店主「はいよ、オレンジジュースお待ちー」スッ
黒髪幼女「あ…ありがとう…?」
騎士長「んじゃ、黒髪幼女がのんびりしてる間に…ちゃっちゃとやりますかぁ!」ウーン
騎士長「あとで依頼の話…きちんと聞かせろよ?」
黒髪幼女「わ…わかった」
傭兵「…やる気か?お前に得はないんだぞ…素直に子供を渡せ」
騎士長「これでも王宮に仕える平和の騎士!だからね」
店主「元な」ボソッ
騎士長「うるっせ!」
傭兵「お前のような青二才が俺に勝てると思っているのか?」
騎士長「いいから、やってみようぜ。ほらかかってこい」クイクイ
傭兵「おうよ!!」
騎士長「どの道そうなるんだから、早くかかってこいよ」
傭兵「俺の技の前にひれ伏すがいい…どりゃあああっ!!!」クワッ
傭兵「…食らえ!究極奥義、昇天撃ィィィィ!!」グググッ
…ビュオンッ!!!
騎士長「…」ヒュッ
傭兵「へっ?消え…」
…バキィ!!!!
傭兵「…がっ!?」
騎士長「…長い名前の割りに、俺の普通のパンチより遅いのな」
騎士長「これでも騎士なんだけど、お前に武器使うまででもなかったわ」
傭兵「ぬ…が…」
…ドサァッ…ズズゥン…
騎士長「…弱っ!!」
店主「さすがだな」
騎士長「それより、黒髪幼女に美味しいオレンジジュースは出したんだろうな」
店主「いきなりそっちの心配かよ。お前が殴る前に出してただろ」
黒髪幼女「あ…うん、オレンジジュース貰った…」
奴隷商人(話しに夢中になってる今なら…逃げられる…)
…コソッ
黒髪幼女「う、うん…ジュースありがとう…」
騎士長「おう」
店主「まったく、お前は勝手なことばかり…って!後ろ後ろ!」
コソコソコソ…
奴隷商人「!」ビクッ
騎士長「おっとっと、奴隷商人さ~ん…。聞きたい事があるから、ちょっと…来てくれるかな?」ニコッ
奴隷商人「は…はい…」
騎士長「頼んだ。俺はこいつとジックリ話をさせてもらうさ」ギロッ
黒髪幼女「…」
奴隷商人「…はは」
――――――――――――――――
【騎士長「王宮をクビになってしまった」】
――――――――――――――――
Don’t miss it!
ギュッギュ…グイィ…
騎士長「よし、これでお前の自由は奪われたわけだ」
奴隷商人「こんなキツく縛らなくてもいいじゃねえか…」
騎士長「ははは、まぁまぁ。で、聞きたい事がある」
奴隷商人「…」
騎士長「お前…この子の村を襲ったのか?」
黒髪幼女「…」
奴隷商人「…さぁな」プイッ
奴隷商人「うっ…。ちっ、そうだよ…」
騎士長「何故そこを狙ったんだ。砂漠地方は奴隷を禁止したあと、非常に厳しく罰するはずだが」
騎士長「そこまでのメリットがあったっていうのか?」
奴隷商人「…村がだいぶ小さく、比較的地方にあったってのもあるが…」
騎士長「…」
奴隷商人「村人を全員、奴隷として売る代わりに、更に見返りをくれるっつーやつがいたんだよ」
騎士長「…はぁ?」
奴隷商人「更に、別途に報酬もくれるっつーんだよ」ハハハ
騎士長「…そいつは誰だ?」
奴隷商人「さぁな。その村に住んでる様子の男だったぜ」
騎士長「知らないのか?知らないふりをしてるんじゃないのか…」ググッ
奴隷商人「う…ぐっ、本当に知らないんだよ…!」
黒髪幼女「…さん」ボソッ
騎士長「…ん?」
黒髪幼女「それ、私のお父さん。お父さんが、そこの人と話しをしてるの聞いたの」
騎士長「…何?」
黒髪幼女「そのせいで…みんな、仲良かった子もバラバラになった。全部、お父さんのせい!!」
騎士長「ま…待て、落ち着け。な?」
黒髪幼女「…っ」
騎士長「話を整理させてくれ。奴隷商人、お前は村に住んでる男に村人を奴隷として売るようにお願いされたんだな?」
奴隷商人「そうだ」
騎士長「その男は黒髪幼女の父親…そうだな?」
黒髪幼女「…うん」
騎士長「…奴隷商人、お前は…その親父に何故、村人を襲うように言われたか聞いてないのか」
奴隷商人「何も聞いてねえよ。俺らの世界はイエスかノーか…条件がよかったらイエスだけだ」ククク
騎士長「…」
奴隷商人「…ん?」
黒髪幼女「み…みんなを…村に戻してよ!!友達を…返してよぉ!!」
奴隷商人「友達…?あぁ、あのガキどもか。うるさかったからな…仕方ねえだろ」
騎士長「お前…何をしたんだ?」
奴隷商人「俺がやったんじゃねえが、傭兵は子供はあんま好きじゃないらしく…な?」
騎士長「まさか…」
奴隷商人「それといらないと判断した奴らもだ。どうせ奴隷を積む馬車にゃ限界があるからな」
騎士長「…貴様っ!!」グイッ
奴隷商人「ぐっ…!」
騎士長「…こいつの親父はどこにいるんだ」
奴隷商人「さ、さぁな…。襲うまでの手伝いはしてくれたが、あとはそれっきりだ…」
騎士長「貴様には、まだまだ話して貰うことがありそうだな…」ググッ
奴隷商人「うぐっ…、く、苦し…」
コンコン…ガチャッ!!
