騎士長「そ、そこまでは…」
黒髪幼女「…」ウーン
騎士長「そ…そうなるからそうなってるんだよ!」
黒髪幼女「そ、そうなんだ」
騎士長「…おう!」
黒髪幼女「そっかぁ…そうなってるから…そうなんだぁ…」
騎士長(まぁ普通の人はそうそう知らないだろうし、それで良いんだそれで!)ウンウン
…ポォォォォ!!
騎士長「…あ」
黒髪幼女「今の…お船の音?」
黒髪幼女「わっ」
騎士長「しっかり掴まってろ、走るぞ~っ!」ダッ
黒髪幼女「わかった」ギュー
タッタッタッタッタッタッタッタ…
………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 船の中・一等客室 】
ユラ…ユラユラ…
…バフンッ
騎士長「は~…一息つけた…」
黒髪幼女「お船の中なのに、広いお部屋」
騎士長「一等客室だからな~奮発したんだぞ」
黒髪幼女「いっとうきゃくしつ?」
騎士長「なんだその…凄いお部屋ってことだ」
黒髪幼女「そうなんだ」
黒髪幼女「うん」
騎士長「それまでは暇だな…船ん中色々あるらしいし、あとで探索してみるか?」
黒髪幼女「うん」
騎士長「だがちょっと色々慌ただしくて…疲れた…」フワァ
黒髪幼女「お昼寝する?」
騎士長「少しだけ…寝かせてくれ…」
黒髪幼女「わかった」
騎士長「その辺にお菓子とか、絵本みたいなのもあったから…適当に読んで…」
…ゴロンッ
騎士長「…」スヤッ
騎士長「…」スヤスヤ
黒髪幼女「…寝ちゃった」
黒髪幼女「お菓子…食べていいんだっけ…」
トコトコトコ…カサカサッ
黒髪幼女「…」パクッ
黒髪幼女「…」モグモグ…
黒髪幼女「…甘くて美味しい」ホウッ
…コチ、コチ、コチ…
黒髪幼女「…」チラッ
騎士長「…」グーグー
黒髪幼女「…」
黒髪幼女「…」
スクッ…トコトコトコ…
黒髪幼女「こっちには、何があるんだろ」ガチャッ
トコトコトコ…ガチャッ
黒髪幼女「…クローゼットに、お風呂場…」
トコトコトコ…ガチャッ
黒髪幼女「…こっちは廊下。後で騎士長と一緒に行くから部屋にいないと…」
黒髪幼女「あ…窓。海、見えるかな?」
トコトコトコ…
ギ…ギギ…ギィィィ…バタンッ!
黒髪幼女「うーん…窓が高くて見えない…。部屋で私も少し休もうかな…」クルッ
トコトコトコ…グイッ
黒髪幼女「…あれ?」
黒髪幼女「んん…」ググッ…
黒髪幼女「あ…開かない…」
…カランッ
“オートロック”
――――【 同時刻・船の中 】
…ゴソゴソ…コソコソ…
男A「な、なぁ本当にやるのか?」
男B「いいじゃねえか、この船にバレずに忍び込めたのも天運だろうがよ」
男A「で、でもよ…」
男B「今更、何ビビってんだ!!」
男A「…だ、だよな…」
男B「簡単だろ、一等客室の奴をせしめて、金を奪うなんざよ!」
男B「問題はそこなんだよな。オートロックだし、怪しい奴にはドアも開けやしねぇだろ」
男A「やっぱり計画に無理があったんじゃ…」
男B「うるせぇ!とにかく、一等客室には着いたんだ…あとは何かしらのチャンスがー…」
黒髪幼女「あ…開かない…」
男B「あったろ?」
男A「本当に…天運かも」
ゴソゴソ…ムクッ
騎士長「ん~…ふわぁ…」
騎士長「…」ムニャッ
騎士長「黒髪幼女~…待たせたな…。ちょっと、寝すぎたかね」
…シーン
騎士長「あれ?黒髪幼女~…トイレか?」
トコトコトコ…ガチャッ
騎士長「…いない」
騎士長「風呂場にもいない…か。隠れるところは他にないし…」
騎士長「…ま、まさか…」ヒクッ
騎士長「…冗談だろ、外に出たらオートロックだぞ!」
ダダダダッ、ガチャッ!!
