騎士長「王宮をクビになってしまった」

541: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:31:57 ID:juTY4ytY
王子「俺は王子…。王都の先代の王の息子さ…」ハハ…

 

騎士長「な…何だって…!?」

王子「あら…信じてない声だねぇ」

騎士長「し、信じられるわけないだろう。何でここに王子がいる!?」

騎士長「いや、そもそも先代に息子がいたなんて!」

騎士長「うっ…!ごほごほっ!!」

王子「そう声を上げたらアカンでしょ…。あんた、傷がひどいんじゃないの?」

騎士長「声を上げずにどうしろと…!」

王子「はは…確かにそうだ。驚かないほうが不思議だものなぁ…」

騎士長「…俺は元、王都騎士団の騎士長だ。この槍を見てくれ」チャキッ

王子「薄暗くて見えねぇよ…。というか…王都の騎士だと…?」

542: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:32:45 ID:juTY4ytY
騎士長「元、だ。今は…わけあって…奴隷解放やら…、義賊的な位置にいる」

 

王子「…」

騎士長「上の奴隷狩りの商人は…倒した。だから死に掛けてるんだよ…」フラフラ

王子「…」

騎士長「信じてくれ…」

王子「まぁ…信じるよ…」

543: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:33:28 ID:juTY4ytY
騎士長「ありがとう。聞きたいのだが…なぜ王子のお前がここにいるんだ…?」ゴホッ!!

 

王子「話をしてもいいが、その前にお前…死んじゃうんじゃないの…?」

王子「それと…俺はまだしも、こんな状態の俺を王子と信じるなんてねぇ」

騎士長「…俺はお前が王子だと信じて話を聞く。俺を王都の犬ではないと信じてくれたし…」

騎士長「それに今は疑う以上に、あんたがココにいるツジツマが合いそうだから信じるっ…」ゴホゴホ

王子「仕方ねぇっなぁ…ちょっとこい…」

騎士長「ん…」

王子「…」ボソボソ

…パァァ!!

騎士長「!」

544: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:34:09 ID:juTY4ytY
王子「ちょっとしたヒーリングよ。血を止めるだけだからな…」

 

騎士長「ち、血が…。助かる!」

王子「さて…んじゃ、何から話をしたものか」

騎士長「待ってくれ。その前に、お前の鎖を外したい」

王子「はっはっは…いいよ。そんな力出したら、血を噴出して…お前が死んじゃうよ」

騎士長「いやしかし…」

王子「そのヒーリングは一時的なもの。いいから黙って話を聞け」

王子「どうせ…俺はもうすぐ死ぬ…。その前に、お前との出会いも運命だと…思う…」

騎士長「だ、だが…!」

545: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:35:50 ID:juTY4ytY
王子「…」

 

騎士長「…っ」

王子「頼む。聞いてくれ。最期の話くらい、俺にさせてくれないか」

騎士長「…」

騎士長「…わかった」

…ストンッ

王子「礼を言う。まず何から話すか…。お前は今の王を知っているかい?」

騎士長「あぁ…酷い王様だと有名だからな」

王子「そうだな。しかし、先代に息子がいたのは知らなかったようだな。まぁ俺なんだが…」

騎士長「…そうだ。俺は聞いたことがないぞ。どういうことなんだ?」

王子「まぁまぁ…落ち着いて聞きなさいよ…」

546: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:37:41 ID:juTY4ytY
騎士長「…あ、あぁ」

 

王子「先代が亡くなった後、俺は今の王と覇権の争いをすることになった」

王子「当然、先代を慕っていた面子は俺に付いた」

騎士長「当たり前だな」

王子「しかしな…。ヤツは、裏の顔を持っていた」

王子「裏社会とでも言おうか。ソレを取り仕切る、いうなれば裏社会の王のような奴だった」

騎士長「…」

王子「その顔を使い、買収…脅し…何でもやったそうだ」

王子「気が付けば俺は一人になっていた。今の幹部らは命を捨ててまで、俺に着く道理はないと思ったんだろう」

王子「そして、当代は俺を殺そうと目論んだ。だが俺は、命を取られまいと…逃げたんだ」

騎士長「どこへだ?」

547: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:38:13 ID:juTY4ytY
王子「…”砂漠地方”」

