――――【 砂漠地方村 】
…ゴォォォ…
パカッパカッパカッパカッパカッ…ザザ…
アサシン「着いた…ここだよ」
騎士長「ここが、黒髪幼女の住んでいた村…か」
黒髪幼女「…っ」
騎士長「…ひでぇ。家らしい家…いや、建物すら何もないじゃないか…」
騎士長「…」
アサシン「少しは残ってた建物も、ごらんの有様さ」
騎士長「…そうか」
黒髪幼女「騎士長…こっち…」
騎士長「ん?」
黒髪幼女「私の家…こっち。来てくれる?」
騎士長「当たり前だろ。それと…手、出せ」
黒髪幼女「?」スッ
…ギュッ
黒髪幼女「…」ブルブル…
騎士長(手が震えている…当たり前か…)
アサシン「…」
騎士長「黒髪幼女…無理するな。一緒に手を繋いで、一歩一歩…進もう」
黒髪幼女「うん…ありがとう…」
騎士長「…」
黒髪幼女「こっち…」
黒髪幼女「…」
騎士長「…」
アサシン「…」
ザッザッザ…ピタッ
黒髪幼女「…ここ」
騎士長「ん?」
黒髪幼女「ここ、私の家があったところ…」
ヒュウウウッ…
騎士長「…」
黒髪幼女「何も…なくなっちゃったね…」
黒髪幼女「…」
騎士長「…」
黒髪幼女「ここが玄関でね。いっつもお友達とここで水遊びとかしたの」
騎士長「うん」
黒髪幼女「お父さんは、仕事だって言ってよく向こうの酒場にいてね…」
黒髪幼女「お土産でいつも、美味しい物買ってきてくれた」
騎士長「…うん」
黒髪幼女「…何も、残ってないね」
黒髪幼女「お父さん…どこにいるの…?」
騎士長「…」
黒髪幼女「何で…こんなことしたの…。全部…なくなっちゃったよ…」
騎士長「黒髪幼女…」
…ギュウッ
黒髪幼女「…う…あうぅ…」グスッ
騎士長「辛いかもしれないが、目を背けないで…」
騎士長「俺も支えてやるから…前へ進もう」
黒髪幼女「…っ」ポロポロ
黒髪幼女「…」
アサシン「…」
黒髪幼女「…あれ?」グスッ
騎士長「どうした?」
黒髪幼女「なんか光った…気がする…」
騎士長「何?ど、どこだ?」
黒髪幼女「…そ、そこ!」
騎士長「ん…?」
…キラッ
騎士長「俺が取ってこよう」
ガサガサ…ゴソ…チャリッ
騎士長「これは…」
アサシン「ペンダント…いや、ロケットか?」
騎士長「黒髪幼女、知ってるか?これ」チャリッ
黒髪幼女「え?ううん…見たことないよ」
アサシン「それ、開くんじゃないか」
騎士長「ちょっと待て…」
カチャカチャ…カチャ…パカッ!
騎士長「!」
アサシン「何か入ってるか?写真とか…」
騎士長「まぁ待て。えーと…」
カチャ…カチャカチャ…
騎士長「…え?」
騎士長「え…こ、これ…」
アサシン「どうしたんだ?知ってるのか?」
黒髪幼女「騎士長?」
騎士長「な…なんでコレがここに…」
黒髪幼女「何?どうしたの?」
騎士長「…っ」
騎士長「こ、これは、俺たちの仲間…。”王宮都市の警備隊だけ”に渡される、証明となるロケットだ…」
騎士長「見ろ…ロケットの真ん中に王宮都市の国旗と警備隊の剣が刻まれているだろ…?」キラッ
黒髪幼女「…え?」
アサシン「…何だって…」
パカッパカッパカッパカッパカッ…!!
騎士長「急いで戻るんだ!」
アサシン「目一杯だよ!」
騎士長「…っ」
黒髪幼女「き、急にどうしたの?」
騎士長(そもそも、奴隷狩りになぜ…王宮都市が介入する必要があるんだ…?)
騎士長(今はとにかく…何かあそこにいたらヤバイ気がする!)
