勇者「城でニート姫をしていたのに、勇者にされて旅に出され!」
勇者「世界にある三国を渡り、三国それぞれの代表を仲間にし!」
勇者「村民から頼まれる数々のお使いをこなし!」
勇者「やっとの思いでたどり着いた魔王城で生き別れの弟と決着をつけ!」
勇者「そして魔王を倒し、止めを刺す一歩手前で、仲間に裏切られた!」
勇者「それでこのざまよ!」
勇者「黙れ! 喋るな! お前のせいだ!」
魔王「このお姫様はうるさいなー。カルシウム足りとるん?」
魔王「脂肪分も足りとらへんみたいやしな」
勇者「何処見てる!?」
魔王「そんなんやから魔王討伐の旅に出されたんちゃうん?」
魔王「実際、男ばかりのパーティーで色恋のひとつもなかったんやろ?」
勇者「黙れ! 喋るな! 空気がもったいない!」
勇者「もったいないものはもったいないんだ!」
魔王「まあ、ええけどさ……、ココ何処か分かるん?」
勇者「私の魔術を封じる牢など、そこにしかあるはずがないからな」
魔王「ほーかー、まったく厄介なもん作ってくれたもんやで」
勇者「お前のせいだ!」
魔王「怒鳴る元気があるんやったらさー」
魔王「脱出方法でもかんがえーや」
魔王「まあ、そりゃあそうやな」
勇者「何でそんなにのんきなんだお前はー!!」
勇者「最後の戦いの時も思っていたが!」
勇者「『よくここまでたどりつけたな、まあお茶でものまへん?』」
勇者「これが世界を左右する戦いの幕開けだぞ!?」
魔王「わいが特別なわけやあらへんて」
勇者「そうなの?」
魔王「嘘や」
勇者「このやろぉおおおお!!」
魔王「それと全力で皆ボケんねや」
魔王「『ちょっと人間界滅ぼしてくるわー』とかさ」
魔王「あれはわいの中で最高のボケやったなぁ……」
勇者「ボケで人間界滅ぼしに来るなよ!!」
魔王「ところでさ、これからどうなると思うん?」
勇者「お前が? 私が?」
魔王「両方でええよ」
勇者「そうだな……」
勇者「確実に処刑されるよな……」
魔王「まあ、そうやろなー」
魔王「で、アンタは?」
勇者「私はー……、うん、三国以外の国」
勇者「大国の出身だから、恐らくそことの交渉材料にされる……」
勇者「そういうことだ。まあ上手くいけば助かると思う」
魔王「でも助からへん可能性のほうが高いんやろ?」
勇者「だって旅に出さされるぐらいの姫だぞ?」
勇者「そして確実に政権は私の義妹が手に入れてるし!」
勇者「つまりこのままデス・オア・ダイ!」
勇者「どうしてこうなった!!」
魔王「いやしらんがな」
魔王「また初めから続けんのか?」
勇者「うるさい! 黙れ! しゃべるな!」
魔王「やれやれやで……」
魔王「ココから出る方法一緒に考えましょ?」
勇者「う、うん……」
魔王「魔術は使えへん……、武器も取られとる……」
魔王「しかし外には見張りはおらず、あるのはこの鉄格子のみ……」
勇者「マジで!?」
魔王「魔界にいたときに知人に教えてもらった技術があれば」
魔王「牢屋の鍵ぐらい開く事が出来るんや!」
勇者「おおおー!」
勇者「なんだよ?」
魔王「何か細いもんが必要や……。針金とか……」
魔王「もってへんか?」
勇者「ココを何処だと思ってる! そう、牢屋!」
勇者「そして牢屋に入れられたのは……」
勇者「お前のせいだー――!!」
魔王「……ん、待てよ? お前貧*やけどブラとかしとる?」
勇者「な、なんでそんなこと聞くんだよ!」
魔王「しとるんか?」
勇者「う、うん……」
魔王「脱げ」
勇者「はぁ!?」
魔王「ええから脱げー!」
勇者「いーやー!」
魔王「魔族の力にちょっと筋力を」
魔王「魔翌力で補強してるだけの小娘が適うはずもなく……」
魔王「あっというまに勇者はブラを奪われたのだった……」
勇者「この世界で魔術を使うのに必要な力だろ?」
勇者「世界中に空気のように蔓延してるんだよ」
勇者「縮めて魔翌力と呼ぶ」
魔王「説明ありがとな」
勇者「て言うかブラ返せー!!」
魔王「凄い噛みかたしたな我ながら!」
魔王「くそっ世界からの妨害やな!!」
勇者「何を言ってるんだ、お前は……」
魔王「ほなちょっとこれ借りるで」
勇者「返せー! て言うかコッチみんな!」
魔王「今勇者はブラをひん剥かれ、涙目で半裸である」
勇者「後なんでナレーションお前なんだよ!」
魔王「このブラから針金を取り出して……」
魔王「これを使って……チョチョイのチョイ」
ガチャ
魔王「開いたわ」
魔王「ブラは使いもんにならんようなったけどな」
勇者「…………」
勇者「お前のせいだー!!!」
魔王「それ口癖かいな?」
魔王「魔術を使えば、こんなところ簡単に逃げ出せるわ」
勇者「う、うん……、それじゃあ外に出るか」
ガシィ
勇者「なんだよ、手なんか掴んで」
魔王「……今気がついたんやけどさ」
勇者「そうだな」
魔王「力が戻ったら、まず何する?」
勇者「そりゃあまずお前を討伐……」
バンッッ!! ガシャ!
魔王「当たり前や! 何で自分が討伐されかねんのにわざわざアンタを出さなあかんねん!!」
勇者「くそっ! さすが汚いな魔王汚い!」
魔王「当然の理や!」
魔王「ワイは手始めにこの城をぶっこして、一世一代のボケの続きをする」
魔王「ほなな!」
勇者「ま、待って! 討伐しないから待って!」
魔王「ふむ……、今の話しほんまか?」
勇者「うん! 討伐しないから開放して!」
魔王「……」
魔王(もちろんこんな事まともに信じるワイやあらへん……)
魔王(どうせ外に出た瞬間、最大雷魔術を使ってくるに決まってる)
魔王(しかしコイツは今、人類に裏切られた状態)
魔王(ワイを討伐しても行く先がないことを思い知らせれば)
魔王(上手く手ゴマにできるか……?)