騎士長「ん?」
ドタドタ…
王宮警備隊「取り込み中のようですが、失礼します!」バッ
王宮警備隊「こちらの店主殿から、族がいると聞いて…伺いました!」ビシッ
奴隷商人「ゴホゴホッ・・・!く、くそっ…」
王宮警備隊「貴様が奴隷商人だな、こっちに来い!」グイッ
奴隷商人「いてて…乱暴にするなよ…」ヘヘ
ドタドタ…ガチャッ…バタンッ…
王宮警備隊「あなたは…騎士長さんでしたか。この度は、ありがとうございます」
騎士長「あぁ。ところで、アイツの身柄はどうなる予定だ?」
王宮警備隊「しばらくは牢に入って貰うでしょうね。その後、砂漠街に引き取って貰います」
騎士長「そうか…奴隷に厳しくなった今、極刑も免れないかもな」
王宮警備隊「かもしれませんね」
王宮警備隊「砂漠街では第一級の犯罪者。とてもじゃありませんが、面会はできないでしょう」
騎士長「…俺は王宮の騎士長だぞ?」
王宮警備隊「…元、ですよね」
騎士長「そ、そうか…」
王宮警備隊「申し訳ありませんが、これで失礼しますね」ビシッ
カツカツカツ…
騎士長「あ、ま、待ってくれ!もう1つだけ話がある」
王宮警備隊「…何ですか」クルッ
黒髪幼女「…」
騎士長「こいつの親父は、今回の騒動の犯人らしいし指名手配もあるかもしれんし…」
騎士長「あと、孤児としても黒髪幼女は成り立つはずだ。どうだ?」
王宮警備隊「…どっちも無理ですね。まだ犯人の目星が立たず証拠がないこと、子供の預かりはしてません」
騎士長「何だと?捜索は仕方ないとするが…、子供の預かりができないって?」
王宮警備隊「そんな施設はありませんよ」
騎士長「バカな事いうなよ!先代の王が立てた孤児院があるはずだろう!?」
王宮警備隊「何年前のことを。今はもう、孤児院はありません。当代が税の無駄だと潰しました」
騎士長「…!」
カツカツカツ…ガチャッ、バタン…
騎士長「な…何てこったい…」
ガチャ…
店主「はぁ~、ただいま!事情聴取されて、時間くっちまった」
店主「見たところ、落ち着いたらしいな。良かった良かった」
店主「ん?」
騎士長「…」チョイチョイ
黒髪幼女「…」
店主「あ~…」
騎士長「孤児院が王国になくなったのは知らなかったぜ。どんだけ腐ってやがるんだ当代は」
店主「…そういう王だからな。黒髪幼女だっけか…、お前、これからどうするんだ?」
黒髪幼女「これから…?」
店主「そうだ。奴隷商人はいないし、移動手段もないだろう?親父もどこか行方不明だ」
店主「…」
騎士長「…」
黒髪幼女「依頼を受ける人がいないなら、他のところへ行く。お父さんは…絶対に許せないから」
騎士長「…お前さ、例えばだが」
騎士長「依頼を受けてくれる人がいたとして、報酬は出せるのか?」
黒髪幼女「…」
黒髪幼女「報酬は…私」
騎士長「!」
店主「…」
黒髪幼女「…それで、お父さんを捕まえてくれる…殺してくれるなら…!」
店主「…おい、騎士長」
騎士長「見過ごせるわけ…ねぇよなぁ…」ハァ
黒髪幼女「…?」
騎士長「おい、わかった。その依頼…俺が受けてやるよ」
黒髪幼女「…本当!?」