 

騎士長「!」

王子「丁度、政府が新政策で奴隷禁止だの…村や街作りの発展のために人手を募集していた」

騎士長「…」

王子「そこで、砂漠地方の地方…。そこで自分の居場所を作ろうと考えた」

王子「まず何をすべきか。俺は、新政策に逆らっていた賊共に連れられた、奴隷馬車を襲った」

騎士長「…奴隷馬車を?」

王子「そう。そして…それを繰り返し。やがて俺は一つの村を作ったんだ」

王子「元奴隷達による、”俺の居場所”さ」

王子「俺を慕ってくれたそいつらは、俺の本当の姿を知っても迎え入れてくれた。嬉しかった」

548: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:39:01 ID:juTY4ytY
騎士長「…」

 

王子「まぁ、オープンじゃない村だなんても他の面子に言われたりしてたがねぇ」ハハハ

騎士長「…えっ!?」ガタッ

王子「ん?」

騎士長「ま、待ってくれ。オープンじゃない村…だと?」

王子「うむ、そうだが」

騎士長「…まさか、砂漠地方村か!?」

王子「なんでその名前を?」

騎士長「…っ!!」

549: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:39:44 ID:juTY4ytY
王子「…?」

 

騎士長「し…知っているか?その村は…今…」

王子「燃やされた…か」

騎士長「!」

王子「…」

騎士長「…あなたも被害者だったのか」

王子「…いや、違う」

騎士長「え?」

550: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:40:20 ID:juTY4ytY
王子「俺が…あの村を奴隷に襲わせた本人だからな」

 

騎士長「!!」

王子「…」

騎士長「な…」

王子「…」

騎士長「何だと…コラァァ!!」バッ!!

551: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:40:58 ID:juTY4ytY
…ボキッ…ブチブチィ!!

 

騎士長「ぐ…がっ…!?」

騎士長「げほっ…!」ベチャッ

王子「あらら…興奮するから折角止めた血が…。一体どうしたんだ?」

騎士長「き、貴様さえいなければ…」ブルブル

王子「…何のことを言っているのか分からないが」

王子「まぁ、それをしたのには、大きな理由があった」

騎士長「言ってみろぉ!!」

552: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:42:02 ID:juTY4ytY
王子「…村の民を守るためだ」

 

騎士長「…んだと!?」

王子「俺を王子と分かった上で、受け入れてくれた民」 

王子「だが、俺を追って王都の軍が調べていることがわかった」

騎士長「…」

王子「それから村人を逃す為に、一度…奴隷狩に頼み…売ってもらおうとしたのだ」

騎士長「その村の、トラウマを掘り起こしても…危険な道を選んでもか!?」

王子「…死罪になるよりはマシだろう」

騎士長「何だと…?」

553: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:42:58 ID:juTY4ytY
王子「仮にも当代の王は闇の王でもある。俺をかくまった民は、捕まれば死罪を免れないだろう」

 

騎士長「だけどなぁ…それはな、死ぬより…ひどい思いをするってことなんだろうがっ!!」

王子「…だから、多額の金を支払って、俺の知っている身内に売ってくれと頼んだんだ」

王子「それならば、奴隷として扱うこともなかったからな…」

騎士長「…だ、だがそれはっ!」

王子「言うな…分かっている。頼んだ商人は既に王都の手下で…裏切られたんだ。俺が愚かだった」

王子「追い詰められ、俺もヤキが回っていた…」

騎士長「…」

554: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:43:32 ID:juTY4ytY

王子「その後…俺は逃げていた所を、再びそいつ…奴隷商人に見つかった」

王子「最初に捕まえなかったのは、どうやら俺の顔を知らなかったからだったようだが…」

王子「結果的に捕まった俺だったが、奴らは俺を王に突き出さずにココへと閉じ込めたのよ」

王子「…俺を突き出せば、奴隷狩の自由と、王からの報酬がなくなるからな」

騎士長「…」

王子「だが、俺はうれしかった」

騎士長「…嬉しかっただと?」

王子「そうだ。こうして、死ぬ道があることが」

騎士長「…っ」

王子「こうして、死ぬ事で、奴隷に売られた…俺が裏切った村人たちも…」

王子「きっと”裏切り者が死んで良かった”って思うだろうしなぁ…」ハハハ

555: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:44:16 ID:juTY4ytY
騎士長「て…てめぇ、何言ってんだ!!」ガシャアン!!