魔王「ほんまにそこから出てもワイを討伐せえへんねんな?」
勇者「うん! 約束する!」
魔王「ワイの家来になるな?」
勇者「うん! 家来になる!」
魔王「そうすると……奴隷からスタートやけどええか?」
勇者「うん! 奴隷でも良い!」
勇者「大丈夫大丈夫! 全然問題ない!」
魔王「味噌汁とかつくらなあかんねんで? 作れるん?」
勇者「善処します!」
魔王「ほな、開けたるわ」
ガチャガチャ、ガシャ
勇者「最大雷呪文!! 拘束術式開放!!」
勇者「雷鳴よとどろけ!! 天地を破壊し、我の最強を示せ!」
魔王「待てやぁあああああああ!!」
…………
………………
魔王「あんたが話しきかんと、最大雷呪文ぶっ放すからや!」
魔王「今、どうなっておるかというと」
魔王「城の地下室にいるワイむかって雷呪文が落ちたため」
魔王「その間、つまり天と地の間にあった」
魔王「魔法使いの国の城は……」
魔王「そして最大雷呪文は勇者にしかうてん」
魔王「つまり、この城をぶっ壊したのは確実に勇者」
魔王「よーするに三国から指名手配やね」
魔王「ワイ倒してもどーしょーもないで、これ」
魔王「味噌汁作れるんやったら家来にしたってもええで?」
勇者「お断りだー――――!!」
第一話:魔法使いの城脱出編:完 続く
勇者「何の話だ……」
魔王「まあ、アンタは気にせんでもええて」
魔王「というわけでワイらはぶっ壊れた城から脱出し――」
魔王「とりあえず寝床がないから、近くの森に入り」
魔王「周りの魔物に城を建設させた」
勇者「労働法違反もいいとこだな!!」
魔王「これがほんとの一夜城!」
勇者「まさにそのとおりだけど!」
魔王「いい労働力だったで……、ゴブリンさんは……」
勇者「まだ生きてるからな!?」
ゴブリン「ブヒー」
勇者「何か魔物とか徘徊してるし……」
勇者「これじゃあただの魔物の巣だよ」
魔王「デザイナー顔らへんから仕方ないやろ!」
魔王「ゴブリンさんは大体大工やで!」
魔王「そして三国、最終的には大国を支配する……」
魔王「滅ぼすというボケに走るのもええな……くくく……」
勇者「ふざけんなよ」
勇者「いや、私が許しても、第二第三の勇者がお前を討伐する!」
勇者「お前の命運もここまでだ!」
魔王「そうなったらアンタの命運もここまでやな……」
勇者「ぐぅ!?」
魔王「ワイが倒れれば、アンタも倒れる!」
魔王「アンタが倒れても、ワイは倒れん!」
魔王「……つまり、ワイが圧倒的にイニシアチブをとってるわけやね」
魔王「はっはっは! この元ニート姫が!」
魔王「とりあえずゴブリンさんに味噌汁の作り方教わって来い!」
魔王「ついでに花嫁修業もさせたるわ!」
勇者「なっ……! 私はお前に操を捧げる気などない!」
魔王「コッチからお断りや、この貧*女」
勇者「果たして何発もつかな……?」
魔王「マジスイマセンでした」
勇者「しかしここにいて、何とかなるものなのか?」
勇者「夜が明けたら、他の国の奴が攻めてくるぞ?」
ゴゴゴゴゴゴ……、ガシャン
魔王「ちょっとこの地面から出てきたボタン押してみぃ」
勇者「え、うん……」
ポチッ
魔王「勇者がボタンを押すと、突然城が浮遊を始めた」
勇者「え!? ちょっと!? 本当に浮いてるの!?」
魔王「ゴブリンさんの大工力は三国一ぃいいいいい!!」
勇者「ゴブリンすげぇな!」
魔王「魔王が城でニートしてる理由もなっとくやろ?」
勇者「スゴーイ! 飛行船より速い!」
魔王「おいやめろ」
勇者「なんで私の旅の始まりにコレがなかったんだろう……」
勇者「そしたら家でずっとニート姫してられたのに……」
魔王「しみじみした感じやけど、言ってること最低やな」
勇者「へ?」
魔王「ワイの家来、それも奴隷からのスタートや!」
魔王「味噌汁を作るお仕事が待ってるんやで!」
勇者「働きたくない……」
魔王「まあ、そんな駄目人間にぴったりの魔物を呼んできたから」
魔王「コック長や!」
コック長「どうも」
勇者「骸骨コックだぁー――!!」
勇者「隙あらば、アイテムを奪い!」
勇者「隙がなければ、フライパンと包丁を使い、攻撃してくる!!」
勇者「仲間の盗賊が、まだドラゴンを相手にしてる方がマシだったと嘆くありさま!」
勇者「そんな冒険者には厳しすぎる魔物……」
勇者「魔界だぁー――――!!」
勇者「もうやだお城帰る!」
魔王「了解、最初に落とすのは大国やね」
勇者「え?」
ゴブリン「ブヒィー!」
魔王「ほな行くで! 目指すは大国!」
勇者「え、ちょっと待って! 里帰りしたくない!」
魔王「もう遅い!」
魔王「しかし領地に入ったとたん、待ち受けてきたのは多大なる魔術射撃」
魔王「RPGのはずがSTGに早代わりである…・…」
勇者「ボソボソ、ナレーションしてんじゃねー――!」
魔王「あ、あかん! メインエンジンがやられた!」
勇者「お城にメインエンジンなんてあったんだ!」
魔王「脱出するで!!」
勇者「ど、どうやって?」
魔王「飛び降りるに決まってるやろ!」
…………
………………
魔王「かくして、魔王一向が飛び降りたのは……」
勇者「ナレーションしてんじゃねぇ! 雷呪文!」
ボガァアアアアアン!!
魔王「プス……、プス……、貧*……」
勇者「この駄目魔王が……」
勇者「辺りを見回してみると……、ここは湖付近のようだな」
勇者「あの頃は仲が良かったのに……」
勇者「お兄様と義妹がくっ付いてからは……」
魔王「アンタだけのけものにされたというわけやな」
勇者「いきなり起きてくんな!」
魔王「更に第二形態、第三形態もあるで」
魔王「手加減した雷呪文ごときで倒せるわけがないやろ!」
勇者「くっ……、それでも私達の総攻撃で負けたくせに!」
魔王「四対一やで? そりゃ負けるて」
魔王「友情の力、結束の奇跡、という奴やね」
魔王「しかしそれも、もはやない……」
魔王「そしてワイは今生きてる」
魔王「人類はBADEND直行やね」
魔王「無駄無駄、余計なことはしなさんやな」
魔王「それにそうなっても別にええとおもっとるんやろ?」
魔王「なんせ、アンタ人類どころか一番頼りにしてた仲間に裏切られたもんな」
魔王「用が済んだら用済み言うやっちゃ」
魔王「あらら、しおらしくなってもーて」
魔王(悪墜ち一歩手前言うとこやね)
魔王(くくく、我ながら悪いやっちゃ)
勇者「それでも……」
魔王「ん?」
魔王「なんやそりゃあ……、というか生き別れた弟どうなってん」
魔王「いや、操ってたんワイやけど」
魔王「アンタに戦わせに行ってからのその後知らんねん、アイツの」
魔王「もしかしてブサっとやっちゃったん?」
勇者「自ら滝の中へと落ちていったわ」
勇者「きっともう生きては居ないでしょう」
勇者「仲間もその時は励ましたりしてくれて優しかったのに……」
勇者「……お前の」
魔王「ん?」
勇者「お前のせいだー―――!!」
勇者「お前みたいな奴がいるから、いつまでたっても世界は私に冷たい!」
勇者「つまりお前が全ての元凶!!」
魔王「ま、ま、まてや!! 現実逃避で討とうとせんといて!」
魔王「それにアンタ一人やったらいくらレベル70ほどでも討伐は無理やて!」
勇者「私のレベルは99だ……」
魔王「なん……、だと……」
勇者「最大最強最悪の雷呪文!」
勇者「天地一体! 我のに歯向かう敵を塵も残さず消し去れ!!」
勇者「くらえー―――!!」
魔王「ちょ、堪忍! 堪忍してーな!!」
魔王「天に向かって手を掲げてる勇者に対して、ワイが命乞いをしている」
魔王「まさにその瞬間、森の中から女神が現れた――」
義妹「やっぱり、その姿、お姉さま……」
勇者「なっ……」
義妹「奴隷以下の生活を送っていると思っていたが……」
義妹「ほう……? 魔王に寝返ったのか……」
義妹「まあいい……、コレで体面を気にせず、貴様に抹殺指令を下せる」
魔王「ヤバイ、この義妹、超ラスボスやで!」
勇者「この私と魔王の混合パーティーの前から」
勇者「生きて帰れると思っているのか!?」
義妹「くっくっ、良いのか勇者よ……」
義妹「我が死ねば貴様のお兄様が悲しむ事になるぞ?」
義妹「ふはははは!! そういうことだ! 貴様は我に手出しできまい!」
義妹「何せ、我は貴様のいとしのお兄様の嫁なのだからなぁ?」
魔王「それ、ワイには関係なくね?」
義妹「えっ」
勇者「えっ」
勇者「待て待て待て待て!! 駄目だ! 撃つなって!」
義妹「えっ、ちょ、止めて! あいつを止めなさいお姉さま!」
ドゴォオオオオオオオオオン!!