アサシン「…騎士長、何か分かったのか!?」
騎士長「恐らくだが、黒髪幼女の関わる今回の事件…王宮都市が関連している。しかも政府がな」
アサシン「さっきのロケットか?」
騎士長「…変な話だと思わないか?奴隷狩りに王都が関連する必要はないはずだ」
アサシン「応援部隊を今回につき出したとか…そういう事じゃ?」
騎士長「いや、俺が知ってる限り…他の場所に応援を出すことはほとんどなかった」
アサシン「…どういうことなんだろうか」
アサシン「…あ、王都から来た男が地方村を組み立てたってことだね」
騎士長「そうだ。それに、黒髪幼女の親父の謎の行動…、今回の王都の介入…」
アサシン「…」
騎士長「くそっ!さっぱり分からん…が、今、あそこにいるのは危険な気がするんだ!」
アサシン「これからどうするんだ?親父の手がかりはなかったぞ…」
黒髪幼女「…」
騎士長「いまさら、王都が何に介入するかは聞けないし…」
騎士長「くそっ!完全に手詰まりだ!」
騎士長「…心配すんな。お前の親父は探し出すさ。それに…」
黒髪幼女「それに…?」
騎士長「今回の事件、安易に考えていたが…予想以上に重い案件らしい」
アサシン「…そうかもしれないね。何かしらで繋がる所があるから…」
騎士長「何かの手がかりが欲しい。一旦、王都に戻って、忍び込むのも悪くはないと思う」
アサシン「危ないんじゃないのか?」
騎士長「さすがにこれ以上は、危険を犯しても進むしかないだろう」
アサシン「…そこまで、やる意味はないだろう」
黒髪幼女「騎士長…危ないことなら、しなくても…」
アサシン「…騎士長」
黒髪幼女「騎士長…!」
騎士長(明るく振舞ったが、実際のところ…何かしらの巨大な力が動いているのは確かだ)
騎士長(これ以上の被害の可能性がある以上、元騎士長だろうが…)
騎士長(それを知った以上、動ける俺が動くしかないんだよ)
………
……
…
――――【 部 落 】
ズザザザ…
アサシン「一旦、部落で準備して行きな」
騎士長「あぁ…助かる」
アサシン「それと…黒髪幼女はどうするつもりなんだ」
黒髪幼女「…」
アサシン「あんたが言う事が本当なら、黒髪幼女も危険になる」
騎士長「そうなるな…」
黒髪幼女「大丈夫だから…」
騎士長「…」
アサシン「…」
黒髪幼女「寂しくなんてないから…」
騎士長「…」
黒髪幼女「…」ブルッ
騎士長「はぁ~…」
騎士長「誰が、置いていくっていったんだよ」
黒髪幼女「えっ…?」
黒髪幼女「いいの…?足手まといになるよ…」
騎士長「気にするなよ!今度は、しっかり守ってやるからな」
黒髪幼女「…っ」
タッタッタッタ…
砂漠剣士「お疲れ様です、頭」
アサシン「お、幹部長…出迎えご苦労」
砂漠剣士「いえ」
アサシン「それと、ちょっと相談なんだけど…しばらく、私がいなくても平気だよな?」
砂漠剣士「え?え…と、それはどういう意味でしょうか」
砂漠剣士「え…えぇぇ!?」
騎士長「え゛…?」
黒髪幼女「えっ!」
騎士長「で、でもお前、ここの長なんだろ?それに、他の奴隷狩りを倒す使命とか…」
アサシン「…どの道、一回王宮都市には行こうと思っていたんだ」
騎士長「何?」
アサシン「私は行った事がなくてね。それに王都が一噛みしてるなら、それを倒せば大元が崩れる可能性もあるだろう」
騎士長「そ…そりゃそうだが…」
アサシン「足手まといにはならないよ。私の強さはアンタがよく知ってるはずだ」
騎士長「いや知ってるけども…」
アサシン「あんた…ここに来て何年になる?長に使命されてどのくらいだ?」
砂漠剣士「数年ですが…。部隊”アサシン”の立ち上げメンバーとして参加しましたし」
アサシン「だろう?…いつも女だから舐めるなと言っていた私が言えた義理じゃないが…」
アサシン「いつまでも女である私に頼っていて、男であるお前がしっかりしなくてどうするんだ!」
砂漠剣士「…」
アサシン「頼めるのはアンタしかいないと思ってる。頼むよ」
