騎士長「王宮をクビになってしまった」

121: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:11:55 ID:IxMQZsrs
騎士長「こんな事を言うのが気はひけるが…いいか?」

黒髪幼女「うん」

騎士長「お前が、奴隷にならなかったら…。この王国で、あの時間にあの酒場に来なかったら…この瞬間はなかった」

黒髪幼女「…」

騎士長「ま、まぁなんだその…俺が王国をク…クク…、クビにならなければ…」ピクピク

騎士長「お前は別の奴と会ってたのかもしれん。それこそ、お前を物としてしか見ない奴とかな」

黒髪幼女「…うん」

騎士長「その偶然が重なり、運命となって、今…お前はお洒落な服を手に入れる事ができるということだ!」

騎士長「人生ってのは、偶然に偶然で、それがチャンスを生む」

騎士長「確かに謙遜だのも大事だが、受け取れるものは受け取っておくのも…悪くないんだぜ?」ニカッ

122: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:12:30 ID:IxMQZsrs
黒髪幼女「…」

騎士長「だいぶはしょったが…難しいか?まぁこれは俺の人生論みたいなもんだしな」ポリポリ

黒髪幼女「とにかく今は…遠慮するなってこと…?」

騎士長「そうだぜ!」ハハッ

黒髪幼女「…」

騎士長「それにな…」スッ

…ナデナデ

黒髪幼女「んっ」

騎士長「俺だって、お前みたいな子の話を聞いて、元気にさせてあげたいとは思える大人なんだ」

騎士長「俺のワガママでもあるが、お前に少しでももっと元気になってほしいからさ」

123: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:13:03 ID:IxMQZsrs
黒髪幼女「…私に元気に…」

騎士長「…まぁ、大人の責任ってやつもある。子供は大人が引っ張らないで、どうするんだって話だ」

黒髪幼女「…」

騎士長「同じ大人として、お前の面倒を見る責任もあるってことさ」

黒髪幼女「色々助けてくれて、優しくしてくれるのは…それも、王国の”騎士長”だから…?」

騎士長「いや、ここまで来ると俺は単に面倒見がいいっつーか…人が良すぎるのかもしれんがな」ハハハ

黒髪幼女「…」

騎士長「ってなわけで、好きなのを選べ!目いっぱいお洒落しようぜ!」

黒髪幼女「…うんっ」

124: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:13:59 ID:IxMQZsrs
トコトコトコ…ガサガサ

騎士長「これなんてどうだ?フリフリで可愛いじゃないか」スッ

黒髪幼女「ピンクは派手だよ」

騎士長「む…そうか。ならばこっちはどうだ?最近ちまたで話題の”ゴス口リ”とかいうやつらしい」

黒髪幼女「なんか…凄い服だね」

騎士長「ぬぬ…、じゃあこれはどうだ!」スッ

黒髪幼女「紫色の蝶々の絵の服…だね。可愛いけど…」

騎士長「気に入らないか…う~ん、何色が好きとかあるか?」

黒髪幼女「…わかんない。騎士長が気に入ったのを選んでくれたら、うれしい」

騎士長「そうか。なら…これだぁっ!!」

トコトコトコ…バッ!!!

125: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:14:39 ID:IxMQZsrs
黒髪幼女「!」

騎士長「…どうだ?派手過ぎず…中々いいと思うんだが」

黒髪幼女「うん、可愛いと思う…!」

騎士長「お前にぴったりだと思うぞ!」

黒髪幼女「そ、そうかな…?」

騎士長「試着室で着て来い。サイズもたぶん合ってると思うが一応な」

黒髪幼女「わかった」

タタタタタッ…

騎士長「よし…店員さーん!」

店員「はーい!」

126: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:15:25 ID:IxMQZsrs
騎士長「今のやり取り見てたかな?今、子供が着てたのと、子供用の下着とかもほしいんだがー…」