魔王「よーし、そのまま動くなや? 次は当てるで?」
義妹「……ひっ!」
勇者「おい、待て! 義妹を撃つつもりなら私を倒してからにしろ!」
魔王「心配あらへんて。なにも手出すつもりはあらへん」
魔王「ただこの娘、大国との交渉に使えるとおもてなぁ」
勇者「悪い顔だ!」
魔王「大方、近くにけっこうな大群がおんねやろ?」
魔王「恐らく墜落した城の生き残りを探してた」
魔王「それにアンタは同行してて、たまたま聞き覚えのある声を聞いたから」
魔王「こっちによってきたというところやろ? どうや?」
義妹「は、はい……、そのとおりです……」
魔王「この娘、人質にするしか生き残る道はないで」
勇者「う……、うん……、しかたない……のかな?」
義妹「貴様! 魔王に寝返っただけでは飽き足らず!」
義妹「もはや家族に対する情も失ったかぁ!」
勇者「……ちょっと、猫かぶりが過ぎるだけだ」
ザザザザザザザザ
魔王「おっと、今の声を聞きつけて、あっという間に軍隊登場ゥ~」
魔王「しまった囲まれたで」
勇者「どうしてこうなった」
勇者兄(以下勇兄)「俺の妻を放せ!」
魔王「なんか、普通に主人公っぽい王様が出てきおった」
勇者「私の兄だ……」
勇者「寝返ってません! 奴隷にされただけです!」
勇兄「同じ事だろうが!」
勇者「じゃあどうしろと! 三国に裏切られ、自国では義妹が命を狙ってる!」
勇者「だったら寝返るしかないじゃない!」
勇者「……ハッ!」
勇兄「そうか……、魔王に寝返ったというのなら」
勇兄「実の妹でも私は戦おう……」
勇者「お、お兄様……」
魔王「この娘がどうなってもええんかいー!」
義妹「ひぃいいー――!」
魔王「ヒャッハー!! 実の妹みたいに見捨てたらどやねん!」
勇兄「くそっ! 勇者! お前からも何とか言ってくれ」
勇者「ふふふふふ……、お兄様……、ふふふふふ……」
勇兄「ゆ、勇者……?」
勇者「最大最強最悪最終雷呪文ー――――!!」
勇者「天地割れよ! 魔を射抜く最後の剣よ、ココに来たれ!」
魔王「皆逃げェー――い!! あれはワイの究極火炎呪文より危険やー――!!」
一同「いやああああああああ!!」
…………
………………
魔王「大国は滅びたのであった……」
魔王「しかも勇者が今まで撃った事すらなかった呪文で……」
魔王「アンタ、それあったら余裕で世界滅ぼせるで」
魔王「ちょっとウチに嫁にこぉへん?」
魔王「ここら一体は完全に塵になったからな」
魔王「生きてへんのとちゃうん?」
勇者「ハハハ……、ハハハハハ……」
魔王「……記憶消しといたろ」
第二話:大国滅亡編:完 続く
魔王「とりあえず、荒野ばかりになった大国にまた森戻して」
魔王「そして前回の反省を生かし、今回はキャラピラ式起動城を製作」
魔王「この間、およそ三日!」
魔王「さすがゴブリンさんの大工力やね!」
コック長「そうですねー魔王様」
勇者「魔王ー魔王ー! 味噌汁は私が作ったんだよー!」
魔王「あ、ほーかー」
ズズズズ……
勇者「どう?」
魔王「まぁ……美味いけど?」
勇者「やったー!」
コック長「記憶を消してからすっかりなんというか」
コック長「……デレ期に入ってますねぇ」
コック長「まあ、あれだけの魔力を持つ勇者を」
コック長「完全に手中においた今、もはや世界は魔王様のものですね」
コック長「へ?」
魔王「ワイが求めてたんはこんなんやあらへんのや!」
魔王「ワイが求めてたのは、『世界を滅ぼす』っちゅー」
魔王「壮大なボケに対するツッコミ!」
魔王「いわば、『魔王討伐』というツッコミ!」
魔王「そして『勇者』というツッコミ役やったんや!」
魔王「それどころか天然ボケを繰り返す始末!!」
魔王「こんなんでは世界を滅ぼしても全然アカンで!」
魔王「全然おもろないわ! そう思うやろ、コック長二代目!」
コック長「え、あーはい、そうですねー」
魔王「なんやその気の入ってない返事は!」
魔王「ツッコむんやったらもっとちゃんとしぃ!」
コック長「大体、魔王様にツッコミなんて恐れ多くて出来ませんよ」
コック長「それこそ勇者……、彼女みたいな実力者でないと……」
魔王「そやねんなぁ……、ツッコミも実力やねんなぁ……」
魔王「新たなツッコミ役を模索するか……?」
魔王「いや、そうそう良いツッコミ役なんておらへんで……」
勇者「魔王ー魔王ー」
魔王「なんや?」
勇者「今日、一緒に寝よ?」
魔王「ブバッッ!」
魔王「ワイが紳士やなかったら、そのまま合体コースやでホンマ!」
勇者「私はそれでも良いよー」
魔王「グボバッッ!!」
コック長「ああ! 魔王様のHPがドンドン減ってる!」
魔王(ちゃんと鎧やのーてドレスとか着せたら可愛いなりよるし……)
魔王(ワイ、この手の天然ボケは苦手や……)
魔王「まあ、勇者。ワイは今夜も仕事があるさかい」
魔王「お前一人だけで先寝とれ」
勇者「むー……」
魔王「子供はちゃんと寝なさい……」
勇者「私もう大国では成人してるよ!?」
勇者「あれ? 大国ってなんだったっけ……」
魔王「ワイからしたら充分子供や」
魔王「大体三国やとまだ成人しとらへんやろ」
勇者「大国的には色々とやっても合法だよ!」
勇者「むー……、さっきから自分で言ってるけど」
勇者「大国ってなんだっけ魔王ー?」
魔王(大国についての思い出は、こいつの記憶から消した……)
魔王(一応、自分が勇者って記憶は残しとるんやけど)
魔王(それやのになんでこんなデレるんやろか……)
魔王「ええからもー、さっさと寝なさい。コック長連れてったって」
コック長「了解しました。さあ行きますよ、姫」
勇者「はーい……」
タッタッタッタッタ……
ゴブリン「ブヒー」
魔王「おうゴブリン、お前やったら分かってくれるか」
ゴブリン「ブヒブヒ」
魔王「何々、自分にもああいう天然な幼馴染が居る……、か」
魔王「恋多き男やねーお前も」
ゴブリン「ブヒ」
魔王「記憶を戻したら戻したで、あいつ自身が崩壊しかねへんし」
ゴブリン「ブヒブヒブ」
魔王「何? あのままのあいつを認めろやと?」
ゴブリン「ブフ」
魔王「人類の嫁さんなんか恥ずかしくてもらえるかいな……」
魔王「以前言ったのは、ボケやでボケ。本気やあらへん」
ゴブリン「ブフフフフ!」
魔王「種族間の恋でも関係ないって?」
魔王「そうは言うけど、お前エルフとか全然守備範囲や無いやろ?」
ゴブリン「ブヒ!」
魔王「まあ、ゴブリンとエルフじゃ大違いやけどな?」
魔王「魔族と人間の違いは……、言うたら、ゴブリンとトロールぐらいか」
ゴブリン「ブヒィ!」
魔王「あんな野蛮な種族と一緒にするなって?」
魔王「魔族からしたら、人間はお前らで言うトロールやの」
ゴブリン「ブヒィー」
魔王「問題はツッコミ役が今おらへん言うことや」
魔王「コレは大変な問題やねんで?」
魔王「どれくらい大変かというと」
魔王「ワイがこのままずっとボケへんぐらい大変なんや」
魔王「ははは! お前もなかなか言うのぉ」
魔王「このまま、お前がツッコミ役でもええぐらいや」
ゴブリン「ボハー」
魔王「冗談や、さすがにお前とはやっていけへん……」
魔王「お前とワイでは笑いの方向性が違いすぎる……」
魔王「勇者ももう寝たころやろうしな」
魔王「しかしワイのベッドを占領するのは止めてほしいわ……」
ドゴォオオオオオン!!
