジバトルの……向こう側……!?」
ギュウギュウギュウ!!
勇者(何故だ……こんなすし詰め状態でも魔王の場所を把握できる……)
魔王(マサカコレホドマデユウシャト…………)
勇者(これは一人でも多くのお客さんをレジで打ち溶かしたいという気持ちが……)
魔王(シンクロスルトハ……)
勇者(分離することなく融合している……!!これはまるで……)
魔王(コレデマルデ……)
勇者魔王(コンビニ全体ガ一ツノ生キ物……!!)
ギュウギュウギュウ!!
ギュウギュウギュウ!!
おじさん(くぅ~!!!……こうなったら……こうなったら……!!)
キリ……キリ……
店長「こ、こんなレジバトル見たこと無い……!!」
少女「すごい、どんどんお客さんが商品を持って店の外へ出て行く……!」
店長「でもこれはまずいな……」
少女「どうしてです……!?」
店長「レジバトルというのはもちろん、レジ打ち能力の向上、そして男と男のレジ打ちの熱い戦いという意味を持ってるんだけど……」
少女「だけど……??」
店長「……レジに自信を持った若者がレジによって敗れる姿を会長が楽しみたいという側面も持ってることも確かなんだ……」
少女「じゃあこのまま勇者と魔王が協力していたら……」
店長「会長が暴走するかも知れない……!!」
店長「ん!?防犯カメラの……映像が乱れている……!!」
少女「これは……!?」
店長「もしかしたら……そのくらい重力も乱れてるのかも知れない……!!」
少女「じゃあ会長がレジバトルメモリを……」
店長「ま、まさか……!!」
プルルルルプルルルル……
店長「もしも……し…………」
ガチャ
少女「どうしたんですか店長……!!?」
店長「12㎞先のコンビニの………電話の奥で………警報が鳴っていた………!!!」
少女「えっ!!」
店長「……こんなのレジバトルじゃない!!ただの殺人ゲームだ!!」
少女「ひ、人が死ぬんですか……!?」
店長「レジバトル協会で半径10㎞以上のレジバトルは命の保障はされていない!!!」
少女「な、なんですってー!!」
ザザザザザー!!!
店長「ち、ちくしょう…!!映像が完全に途切れやがった…!!」
少女「じゃ、じゃあ中の人達はどうなったの!?」
店長「集中した購買欲と重力で……くっ……!!」
少女「え……?嘘でしょ……?」
店長「……俺達もここにいては危ない……!!窓から脱出しよう!!」
少女「そんな……!!」
ガラッ
店長「……!??あ、あれは……」
少女「ど、どうしたんですか!?」
店長「これは幻覚か……!?……空に……空に……赤い目をした竜が飛んでいる……!!」
少女「りゅ、竜!?どこですか!?見せて下さい……!!」
店長「な、な!?竜だろ……!?」
少女「あれは竜ではありません!!!」
店長「じゃ、じゃあなんなんだ!?」
少女「あれは、レジバトルのお客さんが連なっているんです……!!」
店長「なんだって!?」
少女「そしてその先頭には勇者……額に赤い紋章を浮かばせた勇者です!!!」
店長「竜の目だと思っていたのが、勇者の紋章……!?」
少女「そして勇者は左手には魔王を、右手には会長をしっかりつかんでいます!!!」
魔王「マサカオマエニタスケテモラウコトニナルトハ……」
勇者「………」
おじさん「……何故全ての元凶の私まで救ってくれたんじゃ……」
勇者「分からない……」
勇者「ただ一つ理由を挙げるとすれば……」
勇者「俺が勇者だったからかな……」
おじさん「私はまだレジバトルを扱える器じゃなかったようじゃ、しばらく封印するよ」
勇者「ああ、その方がいい」
少女「勇者さん!紋章浮かび上がりましたね!!」
店長「これが本物の勇者の紋章か……!!」
魔王「ユウシャラシクナッタナ……」
勇者「そうか?ははは、嬉しいな」
トボ…トボ…
少女「勇者さん!どこに行くんですか?」
勇者「どこってコンビニ戻って退勤押しに行くんだよ、もう就業時間過ぎたからな」
少女「あ、あたしも押しに行きます!!」
魔王「ワシモイコウ」
勇者「じゃあみんなで行くか~」
-END-
一乙。面白かったよ。
なんかパタリロ的なノリだね
乙
乙
エピローグが欲しいと思ったけど野暮だな
ここで我慢できなくなった
乙
引用元: 店長「勇者君だっけ?じゃあ面接始めるね」