騎士長「…っ!」キョロキョロ
騎士長「いない、どこかに行ったのか!?」
騎士長「くっそ…何てこった!と、とりあえずロビーに!」ダッ
――――【 客室ロビー 】
ダッ…ダダッ…
サポーター「…むっ」ピクッ
ダダダダダッ!!!
騎士長「うおおおおっ!」
ズザザザァ…!
サポーター「…、お客様。お走りにならないようにお願いします」
騎士長「はぁ、はぁ…。き、聞きたいことがある!」
サポーター「何でしょうか」
騎士長「このくらいの女の子…黒髪の薄ら褐色掛かった肌の子だ。見なかったか!?」
騎士長「そうか…クソッ!どこに行ったんだ!」
サポーター「船内放送で呼び掛けましょうか?」
騎士長「あぁ、頼む」
サポーター「わかりました、それでは」クルッ
騎士長「…」
騎士長「いや、待て!」ガシッ
サポーター「…はい?」
騎士長「もしこれが、万が一の事だったら困る!まだ呼びかけないでくれるか?」
サポーター「は、はぁ…」
騎士長「呼びかけるときは、もう1度来るから…それまではまだ呼びかけないでおいてくれ」
騎士長「くっそ、黒髪幼女のやつ…どこ行ったんだ…甲板か…?」ダッ
ダダダダダッ…
サポーター「あっ、お客様!お走りにならないように…!」
サポーター「って、行ってしまわれたか…。はぁ…全く、最近のお客様はマナーの欠如がひどいですな」
トコトコ…
お客「…あの、お取込み中のようでしたが…ちょっといいですか」
サポーター「…はい、どうしましたか?」
お客「ちょっと、不審なお客が…」
…ザザーン…ヒュウウッ…
騎士長「…甲板、廊下、物販所、2階から1階、最上階…どこにもいねぇ!!」
騎士長「あとは客室だが…まさか一部屋一部屋開ける訳にも…」
騎士長「クッソ…!!」
ピーンポーン…
サポーター”「事務局よりお知らせ致します」”
サポーター”「先程、迷子を捜しにいらっしゃった方、おりましたら客室ロビーまでお越しください」”
騎士長「俺のことか…?つーか、あれほどアナウンスかけるなっつったのによ…」
騎士長「っち…仕方ねぇ、見つかったのかもしれんし…」ダッ
ダダダダッ…
…ガチャッ!!
騎士長「呼んだか?俺のことだろう」
サポーター「あ、いらっしゃいました。こちらのお客が、不審な人物を見たということで…」
騎士長「ん?」
お客「どうも」
騎士長「ど、どうも」
お客「一等客室の廊下で、1時間くらい前に…不審な人を見かけまして」
騎士長「不審な人だと?」
お客「その中で、どうも動きが怪しいというか…そういう人がいたんですよ」
騎士長「ふむ」
お客「それで、一応ご報告に…と」
騎士長「一等客室の…どのへんだ?」
お客「船頭側ですね」
騎士長「…俺の部屋の近くだ。そいつらに、女の子とか着いてなかったか?」
お客「いえ、ただの二人組みでしたよ。あ~…でも…」
騎士長「何だ?」
お客「”でっかい袋”を、男の1人が担いでましたよ」
騎士長「…何だと!」
騎士長「思い出してくれ!もしかしたら、その中に俺の連れがいるかもしれないんだ!」グイッ
お客「むぐぐっ…!」
サポーター「ちょ、ちょっと落ち着いてください!」
騎士長「む…すまん…」
お客「ごほごほっ…!まってくださいよ…えーと…」
騎士長「…っ」
お客「どこで見たんだっけかなぁ…えーと…ん~…」
騎士長「そ、そもそもクリーム色の袋ってどんなのか想像がつかんがな…」
サポーター「…あぁ、それに似てるのならありますよ」
サポーター「クリーム色の袋だったら、例えばああいうのとかですよ」チラッ
お客「ん…?あ、あれだー!!」
サポーター「えぇっ!?」
お客「色っていうか、あの袋ですよ!」
サポーター「ですがあれは、船のメンテナンスやらに積む袋ですよ?」
お客「で、でもあれですよ。見たんだ間違いない!」
騎士長「…サポートさん」
サポーター「はい?」
騎士長「この袋は、普通…どこに置いてあるんだ?」
サポーター「船の動力源の、カラクリ整備室…ですが…」
………
……
…
――――【 整備室 】
…ゴウン!ゴウン!