魔王「なんや今の音は!?」
骸骨コック2(以下コック2)「闇の力を見よ……、とか恥ずかしい事を言ってきます!」
骸骨コック3(以下コック3)「我々では対処できません!」
魔王「闇の力やと……!」
魔王「そんなワイでもつかわへん厨二心溢れた力を」
魔王「何の恥ずかしげも無く使えるのは奴しかおらん……」
魔王「黒騎士! またの名を勇者弟!」
魔王「いきとったんかアイツ!!」
ドゴォオオオオオオオン!!
黒騎士「闇の力を知れ……!」
魔王「恥ずかしい台詞を吐きながら出てきおった!」
黒騎士「魔王に捕らえられたと聞いたから迎えに来たよぉおおお!!」
黒騎士「大丈夫! 僕はもう正気に戻った!」
黒騎士「怖がらないで出てきてくれ!」
魔王「さすが勇者との合計戦闘数十回以上……」
魔王「『ブラックストーカー野郎』などと呼ばれ……」
魔王「その正体がバレると『ヤンデレシスコン野郎』などの愛称をつけられる男……」
魔王「元部下ながら恐ろしいものがあるで……」
黒騎士「あぁああ!!見つけた! その糸目で黒マントの美青年姿!」
黒騎士「魔王だな! いや魔王に決まってる! そうだろう!」
魔王「人違いですよー?」
黒騎士「お前のせいだぁああああああ!!」
魔王「義妹と兄のほうはいっとらへんかったけど」
黒騎士「やはり兄さんと義妹ごと大国を葬り去ったのはお前か……」
黒騎士「くそぅ! お前が居るから!!」
黒騎士「僕は義妹に谷底に突き落とされ!」
黒騎士「川を流れているところを四天王の一人、白鬼に回収され!」
黒騎士「洗脳されて、四天王の一人となり!」
黒騎士「序盤から姉さんのパーティーに事あるごとに」
黒騎士「襲い掛かる強キャラとして君臨し!」
黒騎士「そして終盤では、姉さんの雷呪文で洗脳が一時的に解け!」
黒騎士「また川を流れているところを、姉さんのパーティーの一人」
黒騎士「魔術師さんに助けられて、完全に洗脳をとかれ」
黒騎士「彼から姉さんが、今魔王に囚われていることを知り!」
黒騎士「やっとの思いでここまで来ました!」
黒騎士「ありがとう!」
魔王「でもそれやったら序盤に言う台詞は、『お前のおかげ』やないん?」
黒騎士「今、なお姉さんといちゃつけないのは……」
黒騎士「お前のせいだぁあああああああああ!!」
黒騎士「ねえさん、ねえさん、ねえさぁあああああん!!」
黒騎士「魔王! お前、僕の姉さんに手を出してないだろうな!」
魔王「あほぬかすな、あんな貧*、なんで手を出さなあかんねん」
黒騎士「むしろあの慎ましい貧*が萌えるんだろうがぁあああああ!!」
魔王「何この子、怖い」
魔王「ワイを倒してもその願いは叶わへん」
黒騎士「愛さえあれば、問題ない」
魔王「何がお前をそこまで駆り立てるん……」
コック1「魔王様!」
コック2「この程度のシスコン!」
コック3「あなたの手を煩わせるまでもありません!」
コック1「くくく、我らのコンビネーション……」
コック2「貴様に捉えることが出来るかな……」
コック3「たっぷりと料理してやろう……」
黒騎士「見せてやるよ……、闇の力を……!」
黒騎士「貴様らごときにはこの程度で充分だ……」
コック1「ふ、腕に闇の力を纏う技か……」
コック2「だが、その程度で我らを倒せるかな?」
コック3「さあ行くぞ!!」
シャアアアア!! ガギィイイン、ガギィイイン、ガギィイイイン!!
コック2「我らの斬撃を……」
コック3「全て防いだだと!?」
黒騎士「ふん、その程度か?」
黒騎士「まだ僕は呪文を発動してすらいないんだぜ?」
コック123「「「なにぃ!?」」」
黒騎士「そしてこれがぁ! 第二暗黒呪文だぁああああ!!」
ドゴォオオオオオオン!!
コック2「あとはお任せします、魔王様……」
コック3「俺達……、あんたと勇者のコンビのファンでした……」
バタッ、バタバタッ
魔王「骸骨コックどもぉおおおおお!!」
魔王「しかし闇の力を纏った斬撃を放ったやと……?」
魔王「ワイの部下やった時はそんな技……」
魔王「まあ、あったな。しかもけっこう使ってたな」
黒騎士「行くぞ魔王ぉおおおおお!!」
黒騎士「お前を倒し、僕は姉さんと添い遂げるぅうううう!!」
魔王「わー―――!! 待て! 話し合おう! 話せば分かるて!」
魔王「そうや! お互い言葉が通じるもん同士話せば分かる!」
魔王「ワイの仲間に戻れ! そうしたら……」
魔王「世界の半分をやろう!」
魔王「なんやったら、姉さんも添い遂げさせたるわ!」
黒騎士「ふ、それはいい提案だ……、特に後半が……」
魔王「やろ?」
黒騎士「だが断る」
黒騎士「世界などには興味はない」
黒騎士「姉さんとは僕が自力で添い遂げる」
魔王「ほなやったら、姉さん返すから見逃してーや!」
黒騎士「悪いが、姉さんと同じ空気を吸ったものを……」
黒騎士「生かしておくことは出来ん」
魔王「低い大体の奴は踏み抜いていくわ!」
魔王「大体それやと、添い遂げたとしても日常生活がでけへんやろ!!」
黒騎士「問題ない、姉さんとは誰もいない無人島で暮らす……」
魔王「このヤンデレシスコン野郎!」
勇者「んー、魔王どうしたのー……?」
コック長「どうなさいました魔王様!」
黒騎士「ねえ……、さん? ねえさぁあああああん!!」
勇者「うわあああああああ!!」
黒騎士「ねえさぁああああああああん!!」
勇者「いやああああああああ!!」
黒騎士「ねえさああああああん!!」
勇者「私のトラウマあああああああ!!」
魔王「どうしてこうなった」
コック長「知りません」
勇者「くんな! ジリジリと近寄ってくんな!」
黒騎士「姉さん……、僕だよ……、わからないのかい?」
勇者「いや分かるけど! お前は覚えてるけど!」
勇者「色々とトラウマなんだよお前は!」
勇者「当たり前だろ!」
勇者「事あるごとに私の旅を邪魔し!」
勇者「装備という装備を破壊する技を使用し!」
勇者「アイテムを使用しようとすると、使う前に奪われ!」
勇者「呪文を使おうとすると、詠唱中に大技を使い!」
勇者「うっかりすると普通にエンカウントに出てくる始末!」
勇者「トラウマじゃなくてなんだ!」
黒騎士「兄さんと義妹が消えた今、ただ一人の肉親だ!」
勇者「兄さん……? 義妹……?」
勇者「うっ、頭が痛い……、思い出せない……」
勇者「何だろう、思い出そうとしてもそれを拒む自分がいる……」
黒騎士「まさか、洗脳!?」
黒騎士「魔王貴様ぁああああ!!」
黒騎士「僕だけではなく姉さんまで洗脳したのかぁあ!」
勇者「ま、魔王はそんな人じゃないよ!」
勇者「魔王は、その、私が勇者なのにも拘らず」
勇者「仲間に裏切られた私を養ってくれる……」
勇者「それどころか社会復帰のために花嫁修業までさせる!」
勇者「そんな良い人だよ!」
勇者「色々と外道なところもあるけど……」
ワナワナワナワナ……
黒騎士「姉さんを嫁にするのはこの僕だぁああああああ!!」
黒騎士「最大暗黒呪文!!」
黒騎士「黒き闇に飲まれよ! 邪なる礎にて地の底へと埋れ!」
魔王「……お家芸?」
勇者「ま、まずいよ魔王! ここら一体が吹き飛ぶ!」
コック長「させん!」
黒騎士「くそっ! 骸骨コック風情が!」
黒騎士「僕と姉さんの逢瀬を邪魔するつもりか!」
コック長「魔王様! 今のうちにお逃げください!」
魔王「二代目……、お前……、消えるのか……?」
コック長「あなたと勇者の夫婦漫才……、私、楽しみにしてます……」
魔王「二代目ぇええええ!!」
ギュ!