 

王子「…」

騎士長「死ぬことで、村人が喜ぶ?良かったと思う?んなわけないだろうが!!」

王子「…」

騎士長「く…くそ…」

…ゲホッ

騎士長「…!」

騎士長「…ゲホッ!ゲホゲホゲホッ!」

騎士長「あ゛…」フラッ

…ドサッ…

556: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:45:10 ID:juTY4ytY
王子「やれ限界か。まぁ…俺も…限界なんだが…」フラッ

 

…ドサッ

王子「…はは、最後に誰かに話せたことを…嬉しく思うぞ…」

騎士長「ふ…ふざけ…」ググッ

王子「せめて最後に…娘に会いたかったなぁ…」

騎士長「!」

王子「本当にそれだけは…一緒に逃げなくて良かったと思う…」

王子「俺と一緒だったら、こうして捕まっていただろうし…」

王子「今、捕まってなければ…良いのだがな…ふふ…」ゴホゴホ

557: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:46:11 ID:juTY4ytY
騎士長「…く、黒髪…幼女…」

 

王子「…!?」

騎士長「王都出身の村で…裏切り者の親父…。奴隷狩…全部繋がった…ぜ…」

王子「し、知っているのか…俺の娘を…」

騎士長「道理で…当代の王が血眼になって探していたはず…だ…」

騎士長「王家の娘…だったの…か…!!」

王子「…ど、どこにいるんだ?無事なのか…!?」

騎士長「俺が…助け出して…今は…、すぐそこの…エルフの家にいる…」

王子「な…っ」

558: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:47:28 ID:juTY4ytY
騎士長「…ダメだ…眼が…霞む…」クラッ

 

王子「何という日だ…。最後の最後に…娘を…知るとは…!こんな近くに…いるとは…」

騎士長「なら…お前だけでも生きて…。あの子に会ってやれよ…!」

騎士長「俺は、旅に…出た…と…伝えて…く…」

騎士長「れ…」

騎士長「…」ガクッ

王子「…お、おい…!」

騎士長「…」

王子「…騎士長と言ったか。本当に…ご苦労だった…な…」

559: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:48:08 ID:juTY4ytY
…グググッ…ムクッ…

 

王子「だが…俺が延命しても…、どうせ檻を破る力はなく…ココから出れぬ…」

王子「せ、せめて…俺の命と代えても…!」

王子「ヒールッ…!!」パァァッ…

騎士長「…」

騎士長「…」ピクッ

王子「…あとは、全てを頼んだ…」

王子「勝手に…希望にさせてもらうぞ…ははっ…」

王子「それと…これ…を…」ポイッ

…チャリンチャリンッ…!

王子「…」

…ドシャアッ

560: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:48:44 ID:juTY4ytY
騎士長「…」

 

王子「…」

騎士長「…」

王子「…」

…ガチャッ!!…ギィィ…

561: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:49:56 ID:juTY4ytY
ザワッ…ガヤガヤ…

 

「本当にここに…?」

「うん…さっきのお兄ちゃんが…」

カツ…カツ…ピタッ

「…誰か倒れてる!」

「あっ…!!」

…………
………
……

562: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:50:33 ID:juTY4ytY
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

騎士長「…」

騎士長「…ん」モゾッ

騎士長「…む、こ、ここは…」ハッ

アサシン「…気が付いたか」

騎士長「アサシン!?」ガバッ

アサシン「おっと動くな。隣を見てみなよ」

騎士長「隣?」チラッ

563: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:52:09 ID:juTY4ytY
黒髪幼女「…」スヤスヤ

 

騎士長「黒髪幼女…。ここは一体…?」

アサシン「アルフの寝室さ。あんたが担ぎ込まれてきたとき…びっくりしたよ」

アサシン「あんたの傍から離れないで看病するって、そのまま黒髪幼女は寝ちゃったみたいだけどね」

アサシン「数日寝てると思ったけど、運ばれてすぐに目を覚ますとは、凄い気力だ」ハハハ

騎士長「俺が運ばれた…?誰に?」

アサシン「捕まってた奴隷たちさ。裸で来るんだもの…アルフのやつ、目回してたよ」ハッハッハ

騎士長「あいつらが…」

アサシン「彼女らの中にたまたま近くにアルフの小屋を見かけた人がいて、ココへ助けを求めたらしい」

騎士長「…彼女たちは?」

564: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:53:03 ID:juTY4ytY
アサシン「アルフが服や布を渡して、砂漠地方へ戻る道は私が教えた」