男A「整備室、うるさいね」
男B「でっけぇカラクリでこの船は動いてるからな。ま…いい隠れ家だろう。ほとんど人がこないしな」
男A「確かにいい案だとは思うけど」
男B「それより…袋、開けてみろ」
男A「あ、わかった」
ゴソゴソ…
男A「しっかり入ってるよ」
男B「ははははっ!天運、まさに俺らに有りだな」
男A「可愛い子だよね。どこの出身なんだろう」
男B「そりゃ砂漠地方の出だな。その種族の女自体に、すげー値打ちもあるんだぜ」
男A「そうなんだ。本当に…人形みたいだしね」
男B「まぁ、だからこそ砂漠地方で奴隷の売買が禁止されたんだけどな」
男A「どういうこと?」
男B「それを重く見た政府が、警備体制を固めて、発見次第重罰に処する法を打ち出したワケ」
男A「なるほど…じゃあ、俺らは結構やばいことやってるんじゃ…」
男B「誘拐した時点でやべぇな。だが、禁止されたことでその奴隷の価値は数百倍に値上がった」
男A「数百倍!?」
男B「覚えてるだけで末端価格は数千万ゴールドだ。それに…見ろ」グイッ
黒髪幼女「…っ」
男B「俺だって分かる。こいつぁ高くつくぜ…」ニタッ
男A「…ちょっと待って!俺ら、奴隷狩りしに来たわけじゃないでしょ!」
男A「えっ…まさか…」
男B「そいつを売った方が高いぜ。明日の夕方まで、ここで隠れてればわかりゃしないさ」
男A「で、でも…」
黒髪幼女(ま…また、奴隷に…なるの…?)
男B「何ビビってんだよ!!今更だろうが!」
男A「そ、そりゃそうだけど…」
黒髪幼女(嫌だ…もう、鞭で叩かれるのは…。殴られるのは…!)
黒髪幼女「…だ」
男B「…あ?」
黒髪幼女「嫌だっ!!もう、あそこには戻りたくないっっ!!!」
男B「!!」
男A「えっ!?」
黒髪幼女「騎士長…どこ!お父さん…どこなの…助けてよぉ!!」
男B「や、やべぇ…黙らせろ!!」
男A「ど…どうやって!?」
男B「その辺の縄とかで、口と両手…縛り上げろ!」
男A「わ、わかった!」
黒髪幼女「いや…だぁ…」グスッ
男A「ちょっとだけでいいから、静かにしててね…」
黒髪幼女「う゛ぅ゛…」ムググ…
男A「ふぅ…びっくりした」
男B「…」ジッ
男A「…どうしたの?」
男B「ちょっと、お前に聞きたい事がある。首を振って答えろ」スッ
黒髪幼女「…っ」
黒髪幼女「…」
男B「答えろっつってんだよ!」グイッ!
黒髪幼女「…」
男B「…無視か。無視なら無視なりに…無理やりでも分かる方法もあるんだが」
男A「ど、どうするの?」
男B「背中こっちに向かせるようにして、地面に倒せ」
男A「わ、わかった」
グイッ…ドサッ!
黒髪幼女「むぐっ!」
ビリッ…ビリビリビリッ!!
黒髪幼女「!」
男A「ちょっ、何してるの!」
男B「…やっぱり奴隷じゃねえか。っち…値下がるなこりゃ」
男A「え?どうしてわかるのさ」
男B「背中の傷だ。見ろ。これは鞭の傷跡だ」
男A「あ…」
黒髪幼女「…う…うぅ…」
男A「買われたって…」
男B「買われたじゃねえ、飼われただ」
男A「飼われた?」
男B「そうだ。よっぽどな物好きが、高値で買って一等客室で遊んでたんじゃないのか?」ハハハ!
男A「な、なるほど…こんな、いたいけな子を…」
男B「奴隷の存在意義なんて、女も、子供も全部そんなもんだ。若い男は主に労働用だがな」
男A「ま、まぁそうだけど…」
黒髪幼女(騎士長に買ってもらった…お洋服が…)グスッ…
男B「あ?何で泣いてるんだ」
男B「今まで色々されてきたくせに、まだメンタルは弱いらしいな」ハハハ
男A「そりゃ子供だし…」
男B「だがまぁ…これでちょっと楽しめるな」ニヤ
男A「どういうこと?」
男B「俺らも遊ばせてもらおうぜ」
男A「え…」
黒髪幼女「…」グスグスッ…
男A「遊ぶって…」
男B「たまには趣向を変えてどうだ?どうせ何度も遊ばれてるんだろうよ」