魔王「飛ぶってどこにや!?」
勇者「どこでも良いから!」
勇者「移動呪文展開!!」
キィイイイン
ヒュン!
黒騎士「くそぉおおお!! ねえさああああん!!」
黒騎士「必ず洗脳を解いてみせますからああああああ!!」
黒騎士「何? 骸骨コック風情が何が分かる!」
コック長「分かるさ!! 例え骨だけのこの体でも!」
コック長「もっともお前には永劫分かるまいがな!」
黒騎士「何の話だ!」
コック長「あの二人の間にあるもの……、それは」
黒騎士「何だそれは!」
コック長「調和とはまさしく笑い! 笑いは世界に愛を与えます!」
コック長「そう、この気持ち! まさしく愛だぁああああああ!!」
ゴォオオオオオオオオオ!!
魔王「闇の彼方へと消えていったのだった……」
第三話:プロローグがとてつもなく壮大な話:完 続く
魔王「最大自爆呪文……」
魔王「二代目ェ……」
魔王「という訳で第四話や」
勇者「血も涙もねぇな」
魔王「何か調子戻ってきたみたいやな」
勇者「だって今、私しか一緒に居ないじゃん……」
勇者「それに聞いてたんだ。お前の夜中の話……」
勇者「ツッコミ役が欲しいんでしょ?」
勇者「それなら私、頑張ってツッコミ役するよ!」
勇者「それは言わない約束だよ……」
魔王「魔王っていうのかお前って言うのかはっきりせいや」
勇者「じゃあ魔王って呼んで良い……?」
魔王「お前呼びでお願いします」
勇者「盗賊の国、その端っこの村の宿にいるんだ」
勇者「しかも夢の同室――」
勇者「お前のせいだー―――!!」
魔王「何がや!」
勇者「出会ったショックでけっこう記憶治ってきたんだよ!」
勇者「まだちょっとぼやけてるけど!」
勇者「うう……、お兄様……、義妹……」
魔王「もっかい記憶消しとこうっと……」
……………
…………………
勇者「一緒の布団で寝よ?」
魔王「記憶を消したら消したでデレ期……」
魔王「めんどくさいやっちゃ……」
勇者「ん? なんのこと?」
魔王「ええい! なんでもあらへん!」
魔王(さてどないするか……)
魔王(態度はもうちょっと軟化してほしいけど)
魔王(ツッコミは惜しい……)
魔王(くっ、この究極の二択……、一体どうするか……!)
…………
………………
魔王「昼はツン期、夜はデレ期に変わる設定が加えられたんやった」
魔王「まあ、ワイのさじ加減一つやねんけどな」
勇者「何言ってんだ、お前」
魔王「アンタの設定の話や!!」
勇者「設定……? 何の話だ……?」
勇者「くそ、それと! 勝手に私の記憶を弄るな!」
勇者「キャラが不安定になる……」
魔王「相手にせェへんかったけど」
勇者「うう……、そー言う記憶はしっかり残ってるから」
勇者「自分が厭になる……」
勇者「もう今後、記憶弄るの禁止!」
魔王「でも夜になったら大国の事は忘れるよう、術式かけといたで?」
魔王「寝首かかれても厭やし」
勇者「お兄様……、義妹……、懐かしい」
魔王「そんな昔の事やないけどな」
魔王「まー昼でもうっすらとしか思い出せよう、しといたから」
魔王「ずいぶん昔のことに思えるんやろうけど」
勇者「洗脳されてる……、私……」
魔王「ワイに楯突く動力源にして原因みたいやね」
魔王「追い出されたのに、魔王を討伐して自国に平和を――」
魔王「みたいな思いでもあったんかい?」
勇者「そんな自分でも分からないこと、私に聞かれても困る」
勇者「大国のことを完全に忘れてるときだけだな」
勇者「……うん。自分で言ってて恥ずかしい」
魔王「順調に悪墜ちしてる証拠やね」
勇者「お前のせいだー―――!!」
勇者「とっくに悪墜ちしてる自信がある……」
勇者「その……なんだかんだで」
勇者「優しくしてくれるのはもはやお前だけだし……」
魔王「やめて、そういう恋愛色の空気出すの」
魔王「ワイはボケに生きる男なんやー!!」
魔王「ボケに恋愛なんていらんのやー――!」
魔王「自分は経験者ですみたいに言うとるけど」
魔王「アンタのどうせそーゆー事は未経験なんやろ?」
勇者「ふん! この私が未経験のはずが無いだろ!?」
勇者「なんなら初体験を賭けたっていいぞ!?」
魔王「……そのボケにはつっこまんとこ」
魔王「下手に城とか作ると、また黒騎士が飛んできそうやし」
勇者「うう……、あいつの顔はなるべく見たくない……」
魔王「そんなこというなや。ただ一人の肉親やろ?」
勇者「まともだったらな!? でも見たろ昨夜のアレ!」
勇者「うう、思い出しただけでも寒気がする……」
勇者「ちょっと昨夜の記憶だけ消してくれないか?」
魔王「そこ消すと、アンタデレ期入るからなー」
勇者「うっ……」
勇者「一応、お前の家来……、それも奴隷なわけだしな」
魔王「完全に人類側から寝返りおったな」
勇者「ふーんだ」
魔王「まあ、とりあえず三国を支配することにしよか」
魔王「黒騎士は恐ろしいけど、アンタとワイのコンビやったらなんとかなるやろ」
勇者「滅ぼすとかいうボケは? どうするんだ?」
魔王「アレは別にもうええわ。何なら今から魔界に帰ってもええぐらいや」
勇者「……じゃあ一緒に魔界に帰らないか?」
勇者「だって……、もう人間界には居場所はないわけだし」
勇者「私にはお前しか居ないし」
勇者「それなら魔界で暮らすのも悪くないかなーっと」
魔王「意外と昼間でもデレ期はいっとるよね、アンタ……」
勇者「えへへー」
魔王「別にええ相方やから魔界で養ったってもかまへんけどな?」
勇者「べ、べべ、別にお前の嫁になるつもりはないんだからなっ!?」
魔王「どうしてこうなった」
勇者「……お前のせいだ」
魔王「そうせな魔界に帰っても、追いかけてくるであの執念やと」
魔王「一番ええのはアンタの仲間をとっちめて」
魔王「真実を黒騎士に話させる……かな?」
勇者「あとは封印魔術で黒騎士を封印するとかな」
魔王「肉親にも容赦ないね……」
魔王「三人がおる城へと向かうか」
勇者「魔術師の城は確かぶっ壊しただろ?」
魔王「その流れで大国も滅ぼしたな」
勇者「懐かしいなぁ……」
魔王「ノスタルジィに浸れるぐらい薄れてくれてなによりや」
勇者「ココから一番近いのは盗賊の国の城かな……」
魔王「なんで盗賊の国やのに城なんてあるん?」」
勇者「一応統治はされてるんだよ」
勇者「意外と他の国より治安は良かったりする」
魔王「盗賊の国やのに……」
勇者「その代わり、国境とかはとんでもなく治安悪いけどな」
勇者「まさにイメージどおりって感じ」
勇者「この国に入るまでに、何度雷呪文を撃ったことか……」
勇者「えへへー」
魔王「ほめてへんからな?」
勇者「んじゃ、手を繋いで?」
ギュ……
勇者「……(カァァ)」
魔王「赤くなんなや」
勇者「移動呪文!」
ビュー!!