店員「はい、準備致します、えーと何着ご用意しますか?」

騎士長「下着は5もあればいいか?それと、さっきの試着させてた服も合わせて値段出してくれ」

店員「目安ですが、下着が2500ゴールドです」

騎士長「ふむ」

店員「それと、先ほどのお洋服…。お子様の服は”10万ゴールド”になります」

騎士長「わかった10万ゴールドな…って!何っ!?」

店員「10万ゴールドです」

騎士長「じゅ…10万ゴールド!?」

店員「あちらの布には、天然ものの魔物、”アラクネ”が生み出す最高級糸が使われております」

騎士長「は…はぁ…」

店員「いかがなさいますか?」

127: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:15:56 ID:IxMQZsrs
騎士長「ちょ…ちょっとそれは考え…」

ガラッ!!タタタタタッ…

黒髪幼女「…騎士長」

騎士長「んおっ」

黒髪幼女「服…ぴったりだった。可愛い…似合う…かな?」

騎士長「お、おう!似合うな!すっげえ可愛いぞ!」

黒髪幼女「そ…そうかな?ありがとう…、騎士長」ペコッ

店員「…いかがなさいますか?」

騎士長「…ください」

店員「毎度あり~♪」

128: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:16:34 ID:IxMQZsrs
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコトコ…

騎士長「よかったな…く、黒髪幼女…」ハハ…

黒髪幼女「顔がなんか引きつってるよ…大丈夫…?」

騎士長「大丈夫大丈夫…それより弁当が出来たか見に行こうか…」

黒髪幼女「うんっ」

…ガチャッ

騎士長「おーい弁当屋~」

弁当屋「おっ、来たな。一応出来てるぞ」

129: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:17:32 ID:IxMQZsrs
騎士長「お、ありがとよ」

弁当屋「それとこれは…サービスだ。食べ歩き用のテイクアウトは普段やってないんだからな?」

スッ…ホカホカ…

黒髪幼女「ばすぷーさ!!」

弁当屋「祖国の味というわけにはいかないだろうが、だいぶ頑張った。食べてみてくれ」

騎士長「お前、この子が砂漠地方の出だってわかったのか?」

弁当屋「そりゃバスプーサだの、この子の薄く褐色がかった肌…。そして人形のような可愛らしさ」

弁当屋「逆に気づかないほうがおかしいと思うぞ?砂漠地方はアレで有名になった地域だしな…」

騎士長「…奴隷問題、か」

弁当屋「まぁな。ってなわけで、食べながら行けばいいさ。これはサービスだ」

130: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:18:18 ID:IxMQZsrs
騎士長「…ほら、黒髪幼女。出来立てで熱いから…気をつけて食べるんだぞ」

黒髪幼女「うん…ありがとう、弁当屋のおじさん」

弁当屋「うむ」

騎士長「準備はこれで終わったし、あとは馬車に乗るだけだな!」

弁当屋「気をつけてな」

騎士長「大丈夫だって。それじゃ、な」ハハハ

弁当屋「おう」

131: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:20:11 ID:IxMQZsrs
騎士長「さて…黒髪幼女。今度こそ、旅の始まりだ!」

黒髪幼女「うんっ」

騎士長「何があるかは分からん。しっかりと俺を信じて…着いて来いよ」

黒髪幼女「うん、わかったっ」

騎士長(さぁて…どんな展開が待ち受けるか!)