騎士長「嘘は言わん。ここでお前を見捨てたら、王宮のエース騎士の名が廃るからな」
店主「元、だけどな」ガハハ
騎士長「うるせええー!」
騎士長「…」
店主「騎士長、頼むからこんな子供に」
騎士長「わかってるよ!!そんな物好きじゃねーから!!」
黒髪幼女「…」
騎士長「黒髪幼女、言うことは1つだ」
黒髪幼女「…」ゴクッ
騎士長「きちんと、俺を信じてついて来い。それだけだ」
黒髪幼女「…え?」
騎士長「これも何かの縁だろう。仕事をやめた日に、仕事が見つかるなんてな」ハハハ
黒髪幼女「…」
黒髪幼女「…」
騎士長「俺を信じてついて来い。俺は…強いからな」ニカッ
黒髪幼女「…!」
店主「…ほれっ」スッ
騎士長「あん?」
店主「俺からのサービスの酒だ。黒髪幼女の依頼を受けたら、砂漠街まで抜けないといけないだろ?」
騎士長「あ~そうだな。かなり遠いもんな」
店主「しばらくこの味も飲めないだろう」
騎士長「ふむ…確かにな。ありがとうよ」
店主「何をこれくらい」
騎士長「さて…まぁ、黒髪幼女。お前の村にまず…案内してくれるか?つらいだろうがな…」
黒髪幼女「…うん」コクン
騎士長「おっしゃ、んじゃ先ずは馬車で港町だ。そこから船に乗って…ちょっとした旅になるなこれは」
黒髪幼女「…お金、あるの?」
騎士長「金なんざ腐るほどある。心配すんな、ハッハッハッハ!」
ワシャワシャ…
黒髪幼女「あう…」
店主「無駄に金は稼いだもんな、元王宮のエース騎士さん」ガハハ
騎士長「いちいち元つけんな!!」
騎士長「あぁん?礼なんていらねえよ、これも縁のある所だっつっただろ」
黒髪幼女「…」
騎士長(…笑顔のない子供…か)
店主「ま…頑張れよ」
騎士長「人ごとだと思って…。さ、行くか黒髪幼女!」クルッ
店主「ん?サービスの酒…いらないのか?」
騎士長「俺が無事に戻ってくるまで、その一杯はとっておいてくれ。きっと最高の味がするだろうからな」
…ガチャッ…バタンッ…
店主「…ふっ」
トコトコトコ…ガヤガヤ…
騎士長「ん~外はいい天気だが…お天道様がもう傾きかけそうだ。なぁ?」
黒髪幼女「…」
騎士長「…」
黒髪幼女「…」
騎士長「…」フゥ
騎士長「…黒髪幼女、旅っつーのは何か楽しむモンも必要だ。何か食べたくないか!?」
黒髪幼女「おなか、空いてない」
黒髪幼女「…」グゥゥ
騎士長「…」
黒髪幼女「…空いてない」
黒髪幼女「…」
黒髪幼女「…」コクン
騎士長「はは、子供は素直が一番可愛いんだぜ?」
黒髪幼女「…」
騎士長(引き受けた以上、本気でやってやるさ。王宮の…騎士長としての責任だ)
店主「元騎士長な」ワハハハハ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
騎士長「うるっせぇぇ!!」
黒髪幼女「!?」ビクッ
騎士長(…く、くそっ!)
…………
………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 レストラン 】
…パクパクパクッ
黒髪幼女「…」ハムハム
騎士長「…」
黒髪幼女「…」モグモグモグ…
騎士長「…」
黒髪幼女「…」ゴクンッ!