警備1「侵入者だー――!!」
警備2「大国を滅亡させた勇者と魔王だー―――!!」
警備3「俺達で相手できるわけがねー―――!!」
警備123「皆、逃げろォー―――!!」
魔王「逃げんなや……」
勇者「懐かしいなぁ……」
勇者「よぉ、盗賊」
魔王「いつも思うんやけど、この世界皆」
魔王「身分と口調のギャップありすぎへんか?」
勇者「お前が言うな」
盗賊「まあ、漫才はそれぐらいにしてくださいませんか?」
盗賊「大方、私を始末しに来たのでしょう?」
盗賊「この職業に就くと決めた頃から覚悟は出来ています」
盗賊「世界を揺るがしかねない裏切りをして、その結果失敗した」
盗賊「賭け事に負けるということは、賭け金を支払うということですから」
勇者「何で私を裏切ったりしたんだ」
盗賊「だって盗賊ですから」
盗賊「盗賊がパーティーの家計管理などで」
盗賊「満足していては名が廃れますよ!」
盗賊「盗賊として! 一世一代の勝負に出なければ!!」
盗賊「そう気づいたのは、あなたが魔王と戦う前夜でした……」
盗賊「勇者が魔王に勝てば、本格的に大国が世界を支配することになる……」
盗賊「だから勇者が魔王に止めを刺す直前で」
盗賊「裏切り、我ら三人だけの手柄にしよう、と……」
盗賊「馬鹿な二人は簡単にこの話に乗りましたよ……」
盗賊「戦士はともかく、魔法使いが馬鹿なのは少し笑えましたが」
勇者「……何が言いたい?」
盗賊「真の計画は勇者、あなたを魔法使いの城に捕らえてから……」
盗賊「あそこの牢は魔力を封じることの出来るとてつもない牢ですが」
盗賊「ちょっとした技術で鍵を開けることが出来ます」
盗賊「盗賊なら誰にでも出来るような……ね」
盗賊「絶望しきっているあなたを颯爽と助け!」
盗賊「あなたの一番大事なものを盗む手はずだったのです!」
勇者「な、なんだよ、一番大切なものって……?」
魔王「初体験ちゃう?」
盗賊「それはあなたの心です!」
魔王「自爆呪文が発動せぇへんかったのが不思議やな」
盗賊「うるさい! その計画を! 魔王!」
盗賊「あなたが勇者と共に脱走したことによってぶっ潰した!!」
盗賊「お前が居なければ、今頃勇者と」
盗賊「イチャイチャラブラブ盗賊ライフを送っていたのに!」
盗賊「お前のせいだァー―――!!」
勇者「なんだよ、その今まで付き合ってたみたいな発言は」
勇者「私とお前は単なる旅仲間だっただろう」
勇者「それに私はもう魔王と……ゴニョゴニョ」
盗賊「お腹にはあなたの子供がいるのよ!」
勇者「お前、男だろ!?」
盗賊「性転換したのよ!」
勇者「してたとしても私は女だから出来ない!」
魔王「お相手が奥手なだけやってんなー」
勇者「ん……、どうやらそうみたい」
勇者「あ、『より戻したらええやん』とか言ったら」
勇者「雷呪文数万発食らわすからね?」
魔王「……色恋はともかく、相方を手放す気はないで」
盗賊「勇者! 私の元へと戻って来い!」
盗賊「NOというのなら、この城もろとも、ぶっ飛ばす!!」
盗賊「既に地下に大量の火薬を用意している!」
盗賊「あとはこのボタンを押すだけだ!」
勇者「えーっと……、どうぞ?」
勇者「ほら私達、城ぶっ壊しても大国滅ぼしても」
勇者「その瓦礫とか余波とかで倒れてないじゃん?」
勇者「何故ならステータスの耐久力が高いから」
勇者「だから城がぶっ飛んだぐらいじゃ全然問題ないんだよね……」
勇者「お前はどうか知らないけど」
魔王「そういうことやで。やめとけやめとけ」
魔王「そんなことよりお前に頼みたいことがあってな……」
ポチッ
魔王「あ、押しおった」
勇者「この……、馬鹿!」
ドドー――――ン!!