132: ◆qqtckwRIh. 2014/03/03(月) 20:20:50 ID:IxMQZsrs
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
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・・・・
・・・
・・
139: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:21:48 ID:he7xQn0I
2人は馬車に乗り

幾時間後の間、ユラユラと馬車に揺られて

港へと向かった――…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 港付近の道 】

パカッ…パカッ…

馬車使い「この度も、当王都馬車をお使い頂きましてありがとうございました」

馬車使い「まもなく…南港前ー…南港前ー…」

騎士長「…」パチッ

騎士長「…お、いかん…すっかり寝てた」

黒髪幼女「…」スヤスヤ

騎士長「黒髪幼女、黒髪幼女」

…ユサユサ

黒髪幼女「ん~…」パチッ

140: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:22:42 ID:he7xQn0I
騎士長「起こして悪いな。もうすぐ着くぞ」

黒髪幼女「う~…うん…」ムニャッ

騎士長「…黒髪幼女、そこの隙間から外を見てみな」

黒髪幼女「?」

モゾモゾ…シャッ

黒髪幼女「えっ!?」ピクッ

騎士長「ははは、変わった形の木だろ。見たことあるか?」

黒髪幼女「ない…。何か、変な形…」

騎士長「ありゃこの辺が海に近いから、割と強い風が吹くから…それに準じた形になるんだ」

黒髪幼女「へぇ~…ぐにょぐにょ…」

141: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:23:12 ID:he7xQn0I
騎士長「”マツ”だかなんだか、忘れたけどな」

黒髪幼女「へ~…」

…キラッ

黒髪幼女「…あの木の隙間から見えるのは…何?何か光ってる」

騎士長「あれが海さ。まだ遠いが、着いたら砂浜もあるだろうし出発まで見に行こう」

黒髪幼女「…凄い大きそう」

騎士長「大きいってもんじゃないさ。まぁ楽しみにしておけ」ハハハ

黒髪幼女「う、うん」

142: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:23:48 ID:he7xQn0I
パカッ…パカッ…ズザザ…

馬車使い「え~…南港。南港に到着致します」

馬車使い「到着後、船に乗る方々はチケット売り場からどうぞ~…」

騎士長「おし…降りるぞ」

黒髪幼女「わかった」

143: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:24:26 ID:he7xQn0I
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 南 港 】

ガヤガヤ…ワイワイ…

黒髪幼女「わぁ~ここも人が多いね」

騎士長「この辺も一応、世界への貿易だの旅人が旅立つ場所だからな」

黒髪幼女「へぇ~…」

騎士長「海を見に行く前に、チケット売り場に行かないとな。えーと…」キョロキョロ

タタタタタッ…ドシンッ!!

騎士長「いてっ!」

144: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:25:22 ID:he7xQn0I
男A「ああぁ、申し訳ありません!」

男B「ばか、何してんだ!」

騎士長「ってぇ…前をきちんと見てくれよ」

男A「はい、すいませんでした」

男B「バカなやつなんでね。早く行くぞ!遅れたらどうするんだ!」ダッ

男A「あ、待ってくれよ!」

タッタッタッタッタッタ…

騎士長「…何だあいつら?」

黒髪幼女「なんか急いでたみたいだね」

騎士長「まぁいいや、チケット売り場はこっちだな」

145: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:26:12 ID:he7xQn0I
トコトコトコトコ…ピタッ

騎士長「おーい、すいません」

受付「はいどうぞ」

騎士長「砂漠街…砂漠港行きの船に乗りたいんですが」

受付「ただいま、砂漠港行きの船は出航済みです。次の出航は3日後となっています」

騎士長「何だって!?」

受付「申し訳ありません」

騎士長「そ、それなりに急いでるんだが…」

受付「砂漠港に直接往復はしませんが、本日出航するワールドクルージング船なら一時、補給に着港予定とはなっています」

騎士長「…高級船か?」

受付「交易ルートを借りて、高速でかつ快適に海を楽しむツアー船ですので…」

146: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:27:14 ID:he7xQn0I
騎士長「一応、砂漠港でも降りられるのか?」