砂漠剣士「わかりました…任せてください」
アサシン「ありがとう。恩に着るよ」
砂漠剣士「ただし約束があります。また無事に…ここへ戻ってきてください。それだけはお願いします」
アサシン「分かってるよ。約束する」
砂漠剣士「…」ペコッ
騎士長「本当にいいのか…?仲間が出来るのはこの上なく嬉しいのだが…」
アサシン「あぁ」
黒髪幼女「お姉ちゃんも…一緒に来るの!?」
アサシン「ん~なんだ不満か?はは」
黒髪幼女「最初怖かったけど…、本当は優しいから…」
アサシン「あはは!嬉しいね!」
騎士長「…本当に来るなら、急ぐぞ。今回ばかりは悠長に言ってられない気がするんだ」
アサシン「わかった。すぐに港までの食料と水の準備を!」
砂漠剣士「わかりました。1日分、充分に多くの補給品を…」
アサシン「何でだ?」
騎士長「砂漠港には寄らない。大回りで大陸を越えていく」
アサシン「…何か考えでも?」
騎士長「既に王都の面子が周辺に張り付いた可能性が高いんじゃないかと」
騎士長「どうも、目的がハッキリしないが用心にこしたことはないと思ってな」
アサシン「…なるほどね」
騎士長(それに、黒髪幼女の家にピンポイントで落ちていたロケット…)
騎士長(どう考えても目的は…何故だか分からんが…)
砂漠剣士「はっ!ただいま準備して参ります!」ダッ
タッタッタッタッ…
騎士長「遠回りになると、最低でも2週間以上の道になりそうだな」
アサシン「さすがにラクダはそこまで持たないね。どのルートで行くんだ?」
騎士長「出来れば海沿い伝いに、最短の道で行きたい」
騎士長「とはいえ、砂漠港に直行は出来ないからな…港にぶつからないように海に行こうかと考えてる」
アサシン「なら道案内は任せてくれ」
騎士長「頼む」
砂漠剣士「保存食等の準備、確保はできました」
砂漠剣士「ですが、水はどうしても日持ちしません。現地調達になるでしょう」
アサシン「ありがとう、それで構わない。点々とする村で補給するさ」
砂漠剣士「わかりました」
アサシン「私がいない間も、きちんと頼んだよ」
砂漠剣士「もちろんです」
砂漠剣士「いえ、新しい仲間の誕生ですから」
騎士長「…ふっ」
アサシン「武器よし、ラクダの調子もよし、食料よし!」
アサシン「これでいつでも行けるよ!」
砂漠剣士「それにしても、こんなに急いで行く必要も…」
騎士長「急がないといけない気がするんだ。俺のカンだけどな」
砂漠剣士「そうですか…」
砂漠剣士「いえ、新しい仲間の誕生ですから」
騎士長「…ふっ」
アサシン「武器よし、ラクダの調子もよし、食料よし!」
アサシン「これでいつでも行けるよ!」
砂漠剣士「それにしても、こんなに急いで行く必要も…」
騎士長「急がないといけない気がするんだ。俺のカンだけどな」
砂漠剣士「そうですか…」
アサシン「…長居をしても、交わす言葉は変わらないよ」
騎士長「…お前らしいな」
アサシン「ふふ…さぁ、いいよ。いつでも出発できるよ」
騎士長「黒髪幼女も…準備はいいな?」
黒髪幼女「…」コクン
騎士長「さぁ、王都で全てを明かす…。行くぞ!王都へ出発だ!」
アサシン「あぁ!」
黒髪幼女「うんっ!」
………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠・海沿い付近 】
パカッパカッパカッ…!!
黒髪幼女「…っ」
アサシン「もうすぐ海沿いに出る!そこからはゆっくりだから、振り落とされないようにね!」
騎士長「つったって…早すぎるだろこれ!!」
アサシン「当たり前だ、我らの自慢のラクダだぞ!」
騎士長「そ、そういう事をいってるんじゃなああい!!」
パカッパカッ!!サァァ…
アサシン「それより、林が見えた!海沿いに出るよ!」
アサシン「海辺に出たら岩場になるから、その手前で急ブレーキかけるよ!」
黒髪幼女「…!」ギュゥゥ
アサシン「…ブレーキッ!!」グイッ!!