…………
………………
魔王「この瓦礫やと、ワイら以外には生きとらへんやろな……」
勇者「まったく盗賊は馬鹿だよ……」
魔王「あいつは生きてるて……、ワイらの心に……」
勇者「それ、自爆呪文?」
魔王「ゴバハッ」
勇者「魔王さえいればほかには何もいらないよ……」
魔王「やめて背筋がぞくぞくするわ」
勇者「うふふ……、うふふふふ……」
魔王「悪墜ちやのーて順調にヤンデレルートに……」
魔王「魔法使いの国の城もぶっ飛ばしたし」
魔王「あとは戦士の国か」
勇者「そんなことより宿でイチャイチャしよう……?」
魔王「落ち着け落ち着けれれれ冷静になれ」
魔王「夜まで続くのであった……」
魔王「まあ、夜になってもあんまり行動は変わらんかったけどね……」
第四話:盗賊の国の城撃破編:完:続く
黒騎士「時、既に遅しか」
黒騎士「既に瓦礫の山だ」
黒騎士「移動呪文は勇者の洗礼を受けている」
黒騎士「姉さんにしか使えないしな……」
黒騎士「うお! びっくりした!」
魔術師「よぉ、黒騎士ちゃん元気ィー?」
黒騎士「お前は確か、姉さんの仲間だった魔法使い……」
魔術師「またの名を魔術師――、まあどっちでも良いけどなぁ」
魔術師「するめというかあたりめというかの違いだし」
魔術師「ヒャー―――ハッハッハッハ!!」
黒騎士「お前はどっちかって言うと狂戦士って感じが……」
黒騎士「年齢も普通に若いし。まともなのは服装だけだよな」
魔術師「まず形から入れって言うだろォー?」
魔術師「それに俺みたいに才能があるとさァー」
魔術師「老け込むまで修行なんてしなくて良いのよォー」
魔術師「移動呪文だろうが、雷呪文だろうが」
魔術師「自爆呪文だろうが、暗黒呪文だろうが」
魔術師「自分のものに出来ちまうんだからなァー――!!」
魔術師「あの二人の脱走も止められたんだがぁ」
魔術師「生憎とハメ外しすぎちまったぜ……」
黒騎士「でも移動呪文が使えるんなら、すぐに追えたはずだろう?」
魔術師「城直したり、犠牲者蘇生してたりしてたんだよぉー――!!」
魔術師「大国を滅ぼしやがった!!」
魔術師「その上にご丁寧に樹海まで生やしやがってなぁ!!」
魔術師「復興と住民蘇生に、俺が一体どれだけMP使ったと思ってやがる!」
魔術師「国の爺共が煩くなかったら放り出してる作業だぜ……」
黒騎士「ということは義妹と兄上も?」
魔術師「もちろん蘇生させたよぉ」
魔術師「魂さえありゃあいくらでも蘇生呪文で蘇生できるからなぁ」
黒騎士「ドラゴソボールもびっくりだな」
魔術師「それぐらい何とでもなるわけよぉ」
魔術師「ただよ――、大国を滅ぼした呪文」
魔術師「ありゃ一体なんだ?」
黒騎士「魔王の呪文じゃないのか?」
魔術師「そんな呪文覚えてたら、とっくに連発して」
魔術師「世界滅ぼしてるはずだろぉ?」
魔術師「いつ覚えたか分かんねぇが、アレは勇者の呪文ってことだよ」
黒騎士「姉さんが……」
黒騎士「おのれ魔王……、姉さんを洗脳するだけじゃなく」
黒騎士「人体改造して、強力な呪文を覚えさせたんだな……」
魔術師「魔王が操ってるんだったらやっぱり」
魔術師「呪文連発して世界滅ぼしてるはずだしなぁ」
黒騎士「つまり……、姉さんはまだ完全に操られてないと?」
魔術師「いやそうじゃなくて」
黒騎士「待っててください姉さん――」
黒騎士「ねえさぁあああああああああああん!!」
魔術師(こいつと話してると――)
魔術師(俺が何だかんだで常識人ポジションに)
魔術師(納まってる理由が分かる気がする……)
魔術師(皆、ハッチャケ過ぎなんだよぉ……)
魔術師「盗賊の奴を蘇生してやるとするかぁ」
盗賊「それには及びませんよ」
魔術師「!?」
魔術師「生きていたのか盗賊――ッッ!」
盗賊「彼らの法則は私にも通じたわけですよ」
盗賊「まぁあの二人に勝てるはずがないんで」
盗賊「くたばったフリをしていましたが」
魔術師「そぉか、良かったなぁ」
黒騎士「ねえさぁあああああ……、なんだい?」
盗賊「私達とパーティーを組みましょう」
黒騎士「何でさ?」
盗賊「何でと聞きますか……、答えは簡単です」
盗賊「あなたのお姉さんを救出しやすいからですよ」
盗賊「魔術師の呪文! 私の手際! あなたの戦闘力!」
盗賊「この三つが合わされば、魔王なんて目ではないでしょう?」
黒騎士「たしかにね……」
黒騎士「しかし盗賊、お前は駄目だ」
盗賊「!?」
黒騎士「何回、姉さんを取り逃がしたと思ってる!」
黒騎士「どうせ今回も自分だけが美味い思いをする」
黒騎士「策を練っているに決まってる!!」
黒騎士「僕は騙されないぞ!!」
魔術師「ぶっちゃけ魔王と勇者同時に相手取るのは無理だぜ?」
魔術師「前回あの二人を捕らえられたのも、盗賊の策だし」
黒騎士「そういやさっきから逃がしただの」
黒騎士「捕らえただの言ってるけどさ」
黒騎士「何のことだよ?」
黒騎士「姉さんだけ魔王に捕らえられたって聞いたけど?」
魔術師「え、ああ、お前にはそう言ってあったっけぇ」
魔術師「いやさぁ、実はよぉ……」
ガシッ!
盗賊「何話そうとしてるんですか、魔術師(ヒソッ」
魔術師「えぇ? 俺らが勇者裏切って魔王と一緒に捕らえたこ……」
盗賊「声がでかいッッ!!」
盗賊「そんなことを今話せば、このヤンデレシスコン野郎は」
盗賊「私達を攻撃してくるに決まってます(ヒソッ」
盗賊「なんせ、最愛の姉を裏切った罪人なんですからね(ヒソッ」
盗賊「それをあなたは……、それに大国ともいずれ戦争になるのに」
盗賊「わざわざ直してしまってどうするんですか(ヒソッ」
魔術師「それにお前はああ言ってたが、ウチの国は基本鎖国主義だし」
魔術師「権力争いとかあんま関わらないタイプなんだよなぁ」
魔術師「裏切ったのもぶっちゃけ」
魔術師「あいつが気に入らなかったからだし(ヒソッ」
魔術師「魔王の見張り役として一緒の牢に入るって」
魔術師「本人が頑固に言い張ってってことでぶちこんだからな(ヒソッ」
盗賊「端から処刑とか考えてなかったわけですか……(ヒソッ」
魔術師「だってうちじゃ、既にアイドルみたいなものだし」
魔術師「しょっちゅう突っかかってきやがるし、小言は煩いしよぉー(ヒソッ」
盗賊(駄目だコイツ……、まったく後先考えてない……)
盗賊(田舎の若者って感じ丸出しだ……)
盗賊(勇者も勇者で世間知らずだったが……)
盗賊「ああ、すいません。ちょっとした情報の行き違いのようです」
魔術師「だそうだ」
盗賊「とりあえず私もついていきます」
盗賊「あなた達二人じゃ出来ることも出来ませんよ」
盗賊「分かってるんですか?」
魔術師「あー……、うちの城、大国、盗賊の城と来てるから……」
黒騎士「戦士の城か?」
盗賊「ふん、一応頭の中に脳みそはあるようですね」
魔術師「よりによって戦士の城かよぉ……」
盗賊「それがどうかしましたか?」
魔術師「あの見た目幼女のところに行くのはな……」
盗賊「まあ、一緒にいるとガリガリと何かが削れていきますもんね」
盗賊(私は勇者一筋でしたが)
黒騎士「さっさと移動呪文を使え」
魔術師「はいよ……」
魔術師「移動呪文!!」
ビュゥウウウウン
勇者「何、独り言喋ってんの?」
魔王「細かい事は気にすんなや」
魔王「今、現在。戦士の城で戦士と相対していた」