 

アサシン「一応、途中までだけど…帰り道は私が着いてった。アラクネが出たら困るからね」

騎士長「そっか…。よかった」

アサシン「私だって良かった。あんた…本当に血だらけで…死んでるのかと…」グスッ

騎士長「…」

アサシン「と、とりあえず良かった。ナイフとかはどうしたんだ?持ってきたんだろう?」

騎士長「あっー!!」

アサシン「だから静かにしろって!」

騎士長「あ、あぁすまん…」ボソボソ

565: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:53:56 ID:juTY4ytY
アサシン「目的のナイフだとかはどうしたんだって話!」ボソボソ

 

騎士長「…ナイフは忘れた」

アサシン「何だって?じゃあ何で傷だらけになってまで…奴隷の解放を?」

騎士長「…少し、話がある」

……

566: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:54:38 ID:juTY4ytY
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

アサシン「…!」

騎士長「信じられないと思うが、その檻の中の王子という話…」

騎士長「これで全てのつじつまが合うんだ。夢物語だが…、信じるしかない」

アサシン「…」

騎士長「そういえば、王子はどうしたんだ?俺は助かったが…」

アサシン「まさか、王子だったなんてね…」タハハ

騎士長「ん?」

アサシン「死んでたってよ…檻の中の人は。あんたを助けた彼女たちの話だ」

567: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:56:06 ID:juTY4ytY
騎士長「!!」

 

アサシン「あんたにヒールがかかってたらしい。命を懸けて助けてくれたんじゃないのか」

騎士長「…っ」

アサシン「それにしても、まさか…黒髪幼女の親父さんが亡くなったなんて…」

騎士長「皮肉にも、これで俺の依頼は一応…」

アサシン「果たした…か。だけどね…」

騎士長「分かってる」

アサシン「…」

騎士長「…」

568: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:57:01 ID:juTY4ytY
騎士長「はぁ、とりあえず水でも飲みに起きてっと…」ガタッ

 

ズズッ…カツーン…チャリンチャリンッ

騎士長「…ん?」

アサシン「なんだ?」

騎士長「なんか俺のポケットから落ちたぞ…」

…キラッ

騎士長「え、何だこれ…ブローチ?」チャリッ

アサシン「…ん~?」

騎士長「俺、こんなの知らないぞ」

569: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:57:49 ID:juTY4ytY
アサシン「…なんか見た事あるような…。ちょっと見せてくれる?」

 

騎士長「うん?ほれ」ポイッ

…パシッ!

アサシン「…」

アサシン「…」

アサシン「…」

アサシン「…あっ!!!」

571: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:58:59 ID:juTY4ytY
騎士長「ど、どうした?」ビクッ

 

アサシン「…どこでこれを!!」

騎士長「だから分からないって!」

アサシン「逃げた奴隷の中に…まさか…?」

騎士長「本当にどうしたんだよ」

アサシン「…私の話、覚えてるか?今までの成り行きとか全部」

騎士長「あ、あぁ覚えてるぞ」

アサシン「…あっ、あぁぁ!!」

騎士長「ん?今度はどうした!」

アサシン「あぁぁ…そ…そういう…こと…」

アサシン「だったのか…」フラッ

572: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 20:59:38 ID:juTY4ytY
騎士長「…危ない!」ダッ

 

…ガバッ!!