ラクダ『ブルルルウゥッ!』
ズッ…ズザザザザァ…!!!
騎士長「ぬおおおっ!」ブワッ
黒髪幼女「…っ」ビリビリ
アサシン「やっほーーー!」
ピタアッ…
騎士長「はぁ…はぁ…止まった…?」
騎士長「し…死ぬかと思った…」
アサシン「だらしないね、こんくらいで」
騎士長「誰がラクダであんな速度出せると思うんだよ!」
アサシン「だからそれは、砂漠ラクダの中でも特に早い…うちのラクダこそで…」
騎士長「あーはいはい…。黒髪幼女、大丈夫か?」
黒髪幼女「な…なんとか…」
騎士長「はぁ~…。で、現在地はどのくらいだ?」
アサシン「本来、港は丁度北側にあるんだけど。北西側の大陸を抜けるから、今は北西の海沿いだ」
アサシン「海沿いなら、それなりに発展してる町村もあるからね」
騎士長「とはいえ、先が見えない事には変わりないか。1日目から野宿にならなけりゃいいんだが」
アサシン「男らしくないねー」
騎士長「いや俺じゃなくて…」チョイチョイ
黒髪幼女「?」
アサシン「なるほどね」
騎士長「あまり負担はかけたくないんだ。ここから一番近い村でどのくらいだ?」
アサシン「どうかなー。地元の人間でも、散らばりすぎてる村の所在地は詳しくは知らないんだよ」
騎士長「砂漠地方に点々とする旗で村同士をつないでるんじゃなかったのか?」
アサシン「それはあくまでも、繋げる範囲で。砂漠地方は広いんだ…そりゃまだ未開拓のところもあるさ」
アサシン「って言っても、さっき言った通り海辺には村は大体あるはず」
アサシン「だから見つけるたびに物資を補給すればいいと思ってたよ」
アサシン「それに、私の名前を使えば大体協力してもらえそうなもんだし」
騎士長「お前、そんなに有名なの?」
アサシン「そりゃあ、砂漠の英雄と言ったらアサシンで通ってるし。みんな男だと思ってるみたいだけど」
騎士長「何で英雄?何で男なんだ?」
アサシン「英雄は私が奴隷解放の軍団のリーダーだからね」
騎士長「男っていうのは?」
アサシン「それは…コレ」
スッ…シュルシュル…
黒装束(アサシン)「…わかった?」
騎士長「あ~!そういえば俺も最初は男だと思ってたしな」
アサシン「ふぅ」パサッ
アサシン「悔しいけど、女っていうだけでナメられるし…男っていうほうが認められると思ったんだ」
騎士長「なるほどな…」
アサシン「ナメられるっていう以外に、顔がバレると厄介なことも多いしね」
騎士長「その割には、随分俺の時はアッサリとだったな」
アサシン「それに…動物的本能を刺激されたっていうか…ね?」ニカッ
騎士長「む…」
黒髪幼女「…」
黒髪幼女「騎士長…動物的本能って何?」
騎士長「…へ?」
アサシン「…」
騎士長「…えーと…」
アサシン「それは人間の欲望に関係があって、身体を求めるっていうか」ペラペラ
騎士長「うおい!!」
…ゴツッ
アサシン「」プシュー
黒髪幼女「うーん…」
騎士長「今はまだ気にするな。そのうち覚えるさ」ハハハ
黒髪幼女「う~ん…わかった…」
アサシン「お~痛い…。ちょっとした冗談じゃないか」グスン
騎士長「冗談で言うレベルじゃなかったぞ!」
アサシン「ふふっ、ごめんごめん」
騎士長「…全く」
騎士長「それより、さっさと砂漠地方を抜けるぞ。日が暮れる前に村を探すからな!」
アサシン「そうだね、進んでおくれラクダくん」
ラクダ『ブルルッ!』
………
……