戦士「ふぇぇ……、絶体絶命だよぅ……」
魔王「戦士とやらは何処いったん?」
戦士「ふぇぇ……、私が戦士だよぅ……」
勇者「あれが戦士だ」
魔王「あれが!?」
魔王「見た目完全に幼女やで!?」
勇者「見た目は気にするな」
勇者「ただ、アレがお前の四天王をちぎってはなげちぎってはなげ」
勇者「一騎当千の活躍をしたことだけは頭に入れておけ」
魔王「あれが!?」
勇者「あー一応、何で裏切ったか聞いておこうか?」
戦士「だって裏切りに乗らなかったら、もううめぇ棒くれないって」
戦士「盗賊が言ってたんだよぅ……」
魔王「中身まで幼女やけど!?」
勇者「だがお前の四天王はアレに力負けした」
勇者「黒騎士ですら吹き飛ばされた事は頭に入れておけ」
勇者「私に聞くな」
戦士「ふぇぇ……、許してよぅ……」
勇者「まぁ、私も許してやろう」
勇者「ただし頼みが一つだけある」
戦士「ふぇぇ……、痛いのは嫌だよぉ……」
勇者「黒騎士はお前達三人が私を」
勇者「裏切った事を証言してくれればいいだけだ」
戦士「ふぇぇ……、それ他の二人にぶたれるよぅ……」
勇者「もしくは黒騎士に私を追ってこないよう教育してくれ」
戦士「ふぇぇ……、後者ならまぁ、別に良いよぅ……」
魔王「後者のほうが高難易度な気がするけど!?」
勇者「それじゃあ魔界に行こうか、魔王」
戦士「ふぇぇ……、二人とも魔界の行くの……?」
魔王「そうやねん。もうこの世界を滅ぼすのは止めて」
魔王「魔界で二人で漫才すんねん」
勇者「うふふ……、うふふふ……」
勇者「末永くイチャイチャしようね、魔王……?」
魔王「」
戦士「ふぇぇ……、勇者がヤンデレてるよぅ……」
盗賊「許しませんよ、くくく、地獄の果てまで追いかけます」
黒騎士「ねぇさぁあああああああああああん!! 目を覚ましてくれぇええ!」
勇者「お、お前らは!」
戦士「ふぇぇ……、いつの間にか全員集合だよぅ……」
勇者「って盗賊、生きてたのか!?」
魔術師「えーっとなんだ。この場合お幸せに……なのかぁ?」
戦士「ふぇぇ……、私は別にそれでもいいと思うよぅ……」
勇者「魔術師まで! 一体いつから居たんだ!?」
魔術師「お前らが話し合ってる時からかぁ?」
黒騎士「あ、そうだ、貴様ら姉さんを裏切ってたんだなぁああああ!!」
黒騎士「しかも盗賊、お前が筆頭かぁあああああ!!」
盗賊「私と勇者が添い遂げる計画の一部……、のはずだったんですが」
盗賊「まさかね……」
盗賊「さあ黒騎士! 魔術師! 戦士!」
盗賊「魔王を討ち滅ぼし、世界に平和をもたらすのです!」
盗賊「奴の言葉を信じてはなりません!!」
魔術師「わざわざ戦わなくても良いんじゃねーのぉ?」
戦士「ふぇぇ……、私もそう思うよぅ……」
戦士「何より勇者の幸せを応援したいよぅ……」
戦士「よく考えたら、うめぇ棒のために仲間を裏切るとか最低だよぅ……」
戦士「国に帰ってから腐るほど買えるぐらい出世したし……」
黒騎士「てめぇ何姉さん狙ってんだぁ!!」
ズバァ!!
盗賊「ぐはぁああ!」
魔術師「ああ!! 盗賊が真っ二つに!」
戦士「ふぇぇ……、あとで蘇生するんだよぅ……」
黒騎士「うぉぉおおおおお!! 行くぞ魔王ぉおおお!!」
黒騎士「究極暗黒呪文!!」
ガシィ!
黒騎士「ぐっ! 離せ戦士!」
戦士「ふぇぇ……、その技は」
戦士「剣を振らなければ出せないはずだよぅ……」
魔術師「もう、てめぇの攻略法は知れてんだよ」
魔術師「なんせ十回以上戦ってきたからな!」
魔術師「ヒャー―――ハッハッハッハッハ!!」
黒騎士「くっ! だがこのままの状態がそのまま続くと思うな!」
黒騎士「僕は何があろうと姉さんと添い遂げる!!」
戦士「ふぇぇ…・・・、抱きついてるんじゃなくて……」
戦士「鯖折りだよぅ……」
黒騎士「ふん! どちらにしても長くは続くまい!」
戦士「ふぇぇ……、予想以上に愛が重いよぅ……」
戦士「こりゃあ教育できないかもだよぅ……」
執事「…………」
勇者「お、お前はッッ!」
一同「「「「セバスチャン!!」」」」
執事「…………・」
勇者「何も言わないが、黒騎士の教育は」
勇者「任せろと言う気持ちが伝わってくる……」
魔術師「あ、相変わらずなにもいわねぇが……」
魔術師「既に魔界へのゲートを用意しておきましたよ」
魔術師「という意思が伝わってくるぜ……」
執事「…………」
戦士「ふぇぇ……、何も言ってないはずなのに……」
戦士「黒騎士はもう離しても構わないと言われた気がするよぅ……」
黒騎士「」
黒騎士「分かった、ぐすっ、ううっ、姉さんの幸せのためなら……」
黒騎士「僕は身を引く事にするよ……」
魔王「あの黒騎士が……」
魔王「一体どんな意思が伝わってきたんや!?」
魔王「というかなんでしゃべらへんねんあの人!」
勇者「セ、セバスチャン……」
勇者「うん、分かった……、幸せになるねっ!」
勇者「今までありがとう!」
魔王「片方なんも喋ってへんのに凄い感動のシーンみたいや!」
魔王「うっっ!」
魔王「何も言われてへんのに」
魔王「勇者を幸せにせんと何か」
魔王「とてつもない目にあわされる気がしたで……」
魔王「これが無言系主人公って奴やな……!!」
勇者「前回の魔王は残念ながら、BADEND直行だったらしいね」
執事「…………」
勇者「え?」
勇者「あの義妹が前回の魔王だったって……?」
勇者「え、でも……なんで?」
勇者「時ガ経てば、いつか善の心を」
勇者「手に入れてくれると思った……?」
執事「…………」
勇者「まあ、お兄様の事は本当に愛してるみたいだけど……」
勇者「また、世界征服をもくろむってことはないの?」
執事「…………」
勇者「無責任なっ」
執事「…………」
勇者「んー、なら安心、かな?」
魔王「何話してるか全然わからへんからな?」
執事「…………」
魔王「若い芽を育てるため、身を引いた的な意思が伝わってくる!」
魔王「恐ろしいわ、この人……」
勇者「前回勇者だからねー」
勇者「さてと、魔王ー――?」
勇者「セバスチャンがこの城の中庭に」
勇者「魔界へのゲート用意してくれたみたいだし」
勇者「私達、そろそろ出発しよ?」
勇者「で、魔界でイチャイチャしよ?」
魔王「……そういや、大国が復活したらしいな」
魔王「ということは記憶戻しても問題ないよな?」
魔王「記憶復活の呪文!」
魔王「ぺぺぺぺそそそそがあらあらっがぷ!」
勇者「……………」
魔王「どや」
勇者「どうって言われてもね……」
勇者「記憶戻っても全然気持ちは変わらない……かな」
ガシッ
魔王「あ、ちょ、ひっぱんなや! まだ心の準備が!!」
勇者「子供……、十人ぐらいは欲しいな♪」
魔王「枯れるわそんなん!」
黒騎士「お前のせいだぁあああああ!!」
魔術師「お前のせいだよなぁ」
戦士「ふぇぇ……、お前のせいだよぅ……」
盗賊(返事がない、ただのしかばねのようだ)
勇者「――うん、魔王のせいだね♪」
執事「こうして、夫婦漫才を始める事になった二人は」
執事「魔界ではあまり売れませんでしたが」
執事「魔王の実家が大金持ちだったので、金銭の問題はなく」
執事「末永く二人でイチャイチャしましたとさ」
第六話:どうしてこうなったのか作者でもわからない:完
うまい事終わらせやがった・・・
ちくしょう面白かったぞ