受付「可能ではあります。ですが、本来はそちらの予定ではないので、料金は非常に高くなりますよ」

騎士長「いくらだ?」

受付「乗船料がお一人15万、二等客室が8万、一等客室が15万になります」

騎士長「…」

受付「…」

黒髪幼女「…?」

騎士長「そ、それなら空いてる…か…?」ピクピク

受付「空きはございます。出航は本日…まもなくとなっています」

騎士長「わかった…二人頼む…一等客室でな!」

受付「わかりました。では、今チケットのご用意を致しますね」

147: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:28:06 ID:he7xQn0I
黒髪幼女「…騎士長、大丈夫なの?」

騎士長「余裕だ。金だとか、色々なのは余裕なんだが…何か納得いかない展開が多くてな」ハァ

黒髪幼女「…?」

騎士長「はは、気にするな…ん?」

…ザワザワ

騎士長「なんかあっち側騒がしいな」チラッ

男A「…だからっ!」

男B「お前は…!!」

騎士長「あいつらはさっきの…、何騒いでるんだ…?」

黒髪幼女「さっきぶつかった人たちだね」

男A「…わかったよ」コクン

男B「ほら、行くぞ…」ダッ

タタタタタタッ…

148: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:28:49 ID:he7xQn0I
騎士長「あ、どっか行った」

黒髪幼女「?」

騎士長「まぁ…気にする必要もあるまい。受付さん準備はできたかい?」

受付「それでは…こちらになります」

ゴソゴソ…スッ

受付「一等客室のご案内になります。ありがとうございました」ペラッ

騎士長「ありがとう。出航まで時間があるって言ってたな?」

受付「少しではありますが、ございます」

騎士長「海はあっち側でいいんだったよな?」

受付「そうですね」

騎士長「ありがとう。よし、黒髪幼女…海見にいくぞ!」ダッ

黒髪幼女「うんっ」ダッ

149: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:29:22 ID:he7xQn0I
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザザーン…

黒髪幼女「…!!」

騎士長「いやー、海も久しぶりだな。潮風がいい香りだ」

黒髪幼女「お…お水がいっぱい…!」

騎士長「…ん?」

黒髪幼女「凄い…!!」

150: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:30:33 ID:he7xQn0I
騎士長「どうした?…海、初めて見るのか?」

黒髪幼女「うんっ…!」

騎士長「ハハ、なら感動モンだろ。この広い湖は、どこまでもどこまでも繋がってるんだぜ」

黒髪幼女「そうなの!?」

騎士長(おっ、急に元気に食いついてきたな)

黒髪幼女「そうなんだ…、じゃあ私の村にも…繋がってるの?」

騎士長「あぁ、お前のいた大陸へも繋がってる。そして今から、この海を船で渡るんだ」

黒髪幼女「そっかぁ~…」

騎士長「…はは」

151: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:31:30 ID:he7xQn0I
黒髪幼女「この少し…変な匂いは何?」ツン

騎士長「それが潮風っつーんだ。そのまんま、塩の匂いさ」

黒髪幼女「何で塩の匂いがするの?」

騎士長「そりゃお前、海が…」ハッ

騎士長「そうだ…黒髪幼女~…」ニタアッ

黒髪幼女「何?」

騎士長「ちょっと、そこの砂浜から…水に指をつけて舐めてみな」

黒髪幼女「飲めるの…?」

騎士長「そんな害のあるもんじゃないさ、少しだけな」

黒髪幼女「わかった」

ザッザッザッザッザ…ストンッ

黒髪幼女「…」ペロッ

152: ◆qqtckwRIh. 2014/03/04(火) 19:32:08 ID:he7xQn0I
騎士長「…」

黒髪幼女「う゛…う゛ぇ゛…!」

騎士長「はっはっはっは!」

黒髪幼女「しょ…しょっぱい…」

騎士長「悪かったな、海っていうのは凄くしょっぱいんだ。塩が溶けてるからな」

黒髪幼女「塩…って、あの塩?」

騎士長「そうだ。お前が普段から口にする塩も、この海から採れるもんなんだぜ?」

黒髪幼女「…何で、塩が海に溶けてるの?」

騎士長「えっ…さ、さぁ…」

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