アサシン「…」

騎士長「一体どうしたんだ。話が見えてこないぞ!」

騎士長「そのブローチは何なんだ?聞かせてくれ!」

アサシン「…ここじゃ話にくくなった。こっちにきてくれ…」

573: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 21:00:14 ID:juTY4ytY
トコトコトコ…

 

騎士長「…?」

アサシン「…」

騎士長「…」

アサシン「…」

トコトコ…ピタッ…

アサシン「…」

騎士長「ここでいいんだな。一体何だ?」

574: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 21:00:57 ID:juTY4ytY
アサシン「…」スゥゥ

 

アサシン「…はぁ」

騎士長「…」

アサシン「…このブローチはな、元々私のものなんだよ」

騎士長「ん?じゃあ、俺のポケットに間違って入れてたのか?」

アサシン「…違う、そういうことじゃない」

騎士長「ん~?」

アサシン「これはね…、私がかつて愛した男…」

アサシン「前に話をした、私の子と共に別れた夫に渡したものなんだ」

575: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 21:01:41 ID:juTY4ytY
騎士長「…!?」

 

アサシン「…」

騎士長「ま、待てよ。それじゃ…逃げた奴隷の中に男が混じってたってか?」

アサシン「…違う」

騎士長「…?」

アサシン「よく考えてくれ!!」

騎士長「…」

騎士長「…!!」ハッ

騎士長「ま、まさか…」

576: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 21:03:00 ID:juTY4ytY
アサシン「王子が助けていた奴隷の話…」

 

アサシン「母親の知らぬ子…。そしてこのブローチ…」

騎士長「…じょ、冗談だろ?」

アサシン「…」

騎士長「…王子の愛した女はお前だって…ことか…」

アサシン「…」コクン

騎士長「…じゃ…じゃあ…」

アサシン「…っ」

騎士長「お前は…黒髪幼女の…!!」

577: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 21:04:05 ID:juTY4ytY
アサシン「…母親ってことに…なるね…」

 

騎士長「…~~っ!!!」

アサシン「ど、どうしよう…。どうしたらいいんだ…」ブルブル

騎士長「お、俺だってわからねえよ!」

アサシン「…打ち明けるべきなの…だろうか…」

騎士長「ま、待て待て落ち着け。その前に…」

アサシン「…」

騎士長「お前の…愛した男は…。王子は…」

アサシン「…死んだ…ね…」

578: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 21:05:17 ID:juTY4ytY
騎士長「…っ!!」

 

騎士長「…くっ、くそぉぉぉ!!」ゴンゴン!!

アサシン「な、何してるんだ!」

騎士長「こ…こんな事なら…こんな事なら…!」

騎士長「”俺が死ぬべき”だった!!!」

アサシン「!!」

騎士長「俺を助けなければ、黒髪幼女は…幸せを取り戻せたのかもしれないのに!!」

579: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 21:06:28 ID:juTY4ytY
アサシン「…ッ!!」

 

アサシン「ばっ…」ブルッ

騎士長「…?」

アサシン「バカなこと言うなぁぁっっ!!」ブンッ

…パァンッ!!

580: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 21:07:48 ID:juTY4ytY
騎士長「いっ…!」

 

アサシン「に、二度とそんな事いうな!死んでいいなんて…二度と…!」

騎士長「だが俺は…!」

アサシン「過去は過去…そんな事を言うヤツは…嫌いだ!」

騎士長「…っ」

アサシン「黒髪幼女や、私の為に?二度と…そういう事も言うな…!」

騎士長「…」

アサシン「はぁっ、はぁっ…!」

581: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 21:08:40 ID:juTY4ytY
騎士長「…す、すまなかった…」ソッ

 

アサシン「…触るな」パシッ

騎士長「…」

アサシン「今は一人にしてくれ。色々考えたいんだ」

騎士長「…分かった」

アサシン「…」クルッ

タッタッタッタッタッ…バタンッ…

582: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 21:10:12 ID:juTY4ytY
騎士長「…」

 

騎士長「…」

騎士長「…俺の逃げ場は、どこかにないものか」

騎士長「一体俺は…何の為に…」クルッ

トコトコトコ…

騎士長「一人で始めた事。責任は俺。良かれとして思った事も無駄」

騎士長「…中途半端な正義のようなものだから、なのか」

騎士長「…一体俺は、何を言ってるんだろうな。偽善かな…」ハハハ

583: ◆qqtckwRIh. 2014/03/12(水) 21:11:45 ID:juTY4ytY
コトンッ…

 

騎士長「…ん?」

騎士長「何か…音がしたような…。気のせいかね…」

トコ…トコ…トコ…

騎士長「なんか、疲れた…」

…………
………

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