黒髪幼女「…」コクン
騎士長「顔ついてるぞ」ゴシゴシ
黒髪幼女「…んっ」
騎士長「よっぽど腹減ってたんだな。奴隷ん時…食べさせて貰えなかったのか?」
黒髪幼女「毎日…、パン、少しだけ」
騎士長「…ひでぇな」
騎士長「…そうか」
黒髪幼女「…」
騎士長「なぁ…、辛いだろうが…どんな状況だったか教えてくれるか?」
黒髪幼女「…何が?」
騎士長「その、襲われた時の状況だとか…色々だ」
黒髪幼女「…わかった」コクン
騎士長「…」
騎士長「…」
黒髪幼女「そしたら、外でお話してる声がして…、窓から覗いたらお父さんとさっきの奴隷商人がいて…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
父親「…手はず通りに頼む」
奴隷商人「くくく、任せてくださいよ」
父親「…手荒なことはしないでくれ。俺はもうここから離れなければならない」
奴隷商人「わかってますぜ。安心して、村を離れてください」ニタニタ
父親「…特に、俺の娘は特に大事にな」
奴隷商人「はいはい」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
騎士長「奴隷商人と、あの傭兵らが襲ってきた…と」
黒髪幼女「…」コクン
騎士長「だが…あいつらは親父との約束は守らず、お前を殴るは殺人はするわ…だったわけか」
黒髪幼女「…」
黒髪幼女「…」グスッ…ポロポロ…
騎士長「…悪かったな、辛いことを。…だが、一つ腑に落ちないことがある」
黒髪幼女「腑に落ちない…って何?」
騎士長「あ~…納得がいかないことがあるって事だ。お前の親父が村を襲わせる理由があったのかってことと…」
黒髪幼女「うん」
黒髪幼女「…」
騎士長(それとも、やっぱり同じ村の民だったし…裏切るのは心が痛かったってことか?)
騎士長(そもそも…売るだけなら親父に金が入るはず。なのに、逆に報酬を払ったって言ってたな…)
騎士長(つーことは、襲わせる理由があったはず。一体…)
黒髪幼女「…!」ハッ
黒髪幼女「…」ジー
騎士長「…ん?」
騎士長「お前…何見てたんだ?」チラッ
“【北の大地の恵みを生かした…チョコレートパフェ!!大好評販売中!】”
黒髪幼女「…」
騎士長「…」
黒髪幼女「…」
騎士長「店員さーん!チョコレートパフェ1つ!」
黒髪幼女「!」
騎士長「遠慮するこたぁねぇ。食いたいなら食えばいい」
黒髪幼女「あ…ありがとう…」
黒髪幼女「…」
騎士長「…あと、風呂入ろうか。砂漠地方に向かう前に…その汚れた服もなんとかしないとな…」
黒髪幼女「…」
騎士長「いまさら時間もたってるわけだし、急いでも無駄だろう。万全に整えたほうがよさそうだ」
黒髪幼女「…」
騎士長「陽も落ちてきたようだし、出発は明日にしよう。今日は俺の家で休んでから出発しようか」
黒髪幼女「騎士長の、おうち?」
騎士長「そうだ。そりゃ俺はこの国に住んでるからな」
黒髪幼女「わかった」
黒髪幼女「私、この服でも…」
騎士長「ボロボロなままはさすがに…な。そのくらい遠慮するな」
黒髪幼女「で、でも…色々…」
騎士長「お前は依頼者。お前の依頼は1つだけ…それ以外は俺に従え!」
騎士長「つーか、好きにしてって言ったのはお前だろ。だったら俺の言うことを聞けばいいんだよ」ハッハッハ
黒髪幼女「で、でもこういうの…いいの?」
騎士長「だから気にするなっつっただろう!…おっ、黒髪幼女…来たぞ!」ビシッ
黒髪幼女「え?」クルッ
店員「お待たせしました、チョコレートパフェです」
…コトン
黒髪幼女「…!」キラッ
騎士長(おっ)
店員「では、ごゆっくり。失礼します」ペコッ
騎士長「お前のもんだ。好きなタイミングで食えばいいよ」ハハハ
黒髪幼女「いただきますっ」
…パクッ
黒髪幼女「…」パァァ
騎士長(どんなに気が強そうに見えても…やっぱり女の子…。子供、だな)
――――【 そして…騎士長の自宅 】
ガチャッ…
黒髪幼女「…お邪魔します」
騎士長「そんな固いこといいさ。それより、服…気に入ったか?」
黒髪幼女「うん、ありがとう」
騎士長「服屋の店員も、お前がどんな服も似合うから楽しそうにしやがってたな」
黒髪幼女「…?」
騎士長「着せ替え人形じゃねーっつーんだよな~」ポンポン
黒髪幼女「ん~…」